東京都の小池百合子知事は、支持候補が5日の千代田区長選で自民党の推した候補に圧勝したことで、7月の東京都議選に向けた候補者擁立に弾みがついた。独自候補に加え、公明党など小池都政に協力的な勢力と合わせて過半数の確保を目指す。小池氏の勢いに有識者からは2020年東京五輪が成功すれば初の女性首相候補に躍り出るとの見方すら出ている。
知事の政策特別秘書を務める野田数氏は1月26日、ブルームバーグのインタビューで、都議会自民党について、「代表質問の際に詳しい質問内容の事前通告をしない」「非常に程度の低いやじを飛ばす」など知事への対応を批判。「建設的な意見を交わすのは不可能だろうという判断に至った」として、都議選では「自民党に対してしっかりと対抗馬をぶつけていく」と話していた。
昨年7月の都知事選で自民、公明両党などが推した候補を大差で破った小池氏。自民党は就任当初開かれた9月議会では知事給与の削減など知事提出の議案に賛成したものの、12月の代表質問では小池氏が17年度予算編成で200億円の政党復活枠廃止を事前に相談なく発表したなどと批判。対立関係が鮮明になっていた。こうした中、公明党は議員報酬削減問題で自民党と決裂。自民党内でも一部議員が独自会派を結成するなど小池都政下で都議会の既存秩序が崩れてきている。
都議選の前哨戦となった千代田区長選は、小池氏の勢いを鮮明に示した。告示日の1月29日に東京・有楽町駅で行った演説では、自身が推す候補が負ければ改革は「後退してしまう」と呼び掛け、都議会自民党との代理戦争との構図を有権者に突きつけた。都知事選で小池氏のイメージカラーだった緑を身につけた支持者も多く集まり、「熱い戦いを思い出させてくれた」と気炎を上げた。
都民ファーストの会
都議選(6月23日告示、7月2日投票)は各党が127議席を争う。知事を支持する政治団体「都民ファーストの会」は23日、現職都議3人を含む4人を第1次公認候補として発表し、今後、地域政党として活動していくことを明らかにした。小池氏の政治塾「希望の塾」は4000人の塾生がおり、筆記試験を通過した約300人の中から、さらに候補者を擁立する方針。特別秘書の野田氏は「全ての選挙区で出したい」と目標を掲げる。
野田氏は「私どものグループと私どもの友好団体で当然過半数を目指していく」と指摘。その上で、「都議会自民党以外とは建設的な意見交換、議論が行えるようになった」と小池都政に協力的な政党と連携していく考えを示した。
公明党の山口那津男代表は1月2日の街頭演説で、小池都政への姿勢について「言うべきことはいい、協力すべきことは協力しながら、この都政の都民のための安定を生み出す、そういう力として都議会公明党、全力を挙げる決意だ」と表明。公明新聞(電子版)によると、小池知事は同月6日に開かれた同党都本部の新春賀詞交歓会で同党とこれまでの信頼関係をベースに東京大改革を進めるため共に歩んでいきたい、と語った。
民進党都連の松原仁会長(衆院議員)は2月1日の記者会見で、都連として小池知事を全面的に支持すると表明したと同日付の産経新聞(電子版)は報道。これに対し、小池氏は同月3日の記者会見で、民進党全体との連携は「明確に申し上げると、全く考えておりません」と否定している。
自民党
自民党の二階俊博幹事長は1月23日の記者会見で、都議選に向けた小池氏の動きに対し、「全面対決がお好みならば、われわれもそれを受けて立つ」とけん制するが、小池氏は党籍を残ったままになっており、関係は複雑だ。
知事選で小池氏を支援した豊島、練馬の区議7人は除名処分となったが、若狭勝衆院議員は昨年の東京10区補選に自民党公認で出馬、当選した。小池氏は1月27日の記者会見で知事選出馬の際に進退伺を提出しており、「決めるのは都連側」との認識を示した。
早稲田大学の田中愛治教授は、2020年東京五輪・パラリンピックをうまく成功し、小池氏が高い人気を保っていた場合、自民党が小池氏を国政に復帰させる可能性を指摘する。日本で知事経験者が首相に就任した例は少なく、平成に入ってからは元熊本県知事で小池氏に政界進出のきっかけをつくった細川護煕元首相の1人だけだ。