インターコンチネンタルホテルズグループ(IHG)が、ブティックホテル「キンプトン東京・新宿」を、2020年に新宿でオープンする。キンプトンは1981年にアメリカでブティックホテルを始め、現在、世界で60以上のホテルを運営。今回、日本に初上陸する。
運営は、ブライダル事業などを手がける「ツカダ・グローバルホールディング」などに委託する。IHGが2018年7月19日に都内で発表会を開き、明らかにした。
ブティックホテルは、ブライダル事業の「テイクアンドギヴ・ニーズ」(T&G)が、2017年にTRUNK(HOTEL)をオープン。2019年には、世界的なブティックホテル「Ace Hotel」(エースホテル)が京都で開業を予定している。欧米で人気のブティックホテルが東京五輪を前に、日本に続々と進出する。
発表会に登壇した関係者。左から、塚田氏、ハイリガーズ氏、マクファーソン氏。
「キンプトン ホテルズ&レストランツ」は、サンフランシスコを拠点にしたブランドで、今後、中国や東南アジアにも展開していくという。
キンプトン東京・新宿(東京・新宿区西新宿3丁目)は、パークハイアット東京の近くにオープンする。客室は150室前後を予定し、300人が収容可能な3つのミーティングスペース、ダイニング、多目的に利用できるチャペルなどを備える。
インテリアデザインは、世界各国の建築を手がけた「ロックウェル・グループ」が担当する。
運営は、ツカダ・グローバルホールディング(塚田正由記社長)と、「IHG・ANA・ホテルズグループジャパン」(ハンス・ハイリガーズCEO)が行う。ツカダ・グローバルホールディングは、IHGの開発パートナーとして、「インターコンチネンタル東京ベイ」など、4つのホテルを運営している。
T&Gと同様に、ハウスウェディングを国内に広めた塚田氏。
発表会には、IHGのヨーロッパ中東アジア&アフリカCEOのケネス・マクファーソン氏と、ハイリガーズ氏、塚田氏が登壇した。
マクファーソン氏は、「キンプトンブランドは、1つとして同じものがない。ただ感覚は同じ。従業員はマニュアルに沿ったサービスを提供しない」と話し、各国のアワードを受賞しているレストランが「(ホテルの)中核をなしている」と特徴を紹介した。
新宿という立地について、「ユニークなライフスタイルホテルに、新宿はぴったりの場所。高層ビル、デパート、歌舞伎町と、活気のあるエンターテイメントの街」と評価した。
一方、塚田氏は「ホテルは規模が大きくなると、画一的でマニュアルによる運営になり、それがブランド価値になっているのも事実 」と認め、ただし、「今は従来のホテルをつくっても、(価格競争になり)競争に勝ち残るのが難しい」と語った。
またマクファーソン氏と同様に、日本でのブランド確立には「レストランが肝になる」と話す。海外からレストランの責任者を抜擢し、「外国に行ったようなコミュニケーションの取れるレストラン」にしていく意向だ。キンプトン東京で展開するブライダル事業については、「ニューヨークのロックウェルと新しいデザインのウェディングにチャレンジしたい」と言う。
「TRUNKは大型の結婚式場のイメージ」
2017年5月に開業したTRUNK(HOTEL)。客室は少ない。1階のラウンジは、思い思いに過ごす人々で賑わっている。
日本では、ツカダ・グローバルホールディングと同様に、ハウスウェディングを国内に浸透させた「T&G」が、TRUNK(HOTEL)を2017年にオープン。ブティックホテルのジャンルを、本格的に日本で開拓した。
TRUNK(HOTEL)は、客室は15室(客室単価は5万6919円)、客室の稼働率は91%。6つの多目的施設を持つ。婚礼・宴会の利用は、オープンから11カ月で1000件以上を記録している。
従業員のマニュアルはなく、予算や規則は社員が決める。採用は、「コアバリューさえ同じなら、平均点が悪くても面白い能力が高ければ採用する。権限を全部渡すから、好きなことやってもらう」(T&Gの野尻佳孝会長、2018年7月4日の取材時)
競合となるTRUNK(HOTEL)について、塚田氏は、「TRUNKは、実はブライダルの建物だと思っている。1階にバーがあって、ユニークさがある。ただ、部屋数は少なく、見せ方がうまい。売り上げの大半はブライダルだと思う」と推測、「私たちから見ると、(TRUNKは)ブライダルとして、新しさを感じる施設。大型の結婚式場のイメージ」と、競合視するとともに、独自の見方を示した。
ブティックホテルとして、キンプトンもTRUNK(HOTEL)もマニュアルはない。このため、ハイリガーズ氏は「採用に力を入れている。サービスのカルチャーを理解していて、個性的な人を雇う。大切なのは、従業員に権限を与えること」と説明する。
ブティックホテルには、デザイン性もさることながら、個性的で宿泊客をもてなせる従業員の育成がカギになる。老舗高級ホテルの礼儀正しさとは、また違った意味での接客力が求められるTRUNKやキンプトンのような新世代のホテルは、2020年に向けて日本でももっと増えていくのだろうか。
(文、撮影・木許はるみ)