同僚の体臭で頭痛や吐き気…通院費用の請求はできる?

同僚の体臭が酷く、頭痛や吐き気に苦しんでいるーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、あるプログラマーから、こんな相談が寄せられた。

投稿者は、同僚の体臭が原因で頭痛や吐き気に悩まされ、時には有給休暇を取得せざるをえない状況に追い込まれたという。会社に相談しても「ヒアリングおよび注意はした」というだけで、事態は改善されないそうだ。

投稿者は「こんなに自分が我慢しているのに男性の方は毎日元気に出勤している」ことに憤りを感じているそうです。

会社や同僚に対して、マスク代、頭痛薬代、通院費用や迷惑料などの金銭を要求することはできるのか。大久保誠弁護士に聞いた。

●同僚の体臭、どうしたらいいのか?

「体臭は、主に皮膚の雑菌によって汗や皮膚、垢に含まれる成分が分解され、発生したガスが臭うもので、汗をかくと皮膚の上で菌が繁殖しやすくなるとされています。

このような体臭予防には、(1)入浴で清潔にする、(2)汗を抑える・拭き取るなどの外出先での汗対策、(3)生活習慣の改善(不規則でバランスの悪い食生活や運動不足、喫煙や過度な飲酒、ストレスなど乱れた生活習慣が、汗や皮膚の成分を変化させ、ニオイの原因となるため)、などが考えられます。

また、病気が原因で特有の体臭を放つこともあります。あぶらくさいニオイは脂漏性皮膚炎が原因であることが多く、糖尿病になると糖の分解が進まないため甘酸っぱいニオイがするといわれます。このような病気の場合は、医師による治療が必要となります」

今回の相談者によれば、すでに会社を通して、その同僚に対しては注意がなされているようだ。

「同僚が対策をとっているのであれば、同僚にはそれ以上に体臭を予防する手段はないことになります。それにもかかわらず同僚に損害賠償を認めるとなると、同僚に対しておよそ不可能な行為を要求することになってしまうことになります。

また、この相談者以外で、このような体調不良となる従業員はいるのでしょうか。いないのであれば、同僚の体臭というのは受忍限度内のものと思われます。むしろ相談者の心因的なものが体調に影響を与えているのではないでしょうか。

このように考えると、会社にも、同僚にも損害賠償を請求することは困難と言わざるを得ません」


【取材協力弁護士】
大久保 誠(おおくぼ・まこと)弁護士
ホームページのトップページに写真を掲載しているように、野球が趣味です。
事務所名:大久保法律事務所
事務所URL:http://www.ookubolaw.com/

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手取り額しか気にしない会社員、源泉徴収を廃止したら?

会社員の毎月の給料やボーナスから、所得税などが差し引かれる「源泉徴収」。「年末調整」で払いすぎた税金が戻ってくるため、一般の会社員が、税金の煩わしい手続きに戸惑うことのない便利な制度だといえる。

税金を徴収する側にとっては、漏れなく税金が入ってくる大切な仕組みだといえる。ただし、以前から、納税意識が希薄になることが指摘されている。

もしも、源泉徴収が廃止された場合、どんなメリットとデメリットが想定されるのだろうか。佐原三枝子税理士に聞いた。

●年末調整の制度が納税意識の妨げになっている可能性

アメリカでは、サラリーマンであろうと、自営業者であろうと、みんな確定申告をするから、アメリカ人は税金に対する意識が高い、という話を聞かれたことはないでしょうか?

実はそのアメリカでも、お給料から税金の源泉徴収はされているのです。ですが、アメリカでは、源泉徴収された税金を精算するには確定申告をしなけれはなりません。

日本のサラリーマンは、申告に代わる簡易な制度として勤務先の事業所が年末調整をやってくれます。マイホームを買ったとか、医療費がかかったとか、特殊な事情がない限り、おおむね申告をしに行く必要がありません。

ですから、源泉徴収よりも年末調整という制度が税金の仕組みを知る意欲の妨げになっている可能性は大いにあると思います。

日本でも、毎年確定申告を全員がする必要があったら、税金の仕組みをもっと知りたいと思うし、納税額も自覚するようになり、いろんな意識は高まると思います。

●もし源泉徴収がなかったら?

