cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_bca1446e3739_レシート買い取りアプリONE「怒涛の3カ月」で気づいたこと bca1446e3739 0

レシート買い取りアプリONE「怒涛の3カ月」で気づいたこと

どんなレシートも10円で買い取ります —— 。

17歳高校生起業家が率いるワンファイナンシャルが、そんなアプリ「ONE(ワン)」を発表するやいなや、利用者が殺到し、16時間でサービス停止を余儀なくされた騒動から約3カ月。 現在、ONEは少しずつ進化しながらサービスを再開している。「怒涛の3カ月」の渦中にいたCEOの山内奏人さんは今、何を考えているのか。

レシート買い取りアプリが爆発的な注目を集めてから3カ月。17歳起業家が今、考えることとは。

「1日でサービスを停止してしまったことで、たくさんのご批判を頂きましたが、それは当然の批判です。自分たちの想定の甘さから、こうした状況を招いてしまったことに悔しさを感じますし、とても申し訳なく思っています。ただ、辛いとかダメージとは思わなかったです 」

ワンファイナンシャルがオフィスを構える、東京・六本木に山内さんを訪ねたのは、9月にしては肌寒い、雨の降る日の午後だった。東京ミッドタウンにほど近い、雑居ビルの一室で、山内さんはこの3カ月をそう振り返った。Twitterはじめネット上では、ONEの一時停止が長引くことに、当初、苦情や非難も飛び交った。

家には寝に帰る、怒涛の日々

ONEのサービスは、スマートフォンのカメラ機能でレシートを撮影すれば、アプリ内のウォレットに10円が振り込まれるというもの。いたってシンプルかつ「捨てていたレシートが現金になる」というインパクトで、ユーザー登録が殺到した。

はじめは、オフィスのパソコンで、登録者がどんどん増えていく様子を見守っていたという。その画面をスマホで撮影した写真を見せながら、山内さんはこう振り返る。

「僕がそれまで開発したプロダクトは、ユーザーが集まらないことが課題だったんです。ですから、はじめは1万人行くかなくらいに思っていました」

ただただ、サービスを一刻も早く再開したい一心だった。

しかしその後の展開は、想像をはるかに超えるものだった。

サービス開始翌日の13日朝の時点で、ONEのユーザー数は約10万人に到達。買い取りレシートは累計24万枚に達した。また、サービス開始初日で、iOSアプリ(iPhone向けアプリ)のダウンロード数で国内1位の記録を叩き出した。ただ、そのまま増えれば資金がショートすることは目に見えていたため、サービスは一時停止せざるを得なかった。

12歳からプログラマーとして活躍してきた山内さんとはいえ、ONEほど爆発的にユーザーが集まる体験は、未知の領域だった。

そこから「学校の休み時間に予定を調整して、放課後に会社に直行し、終電まで仕事してコンビニでご飯を買って、家には寝に帰る生活」が、続く。

ただただ、「一刻も早く再開したい一心で前進していた」。

爆発的な注目から広がるビジネス

レシート買い取りサービスの一時停止後も、ONEは新たな企業との提携や新サービスを矢継ぎ早に出している。

■主なサービス

  • 6月12日 レシートが現金になるアプリ「ONE」スタート
  • 6月18日 スマホで車を売れるアプリ「DMM AUTO」と提携し、ガソリンスタンドのレシートを30〜100円で買い取りスタート
  • 7月24日 保険証券を撮影すれば最大400円になるキャンペーン
  • 8月2日 ヘアケア商品を撮影すれば最大120円になるキャンペーン
  • 8月29日 かまぼこの鈴廣と提携し、かまぼこ・練り物製品の購入レシートを撮影すれば50円になるキャンペーン
  • 同 動物病院の診断明細書を撮影すれば150円
  • 9月6日 東大生限定で、学生証を撮影すれば最大200円
  • 9月10日 クラフトビールを購入したレシートを撮影すると最大50円がもらえるキャンペーンがスタート
  • 同 アプリ内で残高から、アイスクリームなど商品を購入できるチケットを販売。
  • 9月12日 どんなレシートでも10円買い取りを、1日あたりの上限額を決めて再開

何よりもまず、集まったレシートの買い取り資金を確保する必要があったため、企業から広告出稿として資金を調達。引き換えにONEで集まった統計データを企業に一部、提供するという事業モデルを打ち出したのだ。

スマートフォンには、ONEのダウンロード数が国内1位になった画面のキャプチャが残されている。

ONEが瞬時に爆発的な注目を集めたことで、事業が前進したのも事実だ。キリン、日本コカ・コーラなど、人気メーカーとの提携が相次ぎ、他にも業種をまたいだ数十社からの問い合わせがある。レシート買い取りサービスの完全復活を目指しつつも、売り上げは立つようになってきた。

それにしても、保険証券や学生証の撮影など、より踏み込んだ個人情報の撮影には、一瞬、躊躇(ちゅうちょ)してしまう。これに対し、山内さんの反応は明快だ。

「ふだん僕たちは、意識せずにFacebookやグーグルなどに膨大な情報を吸い取られています。それに対し、ONEでは本人が撮影してアップするかどうか決めるという、意思決定が明確にある。うっかり送る人はいない。本人確認も明確にやっています」

見られ方が圧倒的に変わってしまった

「さすがにちょっとTwitterやめようかなという気になっている」


10代の起業家にとってこの3カ月が、相当ハードな毎日だったことは間違いない。

対企業のビジネスも進み、レシート買い取り資金の準備ができつつあるならば、「本来のレシート買い取りはいつ再開するのか」という声は当然、ユーザーから寄せられた。

「当初は普通のレシート一枚10円といってましたが、再開しないんですか?レシート山盛りなのですが笑」


すでに現在、1日あたりの買い取り上限枚数を設けてサービスを再開しているが、一瞬で上限に達してしまうという課題もある。

「え!もうおわったん??」


これに対し山内さんは「1日に一度、深夜0時だけの更新ではなく、日に何度か更新するなど、改善に向けて試行錯誤を繰り返しています」と説明する。

ネット上の反響は 「厳しいご意見も、使ってもらえた上でいただけたのですから、ありがたいと思っています。チームで全力を尽くすのみです」 (山内さん)。

それよりこたえたのは、リアルな対人関係で「自分の見られ方が圧倒的に変わってしまったと感じたこと」だという。

「テレビにも出たりしたので、初対面の人にも『ああ、あの子ね』と言われるようになって。お金持っているんでしょうとか、過激な起業家キャラみたいに決めつけられるのには、戸惑いました」

急激な周囲の反応の変化に「ついていけない」と感じた。

こうした状況に「ついていけない」という気持ちに襲われ、心身ともに不安定な時期が続いた。

そういう時に「中学から一緒の学校の友達や、家族が全く変わらずにいてくれたことは、大きかった」という。

それは、これまでのキャリアを見つめ直すきっかけにもなっている。

「ずっと大人に交じって仕事やキャリアを優先してきたけれど、学校で部活をやったりとか、身近な人との時間を過ごしたりという時間と、トレードオフだったなと」

この3カ月で、家族や友達と過ごす時間を意識的に長く深くとるようになった。以前は土日も1日中働いていたが、今は、必ずどこかで休息をとるようにしている。

そして今、一連の事態を振り返って思うことはこうだ。

「ものすごく重要な3カ月だったと思っています。僕はこれまで、10代という年齢で注目されてアドバンテージを得ていたところがある。今回の経験は、成長痛というか(企業としても経営者としても)ようやく本来あるべき姿になったと思っています」

