cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_536ef829efae_フィンランド「ベーシックインカム実験失敗」報道は誤報? 536ef829efae 0

フィンランド「ベーシックインカム実験失敗」報道は誤報?

フィンランド政府は2017年1月より2年間の計画でベーシックインカムの給付実験を行っているが、先日、この給付実験が中止されることとなったというニュースが世界中を駆け巡った。『ベーシック・インカム入門』の著者で、同志社大学の山森亮教授は、この報道に疑問を投げかける。

一部のメディアの見出しはセンセーショナルなものだった。以下に列記しておこう。

「急に中止することとなった(is killing)」(Business Insider, 4/19)
「まったく失敗に終わった(falls flat)」(BBC News, 4/23)
「スクラップにする(scrap)」(Sky News, 4/24)
「失敗したベーシックインカム給付実験(failed universal basic income experiment)」(Olando Sentinel, 4/24)
「機能しなかった(didn’t work out)」(USA Today, 4/25)
これらの見出しは不正確、ものによっては誤報であると言わざるをえない。もともと実験は2年間の予定で行われており、少なくとも現時点ではそのことに変更はなく、当初の計画通り、2年間まるまる行われる予定である。実務を管轄しているフィンランド政府の行政機関「社会保険庁(KELA)」は、メディアの「事実に反した報道(incorrect reports)」に苦言を呈している(Kela Press release, 4/25)。

実験結果の分析はまだ行われてもいない

フィンランド議会の様子(但し、写真は大統領就任式時のもの)。
Reuters

ただ、「火のないところに煙は立たない」とも言う。この場合の「火」とは何か。

1つは、KELAが実験の延長を提案したが、政府は承認しなかったという事実だ。

もう1つは、現在のフィンランド政府がベーシックインカムの導入に向けて前へ進もうという方向に向かっているかというと、そうではないということだ。ただし、これは最近初めて明らかになった事実ではなく、2017年秋の時点ですでに明らかになっている。

2017年の秋、フィンランド政府は失業手当給付について、求職に向けた活動実績などの要件を2018年1月から厳格化すると発表した。この決定に対しては、10万人を超える反対署名が提出されるなど多くの批判が集まったものの、予定通り実施されている。

政府は新しい方針を「アクティベーション・モデル」と呼んでいる。失業者を「アメ」と「ムチ」で就労復帰させることを政策目標の中心に据えるこの考え方は、(失業者を主にムチで就労復帰させようとする「ワークフェア」と並んで)ベーシックインカムとは正反対の方向を向いていると一般に考えられている。

いずれの決定も、実験で思うような結果を得られなかったからとか、実験が失敗に終わったからとかいうことでは全くない。実験の効果については、実験終了後にKELAが分析することになっていて、現時点では何の分析も始まっていない。

筆者がフィンランドで目にしたもの

筆者がベーシックインカムに関するワークショップに参加したフィンランドの地方都市トゥルク。
Reuters

現在進行中の実験の詳細を政府が発表した2016年8月25日、筆者はフィンランドの地方都市トゥルクでベーシックインカムのワークショップに参加していた。翌日以降、トゥルクと首都ヘルシンキで、政府担当者のほか、長年ベーシックインカムを提唱してきた研究者、議員、活動家などに取材することができた。

印象的だったのは、政府担当者を除いて、いずれも落胆ないし醒めた眼差しを実験に対して向けていたことだ。数日後に世界各地のメディアがセンセーショナルな見出しで報じた(一連の報道の中にはベーシックインカムそのものを導入するとの誤報もあった)のとは、とても対照的だった。

長年ベーシックインカムを求めていた人たちが、なぜ当初から実験に懐疑的だったのか。一番の理由は、実験対象者が失業手当の受給者のみに絞られたことだ。提唱者たちが考えるベーシックインカムの理念と、(実験を行う主体である)政府の考えが、正反対のところにあることが明らかとなったのである。

提唱者たちの理念と政府案の「乖離」

フィンランド社会保険庁のあるオフィス。
Reuters

今回の実験はもともと、2015年春に行われたフィンランド議会総選挙で、当時野党だった中央党が選挙公約として、給付実験の実施を掲げたことに端を発している。選挙後、中央党は他の2つの保守政党と連立を組むことになり、実験は連立政権によって認められた。政府は同年秋、KELA内に研究者などから成るワーキンググループを設置し、翌2016年3月に実験の青写真を示す暫定報告書を提出させた。

政府が発表した実験の詳細は、月560ユーロ(690米ドル)という給付額こそワーキンググループの提言に沿ったものだったが、一点、根本的なところで提言をひっくり返すものだった。すなわち、実験の対象者を抽出する母集団を、稼働年齢層全体ではなく、失業手当受給者に限定したのである。

ワーキンググループは前出の暫定報告書(公表は2016年10月)の英語要約版の後書きで、「暫定報告書で提案した最適な実験案と比べて、政府案は焦点と範囲がかなり限られてしまっており、多くの人にひどい失望をもたらした」と言及している。

フィンランドで長年ベーシックインカムを提唱してきた人たちは、人々を狭義の雇用に縛られがちな状況から解放し、生活費を稼ぐことに全精力を使い果たすのではなく、当座の生活費を心配したり、失敗に怯えることなく長期的な視野で、自分が社会にどのような貢献ができるのか、自分を生かした活動を行える社会を可能にしてくれる、そういうベーシックインカムの可能性に賭けていた。

それに対して、政府による給付実験は、失業者を狭義の雇用に押し込むことに主眼を置いていることが明らかだったのである。

現地の関係者たちに意見を聞いてみると……

日本版のBusiness Insiderから本稿の執筆依頼を受けた筆者は、ここまで述べてきたような状況について、ベーシックインカム給付実験の関係者や、研究者、活動家などにコメントを求めた。以下はその一部で、いずれも4月末時点のものだ。

給付実験の青写真を描いたKELAのワーキンググループのメンバーだったヴィラベッコ・プルカ氏は、「政府はこれまでも決してベーシックインカムの理念に肩入れをしてこなかった。いわゆる『アクティベーション・モデル』ばかりを強調してきた。フィンランドの所得保障は今ではむしろ実験前より条件の厳しいものになってしまっている」と語った。

ベーシックインカムを綱領にかかげる野党・海賊党のペトルス・ペナネン議員は、「実験は最初からフェイクだった。政府のチーフ経済アドバイザーであるマーティ・ヘテマキは、ベーシックインカムが何だか分かっていない上に、人々を怠け者にすると考えている」と手厳しい。

同党の前党首だったタパニ・カービネン氏は、「実験は失敗するよう仕組まれていた」と同調する一方、「(ベーシックインカムについての)公共の議論を喚起する効果があった」ことも指摘する。

政府は実験の拡張には否定的だった

2018年2月、失業者給付を減額する議会決定に対して抗議行動を起こした首都ヘルシンキの市民たち。
Reuters

半世紀近くにわたってベーシックインカムを提唱してきたアボ大学名誉教授のヤンオット・アンダソン氏も、現在の政府の方向性には疑義を持ちつつ、政府が実験を行ったことのポジティブな帰結として次のように述べ、社会民主主義者たちの態度の変化を挙げている。

「(現在野党の)社会民主党は、これまでベーシックインカムに批判的だったけれども、今ではベーシックインカムやそれに類似した負の所得税などのシステムへ現行の制度を改革していくことに大きな関心を持つようになっている。(2019年の総選挙後の)次の政府が正しい方向へ歩むかもしれないことを期待したい」

ベーシックインカム・フィンランド・ネットワーク元代表のオット・レヒト氏は、「政府はそもそも最初から小規模の実験だけを行う予定で、(期間を延長したり給付額や対象を増やすなどの)実験の拡張には一貫して否定的だった」と振り返っている。

フィンランドでのベーシックインカムをめぐる状況と、それについてのメディアの報じ方を振り返って、私たちが学べることは何だろうか。2016年8月末に野党・緑の党所属の欧州議会議員ハイディ・ハウタラ氏が、筆者の取材に対して、政府の実験案の問題点を指摘した後で、「私たちがこの経験から何を学べるかが大事だ」と述べたことを、今思い出している。

---------------------
山森 亮(やまもり・とおる):同志社大学経済学部教授。1970年生まれ。京都大学大学院経済学研究科修了。著書に『労働と生存権』『貧困を救うのは、社会保障改革か、ベーシック・インカムか』『ベーシック・インカム入門』など。

外部リンク

cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_10dee6ce629e_ラクスル上場が教えてくれる、シェアリングビジネスの限界 10dee6ce629e 0

ラクスル上場が教えてくれる、シェアリングビジネスの限界

2018年5月7日 05:00 Shutterstock/silvano audisio

タレントの清野菜名さんを起用した大々的なCM戦略や、ローソン元社長の玉塚元一氏の社外取締役就任で話題を呼んだ、ネット印刷の「ラクスル」が東京証券取引所マザーズに上場申請し、承認された。

ラクスルの松本恭攝社長は「スティーブ・ジョブズの申し子」と呼ばれ、ビジョナリー経営者として多くのメディアに取り上げられてきた。そのためか、同社の上場についてはすでに様々な形で報道がなされている。

そこで本稿では、これまでに出た記事では触れられていない、ネット印刷業界の構造と「シェアリングエコノミー」のビジネスモデルに着目し、今後の展開を考えてみたい。

ネット印刷は競合相手が余るほどいる

まずは、ネット印刷(印刷通販)業界について整理をしておこう。

ラクスルが東京証券取引所に提出した「新規上場のための有価証券報告書(Ⅰの部)」を読むと、「国内の印刷EC市場は920億円程度の規模」とされている。矢野経済研究所「2013年版 印刷通販市場の展望と戦略」によれば、2013年度の市場規模は543億円だったので、その後5年で1.7倍ほどに拡大したことになる。

ただ、その広がった市場をラクスルが制してついに上場、という筋書きでは全くない。ネット印刷業界には数々の強力な競争相手がいて、実は、ラクスルはナンバーワン企業ですらない。

ネット印刷業界最大手、京都を本拠とする「プリントパック」。
プリントパックHPより

最大のシェアを誇るのは、京都を本拠とする「プリントパック」だ。登録ユーザー数は100万人を突破、売上高は276億円(2017年4月期)で、ラクスルの3倍以上に達する。同社は、電話サポートなどの初歩的なサービスを削減してコストを最大限に抑え、既存の印刷会社の(繁忙時や小ロットでコストに合わない時の下請け)需要に応える戦略を展開している。