もし、お給料から源泉徴収がされなかったら、すべてを自主申告に頼ることとなり、悪意の有無にかかわらず無申告の方に対応するための費用が増えることは簡単に想像されます。そのために税金が使われるのもいかがかと思います。

本来の税額より多めに源泉されていれば、その税金を精算して還付を受けるために、むしろ進んで申告しようと思いませんか? ですから、源泉徴収は申告を促す効果もあるのです。

アメリカの人たちが積極的に確定申告に行くのは、おおむね源泉税が戻ってくるパターンが多いという事情もあるようです。

源泉徴収で気を付けておきたいところは、源泉徴収をするのは事業所などに課せられた義務であって、したり・しなかったりを勝手に選ぶことができないということです。調査で源泉徴収漏れが指摘されたら、事業所は「その人に税金を取りに行ってくれ」といっても聞いてもらえません。税務署は、預かりが漏れていた源泉税を事業所から徴収するだけで、事業所が支払った源泉税をその人から取り返すかどうかは全く別の問題なのです。ですから、事業所の方は、源泉徴収制度をよく理解して適用していただきたいと思います。

最後に、サラリーマンの年末調整のお話に戻ります。

かくいう私も、サラリーマンの時は源泉徴収票を見ても、手取り額しか気にせず、たくさん引かれているな~くらいの意識しかありませんでした。税務の業界に転向してからいろいろ知り、税金や法律を全く知らずに丸腰で社会に出たのだと今になって恐ろしい思いがします。

戦後、アメリカは申告納税制度を行き渡らせようとしましたが、日本政府に年末調整制度の設置を押し切られたそうです。お金の話をタブー視するような日本人の気質と相まって年末調整はすっかり根付き、自分の税額も知らない昔の私のような社会人をたくさん産んでいるのかもしれません。

年末調整は、国も国民も事務を簡略化できる優れた制度ですが、それに甘えず、税金や社会保障などの仕組みも知っておくのは社会へ出るための常識であり、最低限の戦う武器だと痛切に感じます。

読み書きを学ぶように、源泉徴収票の見方といった実践的で基本的な税法の知識を身に着けるような場がすべての人にあるべきではないかと思います。

【取材協力税理士】

佐原 三枝子(さはら・みえこ)税理士・M&Aシニアスペシャリスト

兵庫県宝塚市で開業中。工学部やメーカー研究所勤務から会計の世界へ転向した異色の経歴を持つ。「中小企業の成長を一貫してサポートする」ことを事務所理念とし、税務にとどまらず、経営改善支援、事業承継や海外事業展開の支援を手掛けている。

事務所名 : 佐原税理士事務所

事務所URL:http://www.office-sahara1.jp/|http://www.office-sahara1.jp/

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取り調べ可視化で冤罪防げる?無罪勝ち取った弁護士に聞く

2019年6月までに施行される改正刑事訴訟法では、裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件について、逮捕・勾留された被疑者に対する取り調べの全過程での録音・録画が義務づけられている。この法改正による冤罪防止効果には懐疑的な見方も少なくないが、取り調べの可視化を冤罪防止に生かすにはどうすればいいのだろうか。

取り調べで被告人が自白した場面のみが録画されていた放火殺人事件の裁判で無罪判決を勝ち取った弁護士に話を聞いた。(ルポライター・片岡健)

●最初は弁護人も自白が本当だと思っていた

話を聞いたのは、広島弁護士会の那須寛弁護士(写真中央)、芥川宏弁護士(同左)、和田森智弁護士(同右)の3人。2012年12月に広島市の老人介護施設で火災が発生し、火元の部屋で寝たきり状態だった80代の女性入所者が焼死した事件で、3人は放火殺人及びこれとは別の窃盗の罪に問われた介護福祉士の女性の弁護人を務めた。

女性は捜査段階に「被害者の布団にライターで火をつけた」と自白していたが、2014年6〜7月に広島地裁であった裁判員裁判で無罪を主張。公判中に法廷で再生された取り調べの映像では、女性は自ら積極的に罪を認めていたが、裁判官と裁判員は放火殺人に関する女性の自白について、「信用できると判断するには疑問が残る」として放火殺人につき無罪を宣告し(窃盗については争いはなく有罪)、検察官が控訴せずに第一審のみで確定した。