コンビニ弁当食べてる人に笑ってほしい

周囲の人を笑顔にしたいという気持ちが、ビジネスの原点だ。

17歳の山内さんも、高校生活の終わりへのカウントダウンが始まっている。周囲は受験や進学で持ちきりだ。

「みんなを驚かせたい、日常を非日常に変えるようなプロダクトを生み出したいと常に思っている。ドラえもんの道具のような。そういう会社を人生をかけてやっていくと思います」

それとは別に、視野に入れている大学進学では「(これまで追求してきた)テクノロジーとデザイン以外のことをやってみたい」というのが、今の気持ちだという。

「街づくりに興味があります。建築や哲学、思想など新たな分野を学んでみたい。そこにテクノロジー&デザインを掛け合わせてみたい」

ONEの発表からの激動の3カ月を経て、今の思考はよりシンプルで柔らかだ。

「ONEのレシート買い取りの原点は、コンビニ弁当を食べている友達が、笑ってくれたらいいなということなんです」

山内さんが通う、都内の進学校の同級生たちは、親も共働きが多く、給食も学食もない。コンビニで昼食を調達している友人も多く、皆、 屈託なく食べている。

「今の社会は便利だけど、ちょっと味気ないなという気持ちもあって。そういう世界に、遊び心やエンタメ性を加えたいと。そうやって笑っている人が周囲に多い方が、楽しいじゃないですか」

(文・滝川麻衣子、写真・今村拓馬)

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アメリカ人富裕層が求める「スーパー乳母」の高すぎる条件

マンハッタン在住のある父親はニューヨーク・ポストに対し、子どもの乳母に週に2度、90分間のマッサージをしてもらっていると語った。
Shutter stock

  • ニューヨーカーはもはや子どもに中国語といった外国語を教えてくれる乳母(nannies)では満足できないようだ。
  • ニューヨーク・ポストの記事によると、一部富裕層の親は自身のためにヘアメイクやマッサージ、ヨガ教室ができる、プライベート・アイスリンクの製氷車まで運転できる乳母を求めている。
  • ある家事代行サービス会社の社長は同紙に対し、こうした家庭では通常の1時間20ドル(約2300円)の料金に10ドルを上乗せしているという。ニューヨーク市の乳母の中には、年収18万5000ドル(約2100万円)という強者もいる。

富裕層の親はつい最近まで、中国語といった外国語を子どもに教えることができ、キノアが料理できる乳母を求めていた。

しかし今、こうした親たちはさらに上を行く乳母を求めて、より高い料金を払っている。

ニューヨーク・ポストの記事によると、彼らは夫婦のためのマッサージやヘアメイク、家族全員のヨガ教室、スケートリンクの製氷車の運転まで、さまざまなタスクがこなせる乳母を求めている。

「富裕層の家庭には、ある共通した"ものの見方"があります」

マンハッタンにある家事代行サービス会社パビリオン・エージェンシー(Pavillion Agency)のバイス・プレジデント、セス・ノーマン・グリーンバーグ(Seth Norman Greenberg)氏はニューヨーク・ポストに語った。

「彼らは候補者の面接をしているうちに、自分たちの基本的なニーズ以上のものをもっと手に入れられるのではないかと考えるようになったのです」

マンハッタン在住のある父親はニューヨーク・ポストに対し、子どもたちの乳母に週に2度、マッサージをしてもらっていると語った。

コネチカット州グリニッジ在住の4人の子どもを持つある母親は、2人の息子と2人の娘にそれぞれ1人ずつ乳母をつけていて、娘たちの乳母に子どもの面倒とヘアメイクをしてもらっているのに加え、毎日、自身のヘアメイクもしてもらっているという。

これらの追加サービスに対し、こうした家庭は通常の1時間20ドルの料金に10ドルを上乗せしていると、家事代行サービス会社アビゲイル・マディソン(Abigail Madison)の社長エリン・マロニー・ウィンダー(Erin Maloney-Winder)氏はニューヨーク・ポストに語った。しかし、ニューヨーク市や高級住宅地のハンプトンズ、フロリダ州パームビーチで富裕層の自宅やオフィスの採用活動を手伝っているハイヤー・ソサエティー(Hire Society)のCEOデビッド・ユドビン(David Youdovin)氏によると、ニューヨーク市では、富裕層向けの乳母はもっと稼ぐことができるといい、その年収は最高で18万5000ドルにものぼる。

富裕層の家庭が依頼するサービスの中には、一般的な家事の範疇を大幅に超えるものもある。

グリーンバーグ氏は、プライベート・アイスリンクを整備してもらいたいというニュージャージー州の家庭のために、製氷車を運転できる乳母を探したと言う。

同氏はまた、中西部に住む別の家庭から、クマを威嚇するために空砲が撃てる「ニューヨークの敏腕乳母」を見つけてほしいとの依頼を受けたが、これは要求が高すぎたと言う。

こうした、いわゆる「スーパーナニー(super nannies)」の台頭は、一部の人々が少しの時間の余裕、ぜいたく、プライバシーのためなら、もっと多くのお金を払う意思があることを示している。

ニューヨーク市にある昼寝のできるラウンジでは、利用者は暗い、プライベート・ポッドで好きな時間に昼寝をするために、月に最大250ドル(約2万8000円)を払っている。

ミラー(Mirror)という会社では、自宅にいながらワークアウトのクラスをライブ・ストリーミングできるインタラクティブ・ミラーを1500ドル(約16万9000円)で販売している。

そして、理論上でのみキャンプが好きな人々は、1泊700ドル(約7万9000円)で1500スレッドカウントの高級リネンや電気、Wi-Fiを完備した豪華なテントで「グランピング」を楽しむこともできる。

[原文:Forget teaching 2nd languages — wealthy New Yorkers now want their kids' nannies to do their hair, drive Zambonis, and give them massages]

(翻訳、編集:山口佳美)

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cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_1cb89979f1dd_マンハッタンの2倍、世界最大の洋上風力発電所が稼働 1cb89979f1dd 0

マンハッタンの2倍、世界最大の洋上風力発電所が稼働

世界最大の洋上風力発電所、ウォルニー・エクステンション
Ørsted UK

世界最大の風力発電所が完成、稼働した。

9月6日(現地時間)、イングランド北部とマン島の間のアイリッシュ海の上で、659メガワットの発電能力を持つ「ウォルニー・エクステンション(Walney Extension)」が稼働した。50万戸以上に電力を供給できる。

高さ190メートルを超えるタービンが87基、面積はサンフランシスコよりも大きく、稼働している風力発電所としては世界最大となる(風速は地面から離れるほど速くなる傾向があり、一般的にタービンは高さが高いほど風を利用しやすくなる)。

このプロジェクトは、クリーンな再生可能エネルギーを作り出す方法として、洋上風力発電所への投資を進めるという大きなトレンドに沿うもの。

アメリカでは初の洋上風力発電所は2016年に完成、発電量は30メガワット、ロードアイランドの沖合30マイル(約48キロメートル)にある。最近のレポートによると、アメリカでは2026年までに洋上風力発電所が生み出す電力は2.3ギガワットに達すると見られている。アメリカの世帯、100万戸以上の電力を賄うのに十分な発電量となる。

一方、ヨーロッパでは、30ギガワット規模の発電所の建設が提案されている。2027年までに、オランダ、ノルウェー、イギリスの間の海上に人工島も含めて建設される予定。ウォルニー・エクステンションの世界最大という記録は、長くは持たないだろう。

