猫の糞尿被害に悩まされる人は多いが、とんでもないことに発展する可能性もある。
2016年11月に放送されたNHK朝の情報番組「あさイチ」では、猫の糞尿被害に悩まされた視聴者から「毒餌をやった人に同情します」というFAXが寄せられた。
番組ではこの日、千葉県浦安市における、飼い主がいない「地域猫」を管理する活動について紹介。地域猫の避妊去勢手術などを行う活動員の女性が、飼い猫が脱走した際、仕掛けられた毒入りのエサを食べて死んでしまったエピソードを語った。すると番組に、猫の糞尿被害に悩まされたという視聴者から「毎日糞の始末をし、気が狂いそうでした」「毒餌をやった人に同情します」というFAXが届き、番組内で紹介された。
ネット上では「迷惑でも毒エサ仕掛けるなんて犯罪だ!」といった反応が見られた。野良猫を撃退するために毒餌を仕掛けることは法的にどのような問題があるのか。渋谷寛弁護士に聞いた。
●愛護動物を「みだりに」殺傷すると処罰の対象に
「飼い主がいない猫でも、みだりに殺傷すると、動物愛護管理法の動物殺傷罪に該当し、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられます(同法第44条1項)。ただし処罰の対象となるのは、『みだりに』殺傷した場合だけです。
ここでいう『みだりに』とは、合理的な理由なくという意味です。野良猫が糞尿被害を与えている場合に毒餌で殺処分することは、動物に対する生命尊重という同法の目的(同法1条)、他の方法を取り得ることを考えれば、合理的な理由があるとは言えないでしょう」
渋谷弁護士はこのように指摘する。
飼育されている猫が毒餌を食べて死亡した場合、毒餌を仕掛けた人は、飼い主に対して慰謝料の支払などの責任を負うのだろうか。
「飼育されている猫が室外に出て毒餌を食べることは、通常予測できますから、毒餌を仕掛けた人は、不法行為責任(民法第709条)として慰謝料などの損害賠償を支払う責任を負うことになります」