――取り調べはどの程度、可視化されていたのでしょうか。

芥川「女性は2013年1月17日の早朝に警察に任意同行され、取り調べ開始から1時間16分後に放火殺人を自白し、夜の11時過ぎに逮捕されました。警察はそれから2月1日に女性が鑑定留置されるまで連日取り調べを行っていますが、録画したのは逮捕直後に、弁解録取書をつくった際に17分、自白調書2通をつくった際に6分と5分だけでした。検察官は合計で8時間近く行った5回の取り調べをすべて録画していました」

那須「警察では、彼女が取り調べ中にどんなことを言っていたのかをメモしていましたが、このメモも開示されました。以前だと取り調べメモは開示されませんでしたが、現在は開示されるようになっていて、これも一種の取り調べの可視化ですね」

――女性の自白が嘘だとすぐにわかったのでしょうか。

那須「女性が『本当はやってないんです』と初めて話してくれたのは、大阪で鑑定留置されてからでした。我々弁護人もそれまでは彼女の自白が本当だと思っていました」

和田森「何度も捕まったことがある人は別ですが、そうでない被疑者は警察、検察、弁護人の区別がつかないことがあります。警察も検察も弁護人も自分に聞いてくるのは事件のことばかりだからです。彼女も当初、弁護人のことを捜査機関側とは違う立場の人間だと認識できず、世話係のような人だと思っていたそうです」

那須「そして起訴後に開示された証拠を見ると、布団の燃え方や枚数が自白内容と全然違っていました。本人に『本当はやっていないんです』と言われ、そういう目で証拠を見たからこそ、そういうことに気づいたのです」

芥川「彼女は自白調書で『ライターで布団に火をつけ、犯行後はそのライターを施設内の自動販売機横のゴミ箱に捨てた』と供述していたのですが、そのライターも見つかっていませんでした。火災鑑定の専門家に証拠を見てもらっても、やはり燃え跡や着火方法が自白内容と合わないという意見でした」

●無罪を取れたのは供述心理学者の鑑定が大きかった

――取り調べの映像はどうだったのでしょうか。

和田森「録画は取り調べ中だけではなく、彼女が取り調べ室に入室するところから退室するところまで行われていて、取り調べの前後に取調官と彼女が雑談をする場面も映っていました。脅されて自白しているような場面はありませんでした」

芥川「彼女の自白は大きく分けると3段階で変遷していて、最初は『被害者の部屋のカーテンがどれくらい燃えるかを知りたくて火をつけた』、次に『セクハラをする同僚の男性看護師への腹いせから被害者の布団に火をつけた』、そして最終的に『寝たきりの入所者が1人でもいなくなればいいという思いから被害者の布団に火をつけた』という内容になっていました。取り調べの映像では、彼女は自ら積極的に話し、後の内容のほうが正しいと話していました」

那須「途中、彼女が罪を認めながら涙を流す場面もありました。この映像を最初に観た時は正直、自白の任意性、信用性を否定するのはきついと思いました」

――そんな映像で自白が嘘だと裁判官や裁判員にわかってもらえた要因は?

芥川「供述心理学者の村山満明教授(大阪経済大学)に自白を鑑定してもらったのが大きかったです。具体的には、取り調べの映像(DVD)や自白調書、取り調べメモ、それから弁護人が接見の際にとっていたメモを渡し、分析してもらいました」

那須「たとえば、彼女の自白内容の変遷について、検察官は『最初は罪を軽くすべく有利になるように嘘を言い、次第に真実を打ち明けたからだ』と主張しましたが、村山教授の分析によりそうではないとわかりました。

彼女の自白はむしろ不利な内容から有利な内容に変わっていたり、部屋の電気をつけたか否かやカーテンを閉めたか否かなど罪の重さに関係ない部分も変遷していたのです。村山教授は彼女の自白の変遷を『真犯人の自白の変わり方ではない』『迷走している』と評価しましたが、判決でもそう評価してもらえました」