また、プリントパックに次ぐナンバーツーは同じく京都の「グラフィック」で、幅広い商品を高品質かつ短納期で仕上げる必要のある広告代理店やデザイン会社をユーザーに抱える。

ネット印刷業界第2位「グラフィック」。
グラフィックHPより

両社ともネット印刷業界ではよく知られるトップ企業だが、ラクスルほどの大々的な広告戦略を採用していないため、世間一般での認知度はさほど高くない。しかし、業績は圧倒的で、両社を合わせたシェアは54%にも上る。

そして両社に次ぐナンバースリーが、ネット印刷業界で唯一自社工場を持たずシェアリングビジネスを柱とするラクスルである。ユーザーサポートとマーケティングに特化し、様々な印刷・集客サービスを展開しているのが同社の特徴だ。2017年度の業績は、売上高が76.7億円、経常利益は約11.6億円の赤字だった。

赤字上場の是非はさほど大きな問題ではない

新規上場(IPO)審査が厳しくなる中、赤字のまま上場した企業のその後の業績が厳しいことから、ラクスルについても同様の疑念が出ている。昨年9月に上場した家計簿アプリの「マネーフォワード」についても、赤字上場の是非を問う議論が起きたばかりだ。

足元の状況を見ると、ラクスルの収益性が同業他社に比べて低いのは事実だ。ラクスルに続く業界4位「プリントネット」(鹿児島)の2017年10月期の業績を見ると、売上高68.5億円に対して経常利益を6.6億円計上しており、収益性は非常に高い。ラクスル上場の影響もあってか、同社もIPOを検討しているとされる。

一方、赤字上場はさほど大きな問題でないと指摘する声もある。

ラクスルは積極的なマーケティングによって顧客獲得を積み上げることに成功しており、また印刷というサービスの特性からユーザーの「顧客生涯価値」(LTV、一人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす総価値)が高い事業を運営しているため、安定収益が期待できるとともに、現状が赤字でも将来的には粗利益率が上がって黒字転換できるというものだ。

競合他社は自前の工場を持っている

しかし、根本的な疑問が残る。

印刷工場を持たずシェアリングビジネスを柱とするラクスルが、今後も順調に顧客獲得を積み重ね、事業規模の拡大に成功したとして、その需要に応じられるだけの委託先があるのだろうか。また、規模の拡大につれて粗利益率が上がり、収益性が高まるという見方は本当に正しいのだろうか。

マザーズ上場が承認されたネット印刷業界第3位の「ラクスル」。
ラクスルHPより

ラクスルの競合相手については、それぞれ自前の工場を保有しているので、最新設備の導入を続けることで「規模の経済」(生産量が大きくなると原材料などの単位当たりコストが下がり、収益率が向上すること)が効いてくると言える。

業界首位のプリントパックは全国9拠点7工場、24時間対応で印刷を行っており、先述の売上高276億円に対して営業利益は34億円。業界4位のプリントネットも山梨と鹿児島に3工場を抱え、2016年(10月期)の売上高58.6億円・経常利益が5.2億円から、2017年の売上68.5億円・経常利益6.6億円へと利益を順調に増やしている。

ラクスルも、2015年(7月期)に売上高26.4億円・営業損失17.3億円、2016年に売上高50.8億円・営業損失14.4億円、2017年に売上高76.8億円・営業損失11.6億円と赤字ながら利益を増やしてはいるが、これから印刷受注額が拡大していく中で、工場を持つ競合他社のように規模の経済を効かせることができなければ、利益の伸びは頭打ちを迎えることになる。

実は、ラクスルは印刷設備を購入している

ラクスルの印刷シェアリングビジネスはいずれ限界に達するのではないか。そして、同社はそのことをどう考えているのか。実はその答えは、前出の有価証券報告書にある貸借対照表(バランスシート)と附属明細表に(あまり注目されていないが)ハッキリと記されている。

附属明細表の「有形固定資産等明細表」を見ると、「機械及び装置」「工具、器具及び備品」「リース資産」を合計で7.8億円分保有していることが分かる。従業員数118人(平均臨時雇用者数46人)のラクスルがこれほど多額の機械や工具、リース資産をネット関連で必要とするとは考えられず、同社の事業内容から、これが印刷関連の設備であることは容易に想像がつく。

ラクスルはいつから印刷設備の保有に動き出したのだろうか。上の明細表を見ると、直前期にすでに機械などの残高が記されているので、同社はシェアリングエコノミーを標榜しながらも、生産キャパシティの拡大と収益性の改善を図るために、少なくとも2年以上前から印刷機械を購入してきたと考えられる。

有価証券報告書には「顧客と提携印刷会社を繋ぐプラットフォーム事業であり、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまない」との記載があるため、自前の工場を持ったのではなく、機械を購入して他の印刷会社に貸与するなどの方法で運用しているのではないか。

2年前の売上規模に達した段階で、他の印刷会社の余剰キャパシティを活用するシェアリングだけでは収益性の向上が難しいと判断したのだろう。

出資で同業他社を「囲い込む」戦略も

ラクスルの松本恭攝社長。「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」は、同社が設立時に掲げたヴィジョン。
ラクスルHPより

ラクスルは売上規模の拡大に対応するための方策として、印刷設備の購入だけでなく、同業他社を囲う戦略も取り入れている。

附属明細表の「有価証券明細表」を見ると、埼玉の中堅印刷会社「ニシカワ」の株式を6552万円分、競合相手である前出のプリントネットの株式を2448万円分、それぞれ保有していることが分かる。業務資本提携をして一定の発注量をコミットすることでコストを引き下げ、価格競争力を保つ戦略と考えられる。

(有価証券報告書によると、買掛金はプリントネットが約1億8000万円、ニシカワ印刷が約3200万円)

売上規模のさらなる拡大を目指すラクスルが、今後も設備投資を進めていくことは間違いない。同時に、生産(印刷)をより大規模に委託できる(したがって単位当たりのコストを引き下げられる)企業への投資も増やし、収益力の向上も図っていくことになるだろう。

現時点での同社のスタイルは、シェアリングビジネスと言うより、むしろ「印刷会社2.0」とでも言うべきではないか。

ネット印刷以外の分野でシェアリングビジネスを

ここまで示してきたように、シェアリングエコノミーを活用したビジネスは、ある程度の売上規模を超えると、収益力を維持しながら受注量をこなすために設備投資が必要になるという矛盾を抱えている。

しかし、ラクスルが(印刷そのものではなく)シェアリングビジネスを事業の柱として成長を目指すのである以上、設備投資はなるべく減らしたいはずだ。どうやってこの矛盾を回避したらいいのか。

有力な選択肢の1つは、類似のシェアリングサービスを展開することである。

ラクスルの新規事業「ハコベル」。軽貨物のシェアリングサービスだ。
ハコベルHPより

印刷事業と比べるとまだまだ規模が小さいものの、ラクスルは軽貨物のシェアリングサービスである「ハコベル」をすでに展開している。これは「物流業界のラクスル」とも呼ぶべきビジネスモデルで、ネット印刷分野で企業間取引(B2B)のプラットフォームサービス構築に成功した経験を活かし、類似のマーケティング戦略を使って事業を成長させようというわけだ。

しかし、ハコベルの売上額はまだわずか2億円弱。ラクスルの成長鈍化を補完する役割を求めるには、ここまでのラクスルがそうだったように、ハコベルにも大規模な広告宣伝投資を行っていく必要がある。そういう意味では、同社が上場による資金調達に成功したところで、急激に収益力を上げるという流れにはならないだろう。

また、グローバル展開を図る選択肢もあるが、印刷という事業の構造上、自社だけでサービスを展開するのは難しい。印刷通販をグローバル展開している例として、最大手の「ビスタプリント(Vistaprint)」が挙げられるが、印刷と物流の両方を現地で開拓するのは簡単ではないようで、日本では思うようにシェアを伸ばせていないのが現状だ。

なお、前出の有価証券報告書には「インドネシア及びインドにおいて現地の印刷EC企業に対するベンチャー投資を行っている」との記述がある。海外の印刷シェアリングビジネスに投資をすることで、マーケティングに特化する方針を貫こうという姿勢が見える。

今後のラクスルにとっては、上場で調達する資金を次なる成長カンパニーに投資することが、売上規模と収益性を踏まえた上での最適解ではなかろうか。

---------------------
桂木 英一(かつらぎ・えいいち)M&Aコンサルタント。大企業からベンチャーまで、M&Aや事業承継など企業活動・戦略に詳しく、企業や投資ファンドのコンサルティングに携わってきた。

外部リンク

cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_50013f69d169_国内初、数億円ICOベンチャーが奮闘するICOの税務と決算 50013f69d169 0

国内初、数億円ICOベンチャーが奮闘するICOの税務と決算

ALIS代表取締役CEO 安昌浩氏とアトラスアカウンティングの沼澤健人氏。

仮想通貨バブルを象徴するキーワードとして、ビットコインと並んで話題にのぼる、仮想通貨による資金調達ICO(Initial Coin Offering)。

国内でもICOにチャレンジしようという人たちが増えるなかで、多くの人が気にかけていない大事なことがある。真っ当に資金調達した企業や個人が、必ずしなければならない義務である「税金の支払い」、つまり会計処理だ。

2017年にICOで資金調達をした国内の成功例として知られるソーシャルメディアプラットフォームのスタートアップALISはいま、ほぼ日本初になるICOの税務処理を行おうとしている。

良くも悪くも目立つ、ALISの動きに集まる視線

ALIS代表取締役CEO 安昌浩氏。

「日本で初めて数億規模のICOを実施したことで、ALISは良くも悪くも目立つ存在だと自覚してます。(最初の一歩を踏み出した)“ファーストペンギン”になった以上、自分たちなりのICOのあり方を発信していく必要があるだろうと考えたんです。今後、仮想通貨やICOが伸びていく可能性が大いにある中で、僕たちが積極的に情報開示をしないと、誰も知識が得られないですよね」

ALIS代表の安昌浩氏は、いまの心境をそう説明した。

ICOで資金調達した企業の税務処理は、まだ誰も手がけたことがない未開の分野だ。それだけに相談したくても窓口がなかったり、そもそも仮想通貨というものに会計事務所が詳しくないケースも多い。