しかし現時点では、ウォルニー・エクステンションはトップに君臨している。見てみよう。

ウォルニー・エクステンションは、イングランド西海岸沖のアイリッシュ海にあり、87基のタービンが並ぶ。59万戸以上に電力を供給できる。

Ørsted UK


タービンはイングランドのウォルニー島から12マイル(約20キロメートル)も離れていない海の上に設置されている。

Google Maps


広さは56平方マイル(約145平方キロメートル)。マンハッタン島やサンフランシスコよりも広い(サッカー場約2万個に相当する)。


変電所が2つ。2017年8月に発電を開始したが、建設は2018年6月まで続いた。

Ørsted UK

出展 : Orsted

ブレードが1回転するだけで、1世帯が1日に必要とする以上の電力を供給できるとOrstedは述べた。

Ørsted UK

ウォルニー・エクステンションは、他の洋上風力発電所を発電量、規模ともに圧倒している。世界第2位の洋上風力発電所はLondon Array。イギリス南東沖にある。ウォルニー・エクステンションはそれよりも9平方マイル(約23平方キロメートル)大きく、発電量は29メガワット上回る。

London Array。
London Array

世界最大の風力発電所は、中国にある。


洋上発電は安価ではない。キロワット時あたり約20セントのコストがかかる。だが、2022年までに10セントとなると予測されている。それでも陸地での風力発電の約3倍。

Ørsted UK

風力発電などの再生可能エネルギーの価格が下がり続ければ、世界のより多くの人々が電力に依存するようになると予測されている。2050年までに、風力や太陽光といったエネルギー源が、世界の半分近くの電力需要を満たすと期待されている。


出展 : International Renewable Energy Agency, Business Insider, US Department of the Interior

[原文:The world's largest wind farm was just completed in the Irish Sea — and it's more than twice the size of Manhattan]

(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)

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cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_26fef7048b8e_新型iPhone XSではなく、iPhone 8を買うべき6つの理由 26fef7048b8e 0

新型iPhone XSではなく、iPhone 8を買うべき6つの理由

2018年9月25日 10:45 Hollis Johnson/Business Insider

アップルから新しいiPhoneが登場、しかし、まだまだ愛すべき旧モデルがある ── しかも依然よりも手頃な価格になっている 。

新しいiPhone XS、XS Max、そしてXRが発表した後、アップルは旧モデルの価格を下げた。最も高価な新モデルは1100ドルを超えているが、iPhone 8などの旧モデルは600ドルで手に入れることができる。

iPhone 8を愛すべき理由は価格だけではない。デザインもスペックもまだ、新モデルに引けをとらない。

iPhone XSではなく、iPhone 8を買うべき6つの理由を見てみよう。

その1. 400ドル安い。

Hollis Johnson/Business Insider

最新スペックの、手頃なスマートフォンを探しているなら、iPhone 8は手堅い選択。価格は599ドルから(日本では、税別6万7800円から)。

もちろんストレージ容量の大きなものを選べば、価格は上がる。256GBモデルは749ドル(日本では、税別8万4800円)。

とはいえ、新しいiPhone XSよりも手頃。XSの価格は999ドル(日本では、税別11万2800円)から。


その2. 軽くて、薄い。

Justin Sullivan/Getty Images

誰もが最も軽くて、薄いスマートフォンを求めているわけではないが、もし、あなたの優先順位がそこにあるなら、iPhone 8はベストな選択。

iPhone 8

・重さ:148グラム

・厚さ:7.3ミリ

iPhone XS

・重さ:177グラム

・厚さ:7.7ミリ


その3. XSと同じく、耐水性能、ワイヤレス充電機能を備える。

Justin Sullivan/Getty Images

新しいiPhone XSと同様、iPhone 8もワイヤレス充電に対応。水深1メートルで最大30分間の耐水性能を持っている。

ただし、耐水性能については、iPhone XSはiPhone 8より進化した。水深2メートルで最大30分間の耐水性能を持っている。


その4. ホームボタンと指紋認証機能を持つ。

Jack Taylor/Getty Images

アップルの最新機能ではなくなったが、スマートフォンをアンロックするための指紋認証機能を持ったホームボタンは使い勝手が良い。

アップルはiPhone Xでホームボタンと指紋認証機能を廃止し、Face IDによる顔認証機能を採用。iPhone XSもFace IDを採用している。


その5. カメラも、iPhone XSとほぼ同じ。

Justin Sullivan/Getty Images

iiPhone XSの高性能なカメラと比べれば、iPhone 8のカメラはやや劣る。ホートレートモードとポートレート・ライティングを備えていないし、アニ文字とミー文字も未対応、2倍の光学ズームもない。

とはいえ、iPhone 8のカメラはまだまだ素晴らしいものだ。フロントカメラはiPhone XSとほぼ同じスペック。解像度は7メガピクセル、絞り値はf/2.2、1080p HDビデオ撮影が可能。

リアカメラも、12メガピクセルの解像度、f/1.8の絞り値はiPhone XSの広角カメラと同じ。また広色域キャプチャ、クアッドLED True Toneフラッシュとスローシンクロ、4Kビデオ撮影が可能な点も同じだ。


その6. iPhone XSと同じiOS 12が使える。

Justin Sullivan/Getty Images

iPhone 5S以降なら、最新のiOS 12が使える。つまり、iPhone 8はiPhone XSと同じ最新OSが使える。

iOS 12は、旧モデルの動作速度の向上、通知機能の強化、新しいARアプリなど、大幅なアップデートが行われたと伝えられている。

[原文:6 reasons you should buy the iPhone 8 over the new iPhone XS (AAPL)]

(翻訳、編集:増田隆幸)

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cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_5be6194d5146_月約11万円、黒人シングルマザーに注力した初の実験が開始 5be6194d5146 0

月約11万円、黒人シングルマザーに注力した初の実験が開始

2018年9月25日 10:30 Springboard to Opportunities
  • ミシシッピ州の州都ジャクソンで2018年12月、ベーシックインカムのパイロットプログラムが始まる。黒人シングルマザー15人に月1000ドルを支給する。
  • プログラムの責任者、アイシャ・ニャンドロ氏によると、期間は1年。ベーシックインカムが対象者に与えた影響を研究者が分析する。
  • 「マグノリア・マザーズ・トラスト」と名付けられたパイロットプログラムには、リーダーシップに関するトレーニングやソーシャルワーカーとの面談も含まれる。
  • 同トラストは、慈善事業ネットワーク「Economic Security Project」から支援を受ける。同ネットワークは、カリフォルニア州ストックトンで行われる別のベーシックインカム実験にも100万ドルを拠出した。

ミシシッピ州の州都ジャクソンでベーシックインカムのパイロットプログラムが始まる。黒人シングルマザー15人に、1年間にわたって月1000ドル(約11万円)が支給される。

ここ数年、北米、ヨーロッパ、アフリカでは少なくとも6件の主要なベーシックインカム実験が進められた。今回、ミシシッピで行われる「マグノリア・マザーズ・トラスト(Magnolia Mother's Trust)」と名付けられたプログラムは、低所得の黒人女性に注力した初めてのベーシックインカム実験となる。

ミシシッピ州はアメリカでも最も貧しい州として知られ、州都ジャクソンは住民のうちの80%以上を黒人が占める。アメリカ全体で見たときに、黒人女性は他のどの社会的グループよりも、貧困率が最も高くなっている。

