自民党の河村建夫衆院議員は、世界的に普及が進むエレクトロニック・スポーツ(eスポーツ、対戦型競技ゲーム)について「五輪種目になるかもしれず、日本が後れを取るわけにはいかない」と述べ、法整備などに取り組む考えを示した。パリ五輪が開催される2024年を念頭に、今後6年以内に日本で数万人規模の国際大会が開催できるよう環境整備を図るという。
超党派のオンラインゲーム・eスポーツ議員連盟で会長を務める河村氏は16日のインタビューで、まずは「国内競技団体の日本オリンピック委員会(JOC)、ひいては国際オリンピック委員会(IOC)への加盟を支援したい」と強調。eスポーツが産業として根付けば、「GDP(国内総生産)に影響する」ほどの経済効果があるとして、「国民の皆さんにeスポーツを知ってもらう必要がある」と語った。
eスポーツは、すでにアジア大会での採用が決定。今年のジャカルタ大会で公開種目、22年の中国・杭州大会ではメダル種目となる。五輪にも波及しており、2月に韓国で行われる冬季五輪に合わせ、米インテルが平昌でeスポーツ大会を開催。河村氏によると、24年のパリ夏季大会を開催する仏オリンピック委員会幹部らもeスポーツに関心を持っている。
高額賞金
河村氏は機運を盛り上げるために「国際的な大会を一度やってみたらいい」と話す。議連は昨年12月、東京都の小池百合子知事を訪問、20年の東京五輪にあわせたエキシビション大会の開催を要望しているが、実現には克服すべき課題もある。
例えば賞金額。海外では最高で200万ドル(約2.2億円)以上の大会も珍しくない。日本では景品表示法による規制があり、現在主流となっているゲーム会社主催の大会賞金を事実上10万円程度に制限している。こうした規制がeスポーツの産業化を阻む一因と指摘されており、河村氏は「関係者に話を聞いた上で、改善すべき点については推進しようという話をしている」と語った。
具体的な改善の手法についてはまだ議連の中でも詰めていないとしたが、高額賞金が可能な大会の運営形態をガイドラインの形で示したり、法改正に踏み込むなどの選択肢から「海外と同等の環境に持っていくために、効果的な方法を選びたい」と語った。IOCの動向を注視しつつ「五輪種目に採用されるなら間に合うようにやっていく。24年のパリ大会までを一つの目標としたい」との見解を示した。
プレーヤーの活動舞台となるeスポーツカフェの営業時間をゲームセンターと同様に制限する風俗営業法も普及のネックになる。河村氏は、地域を限定して賞金額や営業時間の規制を緩和する「eスポーツ特区」も検討していく考えも明らかにした。
ナイトタイムエコノミー
河村氏は、夜の娯楽を充実させることで消費を拡大するナイトタイムエコノミーを推進する自民党の議員連盟会長も務める。eスポーツは、訪日外国人が夕食後に楽しむ娯楽の一つとして需要が見込めるため、ナイトタイムエコノミーとも「結びつく状況がある」と指摘。文化施設の夜間営業拡充や公共交通機関の終夜運転などと共にその普及策を議論しているという。
調査会社アクティベートの予測では、世界のeスポーツ関連収益は20年までに50億ドル(約5500億円)と英サッカープレミアリーグに匹敵する規模に成長する。
かつて世界一のゲーム大国と言われた日本だが、eスポーツでは認知度・市場規模共に強豪国の米国、韓国、中国の後塵(こうじん)を拝している。世界のプレーヤーに人気があるのも米国企業のゲームが中心で、河村氏は「国内ゲーム産業がもっと国際競争力を高めないといけない」と語った。