ほぼ日本初の「ICO実施企業の会計処理」は、税の専門家でもないスタートアップ1社でやりきることは不可能に近い。そこでALISは、税務サポートをする仲間を引き入れた。それが、沼澤健人代表(31)が立ち上げたアトラスアカウンティング(Atlas Accounting)だ。

沼澤氏は、税務・監査のプロフェッショナル集団KPMGグループのあずさ監査法人出身。個人のTwitterアカウント(@2nd_chick)でも仮想通貨の税務相談に返信するなど、界隈では「仮想通貨の税務に詳しい人物」として知られている。別の会社の起業を経て、2016年4月にアトラスアカウンティングを起業した。

沼澤氏が運営するツイッターアカウント「二匹目のヒヨコ@仮想通貨税務駆け込み寺」(@2nd_chick)。

アトラスアカウンティングでは、財務会計分野の専門性を持つだけでなく、起業やITシステムなどにも精通した公認会計士や税理士を集め、ブロックチェーン企業のサポートやICOプロジェクトの開示サポートを提供している。

それにしても、いくら会計業務に詳しいとはいえ、なぜICOの会計をサポートすることにしたのか? 安氏と沼澤氏が出会ったのは2017年の10月ごろのこと。沼澤氏は言う。

アトラスアカウンティングの沼澤健人氏。

「私自身が仮想通貨交換業者のサポートをした経験があったことが前提としてあります。そのうえで、安さんの話を聞いて、企業会計基準委員会(ASBJ)の動向を(自身が)キャッチアップしていたこともあり、ルールの定まっていない中でALISチームが自ら範を示して、ルールづくりに積極的に影響を与えていきたいという姿勢に共感したからです。“一緒にチャレンジしましょう”という話にすぐにまとまりました」(沼澤氏)

ICOには詐欺的なプロジェクトも少なくない。ALISチームであれば、真に価値のある後続のプロジェクトにとって良い環境づくりをできるのではないかという期待感があった、と語る。

ICOの会計処理が難しいと言われるのには、いくつか理由がある。

もっとも大きい理由は、上場のためにはパスしなければいけない基準が明確に決められているIPO(Initial Public Offering=新規株式公開)と違い、ICOを実施する際のルールは監督官庁(金融庁や国税庁)によってまだ明確化されていないことだ。そのため、尻込みする会計事務所が少なくないという。

沼澤氏によると、ルールが定まっていないのは、ICOを実施した際の「財務会計基準」や「法人税制」についても同様だという。

個人が仮想通貨の取引などで得た利益に対する所得税については、国税庁が2017年12月にガイドラインを示したことで、業界として一定の方針は広がった。一方で、(法人が仮想通貨で資金調達する)ICOについては、明確な方針が打ち出されていないのが、5月4日時点での現状だ。

ICOの会計処理の論点は大きく2つ

撮影:今村拓馬

関係者によると、ICOの会計処理の論点は、以下の2点に大別できるという。

・ICO実施に際して調達した仮想通貨(BTC=ビットコインやETH=イーサリアムなど)の会計処理
・ICOプロジェクトにおいて発行された(mintした)仮想通貨(この場合はALISなど)の取り扱い

前者は、期末の時価評価に関する指針は示されているなかで、ICO実施時に調達した仮想通貨が「売上高」を構成するか否かがポイントになる。この場合、「開発資金」として調達した仮想通貨に多額の税金がかかってしまうことが課題だ(同時に、売上を構成しない、前受金などの「負債勘定」として計上するための要件なども検討されるべきだ、という意見もある)。

後者の「ICOプロジェクトで発行された仮想通貨」については、会社または創業者らが一部を自己保有するケースも多い。その仮想通貨についても、(法人の場合)期末の時価評価を行うかどうかが論点になってくる。

国内でも珍しいICOの税務処理方針は「企業ビジョン最優先」で決めた

プラットフォームとしてのALISは順調に開発が進む。4月30日にはトークン(引換券に相当)の配布も開始した。

会計処理のアドバイスを引き受けるにあたって注意したことは何だったのか?沼澤氏に聞いてみた。意外なことに、安氏に対して「こういう資金の使い方はしないでほしい」といったような要求は、ほとんど何もしなかったという。

「私の考えでは、会社というのは、あくまで経済活動が優先なんです。それを映す鏡が会計であって、そして表裏一体の税法体系があります。まずは安さんのICOに対するビジョンがあって、それを実現する上でリスクがあればアドバイスする、ALISが正しく税金を納めるためのサポートをする……というのが税理士をはじめとする専門家(アトラスアカウンティング)の立場です」(沼澤氏)

一方で、公の指針がない状態は当初から継続している。そのため、税務申告にあたっては、金融庁や国税庁の「事前確認制度」を使って、節目節目の確認を徹底。また、沼澤氏の個人的なコネクションをフル活用して、金融庁や国税庁などの政府の考え方の動向も追うことで、監督官庁の方向性に沿うように備えている。

税務処理以外にもある「課題」、情報開示をどうすべきか?

ALISの公式サイト。ブログ型のソーシャルメディアは登録者向けのクローズドβがはじまっていて、すでにそれなりに活発なユーザー投稿が始まっている。

ICOはれっきとした「支援者がいる資金調達手法」だ。だから、調達した資金の使途や現在のALISという企業の健全性をどのように、どこまで開示していくかも重要な判断になる。

安氏が沼澤氏に提示したALISの開示方針はきわめてシンプルで「できる限りの情報を開示すること」だった。

ただし、沼澤氏は「この方針を実際の運用に落とし込むのは、実務とのバランスという点で、簡単な作業ではない」と語る。

主には2つの検討要因がある。

1つめは開示範囲だ。開示ルールが定められているIPOを参考にしようにも、ICO実施企業とIPO実施企業とでは、企業としてのフェーズがそもそも異なる。IPO実施企業と同じ手法や頻度で公開するには、ビジネスをこれから立ち上げていこうというスタートアップにとってはコストが重い。また非公開企業ならではの「成長性とスピード感を重視した自由な運営」に網をかけることにもなりかねない。

2つめは、どのように開示するのか。ALISの出資者(ALISトークンホルダー)には、必ずしも投資のプロでない人たちも多く含まれる。IPOのように財務諸表などを開示して終わりというわけにはいかない、と安氏は考えている。

「例えば、インフォグラフィックにまとめるなど、情報をわかりやすく噛み砕いて伝える努力もしないといけないと思ってます」(安氏)

そのため、情報開示の内容や方法については現在も目下、模索中。いずれにしろ、ICOならではの開示手法を取り入れ、オープンにしていくとのことだ。

業界の健全化のため、「透明性の高いICO」目指す

ALISの開発進捗やロードマップといった情報はTwitterやMedium、Redditといったオープンなメディアで公開していく方針をとっている。

いま、ALISは5月末の申告完了に向けて、最後の詰めの真っ最中だ。

先に書いたように、「先行事例がなくALISが道を作っている」状態のため、「こうなっていれば100%正しい」というものが見えづらい状況に変わりはない。

また、5月末までに当局からなんらかの公式アナウンスがあり、その内容がALISが採用したやり方と異なっていれば、当然、それに対応しなくてはいけない。

沼澤氏は様々なケースを想定して、間違いがわかったら即座に修正申告する準備も進めている。

ALISとしての「初年度決算」の情報開示については、5月末の提出が終わったあとの6月中を目指している。

開示の内容や方法を模索中ということは先に書いたとおり。ベンチャー企業には重荷になりかねない手間をかけてまで開示する背景には、国内のICO先駆者としての強い思いと覚悟がある。

「今、仮想通貨に関して、明るいニュースが少ないですよね。ICOについても、“詐欺が多い”とか“怪しい”というイメージがついて回っているのも認識しています。でも、我々はブロックチェーン技術やICOで世界を変えようと真面目に取り組んでいます。

ICOをする上で、情報を開示する義務はありませんが、我々が適切に開示をする実例を作っていくことで、業界の健全化につなげたい、と考えています」(安氏)

編集部より:ICOの会計処理について追記しました。 2018年5月7日 8:35

(文・加藤肇、伊藤有、写真・伊藤有)

外部リンク

cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_486845099ca5_米名門校で蔓延するレイプ競争。被害者が立ち上がった理由 486845099ca5 0

米名門校で蔓延するレイプ競争。被害者が立ち上がった理由

日本では財務省の元事務次官のセクハラ事件をきっかけに、少しずつ働く女性たちが職場などでのセクハラについて声をあげ始めているが、アメリカでは、レイプ・サバイバーの高校生の女の子が立ち上がり、対等な男女関係を築くための授業を広げる活動を始めている。

2018年3月に出版されたチェシーの著書。自らのレイプ被害とそれを防ぐために何が必要なのか、現在の活動について綴っている。
撮影:津山恵子

チェシー・プラウト(19)は、名門進学校を卒業する男子生徒が後輩の女子生徒と何人セックスができるかを競う伝統行事の犠牲でレイプされたことを、同校で初めて警察に報告し、司法の場にまで持ち込んだ。裁判で争った後、「匿名」で訴えている限り「被害者叩き」が止まらないとして、テレビ番組のインタビューに応じ、名前と顔も公表した。

名門校にはびこる忌まわしい伝統

チェシーがレイプ被害に遭ったのは2014年5月31日、15歳のときだ。相手はハーバード大への進学が決まっていた同じ学校に通う、スポーツ万能の上級生オーウェン・ラブリー。 2人が通っていたのは、東部ニューハンプシャー州でも有名な寄宿制進学校セント・ポールズ(1856年設立、生徒数500人)。彼女がセント・ポールズに進学したのは、卒業生として母校を愛する父親と、先に進学した姉ルーシーの勧めがあったから。

チェシーはオーウェンに誘われて完全に外に音が漏れない機械室に閉じ込められた。何度もNoと言い、下着も付け直し抵抗したが、その後パニック障害を引き起こし、抵抗できなくなり、被害に遭った。

事件後すぐに学校側に相談するが、「お母さんに話しなさい」と言われ、両親が遠方から駆けつけて警察に行った。 同校でのレイプ事件を警察に訴え、公判に持ち込んだのは、チェシーが初めてだった。

公判で検察の追及によって明らかになったのは、同校にはびこる男子生徒の忌まわしい伝統行事だった。卒業間際の男子は、「シニア・サルート(3年生への敬意)」というゲームで、卒業前に何人の下級生とセックスできるかを競っていた。Facebookのグループも作り、女生徒のリストまで作っていた。特にチェシーは姉妹で在学していたため、誰が姉妹2人をシニア・サルートに誘えるか、校内で最大のターゲットになっていた。