●映像を観れば一目瞭然という発想は危険

――女性はなぜ、積極的に嘘の自白をしたのでしょうか。

和田森「無実の人は『いま自白しても裁判で真実は明らかになるだろう』という思いがあり、刑罰を受ける未来を現実的に想像できません。そのため、取調官から追及され続ける中、ともかく解放されたいという思いから自白するのです。そして罪を認めると、取調官も機嫌が良くなるため、険悪な雰囲気に戻りたくないという思いから自白を覆せなくなります」

那須「そして無実の人も一度自白してしまうと、取調官にヒントをもらいながら、客観的状況に合うようなストーリーを積極的に供述していきます。取調官が納得する自白をしないと、怒られて振り出しに戻るからです。そういう知識は今回の事件以前からありましたが、彼女の自白を村山教授に分析してもらい、そういうことを改めて強く感じました」

芥川「裁判では、村山教授の証人尋問が認められ、そういう供述心理学的なことを法廷で裁判官や裁判員に直接説明してもらえたのも大きかったです。弁護人が法廷で同じことを語るだけでは、『しょせんは弁護人の主張に過ぎない』としか思ってもらえないですから」

和田森「裁判官や裁判員が村山教授の説明を聞くことなく、あの取り調べの映像を観ていたら、彼女が本当にやったことを自白していると思ったかもしれませんね。『こうだから、こうしました』と理路整然と犯行を供述していましたから」

――改正刑訴法では、対象事件は限られますが、逮捕・勾留された被疑者の取り調べを全面的に録画することが義務づけられています。

那須「取調官が被疑者を自白させるために使ってきたあの手この手が使いにくくなるはずですから、虚偽の自白が減る可能性はあるでしょう。また、我々は今回の事件で彼女の自白内容が変遷した経緯などは取り調べメモからわかりましたが、映像があれば、もっと具体的にわかったと思います。無実の人が虚偽の自白をした場合も発見しやすくなるでしょう」

芥川「ただ、今回の事件でも彼女は逮捕前の任意捜査で、警察官に窃盗罪を追及され、その罪悪感を利用されるなどして虚偽自白をしています。取り調べが全面的に可視化されても、捜査官が見えないところで被疑者に何かをする可能性は永遠につきまといます。それと、取り調べの映像をどう読み解くかという問題も残ります」

和田森「一般の人が裁判員として取り調べの映像を観ることになった場合、映像を額面通りに受け止めてはいけないということは最低限知っておいてもらいたいです。真犯人が本当に自白している場合もあれば、無実の人が色んな経緯があって自白している場合もあります。映像さえ見れば、自白が本当か嘘かは一目瞭然だろうという発想は危険です」


【プロフィール】片岡健(かたおか・けん)ルポライター。1971年生まれ。大学卒業後、フリーのライターに。全国各地で新旧様々な事件を取材している。編著に「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(鹿砦社)。広島市在住。

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「シャッター商店街」に残る空き店舗…課税強化で変わる?

政府が地方創生に向けた人口減少対策をまとめた「まち・ひと・しごと創生基本方針」案では、市街地の空き店舗解消のために課税を強化する方針が検討されている。報道によると、地方の商店街の活性化のため、空き店舗に立ち退きを促して新たな出店希望者への貸し出しや売却につなげていくという。

空き店舗には、どういった税制が適用されていたのだろうか。また課税強化でどのような影響が出てくるだろうか。久乗哲税理士に聞いた。

●店舗併用住宅の固定資産税は6分の1に優遇されていた

ーーこれまでどのような税制が適用されていたのか

そもそもここでいう商店街の店というのは、1階が店舗で2階が住居という店舗併用住宅の話になります。商店街の店であったとしても、住宅部分がない店舗であれば、固定資産の減額はありません。

その前提を元に話を進めますが、店舗併用住宅の場合、固定資産税の課税上、住宅用地として認められる比率は、

(1)地上5階以上の耐火建築物の場合は、全床面積に占める居住用面積の割合が4分の1以上2分の1未満で0.5、2分の1以上4分の3未満で0.75、4分の3以上で1.0となります。また、(2)上記以外の家屋については、4分の1以上2分の1未満で0.5、2分の1以上で1.0となります。