マグノリア・マザーズ・トラストは12月開始予定、慈善事業ネットワーク「Economic Security Project」から支援を受けた。同ネットワークの共同会長は、フェイスブックの共同創業者の1人、クリス・ヒューズ(Chris Hughes)氏と、シェアリングエコノミーで働く人々の支援団体「Peers.org」の共同創設者、ナタリー・フォスター(Natalie Foster)氏らが務めている。

今回のプログラムを統括するのは、低所得者向け住宅に住む家族を支援する「Springboard To Opportunities」のCEO、アイシャ・ニャンドロ(Aisha Nyandoro)氏。

ニャンドロ氏は、支給対象を15人よりも多くしたかったが、プログラム開始前に資金を確保する必要があり、それは困難だったとBusiness Insiderに語った。

マグノリア・マザーズ・トラストは、ベーシックインカムに関する広範な調査研究にも参画している。ニャンドロ氏は、今回のパイロットプログラムがきっかけとなって、今後行われるプロジェクトに、より多くの資金が集まることを期待していると語った。

同氏は最終的に、100世帯を対象に3年間のプログラムを行いたいと考えている。

Springboard to Opportunities

ジャクソンでの実験を進める中で、Springboard To Opportunitiesはベーシックインカムが対象者の暮らしを変えるのか、地域社会への関わりが深まるのかを検証するとニャンドロ氏は語った。

加えて同団体は、対象となるシングルマザーに向けて、互いに交流する機会やリーダーシップに関するトレーニングを受ける機会を月1回設ける予定。ソーシャルワーカーによる面談もある。

「特にこうした低所得コミュニティーでは、トラウマとなるような事件や出来事が起こり、家族が対応を強いられるケースが多いことが判明している。不幸なことだが」とニャンドロ氏は語った。

ジャクソンのプログラムは、世界中で増えているベーシックインカム実験に続くもの。だが、実験の中には最近になってさまざまな理由で、延期や中止に追い込まれたものもある。

シリコンバレーの最大規模のスタートアップ・アクセラレーター、Y Combinatorは、カリフォルニア州オークランドでのパイロットプログラムの後、より大規模な実験を行う予定だったが延期した。その一因には、実験参加者がすでに受け取っている補助などを失うことがないよう、万全を期す必要があったことがある。

2018年7月には、カナダのオンタリオ州政府が4000人を対象に3年の予定で行われていた実験の終了を決定。地元紙トロント・スターは8月末、実験は予定を1年以上短縮し、2019年3月で終了すると伝えた。開始からわずか1年で打ち切りが発表されたことに、住民たちは衝撃を受け、激怒した。

Economic Security Projectの共同会長を務めるフォスター氏は、オンタリオ州の実験が州トップの交代によって終了したことに失望したとBusiness Insiderの取材に語った。

「パイロットプログラムの参加者に対する約束を守れるよう、万全を期すことが最も重要」とフォスター氏。

「Economic Security Projectは関わっているあらゆるプロジェクトで約束を守るよう万全を期している。それが我々の役割」

Economic Security Projectはまた、2019年にカリフォルニア州ストックトンで開始予定の、1年半、100人を対象にしたベーシックインカム実験にも100万ドルを拠出した。

フォスター氏によると、これらの実験はそれぞれ異なっているが、Springboard To Opportunitiesは低所得者支援の経験が豊富であり、ベーシックインカムのパイロットプログラムを運営するための「完璧な条件が整っている」。

Springboard to Opportunities

連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board:FRB)の2018年5月のレポートによると、400ドル(約4万4000円)の予期せぬ出費に対応できないと答えた人は40%にのぼった。また、シンクタンクのルーズベルト・インスティチュート(Roosevelt Institute)の2017年のレポートは、ベーシックインカムはアメリカ経済を刺激すると記した。

フォスター氏は、マグノリア・マザーズ・トラストや他の実験が良い結果を出せば、より多くの都市が独自のベーシックインカム実験を開始するだろうと語った。

「アイシャはジャクソンで、シングルマザーが多少の余裕を持つことができたら、何が起きるかを示してくれるだろう。ようやくユニフォームが買えるようになり、子どもがサッカーを始められるかもしれない。あるいは、3つめの仕事をかけ持ちする必要がなくなって、家族と過ごす時間が少しでも増えるかもしれない」とフォスター氏。

「こうしたストーリーがジャクソンから生まれることを大いに期待している」

ニャンドロ氏は、自身も含めベーシックインカム推進者は互いに学び合っていると語った。同氏によると、パイロットプログラムの運営は、飛行機を組み立てながら飛ばしているようなもの。

ニャンドロ氏は、ジャクソンのベーシックインカム実験は開始前に必要な資金を確保したので、参加者は途中で打ち切られることを心配する必要はないと語った。

[原文:A basic income pilot in Mississippi will provide 15 black mothers with $1,000 for free every month, and it could lead to a much bigger experiment]

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:増田隆幸)

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cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_9f1f9857da2b_幹部流出が止まらないテスラ、主要人物の辞任とその後 9f1f9857da2b 0

幹部流出が止まらないテスラ、主要人物の辞任とその後

2018年9月25日 05:45 Lucy Nicholson / Reuters
  • 幹部の入れ替わりが激しいテスラ(Tesla)だが、2018年も例外ではない。
  • 生産面での課題に加え、財政の健全性に対する懸念や証券取引委員会(SEC)が調査に乗り出したとの報道、CEOであるイーロン・マスク氏の意思決定に対する疑問、相次ぐ上級社員の退職は、"テスラは不安定"との印象を強めるばかりだ。
  • 9月だけですでに4人の上級社員がテスラを後にしている。

テスラでは幹部の辞職が相次いでいる。

会社が生産面での課題に直面する中、財政の健全性に対する懸念やSECが調査に乗り出したとの報道、CEOであるイーロン・マスク氏の意思決定に対する疑問、相次ぐ上級社員の退職は、"テスラは不安定"との印象を強めるばかりだ。

9月だけでも、人事責任者のガブリエル・トレダノ(Gabrielle Toledano)氏、最高会計責任者(CAO)のデイブ・モートン(Dave Morton)氏、コミュニケーション責任者のサラ・オブライエン(Sarah O'Brien)氏(ブルームバーグによると、同氏の辞任は8月に発表されていたが、最終日は9月7日だった)、グローバル・サプライ・マネジメント担当バイス・プレジデントのリアム・オコナー(Liem O'Connor)氏(ブルームバーグが同氏の辞任を報じているが、テスラはBusiness Insiderに対し、これをまだ認めていない)と、すでに4人の上級社員が会社を去った。