実名の加害者の主張ばかりが拡散

本の共著者でボストン・グローブ記者のジェン・アベルソン(右)と。書店でのイベントには多くの聴衆が詰めかける。
チェシー・プラウト提供

公判中や公判後にチェシーを待ち受けていたのは、同校生徒や社会からの激しい「いじめ」だった。事件後、新学期から彼女が学校に復帰すると、全校生徒が事件を知っていたにも関わらず、かばってくれる同級生は1人だけ。結局フロリダ州への転校を余儀なくされた。

公判では加害者側には十数人の男女同級生が応援に来ていたが、チェシーの応援は女子同級生2人だけ。メディアでもチェシーは「匿名」「音声を変えて」で報道され、実名の加害者の言い分が大きく扱われた。加害者と彼の家族は「そんなことをするはずがない」と無罪を主張し、卒業生や在校生にメールを送り、弁護士費用の寄付を求めていた。

加害者は重罪であるレイプでは無罪となったが、未成年を性器で暴行したことやインターネットを使って未成年を誘い出したなどの軽罪で有罪となり、*セックス・オフェンダーとして登録された。控訴のための保釈中に女性を誘い出し、自宅謹慎を破ったことで、最終的に拘置所に入れられた。

セックス・オフェンダーとは:性犯罪者または性犯罪の前科がある人

実名顔出し後に広まった支援の輪

他のレイプ・サバイバーの女性たちと一緒に登壇し、教育の必要性を訴えている(右がチェシー)
Georgetown Day School提供

判決後も有名雑誌に加害者を擁護する記事が出るなど、執拗な「被害者いじめ」が続いたため、チェシーは2016年8月、NBCテレビの番組で、顔出し、実名のインタビューに応じることを決断する。同年代のレイプ・サバイバーなどと相談した結果、匿名でいる限りは反論できず、真実について説明できないということを理解したためだ。

「私はもう2度と自分のことを恥ずかしいと思ったりしないことを、みなさんに知ってもらいたいのです。ひどい出来事から2年経ちましたが、私は今立ち上がり、自分に起きたことを自分で解釈し、(他の被害者の)人々、女の子や男の子に、恥ずかしいと思ったりする必要はない、ということを知ってもらいたいのです」(NBCインタビューより)
NBCへの出演直後、予想外の反響があった。Twitterで全米から支援の手が差し伸べられた。セント・ポールズ在学時代に同級生にいたずらされた60歳の男性や、同校に暴行の告発を聞いてもらえず退学した女生徒などからも連絡を受けた。女性下院議員が励ましのツイートをし、チェシーを応援するハッシュタグが一時トレンドになった。

同じ想いの人が他にもいることを知ったチェシーは、被害者らとともに「#I Have The Right To」というウェブサイトを立ち上げた。サイトには以下のような文章が掲載されている。

「私には権利がある
『被害者とみられる』『告発者』ではなく、サバイバーと呼ばれる権利
NOと言ったら聞いてもらえる権利
恥ずかしがったり、いじめられて黙らされてしまわない権利
回復期間に批判されることなく、一喜一憂したり、がっかりしたり、怒ったりする権利
そして最も大切なのは、みなで共に立ち上がる権利(抄訳)」

スポーツ選手ということは免罪符にはならない

チェシーが実名、顔出しでレイプ被害を告発したことから、教育の必要性などが見直され始めている。
本人提供

チェシーは2019年にニューヨークの有名女子大バーナード・カレッジに進学が決まっているが、ギャップ・イヤー(遊学期間)を取り、レイプされた後のサバイバル体験を綴った『I Have The Right To : A High School Survivor’s Story of Sexual Assault, Justice, and Hope(私には権利がある:高校生サバイバーによる性的暴行体験、正義、希望のストーリー=仮訳、ボストン・グローブ紙記者との共著)』を執筆、2018年3月に出版した。さらに公立校やスポーツチームに対し、「コンセント・エデュケーション」(明確なYesがなければ、性行為に及んではいけないという教育)を広める活動を活発に続けている。現在はワシントンで、学校やスポーツチームなどを訪問している。

Business Insider Japanは、彼女に電話でインタビューした。

—— 現在の活動を具体的に教えてください。

チェシー:非営利団体(NPO)のPAVE(Promoting Awareness Victim Empowerment)のアンバサダー(大使)として、ワシントン近辺の公立学校に行って、レイプに結びつく悪い文化が校内にあること、「Yes」 と言わない限り性行為はできないという男女が平等で健全な関係を築く必要性があることを、授業で教えています。スポーツチームとも提携し、教師やリーダーに同じような話をしています。

アメリカでは高校でも大学でも、スポーツに強いということは男子に大きな権力を与えてしまうからです(注:チェシーの加害者もアイスホッケーチームに在籍し、「ゴールデンボーイ(人気者)」だった)。

私はスポーツ選手だからということで、罪が軽減されたり、起訴されないという文化をなくし、女子が見過ごされるという文化をなくしたいのです。だからスポーツ選手に訴えることはとても重要だと思っています。

—— 具体的にどんな話をするのですか?

チェシー:私はバレーボールチームに入っていましたが、女子はショートパンツをはくのが、男子の関心の的になります。でも、それは女子の体を“もの”のように見ていて、尊敬の念に欠けています。ではショートパンツをはかないのか、というのではなく、女子は女子で、自分の身を守ることを覚えた方がいいのです。

そして女子も男子も、セックスやその合意について互いに意見が言えることが大事です。性教育を受けるだけでなく、恐れずに互いに話をするのが重要なのです。

——反響はどうですか?

チェシー:驚くほど、ポジティブな反応があります。性教育はあっても、コンセント・エデュケーションは公立校ではないので、先生たちに「ありがとう」と言われます。先生も生徒もそういう授業を望んでいるのです。

女性が選ぶ権利があること、自分を守ること、それによって健全な男女関係ができることを、皆が知るべきです。

——具体的な変化も起きているのでしょうか?

チェシー:ワシントン近辺で、生徒が中心となって声を上げて、校区ごとに健全な男女関係を築くためのタスクフォースができ始めています。タスクフォースでは、PAVEが用意したコンセント・エデュケーション、性的暴行のサバイバーを支援すること、見て見ぬ振りはしない仕組みを作ることに焦点を当てて、学校で教えていきます。

男女関係には、合意が必要だということを、本当に子どもは知らないのです。こうしたタスクフォースが増えていくことを、強く願っています。(敬称略)

(文・津山恵子)

外部リンク

cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_1ef4809c4f7e_イスラエル唯一の女性刑務所の悲惨な現実 1ef4809c4f7e 0

イスラエル唯一の女性刑務所の悲惨な現実

2018年5月6日 15:00 Courtesy Tomer Ifrah

・ネベ・ティルザ刑務所は、イスラエル唯一の女性刑務所。
・200人を超える囚人が過密状態の監房の中で苦しい日々を送っている。刑務官はほとんど気にかけることもない。
・ユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒、そして初犯から重い刑を受けた者までが同じ独房に入れられている。

イスラエルには、2万人を超える囚人と抑留者がいる。

そのわずか1%が女性、イスラエルの唯一の女性刑務所に収監されている。ネベ・ティルザ刑務所だ。

イスラエル中央地区、テルアビブの東南15マイル(約24キロ)に位置する都市ラムラにあるネベ・ティルザ刑務所には、200人を超える女性囚人が収監されている。1968年に作られたイスラエル唯一の女性刑務所には、ユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒が区別なく、過密状態の監房に入れられている。

イスラエル人の写真家トメール・イフラー(Tomer Ifrah)は2013年、ネベ・ティルザ刑務所に何度か足を運び、囚人たちが味わっている孤独と閉所の恐怖を写真に写真に収めた。彼の写真は虐待や適切な医療の欠如など、かつて囚人に対する非人道的扱いで告発されていたネベ・ティルザ刑務所の実態に人々の目を向けさせた。

彼はまた、女性囚人たちが社会復帰を図ろうとする際、ある種のレッテルを貼られ、多くが再び刑務所に戻ってしまっていることを明らかにした。彼の取り組みは、ウェブサイトとインスタグラムで紹介されている。

一部だが、イフラーが明かしたネベ・ティルザ刑務所の実態を見てみよう。

ネベ・ティルザ刑務所はイスラエル唯一の女性刑務所。同国の2万人の囚人のうち、200人以上が収監されている。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : The Jerusalem Post


危険なほどの過密状態、140平方フィート(約13平方メートル)の監房に最大6人が入れられている。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : Refinery29


大半は母親。子どもたちが面会に来ても、一緒に過ごせる十分なスペースがないと不満を訴えた。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : Refinery29


多くが売春の被害者で、薬物中毒や性的暴行を受けた過去を持つ。セラピーグループに参加する囚人もいる。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : Haaretz


刑務官から暴力を受けた囚人もいると伝えられた。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : Haaretz


刑務所の独房棟には、平均的な大きさの人が振り向けないほど狭い独房がある。「独房棟は虫が沸き、エアコンはなく、扇風機も壊れている」とイスラエルの新聞Haaretzは報じた。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : Haaretz


2003年、拷問に反対するグループは様々な犯罪行為の中でも、囚人たちは暴力、不適切な医療、不当な独房行きや尊厳を無視した身体検査などを受けていると主張した。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : World Organisation Against Torture


精神疾患を患う囚人も多い。だが刑務所に治療の場はない。「心を病む者を一緒にしておくことは、彼女たちにとっては地獄のようなもの」とイフラー氏。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : Prison Photography


唯一の女性刑務所ということは、10代や初犯の囚人も、しばしば罪の重い囚人と同じ監房に入れられることを意味する。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : Refinery29


ユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒も同じ監房に。少数民族や移民も同様だ。厳しい環境から立場を超えた親密な関係が生まれているとイフラ―氏。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : Refinery29


たばこ、テレビ、衣服など、わずかな楽しみもある。

Courtesy Tomer Ifrah


だが「イフラ―氏が撮ったポートレートの多くには深い悲しみがある。女性をとりまく環境と、カメラの前に身を晒すことになった境遇が共存している」とウェブメディアRefinery29は記した。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : Refinery29


「ネベ・ティルザは生きるには非常に厳しい場所。極めて過密状態で、雰囲気は普通ではない。とても狭い」とイフラ―氏はPrison Photographyに語った。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : Prison Photography