ですから、いわゆる商店街の店舗併用住宅、すなわち1階は店舗で2階は住宅というような店舗併用住宅は、固定資産税の課税上、居住用として扱われることになります。また、住宅用地の課税標準の減額の対象となり、住宅1戸あたり200平方メートル以下では固定資産の評価額は6分の1に減額されます。

したがって、上記(2)に該当する店舗併用住宅の固定資産税は6分の1に優遇されるということになります。

●空き家課税強化のメリットは課税の公平の実現

ーー商売をやめても、やめる前と変わらないのか

商売をやめて空き家になったとしても、そもそもが居住用として扱われていますから、優遇を受けたままになるということになります。政府は、この優遇が空き家を放置することに繋がっていると問題視しているわけです。

確かに、商売を止めてもそこに住み続けるのであれば、居住用ですから、固定資産税の優遇の対象であるべきだと思います。でも、住むこともなくなった空き家に住み着いてまで、固定資産税の優遇をするべきなのかといわれれば、課税の公平の観点からは好ましくないとも思います。

空き家に対する課税強化のメリットは、課税の公平の実現だと思います。また、固定資産税収も上がるという点では行政サイドとしてはメリットだと思います。

一方で、空き家を持っている人は、固定資産税の負担が増えることが、デメリットになります。

ーーこれから空き家が減っていくことが期待されるのか

固定資産税の優遇を止めたからといって、空き家がなくなるかといわれれば、それとこれとはまた別の問題だとも思います。空き家の解決策としては、新たな所有者に売却して活用してもらうか、自らが賃貸するなどの活用をするかということになります。

しかし、商店街の空き家の所有者がそのいずれかを選択するかといわれれば、固定資産の問題だけではないとも思います。そもそもの売却を良しとするのかどうかという個人的な価値観や、賃貸にする場合の資金的なリスクなどについても検討が必要でしょうから、簡単に空き家がなくなるということはないと思います。

【取材協力税理士】

久乗 哲 (くのり・さとし)税理士

税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。

事務所名 :税理士法人りたっくす

事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/|http://rita-x.tkcnf.com/pc/

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LGBT就活の乗り越え方「やりたいことを考えて」

大学生の採用面接で、LGBTの学生たちが、就職活動のスタート時から人知れず困難を感じ続けている。体の性と心の性が異なる「トランスジェンダー」の70%が、「求職時に困難を感じる」と回答した調査結果も出ている。(特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター 2016より)

LGBT学生の就職活動などの支援を行っているNPO法人「ReBit」の代表で、FtM(女性として生まれ心の性が男性)と呼ばれるトランスジェンダーの藥師実芳さん(27)に、LGBTの学生が就職活動をどう乗り越えたらいいのかを聞いた。

●就職活動で直面する「カミングアウトをするか、しないか」の問題

藥師さんはセクシュアリティ(性のあり方)について、「自分は面接でカミングアウトをせざるを得なかった」と振り返る。まず戸籍上の性別と見た目の性別が異なったこと、そして就職活動で必ず話す「学生時代に取り組んできたこと」「志望理由」において、藥師さんが学生時代に力を入れたことといえば、「ReBit」(当時は学生団体)の活動が一番にあった。「カミングアウトしないことで、話せないことが増えてしまう。そうなると私の場合は、カミングアウトするしかなかった」。一方で、「職場で理解がなく、ハラスメントを受けるのではないか」と明かさずにいる人も多いという。

さらに戸籍と見た目の性別が異なるトランスジェンダーの学生は、就職活動で「男女で分かれていること」に困ってしまう。「戸籍上は女性だけど、男性に丸をしたら履歴書を詐称したことになってしまい、内定切りされるのでは」、「普段使っている通称名を書いてもいいのか」ー。説明会や面接でのリクルートスーツ選びやエントリーシートに書き込む性別にも戸惑いが生じる。

また、国内で戸籍の性別を変えるためには数百万円かかる性別適合手術が必要要件となっている。将来的には戸籍の性別を変えたいと考えていたとしても、学生にはそんな大金を払える人は少ない。就職活動のタイミングでは、望む性で生活をして生きていても、多くの人は戸籍の性別は変わっていないのが現状だ。