2018年にテスラを離れた上級社員は、以下のとおり(転職先は本人のリンクトインのページもしくは会社の発表による)。

  • 1月 —— 製造エンジニアリング・ディレクター、ジェイソン・メンデス(Jason Mendez)氏:リンクトイン・ページで次の仕事についての言及なし
  • 1月 —— 設備エンジニアリング・マネジャー、ウィル・マコール(Will McColl)氏:WaveForm Designを創業
  • 2月 —— グローバル・セールス&サービス担当プレジデント、ジョン・マクニール(Jon McNeill)氏:リフト(Lyft)のCOOに就任
  • 3月 —— 最高会計責任者(CAO)、エリック・ブランデリッツ(Eric Branderiz)氏:エンフェーズ・エナジー(Enphase Energy)のCFOに就任
  • 3月 —— 財務担当副社長、スーザン・レポ(Susan Repo)氏:トピア(Topia)のCFOに就任(同氏のリンクトイン・ページによると、トピアを6月に去っている)
  • 4月 —— オートパイロット・ハードウエア・エンジニアリング責任者、ジム・ケラー(Jim Keller)氏:インテル(Interl)のシリコン・エンジニアリング責任者に就任
  • 4月 —— 西ヨーロッパオペレーション・ディレクター、ジョージ・エル(Georg Ell)氏:スムースウォール(Smoothwall)のCEOに就任
  • 5月 —— フィールド・パフォーマンス・エンジニアリング・ディレクター、マシュー・シュウォール(Matthew Schwall)氏:ウェイモ(Waymo)のフィールド・セーフティーの責任者に就任
  • 7月 —— リテール・デリバリー・マーケティング担当のバイス・プレジデント、ガネシュ・スリバツ(Ganesh Srivats)氏:Moda OperandiのCEOに就任
  • 9月 —— コミュニケーション担当のバイス・プレジデント、サラ・オブライエン氏:リンクトイン・ページに次の仕事についての言及なし
  • 9月 —— チーフ・ピープル・オフィサー、ガブリエル・トレダノ氏:リンクトイン・ページに次の仕事についての言及なし
  • 9月 —— CAO、デイブ・モートン氏:アナプラン(Anaplan)のCFOに就任
  • 9月 —— グローバル・サプライ・マネジメント担当のバイス・プレジデント、リアム・オコナー氏:リンクトイン・ページに次の仕事についての言及なし
  • 10月 —— ワールドワイド・ファイナス・アンド・オペレーション担当のバイス・プレジデント、ジャスティン・マカニアー(Justin McAnear)氏:10月7日に辞任予定、リンクトイン・ページに次の仕事についての言及なし

[原文:Another Tesla executive has reportedly left the company. Here are all the key names who have departed this year. (TSLA)]

(翻訳、編集:山口佳美)

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Amazon、偽ダンボールで配送ドライバーに罠を仕掛ける理由

2018年9月25日 05:30 Paul Sakuma/AP Photos
  • アマゾンは、配送トラックに偽ラベルを貼った空の荷物を仕掛けていると情報提供者はBusiness Insiderに語った。
  • もし、ドライバーが偽の荷物をアマゾンの配送センターに戻さなければ、ドライバーには盗みの疑いがかけられる。
  • 「これは、いわば罠。ドライバーの正直さをチェックすることが目的」とアマゾンの元ロジスティクス・マネージャーはBusiness Insiderに語った。

アマゾンは盗みを働いている配送ドライバーを捕まるために、偽の荷物を使っているとこの件を良く知る情報提供者は語った。

アマゾンは、同社内で「ダミー」パッケージと呼ばれる荷物をランダムに配送トラックに仕掛けている。ダミーパッケージには、偽ラベルが貼られ、しばしば中身は空。

重さを持たせるために「何かを入れておくこともある」と同社の元ロジスティクス・マネージャーはBusiness Insiderに語った。この人物は、会社からの報復を恐れて匿名を希望し、シアトルにあるアマゾン本社からこの施策の指示が届いたと語った。

「これは、いわば罠。ドライバーの正直さをチェックすることが目的」と同氏。

この件についてアマゾンは、「確認と監査は全体的な品質管理プログラムの一環で、ランダムに実施している」と述べた。

関係者によると、以下のような手順で行われる。

配達中、ドライバーは自分が運ぶパッケージのラベルをすべてスキャンする。ダミーパッケージの偽ラベルをスキャンすると、エラーメッセージが表示される。

この場合、ドライバーはこの問題を上司に電話して報告するか、あるいは、ダミーパッケージを積んだまま戻り、勤務時間の最後にアマゾンの配送センターに戻す。

しかし、ドライバーは仕組み上、ダミーパッケージを盗むこともできる。エラーメッセージは、アマゾンのシステム上でパッケージが検知されていないことを意味する。つまり、パッケージが行方不明になっても、気づかれない可能性がある。

「パッケージを戻せば、無実。戻さなければ、悪人」とアマゾンの荷物の配送を請け負うDeliverOLの元マネージャー、シド・シャー(Sid Shah)氏は語った。

ダミーパッケージはあくまでも、盗難問題に対するアマゾンの施策の1つに過ぎない。この問題は同社をはじめ、すべての小売業者にとって大きな悩みの種となっている。

全米小売業協会(National Retail Federation)によると、シュリンケージ(盗難、エラー、不正による商品ロスを表す業界用語)の被害額は2017年、470億ドル(約5兆3000億円)近くにのぼった。

アマゾンは最近、ユーザーの車や自宅の中まで荷物を届けるサービスを開始した。どちらのサービスも配達の選択肢を増やしてユーザーの利便性を向上させることと同様に、盗難率を減らすことが目的。

また、2016年のブルームバーグの報道によると、同社は商品の盗難を未然に防ぐために、配送センターの作業員に、同僚が盗みで捕まる瞬間の動画を見せている。

アマゾンは毎年、どれくらいの荷物が盗まれているかを明らかにしていない。2017年、同社が世界中のプライム会員に配送した荷物の数は50億個を超える。

梱包会社Shorrが2017年に行った調査では、31%の回答者が荷物を盗んだことがあると回答した。

アマゾンの元ロジスティクス・マネージャーによると、「ダミー」パッケージを使った罠は、窃盗犯を捕まえる効果があった。

「我々は、誠実ではない人たちを捕まえた」と同氏は語った。

[原文:Amazon plants fake packages in delivery trucks as part of an undercover ploy to 'trap' drivers who are stealing]

(翻訳:Yuta Machida、編集:増田隆幸)

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"平和条約"発言の真意。領土返還という自縛に陥る安倍外交

プーチン・ロシア大統領の、「前提条件なしに年末までに日ロ平和条約を締結しよう」という発言が波紋を広げている。事実上の「領土棚上げ」発言だが、日本政府は抗議もせず、「ちゃぶ台返しではない」と、否定するのに精いっぱいだ。

だがロシア内政、外交、安全保障をレビューすれば、「領土は返還しない」というメッセージは明らかだ。経済協力をすれば領土が戻る、とい返還への期待を高め、期待が世論で大きくなればなるほど、妥協は許されない「落とし穴」にはまる。「自縄自縛」の安倍外交の典型。結局そのツケは誰が払うのだろう。

2日前の協議を無視された

プーチン大統領は、9月10日の安倍首相の発言を無視する形で、無条件での平和条約締結を日本に求めた。
Alexander Ryumin/TASS Host Photo Agency/Pool via REUTERS

プーチン発言は、極東ウラジオストクでの東方経済フォーラムの全体会合(9月12日)で飛び出した。横にはフォーラム初参加の習近平・中国国家主席が座り、大勢の参加者を前にした発言である。安倍首相はフォーラムに先立つ日ロ首脳会談後の記者会見(10日)で、「我々の新しいアプローチは、日ロ協力の姿を確実に変化させている。双方の法的立場を害さず、できることから実現する先に平和条約がある」と述べたばかりだった。

安倍首相はその唐突な発言を聞きながら苦笑いを浮かべるだけで、その場で一切反論しなかった。この対応に立憲民主党の枝野幸男代表からは「言うべきことを言わず、国益に反する」、自民党総裁選で安倍首相と戦った石破茂元幹事長からも「経済協力で領土が帰ってくると思ったことは一度もない。信頼関係とかいう話でそんなことが本当にあるのか」(「毎日新聞」9月16日)と、「新アプローチ」自体に疑問を投げかけるのだった。