出所後、ほとんどの人が仕事探しの困難さにぶつかる。囚人の70%が刑務所に戻る。女性の元囚人は、男性の元囚人よりも厳しく扱いを受けることが、高い再犯率の原因と元囚人は語った。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : The Jerusalem Post


「世間は女性囚人を受け入れない。男性が刑務所に行くことはあり得ることだと受け入れる。希望がある。でも女性は? 女性がなぜ刑務所にいたのかと聞かれる」と元囚人はエルサレム・ポストに語った。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : The Jerusalem Post


囚人は、ときには母性と刑務所生活をテーマにした演劇プロジェクトに参加する。「母親の感情は普遍的で力強い」と演劇監督はイスラエルのメディアに述べた。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : i24 News


ネベ・ティルザの厳しい現実が囚人たちを親密にする。「囚人たちの間にはたくさんの愛がある。彼女たちは互いをとても深く気にかける。親密な家族のようだ」とイフラ―氏はRefinery29に語った。

Courtesy Tomer Ifrah

出典 : Refinery29


[原文:There's only one women's prison in Israel — and a photographer documented the inmates in harrowing detail]

(翻訳:Setsuko Frey、編集:増田隆幸)

外部リンク

cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_5a70609f1338_広告代理店のブラック労働は変わった?電通・博報堂が激論 5a70609f1338 0

広告代理店のブラック労働は変わった?電通・博報堂が激論

電通新入社員だった高橋まつりさんの過労死事件は、社会に衝撃を与えた。それ以降、多くの会社は社員の長時間労働に相当、厳しくなっている。一方で、寝食忘れて没頭するような働き方をする日があってもいい、ハードな日々を超えてこそ成長がある、という声も常に聞こえてくる。

働き方の見直しに日本社会が向かう転換点となる、痛ましい事件が起きた広告業界。 そこで働いてきた電通出身のコピーライターと博報堂出身のクリエィティブディレクター、そしてまさに現役で電通グループ会社や博報堂で働く20代2人の計4人が、「ハードな働き方はありかなしか」をテーマに本音で語った。

電通新入社員だった高橋まつりさんの過労死事件は、ブラックな働き方を問い直すきっかけとなった。

前田将多さん(42):電通出身のクリエイティブ・ディレクター、コラムニスト、スナワチ代表、著書に『広告業界という無法地帯へ』など

三浦崇宏さん(34) :博報堂出身のクリエイティブ・ディレクター、株式会社GO代表

仮名、レイナさん(20代) :電通子会社入社2年目のプロデューサー

仮名、マヤさん(20代):博報堂入社5年内

「10時退社」を「アホか」と思ったけど…

——電通新入社員だった高橋まつりさんの過労死事件は大きな衝撃でした。長時間労働に代表されるブラックな働き方は、もう一切なしという風潮について、それぞれどのように受け止めていますか。

前田将多さん(以下、前田):僕、はじめね、電通が午後10時に電気を消すって言い出したときに「アホか」と思ったんですよ。だけど今、現役で電通にいる後輩なんかの話を聞くと、いったん10時というゴールを目指して終わらせる努力をするから、結果的によかったんじゃないかという人も多くて、「そうなのかな」という気もしています。

三浦崇宏さん(以下、三浦):僕は基本的には、クリエイティブの仕事について、会社が労働時間を決めることには意味がないなと思っています。午後10時に帰ることを目標にするのはいいんですけど、ある種、強制みたいにして、10時に帰らないと罰則!評価が下がる!みたいなことはすごく不毛だなと。 会社にルールを押し付けられてしまうと、どうしても主体的に働くことができなくなってしまう。

ずっと企画の仕事をしているので「今日、ここで頑張らないと、俺は一人前になれない。誰に止められても、自分がやり続けたい」みたいな瞬間が絶対あって。 それを外的要因で阻害するのは、おかしいんじゃないかなと思います。「俺はそういうの(誰に止められてもやり続けるような働き方)、やらないよ」というのは全然OKですけど、そういうのをやりたい人は確実にいる。

帰る理由があって、帰りたいという人を止める必要はまったくない。その一方で「帰らなくてはいけない」と強制するのも、おかしいんじゃないかと思っています。

——「どっちでもいいけれど、決めるのは変じゃない?」ということですか。

三浦:業界全体として、もうちょっと全体の労働時間を短くしようよ、というのは、すごくいいと思います。ただ、広告代理店だけの問題だと取られるとよくない。広告ビジネスが今、歪んだ構造になっていることを考え直そうよというのは、100%賛成です。

クライアントが金曜日の夜7時に連絡してきて、「月曜日には、いったん企画を見たいです」みたいなのは……。僕はいいんですけど(笑)。

「帰りましょう」という圧がすごい

電通出身のコピーライター、前田将多さん。主体性を持って取り組んでいるかどうかで、働き方の意味は変わる。

——現在も広告代理店勤務のお二人は、まだ入社5年内ですよね。今の会社の働き方はどうですか。

仮名、レイナさん(以下、レイナ):「帰りましょう」という圧がすごいです(笑) 。

三浦:「圧がすごい」という言葉は、けっこうパンチがありますね(笑)。

レイナ:うちの会社は、午後10時前になると、緊急性が高そうな警報みたいな音が流れて。「もうすぐ10時なので帰りましょう」という感じになる。一応定時午後5時半にもチャイムがなります。

——もともと鳴っていたんですか。それとも電通過労死事件後に鳴るように?

レイナ:やっぱり労働環境を見直す一環で、鳴るようになったと思います。今、私は平均で午後9時ぐらいには、帰ります。仕事は終わってなかったりもするんですけど。

——上司は「仕事が終わらなくても帰るほうを優先させて」と?

レイナ:そうですね。目標の残業時間の上限があって、それが上司の評価にもつながるので、帰りなさいと言われます。今は(月間)50時間以上働くとレッドカード。上司も、あまりにも50時間をオーバーしている部下がたくさんいると、監督責任を問われます。

三浦:定時が17時で月50時間ということは、営業日が20日間あるとして、毎日午後8時まで残ったら、もうダメだ。

仮名、マヤさん(以下、マヤ):けっこう(残業)できないですよね。

制度に合わせるために始まる地獄の連鎖

——その上限は、守れていますか。

レイナ:守るようにしていますが、やっぱり(納期前の)最後の方で危なくなると、休んだりして、有給休暇を使って仕事するようになります(笑)。

三浦:こうなっちゃうんですよね。会社の制度に合わせるために、矛盾して有休を取って、その時間で仕事をしてみたいな。 地獄の連鎖。

前田:本末転倒ですよね。

マヤ:博報堂はそこまで厳しくなくて、10時以降残業する場合は申請を出すシステムになっています。その申請を出せば一応残れる。申請頻度が多い人には上司が声がけしたり業務量の調整が入ったり、という感じです。うちも鐘は鳴るようになりました。午後8時以降、2時間おきに鐘が鳴って、電気が消える。

ただ、もう申請の常連さんみたいな、残業大好き人間たちがいっぱいいるので、その人たちは「もうしょうがないね」という感じで、みんなネタにしています。

三浦:僕が在籍していた3年前くらいから電気は消えるようになってた気がする。

マヤ:10時以降は2時間おきに電気が消えるので、いちいち点けなくちゃいけなくて。だからBizタワー(博報堂本社のある赤坂Bizタワー)を見ると、午前0時とか2時とかにパッとつきます。真っ暗になって、パッと。

仕事が早いと給料が低くなるという矛盾

三浦崇宏さん。「今日、ここで頑張らないと男になれない」という日はあるという。

——前田さんが、電通時代の話を書かれたものを読むと、「もう死ぬかもしれないと思った」と。

前田:いつもじゃないですが、「倒れるんちゃうか」という瞬間もあった。でも、そんなでもないですね。さっき残業時間の話がありましたけど、僕はいつも月間30~40時間ぐらいで。

——少ないイメージですね。

前田:僕、仕事が早いんですよ(笑)。仕事が早いとね、給料が低いんです。残業代が少ない。

マヤ:それって矛盾していますよね。

前田:そうなんです!

マヤ:生産性の高い人の給料が低くなるっていうのは「早くしよう」っていうインセンティブにならないですよね。

——逆に、仕事が遅くて、すごい額の人もいたんですか?

前田:います。いつも何か知らないけどトラブっていて、「おまえ、またかい。なんでおまえ、俺より給料が高いんだよ」っていう人、いますよ。僕は「ええんちゃう」と思っていました。そんな残業代をもらうよりも、さっさと帰って、ジムに行くとか何か別のことをしているほうがよかったから。

——考え方が、一般的なイメージの広告業界に染まっていないというか。

前田:だから辞めちゃうんですよ(笑)。

——広告業界独特の慣習で、若手のお2人が来てみて「えっ!?」と思ったことはありますか?

マヤ:私は複数のクライアントを担当しているからまだいいですが、1つのビッグクライアントを担当していて、その企業の文化と合わなかったりすると、めちゃめちゃきついみたいなことは、よく聞きますね。

——営業の人にもよりませんか?横暴なクライアントに、何を言われても「はい!」みたいな。

マヤ:そうですね。ただ「それはよくないよね」と言って、制作の部署から変えていこうという文化も起こり始めています。営業が何と言おうと、制作(の担当者)がクライアントに直接、「これは、やっぱりおかしいと思います」というふうに、資料を付けて持っていくとか。 そのほうが有能な社員だよねという風潮は、徐々に出始めています。

あと、「なんでも営業のせいにするのはよくない」という先輩方もいっぱいいらっしゃいます。

なんでも引き受けなくなってきた

——電通の社員が午後10時に帰った分のしわ寄せが他社に来ているという話を聞きます。電通のグループ会社で働くレイナさん、そんな実感はありますか?

レイナ:むしろ10時以降(電通本社のある)汐留から連絡がないので、しわ寄せは、あまり感じないです。連絡も来ないし、10時以降にメールを送っても返信が来ないので。そこは(電通の)営業の方が、徹底しています。

前田:携帯もメールも記録が残っちゃうから、しないんですよね。

——「汐留の周りのカフェは、パソコンを持っている人でいっぱい」とも聞きますが。

レイナ:あるかもしれませんが、周囲にはいないですね。私が一緒に仕事をしている(電通の)営業さんは、(どうしても10時以降に連絡を取る必要があれば)うちの会社に直接来ます。電話で「今、御社の1階にいるので、来てください」みたいな感じです。

——それで仕事は回っていますか。

レイナ:案件は精査するようになってきている気がします。なんでも引き受けられなくなってきたというか。

長時間労働で知られた広告業界だが、働き方は変わりつつあるという。

前田:それで、いいんじゃないですかね。どこの会社も今、人手不足で困っている時代なんだから、なんでもかんでもできませんね。

三浦:(マヤさんに)実際今、どのくらい働いているの?

