好奇心のおもむくままにチョコマカ動くふわふわな犬、ポメラニアン。その愛くるしく優雅な姿で、古くはイギリスのビクトリア王朝の貴族たちを和ませてきたといわれています。そんなポメラニアンの特徴や性格、歴史や飼い方について、ご紹介します。
ポメラニアンの特徴・魅力
ソリ犬を祖先に持つ快活な犬種です。好奇心旺盛で遊び好き。いつもなにかゲームや刺激を見つけようとしている、そんなイメージがあります。見知らぬ犬に対してはやや神経質で、攻撃的になる面もあります。散歩のときに吠えかかったりしないよう、幼犬期からしっかりしつけましょう。
ポメラニアンの歴史
古くはソリ犬や番犬として活躍し、現在のサイズよりかなり大きい犬でした。これは寒い地域の環境に適応するためのもので、豊富な毛も当時の名残です。その後は毛量やスピッツタイプと称される小型化が、ドイツのポメラニア地方で進められ、19世紀中頃に小型の犬種が登場すると世界中で注目を集めました。そして1891年、ビクトリア女王の愛犬が第1回クラフト・ショーに入賞したことで、小型化の競争が盛んになり、爆発的な人気の小型犬となりました。
ポメラニアンの外見上の特徴
体高※18~22cm。体重1.8~2.3kgが理想とされています。首周り、お尻、シッポの豊かな毛が作り出す、横から見たときのシルエットは、よく「栗」にたとえられます。この豊かな被毛は綿のように柔らかい豊かな下毛と、まっすぐで開立した粗い上毛から成り立っており、ポメラニアンのもつ、独特の雰囲気を作り出しています。文字どおり背中に背負った尻尾もボリューム感を演出しチャーミングです。被毛は豊富ですが、口先、足先など汚れやすい部分の被毛が短いため、自然な風合いを感じさせます。毛色は、ブラックや、ブラウン、チョコレートブラウン、明るいオレンジ、クリーム、オレンジ・セーブル、ホワイト(白)などの単色のほかに、グラデーションの美しいオレンジ・セーブル、ウルフ・セーブル、ビーバーなどの毛色も。パーティーカラーやブラック&タンなど、二色以上の混色の犬もいます。
※体高:地面から首と背中の境目付近までの高さで、人の身長に相当するもの。
ポメラニアンの性格
飼主への愛着が強く、強いきずなを構築したがります。しかし、これは飼主と離れると落ち着きがなくなる分離不安等を抱きやすくなることにもつながります。好奇心旺盛で甘え上手な性格、多頭飼育もそれほど難しくありません。多くの小型犬同様に、神経質だったり、臆病だったりという評価を受けることも多いです。飼い主さんが穏やかに対応することで、ポメラニアンの穏やかな面を伸ばしましょう。
ポメラニアンを飼うのに向いている人
小型犬なので移動の際に持ち運びが苦になりません。愛犬といっしょにドッグ・カフェなどで食事を楽しむなど、お出かけ好きな飼主さんに向いているでしょう。近年ではデザインカットと呼ばれるカットをポメラニアンに施すことも流行っていますので、おしゃれ好きな飼主さんにもオススメできます。医療費がかかりやすい犬種なので、犬にかける経済的余裕の有無も1つの判断基準となります。
ポメラニアンの飼い方
体が小さいため、ポメラニアンにとっては、人や多くの犬種は見上げるほど巨大な存在。そんな状況では、恐怖や不安は感じやすいもの。少し神経質になって、接触を強く拒否したり、警戒してよく吠えたりする犬が多い傾向にあります。子犬の頃から、自信をつけさせるように様々な人や犬とよい経験をたくさんさせましょう。葛藤を感じたり、興奮したりするとクルクルと回り続ける犬がいます。何か疾患系の問題でなければ「スワレ、マテ、フセ」などの号令に従うようにしつけをし、飼主さんが犬の興奮を軽減できるようにしましょう。ダブルコートなので、暑さには弱い犬種です。夏場は涼しい時間帯に散歩したり、地面からの照り返しに注意するなど熱中症対策を万全に。また、遊びに夢中になりすぎて転倒、転落などによる骨折にも要注意。
ポメラニアンのハウス・ゲージなど住む場所・飼育環境
飼育している環境の中で入ってほしくない場所には、仕切りなどを設置して侵入を防ぎ事故を予防しましょう。とくに留守番させるときは、必ずサークル等に入れて思わぬ事故を防ぐようにします。また電気のコード類や噛み傷をつけられたくない家具などには、噛み防止用の塗布剤を塗っておくことが有効です。肢に問題を抱えていたり、加齢に伴い筋肉量が落ちると、滑りやすい床の上で重心を安定させることが困難になり、手首などの関節等に負担をかけることになります。飼育する際は、必ず滑りにくい床を選択しましょう。また大きな段差のない環境も理想的です。
ポメラニアンの食事
主食には、フードと水のみで栄養のバランスがとれるように作られている、総合栄養食を与えましょう。一般食は、栄養バランスよりも食いつきを重視しているため、主食には不向きです。フードのパッケージの裏に総合栄養食と記載されているものを選んで。犬は、成長や年齢ごとに必要とされる各栄養素の量が異なります。「子犬用」「成犬用」「シニア犬用」「体重管理用」など、年齢と目的に応じたフードを与えましょう。手作りフードは与えている物を飼主さんが把握できる安心感があり、愛犬のことを思いながら調理する楽しさもあります。しかし栄養バランスを保つのが簡単ではないため必要ならばサプリメント等で補いながら実施することをオススメします。
ポメラニアンのお手入れ
ブラッシングの際にブラシの選択を間違うと、毛を抜きすぎて非常にボリューム感のないポメラニアンになってしましますのでブラシの選択は大切です。基本はまっすぐなピンのついたピンブラシを使って、優しく、丁寧に全身をブラッシングするようにして。口腔環境が非常に悪くなりやすい犬種です。毎日の歯磨きは必須で、その上で半年に1度程度、動物歯科に通じた獣医師による歯科検診を受けることをオススメします。
ポメラニアンが気をつけたい病気・寿命
・華奢な骨格で飛び跳ねる犬特有の「骨折」
・足を引きずったり、ピョコッとあげて歩く「膝蓋骨脱臼」
・つぶれたような声のセキをする「気管虚脱」
・小さな顔立ちなので起こりやすい「乳歯遺残」
・分厚く美しい毛並みが仇に「熱中症」
・頭が大きいな、と感じたら気をつけてみて「水頭症」
・瞳がにごってきたら治療したい「白内障」
飼いやすさの目安 ※5段階評価
お散歩が楽 5
初心者向き 4
友好的 3
お手入れのしやすさ 3
訓練のしやすさ 4
監修
ヤマザキ学園大学 講師 福山貴昭先生(危機管理学修士)