逆風を受け首相は、発言後プーチン氏に直接「領土問題を解決し、平和条約を締結する」という基本方針を「改めて伝えた」と弁解したが、総裁選最中の「失点」を恐れる首相の狼狽ぶり。しかしロシア大統領報道官は、「実際に安倍氏本人からの反応はなかった」と否定する始末だった。

進まない「新アプローチ」

2016年12月に日本で行われた日ロ首脳会談のポスター。この会談で、北方4島において日ロで共同して経済活動を行うことが合意された。
REUTERS/Toru Hanai

プーチン氏の真意については見方が割れる。

「ちゃぶ台返し」を否定する東郷和彦・京都産業大教授は「2人の間で平和条約を締結しようという強い意欲を示したもの」「根本から覆す意図を読み取るのは適切ではない」(共同通信インタビュー「平和条約締結への意欲表明」)とみる。東郷氏はエリツィン時代に日ロ外交を取り仕切った元外務官僚である。しかし、東郷説は少数意見だ。

「新アプローチ」を振り返る。安倍・プーチン両氏は2016年12月の山口県での首脳会談で、日ロが北方四島で「共同経済活動」を実現し、それを「平和条約締結への重要な一歩」につなげることで合意した。それをテコに領土返還を実現するというのが日本側の目論見である。

しかし、合意した3000憶円規模の経済協力は思うように進まない。「共同経済活動」についても、日本の主権を害さない形で活動できる「特別制度」を提案した日本に対し、ロシアは自国の法制度下での活動を主張し、双方のミゾは埋まってない。

内政・外交上で返還誘因はない

クリミア半島のセバストポリにて、海軍の日のパレードのリハーサルを行うロシア軍(2018年7月26日)。「強いロシア」を演出すべく、クリミア割譲をめぐり欧米諸国と鋭く対立している。
REUTERS/Pavel Rebrov

「新アプローチ」の不調に加え、ロシアが置かれた内政・外交・安全保障をみれば、「領土返還」への本気度がうかがえる。まず内政。高い支持率を維持してきた大統領だが、ロシア政府が6月に年金受給年齢、公共料金、消費税率の引き上げ案を発表すると、支持率は一気に20%も急落した。発言のタイミングについて外務省関係者は「強いロシアを演出し、求心力を回復する思惑」を指摘する。

外交でも「強いロシア」を演出しなければならない。クリミア割譲をめぐり西側の制裁を受け、シリア問題でも欧米と鋭く対立している。プーチン氏にとって、対日関係改善の主要な狙いは、主要先進7カ国(G7)の一角を崩し経済的利益を得るためだった。領土を返還せずに平和条約を結べば、間違いなく株は上がる。

ロシア人の約9割が返還に反対という世論調査結果をみれば、領土での妥協は何の得点にもならない。プーチン氏も全体会合の最後に「領土問題は政治的、心理的に困難で敏感な問題」と改めて発言した。

返還すれば米軍基地を危惧

沖縄県の嘉手納基地。ロシアは北方四島を返還した後、そこに米軍基地ができることを危惧している。
EQRoy / Shutterstock.com

安全保障はさらにやっかいだ。ロシア側は2016年、歯舞・色丹2島の日本引き渡しについて、日本に施政権が移れば日米安保条約第5条の適応対象となり、2島に米軍基地ができるとの懸念を表明した。日ロ関係とは安保上は米ロ関係なのだ。

プーチン氏自身、山口での首脳会談で日米安保条約の存在や、ウラジオストクを基地にするロシア艦船が太平洋に出るルート確保の必要性を強調した。「太平洋に出る経路」とは、国後島と択捉島の間にある「国後水道」。ロシアは、オホーツク海に原子力潜水艦を展開させ、アメリカの核攻撃に反撃できる体制を取る。その原潜の「通り道」が国後水道なのだ。

日ロ交渉について、最悪でも歯舞と色丹の2島は戻るとみる向きが多いと思う。しかし、色丹には約2000人のロシア人が居住しており、引き渡しは簡単ではない。フォーラムが開かれた日、ロシア軍は冷戦終結後最大規模となる軍事演習「ボストーク(東方)20181」を開始し、中国軍が初参加した。

期待あおり、「落とし穴」に

ロシアと中国は経済的結びつきが強いため、日本が狙う「対中抑止」実現は現実的ではない(写真は東方経済フォーラムでパンケーキを焼くプーチン大統領と習近平国家主席。2018年9月11日)。
Sergei Bobylev/TASS Host Photo Agency/Pool via REUTERS

さまざま角度からロシアの置かれた状況を見れば、プーチン氏が今、領土返還に応じる誘因はほぼゼロに等しい。にもかかわらず、安倍首相がプーチン氏と22回も首脳会談を重ねてきた大きな理由の一つは、対ロ関係改善による「対中抑止」だった。

しかし、時代錯誤の「対中抑止」戦略は、対ロ外交でも成果は出ていない。中ロ関係は、貿易額で日ロの4倍に達する。ロシアには、「中国が経済的にロシアを飲み込む」などの懸念はあるものの、トランプ政権に対抗する上で、中国との共通利益は大きい。対中関係と比べれば、日本の比重は落ちる一方なのだ。

安倍首相はこれまで、領土返還の期待感をあおってきたが、「ないものねだり」であろう。返還への期待が世論で大きくなればなるほど、妥協できない落とし穴に自らはまってしまう。北朝鮮外交でも「拉致被害者の全員即時帰国」という高ハードルを設ける同じパターンを踏んでいる。

対ロ、対北外交の成果は全く出ていない。


岡田充(おかだ・たかし):共同通信客員論説委員、桜美林大非常勤講師。共同通信時代、香港、モスクワ、台北各支局長などを歴任。「21世紀中国総研」で「海峡両岸論」を連載中。

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止まらぬ「巨額流出」、日本の仮想通貨業界は長い停滞へ?

Shutterstock

仮想通貨業界の関係者の間では、深い虚脱感がただよっている。

2018年夏以降、業界の「再浮上」を目指す動きが加速していた矢先に、取引所Zaifから70億円相当の仮想通貨が抜き取られたからだ。

ある取引所の幹部は「Zaifの事案をきっかけに、さらに停滞が続けば、日本は世界から完全に取り残される」と話す。

流出事案に対する、関係者たちの危機感は強い。

日本の「仮想通貨」をめぐる2度の停滞

10年ほどの仮想通貨の短い歴史において、日本の業界は2度の停滞期を経験している。

2013年3月、地中海に浮かぶ小さな島国キプロスで、金融危機が起きた。銀行の預金が封鎖されたのをきっかけに、既存の金融機関から逃避した資金がビットコインに流れ込み、価格が一気に上昇した。

日本で、早い時期からビットコインの取り引きをしていた人たちに話を聞くと、この時期に初めてビットコインを買った人が多い。

しかし、翌2014年2月、東京に拠点を起き、当時は世界最大級の取引量となっていたマウントゴックスが経営破たんし、一度目の停滞期に入った。同社の破たんは、繰り返しハッキングを受け、ビットコインを抜き取られたことが主な要因だった。

停滞に至る流れを、おおざっぱに整理すると次のようになるだろう。

  • 価格上昇
  • ハッキング
  • 停滞

2017年から2018年にかけて、このサイクルは再び繰り返される。

2017年の秋ごろからビットコインをはじめとした主要な仮想通貨の価格が高騰し、日本でも多くの人が仮想通貨の取引にのめりこんだ。スタートアップ企業がひしめいていた仮想通貨業界は、一気に規模を膨張させた。