マヤ:かなり月によるんですけど、残業時間は70時間とかです。

前田:めちゃめちゃ働いている。

マヤ:ただ私、朝が遅いので。9時半が定時なんですが、だいたい午前10時半ぐらいに出社してます。「1年目は9時半に来い」で、それ以降は10時半ぐらいまでならOKみたいな雰囲気です。 本当に仕事が詰まっていたら、ランチはコンビニでパッと買って、机で食べながらずっと仕事をして。で、忙しい日だったら午後10時、11時、もしくは午前2時、3時まで働くことも月に1~2回、2~3回です。

三浦:帰るのが午前2時、3時が月に1~2回?

マヤ:はい。それも週に1回あるかないかくらいですね。制作の部門ということもあって時間管理はけっこうゆるくて。ランチで同僚と2時間外に行ったりすることもありますし、朝が遅かった分、夜がちょっと遅くなるみたいな。

人間の側面を仕事に持ち込む

——ここ数年、電通バッシングが多かったですが、グループで働くレイナさんの実感はどうですか?自分の会社は“ブラック”という認識はありますか。

レイナ:意外と(電通本体の)皆さん、優しいし、ゆるいです。私の部署もゆるいし。「大変!」と言えば、どうにかしてくれたりするので、あまり……。(電通過労死事件で)親戚や周囲からは「大丈夫?」とけっこう心配されて入社したんですけど、「あっ、こんなものか」と思いました、私は。こういう業界に入る以上は(ハードな働き方も)覚悟していたので、労働時間に(イメージと)ギャップは、あまりないかもしれないです。

——三浦さんは今自分で起業され、自身の会社を「うち(GO)はブラック企業です」とブログにも書かれていますね。

三浦:はい。「黒い要素多めのカラフル企業」という言い方をしています。

僕は経営者なので、クライアントに対しても社員のクリエイティブ・ディレクターのスケジュールを見せて、「お気持ちはわかりますけれど、彼は木曜日と金曜日は必ず奥さんの代わりに家を守るという要素があるので、木金の夜の作業はできないんですよね」みたいに、個人の事情を説明して理解してもらっています。

僕も普通に「木曜日は午後7時~10時はジムに行かないと僕、太りすぎで死んじゃうんです。ですので、木曜日夜の返信はないです」みたいに言いますね。

前田:そういう「人間である」という側面を、ちゃんと仕事に持ち込むというのは、僕は正しいと思う。日本のサラリーマンは、あたかも人間を超えたものであるかのように、冗談も言わず、ウンコもせず働くというのが正しいとされていますね。そうじゃなくて、太りすぎて、死ぬか生きるかの人生を抱えている。家に帰れば奥さんもいる、犬だって腹をすかせているということを、ちゃんと言わなあかんよね。

クライアントももう少し考えてほしい

三浦:最近、僕の10歳上の元博報堂の先輩も、45歳で亡くなりました。もう本当にショックを受けました。その後、僕の会社でも全従業員に人間ドックを義務化しました。人間であることを、やっぱり大事にしないと、いい仕事も生まれない。

たぶんクライアントからは(やりとりする)営業の奥にいるクリエイターやプランナーが見えないんですよね。 営業の奥に、クリエイティブ自動販売機みたいなのがあって、営業がそれを操作すると企画が出てくるみたいに思っているかもしれないけれど、中には人間がいると、やっぱり伝えていかないといけないなと思います。

マヤ:クライアントも、なぜパワーポイントの枚数が多い資料がいるかを、もう少し考えてほしいです。社内説得のためですよね。(そこを変えれば)自分たちの働き方改革にもなるわけです。もうちょっと何が言いたいかを煮詰めてくれると、お互い、すごく時間が減るのにって思います。

博報堂本社のある、赤坂Bizタワー。広告業界特有の価値観が、仕事の足かせになっていないかという声も上がる。

社内説得のためのNG案が非効率

——20代の2人は、「こういうふうに変わったら、もっと働きやすくなるのに」ということは何かありますか。

レイナ:クライアントに(制作サイドから)いろいろ提案をするのですが、NG案を出すのが本当に非効率だなと思います。

—— NG案とは ?

レイナ:いい案が通るように捨て案をつくるのですが、その作業がけっこうあるんです。働く時間が決まっている中で、すごく非効率だなと。

——クライアントが「数を出せ」って言ってくるんですか?

レイナ:そうですね。クライアントが上司を説得できないので、比較検討するものが欲しいということだと思います。さらにその下の協力会社さんにお願いすることになってしまいます。例えばカタログを作るときに「これでいきたい案」「これでいけたらいいなと思う案」「これは絶対ないだろうという案」とか。最小限で作ってもらったほうが、協力会社さんにもいいのにな、と思います。

早く帰ると売れっ子じゃない?

「人間であると、仕事にも持ち込むことは、正しい」

——マヤさんはどうですか?

マヤ:毎日だいたい午後7時、8時ぐらいまでは会社にいます。5時半が定時で、6時とか6時半に先輩が帰っていると「仕事、少ないのかな?」って思ったりするんです。本当にくだらないんですけど。同期との間でも「○○さん、最近、早いよね」「わかる、見た」みたいな。

自分もたまたま午後7時に退社するときに、廊下で会った2人の先輩から「 おぅ、早いな」と言われたことが、1カ月に2回あったんですよ。それで「ヤバイ!先輩たちからの自分の印象が、ちょっとなんか、あいつ使えないみたいになってないかな」と思ったときがあって。

そんな中でも、家で資料をつくったりしているし。たぶん同期も、そういう子がいっぱいいるんですよ。だから会社にいる時間が仕事時間っていうのは、正確ではないし、そもそも長くいることが正義みたいな風潮はおかしい。最近は聞かなくなったとはいえ、それでも一部にはあるんですよ。

三浦:クリエイターやプランナーって、人気商売だから。フロアの中にいて、売れっ子と、売れっ子じゃない人って、明確に差がつくんですよ。遅くまでいるほうが売れっ子感はあるみたいな(笑)。

前田:それはわかる。やっぱり暇であること、早く帰れることは恥ずかしいんですよね。本当にそこは意識改革しなくてはと思います。それが、さっきの生産性。早くやるやつは優秀っていうことにならないと。

成長と成果に飢えていた

三浦:若い頃の僕とか、本当ガツガツしていて、とにかく早く成果を出してエースになりたいと思っていました。「業界でトッププレーヤーになりたい」みたいな。僕は10年間博報堂にいて(会食などの)予定なしのまま、夜10時前に帰ったことは、多分ないですね。

前田:僕はどれだけ空き時間をつくるかを考えていました(笑)。

夜は10時に帰れというのは、最低限のリスクヘッジだが、もっとフレキシブルにできないか。

三浦:正しい、正しくないで言うと、たぶん前田さんのほうが正しくて。僕は、やっぱり業界の中で、本当にもう染まり切っていました。新人のときとか、1年目後半から2年目にかけては朝の3時、4時前に帰ったことは、たぶんないですね。本当にこれ、誇張なしで。

——遅くまで働くと頭の回転が悪くなるとか、生産性が落ちたりはしないんですか。

三浦:眠いと途中寝落ちしそうになったことがあって、怒られたりもしましたけど、それでももっともっと仕事をしたかった。成長と成果に飢えていた。

僕が今そこそこお仕事をいただけているのは、やっぱりその時の経験が基礎体力になっていると思うんです。 ある意味「人間であることをちょっと捨ててでも、トップの世界に行きたい」みたいに思う人って、やっぱり一部いて。それは業界を支える上で重要だと思うし、そういう生き方を決めたら決めたで、別にいいと思うんですよ。

だから、前田さんが健康的に早めに帰ってジムに行くのも、僕が2時、3時まで仕事をガツガツやって、誰よりも早く賞を取りたいと思っていることは、同じだと思います。自分の望む自分になるための道具として企業を捉えている。

前田:そのとおりですね。 僕は、どっちかといえば、広告業界でのし上がろうっていう気がなかったから、暇を見つけては、タリーズ(・コーヒー)に行って本を読んでいたわけです。

三浦:でも、そういう人がこうやって成功してるわけだから。

——どっちも主体性を持ってやってこられたところがポイントですかね。

前田:そうですね。

三浦:「全員、夜は10時に帰れ」というのは企業の発想としては正しいし、ある種、最低限のリスクヘッジだと思います。死ぬ人が出たら、終わりなので。

でも本来はもっとフレキシブルな制度にして、スモールマネジメントを徹底していくべきだと思います。 ただそれには、すごくコストも時間もかかるから、いったん「22時にみんな帰りなさい」と言っているのに近いかなと感じます。

前田:まさにそのとおりだと思うんだけど、それが何千人の会社でやるのは、つらいよね。

三浦:本質的には、(会社が)大きくなりすぎてるということが問題なんですよね。どこまで行っても。

前田:そんなでかい図体が必要な仕事ちゃうねんから。

(構成・滝川麻衣子、聞き手・浜田敬子、滝川麻衣子、撮影・今村拓馬)

外部リンク

cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_d7afc2e8d21b_AH-64Dアパッチ・ロングボウのコックピットに座ってみた d7afc2e8d21b 0