●「今思うとどう働くべきかを優先していなかった」、藥師さんの就職活動

藥師さんは小学6年生のとき、ドラマ「3年B組金八先生」で女優の上戸彩さんが演じる性同一性障害の生徒を見て、トランスジェンダーという言葉を知った。周りにトランスジェンダーの大人がみあたらず、インターネットで「差別があるから、働けない」などと書かれていたのを当時は鵜呑みにしてしまった。

「トランスジェンダーであることを受け入れてくれる会社なら、なんでもいい」。2013年に行った就職活動では、男性として働くことを一番に重視していた。全社でカミングアウトをし、業界を絞らず50社ほど受けた。名前は実芳(みか)で、男性用のリクルートスーツを着た。「性同一性障害だったら帰って」と面接で帰されたり、面接官から「体はどうなっているの?」、「子ども産めるの?」などとハラスメントを受けたこともあった。

就職活動の結果2社に内定し、WEB広告代理店に入社を決めた。そこは性別に関係なく、営業として育ててくれるフラットな会社だった。それまで感じていた「性別の壁」は、理解ある職場のおかげで越えることができた。

そうして仕事に励み始めたものの、次第に迷いが生じるようになった。「自分が本当にしたい仕事ってなんだろう」。トランスジェンダーであることが障壁でなくなったからこそ、ようやくそこで「本当に自分がやりたいこと」について考え始めるようになった。1年弱で退社し、学生時代から取り組んでいた「ReBit」を代表理事として法人化し、LGBTの子ども若者のためにはたらくことを決めた。

●「セクシュアリティ以外のことを優先して働いて欲しい」

「面接官が差別偏見をもっていたら、落とされてしまう」。そんな思いから、とにかく「LGBTに理解がある企業」を探すLGBTの学生は多い。藥師さんは「どの企業もLGBTであってもなくても安全にはたらけ、セクシュアリティ以外のことを優先して職場を選べるようになってほしい」と願っている。

ただ一方で「自分が就職活動をしていた5〜6年前と違い、状況は大きく変わってきている」と希望もある。経済同友会が2016年10〜11月に行った、「ダイバーシティと働き方に関するアンケート調査」によると、LGBTに対応する施策を実施している企業は、回答があった131社中52社(39.7%)に上り、相談窓口の設置や社内研修・勉強会の実施などに取り組んでいるという結果が出ている。

「ReBit」でも人事担当者や社内相談窓口担当者を対象に、LGBTについての研修に取り組んでいる。「今人事担当者の中でもLGBTについての知識や意識が広がり始めています。公正な採用への意識は、数年前と比べて大きく変わっています」。もしも面接官の対応で不安があったら、面接の前後で学生の方から人事に相談することも一案だ。

「日本では約13人に1人はLGBTと言われている。企業とLGBTの代弁者となり、LGBTの学生が一人で悩み、諦めることのないようにしたい。この数年で状況は大きく変わり、LGBTに取り組む企業も増え、自分らしく働ける職場は増えてきている。だからこそ、セクシュアリティによりなにかを諦めるのではなく、自分がしたい仕事や働きたい職場を選んで欲しい」。

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曜日固定バイト、違う曜日で勤務命じられた…応じるべき?

曜日固定のバイトで違う曜日の勤務を命じられたーー。そんな経験をしたことはありませんか。

弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、決まった曜日以外にもシフトをいれられてしまう場合もあるという相談が寄せられました。

曜日固定でアルバイトをしていた場合でも、アルバイト先から頼まれたら別の曜日にも働く義務はあるのでしょうか。八木大和弁護士に聞きました。

●使用者と労働者で個別の合意なく、勤務日を変更することはできない

曜日固定でアルバイトを始めた場合、使用者と労働者の間には、決められた曜日だけ労働するという契約が成立しています。したがって、原則として、決められた曜日以外は休日であり、働く義務はありません。ですので、決められた曜日以外に出勤する場合は、使用者と労働者の間で個別の合意が必要となります。個別の合意なく、勤務日を変更することはできません。