しかし、2018年1月末、取引所コインチェックがハッキングを受け、580億円相当の仮想通貨が奪われた。

金融庁と業界が取り組んだ「後ろ向き」の作業

撮影:今村拓馬

以後、金融庁と仮想通貨業界は、半年間にわたって「後ろ向き」の作業を続けてきた。

金融庁は、取引所に立ち入り検査をし、次々に業務改善命令を出した。取引所各社もセキュリティを強化し、金融機関に準ずる態勢整備を進めてきた。

「後ろ向き」の作業は、金融庁の森信親・前長官が退任し、遠藤俊英・新長官が就任した2018年7月まで続いた。

以後、わずかではあるが、業界には「前向き」な動きが出てきていた。8月には、大手企業による仮想通貨取引所の買収や資本参加の動きが表面化し、業界団体は自主規制ルール案をつくり、立て直しに向けた動きを本格化させようとしていた。

その矢先に起きたのが、今回のテックビューロが運営する取引所Zaifのハッキング事件だ。国内の業界が停滞から抜け出そうともがいていただけに、タイミングとしては、極めて間が悪い。



ある取引所の幹部は、Zaifの事案が明らかになった日本時間の20日、シンガポールで仮想通貨とブロックチェーン関連のイベントに参加していた。

この幹部は「Zaifを話題にする人はいなかった。ハッキングは必ず起きるものだから、それを前提に対策するしかない」と話す。

企業側が対策を講じても、すぐに新しいハッキングの手口は登場する。いつかは自社もハッキングされるという前提で運営するしかない。

問題は「ホットウォレット」の運用方法だ

Shutterstock

となると、コインチェック、Zaifのいずれの事案においても指摘されたように、いわゆる「ホットウォレット」の取扱いが問題となる。

コインチェック事件以降、何度も繰り返されてきた説明にはなるが、インターネットに接続した状態で仮想通貨を管理するのがホットウォレットだ。反対に、ネットから切り離す管理方法はコールドウォレットと呼ばれる。

仮想通貨交換業者16社が組織する業界団体である日本仮想通貨交換業協会がまとめた自主ルール案でも、ホットウォレットの取扱いを定めている。具体的には、「オンラインで管理する仮想通貨の上限を設定する」という対策だ。

リアルタイムの取り引きに対応するためには、一定の額をホットウォレットで管理する必要はあるが、額が大きくなれば、当然リスクもふくらんでいく。

業界が定めたルールは現時点で「案」の段階であるため、テックビューロはルール案には拘束されない。だが、70億円という巨額の仮想通貨が抜き取られた以上、社内でどのような基準でホットウォレットが運用されてきたのか、詳細な説明が求められる。

ハッキング前提の運用指針は作れるのか?

撮影:今村拓馬

取引所のシステムは、ハッキングを前提に設計する必要がある。であれば、取引所の運営が続く以上、ハッキングの被害を利用者に補償しなければならない事案も必ず起きる。

取引所を運営する企業が、利用者に補償する日がいつか来る前提で制度設計するのなら、ホットウォレットで運用する額に応じた、補償の原資を事前に確保しておく必要もあるだろう。

コインチェック事件以後、金融庁に登録済みの仮想通貨交換業者の多くは、「安心・安全」を全面に出した広告・宣伝を展開してきた。テックビューロもその1社だ。

しかし、利用者の視点で見れば、取引所の何が「安全」で、何に「安心」すればいいのかは、今もはっきりしない。

コインチェック事件以降、仮想通貨への期待感も、信頼感もじりじりと下がり続けている。今回のZaifのハッキング事案は、さらなる下降要因になりうる深刻な事態だ。

長い停滞が続くのか、再浮上に向かうのか。日本の仮想通貨業界は今、重大な岐路にある。

(文:小島寛明)

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東京五輪ボランティア問題。11万人動員はやりがい搾取か

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたボランティアの募集が9月26日から始まる。目標は11万人。暑さが予想される中での過酷なスケジュールに加え、文部科学省を通じた学生への呼びかけ、マイナンバーとの連動など、国をあげての“動員”に「やりがい搾取」だと批判の声も上がっている。

活動補助として1日1000円カード

東京五輪・パラリンピックボランティアの募集がいよいよ始まる。キャッチコピーは「青春のど真ん中」だ。
出典:東京ボランティアナビ

東京五輪・パラリンピックで必要とされるボランティアは、競技会場や選手村で競技運営や観客のサポートをする「大会ボランティア」が8万人、空港や会場の最寄り駅などで交通案内をする「都市ボランティア」が3万人。前者は大会組織委員会、後者は東京都がそれぞれ運営主体になっている。

2012年のロンドン五輪が約7万8000人、2016年のリオ五輪が約5万人だったことを考えると、破格の多さとなっている。

応募期間は12月上旬まで。2019年以降、チームワークを高めるためのオリエンテーション、基礎知識を学ぶ共通研修、役割別・会場(配置場所)別の研修、さらにリーダー候補者はリーダー研修を受ける必要がある。

大会ボランティアは1日8時間程度(休憩・待機時間含む)で10日以上、都市ボランティアは1日5時間程度(休憩時間含む)で5日以上活動できることが基本条件だ。

支給されるのは、ユニフォーム一式、活動中の飲食物、ボランティア活動向けの保険。だが、交通費も自腹、という批判が高まったせいか、組織委は9月18日に、1日あたり1000円相当を支給すると発表した。現金や交通機関のICカードではなく、独自のプリペイドカードを作るという。 新しくカードを作ると決めたボランティア検討委員会の座長を務める清家篤・慶應義塾学事顧問は「組織委員会の予算枠の中で最大限出せる額を提示していただいた」(NHKより)、同じく検討委の二宮雅也委員・文教大准教授は「交通費に限定して考えるより、滞在中の(活動)補助に1000円を出すと理解していただければ」(産経ニュース9月18日)と発言したと報じられている。

これに対し、「無償ではないと主張するための“アリバイづくり”にしか思えません」と指摘するのが、『ブラックボランティア』などの著者、本間龍さんだ。博報堂に17年間勤務した経験から、組織委とスポンサー企業との関係性など、商業化する五輪の問題点を指摘してきた。

国内スポンサー収益は推定4000億円以上

五輪ボランティアをテーマにしたトークイベントに出演した本間龍さん。
撮影:竹下郁子

「ただ働きだという批判に応えたつもりかもしれませんが、時給に換算すると125円。新しく作るというカードはスポンサー企業に発注するのではないでしょうか。それこそ予算の無駄使いです。この五輪がアスリートでも国民でもなく、スポンサーファーストだとよく分かります」(本間さん)

さらに本間さんが疑問視しているのは、ボランティア検討委が「予算枠の中で最大限出せる額」だと主張したことだ。

東京五輪のスポンサー企業は国内スポンサーだけでも50社を超える。

スポンサーはIOCと直接契約を結び、4年で400億円程度の協賛金を支払うと言われているコカ・コーラやトヨタ自動車などの「ワールドワイドパートナー」と、組織委と契約する国内企業が「ゴールドパートナー」「オフィシャルパートナー」「オフィシャルサポーター」という3つのランクに分かれている。本間さんは契約金がゴールドで150億円、パートナーで60億円程度だと見ており、組織委は4000億円以上の協賛金を集めると推測している。