AH-64Dアパッチ・ロングボウのコックピットに座ってみた

2018年5月6日 11:00 Daniel Brown/Business Insider

テキサス州フォート・ブリスにあるビグズ陸軍飛行場(Biggs Army Airfield)は周囲を岩山に囲まれている。そして、騒がしい場所だ。

飛行場にはチヌーク、ブラックホーク、アパッチなどのヘリコプターがあちこちにあり、多くは地上作業中。数機は繰り返し上空をホバリングしていた。

ザカリー・アイヒホルン(Zachary Eichhorn)准尉が攻撃ヘリコプター、AH-64Dアパッチ・ロングボウへと案内してくれた。

見学は30分程度だったが、准尉は火器管制システムや操縦席を見せてくれた。

1997年、1機目がアメリカ陸軍に納入された。

Daniel Brown/Business Insider


最高速度は227マイル(時速約365キロメートル)、航続距離は300マイル(約480キロメートル)。

Daniel Brown/Business Insider


GE製T700-GE-701Cターボシャフト・エンジンを2基搭載。

Daniel Brown/Business Insider


エンジンのクローズアップ。

Daniel Brown/Business Insider


兵装パイロンの両側に搭載されたハイドラ70mmロケット弾ポッド。CRV7 70mm対地攻撃ロケット弾など、折り畳み式の安定翼を備えた様々なロケット弾を発射可能。

Daniel Brown/Business Insider


准尉がロケット弾ポッドについて説明している動画。

出典: YouTube

別方向から見たところ。

Daniel Brown/Business Insider


准尉は、ヘルファイア・ミサイルについても説明してくれた。

出典: YouTube

機首の下にはM230機関砲。

出典: YouTube

機首先端のセンサー類。パイロットと射撃手にヘルメットに装着された単眼レンズを通して、攻撃目標の情報や様々な情報を提供。

Daniel Brown/Business Insider


メインローターの上に設置されたレーダー・ドーム。地上部隊や他の航空機を検知する。レーダーからの情報はコックピットのディスプレイに表示される。

Daniel Brown/Business Insider


アパッチのメインコンピューターシステム。レーダー・ドームやセンサーからのデータをすべて処理する。

Daniel Brown/Business Insider


パイロットのコックピット。射撃手のコックピットの後方にある。

Daniel Brown/Business Insider


コックピットの主要装備を解説する准尉。

出典: YouTube

パイロットの単眼レンズについて解説する准尉。これがアパッチの操縦が難しい理由だと語った。

出典: YouTube

パイロットのコックピットに座らせてもらった。少し窮屈。

Daniel Brown/Business Insider


次に射撃手のコクピットに移動。どちらの装備も極めて似ており、必要に応じて役割を交代することもできる。

Daniel Brown/Business Insider


射撃手のコクピットから見たところ。

Daniel Brown/Business Insider


アパッチの詳細が知りたければこちらへ(英文)。

[We climbed into an Apache helicopter's cockpit and saw why it's one of the most difficult aircrafts to fly]

(翻訳:塚本直樹、編集:増田隆幸)

外部リンク

cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_4eb3a70f878d_GW最終日の法則:「マッチングアプリ登録者が増える」 4eb3a70f878d 0

GW最終日の法則:「マッチングアプリ登録者が増える」

ゴールデンウィーク最終日。今年もなにも生産性のあることはせず、ダラけて過ごしてしまった。

学生時代の友だちに会うと、恋人や結婚の話になったりもする。別に意識しているわけじゃないけど、連休の最後の方になるとついつい開いてしまう、マッチングアプリ……。

こういう経験をしている人は私だけではないのでは?

登録者が1番増えるのは1月3日

「連休最終日にはマッチングアプリの利用者が増える」と語るのは、マッチングアプリ大手のペアーズを運営するエウレカ社 取締役 CPO/CMOの中村裕一さんだ。ゴールデンウィークに限らず、お盆や年末年始などにもユーザー数の伸びが見られるという。

これは日本に限らず、他の国も同様だそう。海外は日本ほど「お正月」の概念はないはずなのに、世界的で見ても1月3日が1年の中で一番マッチングアプリのユーザー登録数が増える日だという。

理由を聞いてみると、連休中に実家に帰った時に地元の友だちから薦められる、休日に学生時代の友だちと会って薦められて始める、というパターンが多いそうだ。

「実家に帰った時、恋人のいる友だちに会ったり、友人に子どもができていたり、親から『いつ結婚するんだ』と言われたり。そういう出来事があって、出会いの一つの手段として、ペアーズに限らずオンライン・デーティングサービスの利用者は連休最終日に伸びる傾向があるようです」

連休明けに恋人をつくるには……?

Shutterstock / SunKids

「連休最終日、無性に恋人が欲しくなる症候群」に陥っているのは私だけではないと知ってホッと一息。

中村さんは、ペアーズが始まった6年前に比べて、オンライン・デーティングは選択肢として当たり前になってきている、と感じるそうだ。

ペアーズでは実際にペアーズを通じて結ばれたカップルをモデルとして起用した広告キャンペーンを打っている。

2017年の夏は出演したカップルが3組、2018年の2月は14組、そして2018年の5月からのキャンペーンでは参加したカップルが過去最大の88組。短期間で飛躍的な伸びを見せており、オンラインで恋人を見つけるのは恥ずかしいこと、という風潮は薄れてきている、と中村さんは語る。

でも、登録すればすぐに“意中の人”に出会える訳ではないですよね?

ということで、中村さん、マッチングアプリで恋人をつくるコツも教えてもらえませんか?

まずはマッチングアプリに登録する時には自分のプロフィールを書く訳だが、そこにコツがあるという。

「単に『よろしくお願いします』だけではなく、相手がリプライしやすいような共通点とか、何かを一緒にやってみよう、と相手がイメージできるようなプロフィールを心がけてもらえると、マッチング率は上がるかなと思います」(中村さん)
プロフィールを完成させるのが面倒くさい人は「コミュニティ」に参加するのも成功率をあげるそうだ。ペアーズには、ユーザーが作り、気軽に入ったり出たりできる「コミュニティ」という機能がある。

ジャンルもさまざまで、「ボルダリングが好き」「カフェ巡りがしたい」といった趣味的なものから、「バツイチも恋愛対象」「異性の友達はいません・少ないです」といった、相手の嗜好・考え方がわかるものまで。

「ペアーズを介して恋人になった方、約13万人以上の中だと、みなさん平均して20〜30のコミュニティに入っていますね」(中村さん)

必勝法は連休初日から利用すること

さらに「連休明けの恋人づくり必勝法」を尋ねると、中村さんがひとこと。

「連休最終日に恋愛したいなと思うことがわかっているのなら、やはりゴールデンウィークの初日から利用することが効率的ではあるかな、と」

「せっかくだったら、連休初日から」。さらりと残酷な宣告をする、エウレカ取締役 中村裕一さん。

なんと、そもそも開始時期から戦略を見直せ、と。ペアーズの場合、ほとんどの人は使い始めてから1日以内、女性は平均して5〜6時間で初めてのマッチングが成立するという。そこからすぐにメッセージを交換し、デートまで約束できるのは時間が空いている連休中ならではだ。

「最終日に始めると次の日から仕事が始まって忙しくなってできないということも多いので……」

「連休最終日に登録される方は、気持ちが燃え上がって(アプリを)始めるところがあるので、普通のユーザーさんよりも(連休後の)利用時間は短いかもしれないです」(中村さん)

私が熱しやすく冷めやすいところも、マッチングアプリには見透かされているようだ。

(文・写真、西山里緒)

外部リンク

cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_50999dae2f33_あなたは大丈夫? 職場で「良い人」過ぎることの8つの短所 50999dae2f33 0

あなたは大丈夫? 職場で「良い人」過ぎることの8つの短所

同僚に親切にしすぎていない?
David Goehring/Flickr

・職場で周りに優しくするのは当たり前と思われがちだ。
・しかし、フレンドリーにし過ぎると、職場では不都合が生じるかもしれない。
・絶対にあなたの親切心に付け込まれてはならない。

わたしたちは子どもの頃から、他人とは仲良く遊び、自分がして欲しいように他人に接しなさいと教えられてきた。

おとなになると、その教えを職場での振る舞いに当てはめるようになる。しかし、職場において良い人「過ぎる」なんてことはあり得るのだろうか?

この疑問に対してQ&AサイトQuoraのユーザーたちは、「他人に対して、良い人過ぎるデメリットは何? 」というスレッドで議論しており、どうやら職場で親切に過ぎることには、いくつかの不利益が伴うようだ。

Business Insiderでは、良い人過ぎることが裏目に出るかもしれないことを示すために、最も参考になる回答をまとめた。

誤解しないでほしいが、フレンドリーであることを止める必要はない。ただ、必要とあれば、毅然とした態度を取ることを恐れてはいけない。

---------------------
退屈な人に見える?

aslysun/Shutterstock

人が良過ぎると、受け身で退屈な人間だと感じられてしまうことも。「やがて、つまらない人だと思われるようになる」とマニッシュ・バーンウォル(Manish Barnwal)さんは投稿している。礼儀正しいのは素晴らしいことだが、自分の個性も見せよう。


話を聞いてもらえない?

silverkblackstock/Shutterstock

「ノーと言えない性格だと、いずれ他人はあなたがノーと言っているときでも最終的にはイエスと言ってくれると考え、何度もしつこく頼んだり、説得しようとしてくる」とアドリヤ・サブラマニアン(Adrija Subramanian)さんは書き込んでいる。同僚はあなたを「ノーと言えない人間」だと見なし始め、あなたが手いっぱいのときですら、何でもかんでも手伝ってもらおうとするだろう。

別のユーザー、ボーラン・タッチ(Borang Touch)さんもこの意見に同意していて、ノーと言ったあなたに罪悪感を感じさせるようなタイプの人間を引き寄せ始めてしまうと付け加えている。


周りに付け込まれる?

WAYHOME studio/Shutterstock

あなたの優しさを弱さの証しだと見る人もいるだろうとクリストファー・コーセル(Christopher Kosel)さんは述べている。そして、あなたは歯向かってこない、コントロールするのは簡単だと見なすだろう。

頼まれごとを全て聞き始めたら最後、人はそれを当然のように期待するようになるだろう。「あなたをいいようにこき使うだろう! 」とユーザーのニハリカ・キショール(Niharika Kishore)さんも述べている。「一度でも『この人は大丈夫』と感じさせてしまったら、毎回あなたに何かをしてもらうのは当然の権利だと思われてしまう」


自分に対する期待値が上がる?

Strelka Institute for Media, Architecture and Design/Flickr

何にでもイエスと答えるという評判が確立されてしまうと、いざ毅然とした態度を取ったときに誤解されるかもしれない。

「人にいいように使われるのを止めるためにあなたが変わろうと決意して、何かを断ると、周りの人にがっかりされてしまうだろう。『良い人だったのに、変わったね』という不満の声とともに」とグラウコ・ベカロ(Glauco Becaro)さんは述べている。

あなたがノーと言うのは理にかなっているかもしれないが、日ごろの振る舞いと比較して自分勝手に見られてしまうことも。


怪しまれる?

