晴れ着のレンタル・販売業者「はれのひ」で手配した振袖が、成人の日の着付け会場に届かず、連絡も取れなくなっている問題で、横浜市と八王子市に寄せられた相談は1月10日までで、累計で327件に上った。このうち約6割が2019、2020年の新成人が占めた。
着物業界は、少子化の影響で、高校生のうちから予約を勧め、結果的に被害者を広げてしまった形だ。国民生活センターは「早めの契約で業者の倒産のリスクもあり、十分な考慮を」と注意喚起。早期予約を勧めてきた業界は今回、来年以降の新成人を救済する動きを始めた。
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契約総額は1億円、八王子は1割が再来年の新成人
横浜市と八王子市の消費生活センターには、はれのひ関連の相談が累計327件寄せられた。契約総額は約1億円。横浜市は214件(契約総額約6800万円)の相談のうち、約半数が来年、再来年の新成人、八王子市は113件(契約総額約3200万円)の相談のうち、来年(2019年)の新成人が69件、再来年(2020年)の新成人も12件だった。
両センターによると、契約金額の相場は30〜40万円。「何もサービスを受けていないけど、支払いは終わっているが、どうすれば」「着物を返してほしい」「返金してほしい」という相談が多い。八王子市のセンターの担当者は、来年以降の相談者が多い理由を「前撮りや、同じ種類の着物がなく、気に入った物を早く契約する、という着物の契約の特性があるのでは」と話す。
高校生から勧誘する業界
東京都内の新成人の人口は、ピーク時の1968年の35.2万人に比べ、2018年は11.9万人まで減少。着物業界は、成人式の振袖の契約を早く取り付けようと、高校生の特別料金や「今だけお得キャンペーン」などをしてきた。前撮りや個人のサイズに合わせた仕立て作業もあるため、2年先の振袖でも全額入金を求められたり、キャンセル料が高かったりする。
国民生活センターには、着物のレンタルトラブルに関する相談は、年間300〜400件ある。センターの担当者は、 「早めの契約で衣装の選択肢は広がるが、業者の倒産のリスクもあり、十分に考慮する必要がある」 と話す。
はれのひの被害者の会を8日に設立した業界紙「きものと宝飾社」の松尾俊亮編集長は、「成人式の振袖のために、業界では、高校3年生からダイレクトメールなどでアプローチをしている。以前は19歳からだったけど、だんだん早くなった」と話す。
業界の競争が加速し、結果的に、はれのひの被害者も拡大した形だが、松尾編集長は「成人式の日という一生に一度の行事を台無しにするなんて、今までなかったこと。業界のタブー、それはあかんやろ、という業界の怒りがある」と語気を強め、「はれのひは特別な事例。大半がまっとうな会社」と訴えた。
被害者の会、来年、再来年の新成人の救済
きものと宝飾社のホームページより。
はれのひの被害者の会は、来年、再来年の新成人の被害者を対象に、救済の準備を進めている。同会は、被害者が発生したという全国5カ所を中心に、地元の業者と協力し、成人式の衣装などを安い値段で提供する方針。
問い合わせは、きものと宝飾社のホームページで受け付けており、同会設立を記者発表して以降、1月10日時点で、110件の問い合わせがあり、うち60件が被害者ら、30件が呉服店や美容師、カメラマンら業者からの協力の申し出だった。
松尾編集長は連日、電話対応に追われているというが、「どの地区にどれくらいの被害者がいるかどうかを把握したいので、まずは(同会に)問い合わせをしてほしい」と呼びかけていた。被害状況、協力業者の状況を見た上で、具体的な救済方法を検討していく。
(文・木許はるみ)