2017年に2度、本間さんがメディアを通じて組織委に協賛金の総額とその使い道を尋ねたところ、「国内スポンサー予算は2500億円を計上している」(現在の最新予算では3100億円「大会経費V2(バージョン2)」)「大会運営費に関しては、スポンサーセールスの状況にかかわらず楽観視できない状況」という回答しか得られなかった。総収入額と計上額では差があるのは当然だ。予算の内訳も不透明なまま「最大限出せる額」と主張し、国民にボランティアを強いることに納得がいかないと本間さんは言う。

「今のオリンピックにアマチュアリズムはありません。今回のスポンサー収入は異例の額で、組織委とスポンサー企業、そして両者の窓口になっている電通は収益など多くのメリットがあります。商業イベントである五輪でなぜ無償ボランティアを使うのか、私が言いたいことはそれに尽きます。これまでも開催国はそれぞれの事情に合わせてお金を支払ったり、環境を整えたりしてきたんですよ」 (本間さん)

過去には有償、交通費支給・宿泊支援も

リオ五輪のボランティアたち。「シティ・ホスト」は有償だった。
shutterstock/Shahjehan

2016年のリオデジャネイロ五輪では日本の都市ボランティアにあたる「シティ・ホスト」はリオ市が有償で雇用しており、2018年の平昌冬季五輪では交通費が支給され宿泊施設も用意された。1998年の長野冬季五輪でも宿泊が必要な県外からの参加者には県が支援をしている。 五輪ではないが、今夏にジャカルタで開催されたアジア大会では路線バスの無料パスに加え、1日あたり30万ルピア、日本円にして約2300円の日当が支払われた。これは現地の会社員が1日に稼ぐ金額に相当するという。

翻って日本は、1日1000円のプリペイドカードのみだ。日当はもちろん宿泊費や施設の支援もないことを考えると、長野冬季五輪からも後退していると言えるだろう。

「長野冬季五輪ではボランティアが足りず、県や市の職員が動員されました。彼らはもちろん有給です。東京でも人が足りなかったら都や近郊の公務員が有給で動員される可能性はあると思います。ボランティアは無償なのに、ね」(本間さん)

なぜ日本は無償ボランティアに頼るのか。本間さんが前出のスポンサー協賛金と同様、組織委に尋ねたところ、以下のような回答があったそうだ。

  • 過去大会においても、無償で活躍する多くのボランティアを前提に運営している。
  • 他では決して得られない感動を体験していただく貴重な機会になる。
  • 活動意欲を高め、一体感や誇りを感じられるようなユニフォームや研修、飲食の提供などについて、今後詳細を検討していく。

近年の五輪ボランティアの待遇が日本で現在想定されているものより遥かに良いのは前述の通り。「感動」「一体感」「誇り」という言葉は“やりがい搾取”の常套句だろう。

さらに、ボランティアの原則である「自主性」を軽視するかのような動きも広がっている。

大学生は「就活に有利」?中高生の「内申書」は?

五輪ボランティア募集のPR動画。本間さんは「組織委がどんな人材を求めているかよく分かる」映像だと言う。
出典:東京ボランティアナビ

「みなさん、青春のど真ん中にオリンピック・パラリンピックがやってきます。さぁ、世界をもてなそう」

俳優・広瀬すずさんの呼びかけに、学生たちが同じ方向に向かって一斉に走り出す。真っ赤なワンピースを着た広瀬さんと、黒い制服の学生たちが対照的な動画が、五輪ボランティア募集のPRのために作成された。

五輪ボランティアの参加条件は「2002年4月1日以前に生まれた方」。比較的自由に時間が使える大学生、未来の大学生である高校生がメインターゲットだと本間さんは見ている。

2018年7月、文部科学省とスポーツ庁から国公私立大学長 と国公私立高等専門学校長宛てに通知が出されたことが大きな話題を呼んだ。大会期間中に授業や試験を行わないよう授業開始日を繰り上げたり、祝日授業実施の特別措置を学則の変更や文科大臣への届出無しでできること、またボランティアに参加する学生に単位を付与することができると強調した。新たな規定を設けたわけではないが、改めて協力を要請したかたちだ。

これまでも選手村の施設建設のための地方自治体からの「木材供出」、メダルのための携帯電話やパソコンの回収などが「まるで戦時中」だと批判されてきたが、この時もネット上に「学徒動員」などの声が上がった。

しかし、都内119校の大学のうち66%が授業や試験日をずらすことを検討または予定しており、ボランティア参加を単位として認めるまたは検討していると回答した大学は49%にのぼる(NHKより)。

出典:早稲田大学ホームページ

組織委は全国800以上の大学と連携協定を結んでおり、ボランティア確保のために着々と準備を進めてきた。すでに亜細亜大、順天堂大、早稲田大などでスポーツボランティア養成講座が設けられているが、単位目当ての活動はボランティアと言えるのか疑問だと本間さんは言う。

「五輪ボランティアに参加すれば就活に有利になる、そんな指導をしている大学のキャリアセンター職員がいるとも聞きました」

また組織委は一般の大会ボランティアとは別に、「中高生枠」を設ける方針だ。観客の誘導、サッカーやテニスのボール拾い、入場待ちの観客への楽器演奏などを検討しているという。

「本人が希望していれば良いですが、部活やクラスでの動員になると、嫌でも参加しないといけない同調圧力が働くでしょう。中学生の子どもを育てる保護者も『熱中症は心配だけど、欠席して内申書に影響があるとよくないし……』と困惑した様子でした」(本間さん)

マイナンバーで管理、ボランティア保険の内容は不明

官民総出でオリンピックに向けて動き出している。
shutterstockNed Snowman

働く世代ももちろんターゲットだ。東京都は2018年、ボランティア休暇制度を導入した企業に20万円を助成すると発表。500社を対象とする見込みだ。

スポンサー企業にもさまざまな動きがある。ゴールドパートナーの富士通はボランティア参加を社員に呼びかけ、約300人が参加する予定だ。事業では「データセンター」として、競技運営に必要なデータを扱うためのサーバー、ストレージやサービスなどを提供していくという。

富士通は8月、ボランティアの身元確認や入場管理にマイナンバーカードを活用することに向けた調査研究事業を総務省から受諾したと発表した。まずは11月に宮崎県で開催されるITUトライアスロンワールドカップで実証実験を行うという。マイナンバーは税や社会保障など行政手続きの効率化のために導入された。その個人情報を五輪に紐付けることに、本間さんは異議を唱える。

「ボランティアに参加するだけでこんな個人情報まで差し出さなければならないなんて、おかしいですよ。途中でボランティアを辞めたらその情報が残り、どこかで不利に働くかもしれません。体調を崩して辞めたくとも、情報が残ることを懸念してためらう人だっているかもしれない」

ボランティア検討委員会の議事録を開示請求したところ、黒塗りがあったという。
撮影:竹下郁子

熱中症も心配だ。組織委はボランティア活動向けの保険をかけると発表しているが、その内容については不明なまま。酷暑の中で活動するボランティアの命と健康に責任を持つのか、最高責任者は誰なのか本間さんが組織委に質問したところ、明確な回答は得られなかったという。

Business Insider Japan編集部からもボランティア保険の内容と暑さ対策について質問しているが、現時点(2018年9月22日)で返答はない。

「組織委は今回培ったものを『レガシー』として継承したいと謳っています。招致を目指す2025年の大阪万博、2030年の札幌五輪にも『タダボラ』を活用したいのでしょう。これが成功したら、新たな搾取システムが生まれてしまう。私はボランティアを否定しているのではなく、こんな無責任な組織・国のもとで動員されることに警鐘を鳴らしているんです。みなさんの命と時間にはもっと価値があるはずです」(本間さん)

(文・竹下郁子)

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