Rawpixel.com/Shutterstock

あなたが性善説を取っていても、誰もが常に良い人だとは限らないし、多くの人はあなたの優しさの裏に何か隠れた動機があるのではないかと疑念を抱くかもしれない。

「『タダより高いものはない』と言うように、理由もなく『良い人過ぎる』なんて、間違いなくあり得ない」とアニラ・サイド(Anila Syed)さんはコメントしている。あなたがただ良い人であろうとしているだけでも、人はあなたが本当は何を求めているのか、疑問に思い始めるかもしれない。

また、優し過ぎることは、上司や同僚と真の友人関係を築く妨げにもなるかもしれない。

「性格を偽っているように思われ、周囲の人間と意味のある繋がりを作りにくくなってしまうかもしれない」とブライアン・ルイス(Brian Lewis)さんは述べている。


敬意を払ってもらえなくなる?

Strelka Institute for Media, Architecture and Design/Flickr

あなたが常に良い人過ぎると、それ以外の個性を他人に見出してもらえなくなるだろう。

他の人がそうでないときも、あなただけ優しければ、あなたはしかるべき敬意を必要としていないように映り、他人から見下されてしまうだろうとフーリン・ワン(Fulin Wang)さんは書き込んでいる。


自分の時間を他人に割き過ぎている?

Dean Drobot / Shutterstock

「他の人の利益のために、あなたは譲歩してそれをしようとする」とディクシャ・バスラ(Diksha Bathula)さんは述べている。

あなたの全ての時間を他人の手伝いに注ぎ込んでいると、自分自身や自分のプロジェクトに集中する時間がなくなってしまうだろう。


見落とされているように感じる?

CREATISTA/Shutterstock

「多くの人は、他人のニーズを『察する』ようにはできていない」とユーザーのウィル・スターン(Will Stern)さんは投稿している。「彼らには(要求を)伝えなくてはならない。人が良過ぎる人の要求は、それを明確に口に出さないことによって、満たされずに終わるだろう」

それは、職場に不満を持つことにつながるかもしれない。

スターンさんは、「何でも喜んでやるタイプの人間だと思われている限り、本当にやりたい仕事を割り当ててはもらえないだろう」と述べている。


[原文:8 ways being too nice at work can backfire]

(翻訳:Yuta Machida、編集:山口佳美)

外部リンク

cat_11_issue_oa-businessinsider oa-businessinsider_0_720d42c29376_生活費は折半、何度も引越し、ミレニアル夫婦のお金ルール 720d42c29376 0

生活費は折半、何度も引越し、ミレニアル夫婦のお金ルール

結婚生活には常にお金の問題がつきまとう。夫婦の生活費をどう分担するか、その際の家事負担をどう考慮するか。転職したくても収入が下がることを懸念する“嫁ブロック”で仕事選びすらままならない男性もいれば、家事や子育ての負担が重くキャリアアップ(=収入アップ)を諦める女性も。

一方で、ミレニアル世代には古い価値観に縛られない独自のルールを設けるカップルも出てきた。

冷蔵庫には夫婦で折半する生活費のメモが貼られていた。
撮影:竹下郁子

東京都在住の小林味愛さん(31)、中西信介さん(31)夫婦はこんなルールを作っている。

1、生活費は完全折半
2、収入や資産の情報は開示する
3、転職は相手の意思を尊重する
4、外食は誘った方が支払う
5、家事はできる方がする

2人とも元国家公務員だが、夫の中西さんは4カ月でキャリア官僚を退職。次に選んだ職はリヤカーで豆腐を販売する「豆腐の引き売り」だ。世帯収入が激減したため、売れ残りの豆腐や無料でもらえるパンの耳を食べて空腹をしのいだこともあったという。だが、そこに悲壮感はない。

「家にいるときの彼の表情がすごく良くなったんです。楽しければ何でもいいじゃんって思いましたね」(小林さん)

「妻をレストランに誘ってません(笑)」

中西信介さん(左)と小林味愛さん(右)。マニュアル思考の夫とコミュニケーションが得意な妻。互いの足りないところを補い合う関係だそうだ。
撮影:竹下郁子

まずは、夫婦合わせて7つの職を経験している2人のキャリアから紹介したい。

妻の小林さんは慶應義塾大学法学部政治学科卒業。衆議院調査局に入局し、経済産業省への出向を経験。その後、日本総合研究所で地域活性化などのコンサルティングをし、2017年に福島県国見町で株式会社「陽と人」を立ち上げた。県の農産物の新たな販路開拓や6次化商品の企画・販売などの事業を手がけており、東京との2拠点生活を送っている。

夫の中西さんは早稲田大学政治経済学部・国際政治経済学科を卒業。農林水産省に入省するもわずか4カ月で退職。リヤカーを引きながら豆腐を販売するアルバイトを1年ほど経験した後、再び国家公務員として参議院事務局に入局。約4年前に都内で複数の認可保育所を運営するナチュラルスマイルジャパンに入社。保護者や園と地域をつなぐコミュニティコーディネーターとして働きながら、保育士資格を取得した。

夫婦の大きなルールは、家賃、電気・ガス・水道代などの光熱費、新聞の講読料とNHKの受信料、携帯電話やインターネットの料金、日用品の購入などの生活費は完全に折半すること。月々の支払い金額を毎月1日に小林さんが中西さんに振り込むようにしている。財布は別々で、生活費以外のお金は自由。ただし資産状況はフルオープン。給与や貯金はもちろん、小林さんは資産運用として不動産を持っているが、すべてお互いに把握できるようにしている。

割り勘論争は過去のもの?
shutterstock/QualityStockArts

生活費に食費は含まれていない。もともと多忙で一緒に食事をすることが少なかった上、今は小林さんは月の3分の1ほどしか東京に滞在しない。それぞれが自身の懐具合と相談しながら自由に食事をとるが、外食は誘った方が支払うのがルールだ。ほとんどが外食好きな妻の小林さんが誘って支払うパターンだそう。

「彼女の方が収入も貯蓄も多いんです。でも生活費は彼女と同額支払うと決めているので、残った金額で生活することを考えると自然と節約しますね。家で自炊したり職場にもおにぎりや弁当を持って行ったり工夫しています。僕から贅沢なレストランには誘ったりせず、誘ってもらったら『行きましょう!』と食べに行く。それでよいと思ってるんです」(中西さん)

収入に見合った生活をすればいいだけ

付き合い始めたのは、国家公務員として働き始める直前。すぐに都内のマンションで同棲を開始した。食事も割り勘で、生活費を折半するのはそのときからのルールだ。だから、中西さんが農林水産省を退職し世帯収入が減った後は、「その時の収入に見合う家」として家賃の安い埼玉県の郊外に引っ越した。

結婚前だったとはいえ、同棲中の彼女がいたら相談するものだと思うが、小林さんが中西さんの退職を知ったのは、中西さんが上司にその意思を伝えた後だった。

「ある日突然『辞めてきた』と言われたんです。マジ? 超ウケる!と思いましたね。良い成績で入省して引っ張りダコだったのに、地位とか名誉とか意識してないんだな、すごいなって。彼は新たなステップに行きたいと言ってるんだから、引き止めようなんて全く思いませんでした。夫婦はどちらかの所有物じゃない。それぞれがやりたいことをやって人生を満たしている方が家庭もハッピーになると思います。収入に見合った生活をすればいいだけですしね」(小林さん)

2人とも転職や起業を数回繰り返しているが、事前に相談することはあまりなく、基本的に事後報告だという。

小林さんは「嫁ブロック」という言葉を聞いたことがないと言う。夫婦の友人たちも「変化を悲観的じゃなくポジティブに捉える人が多いんです」(中西さん)
shutterstock/milatas

中西さんが国家公務員を辞めたいと思ったのは、連日、朝まで続く国会対応に疑問を感じたからだ。

「この激務をこなしながら円満な結婚生活ができるんだろうかって。職場全体の雰囲気を見てもそれは無理そうだったし、組織に染まる前に脱出しちゃおうという感じでした。次は人々の生活に直接関わる仕事がしたいと思っていたときにタウンページで見つけたのが『豆腐の引き売り』。まさに地に足がついている、この時代に超貴重なアナログな仕事だと。これだ!と思いましたね」(中西さん)

朝9時から夜9時までリヤカーを押す生活だったが、もともと収入が低い上に、高齢者に誘われて自宅で何時間も世間話をすることもよくあったため当然売り上げ成績は悪い。その後の生活が苦難の連続だったのは前述した通りだ。仕事の充実感はあったがこのままでは結婚できないと思い、中西さんはもう一度国家公務員試験を受け参議院に入る。再び都内に引っ越し、2人が結婚したのは25歳のときだ。

ティファニーは誰でも買えるから……

中西さんがつくった結婚記念日のムービー。「無理しないってことだよね」(中西)「身の丈に合った生活だよね」(小林)と笑い合う。
撮影:竹下郁子

年に1回は2人の両親も一緒に家族旅行に行く、そして結婚記念日にカメラマンに写真を撮ってもらうことも2人のルールだ。結婚記念日に夫から妻に送るプレゼントの内容も収入に合わせて変わってきた。

「ティファニーのネックレスは誰でも買えるんだから、僕にしかできないことをやろうと」(中西さん)

昔はネックレスや宝石だったが、最近は写真やムービーを編集した1年間の夫婦の記録を贈っている。

「お金をかけずに人の心を動かすテクニックがすごいんですよ、彼」(小林さん)

小林さんは中西さんのことを「マメで柔軟な人」だと言う。家事はほぼ夫の中西さんの担当だ。

「僕の方が時間があるし、やった方がいいかなと。家事はやるのもやってもらうのも苦じゃないですね。学生時代にきれい好きな友人と同居していたときは彼に全部任せていたし、関係性に合わせて決めればいいと思います」(中西さん)

車は持たず、必要なときはカーシェアリングを利用している。家も、これまでも生活の変化に合わせて何度も引っ越しているため購入する予定はない。子どもはそろそろと考えているが、出産や教育費など子どもにかかるお金もすべて折半する予定だ。

マイナビウーマンが22歳~34歳の働く女性を対象に調査したところ、共働きの場合の生活費は折半にすべきだと考える女性は38.5%にとどまった(2014年9月)。フルタイムで働く女性の平均賃金は月額24万4600円と男性の賃金の73%しかないため(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2016年)、こうした賃金格差も背景にあると考えられるが、今後、小林さん中西さんのような夫婦も増えてくるのかもしれない。

(文・竹下郁子)

外部リンク