●休日に休む理由を使用者に申告する必要はない

もっとも、労働契約の際や就業規則において、「使用者は、業務の繁忙状況に応じて労働者の休日を変更することができる」などの取り決めがなされている場合には、勤務日の変更は許されることになります。

しかし、その場合でも無制限に変更できるわけではなく、使用者側の業務上の必要性や代替要員確保の困難など、勤務日を変更しなければ対処できない合理的な理由が求められます。勤務日が変更された場合、事前又は事後的に、本来の休日と近い日に代わりとなる休日を定める必要があります。

また勤務日の曜日が決まっている場合、それ以外の曜日は休日ですが、その休日に休む理由を使用者に申告する必要はありません。休日は、労働義務がそもそも課せられておらず、休みに何をしても労働者の自由であり、それを使用者に申告する義務はありません。


【取材協力弁護士】
八木 大和(やぎ・ひろかず)弁護士
大学卒業後、4年半、企業に就職。その後、受験勉強をしながら様々な仕事、アルバイトを経験。その中で労働者の権利が守られていないことを実感。現在は、一般民事のほか、過労死、過労自殺、解雇、雇止め、残業代請求等の労働事件を手掛けている。
事務所名:福岡第一法律事務所
事務所URL:http://www.f-daiichi.jp

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児童ポルノ法で罰金の講師、また逮捕…なぜ再就職できた?

勤務している小学校の女子児童に対する強制わいせつ容疑で、5月30日に逮捕された愛知県知立市の臨時任用講師(29)。実は、埼玉県の公立小学校で教諭をしていた2013年にも、児童買春・ポルノ禁止法違反(提供)容疑で逮捕され、罰金の略式命令と教育委員会からの懲戒処分(停職6カ月)を受けていたという。

こうした過去がありながら、どうして再就職ができたのか。中日新聞によると、この講師は4年前の逮捕後、依願退職。2015年4月、知立市に採用された。その際、履歴書や教員免許状を提出したが、履歴書に過去の処分歴や教員としての職歴に関する記載はなかったそうだ。また、氏名のうち、名前の漢字が法律的に変わっていたという。

就職に当たって、過去の犯罪歴を申告しないことは法的に問題ないのだろうか。 また、事前に問題のある教師を見抜くシステムはないのだろうか。学校の問題にくわしい村木亨輔弁護士に聞いた。

●聞かれなかったら、答えなくても問題ないが…

犯罪歴の申告について、村木弁護士は、「前科・前歴は、基本的に聞かれたら答えなくてはいけませんが、聞かれなかったのなら答える必要まではないでしょう」と説明する。

「一般に、採用する側の指定する履歴書やエントリーシートに『賞罰』の欄があれば、前科を記載しないで空欄のまま提出してしまうと、採用希望者は、信義則上の真実を告知すべき義務に反することになります」

これは面接の場合も同様。質問自体がよほど合理性を欠くものでない場合は、誠実に回答することが求められるという。一方、「聞かれていないにも関わらず、過去の犯罪歴を申告する必要はありません。犯罪歴について話さなかったとしても、経歴詐称したとまでは言えないでしょう」。

なお、賞罰欄における「罰」とは、一般に「確定した有罪判決」を指すと考えられるという。村木弁護士によると、前歴(逮捕歴)に留まる場合や執行猶予期間がすでに経過したような場合には、そもそも書く必要はないそうだ。

「ただし、内定が決まれば、教員としての欠格事由が存在しない旨宣誓させた書面を提出させることが一般のようです。仮に宣誓書に虚偽の記載をすれば、教育職員免許法21条2項により刑事罰を課されるおそれがあります」

●教育委員会「免許状がある以上、性善説が前提になっていた」

いずれにしても、前科を書けば採用される確率は非常に低くなるし、バレるまではお咎めなし。本人の申告以外にチェック方法はないのだろうか。

「教職免許状(教員免許)に関する事務を司る教育委員会は、教員の採用を内定したら、内定者の本籍地の市区町村の戸籍係に前科の有無を照会することができます」(村木弁護士)

しかし、今回、教員が逮捕された知立市の教育委員会によると、こうしたチェックはなかったそうだ。担当者は次のように話す。

「現実的にはそこまでできていません。履歴書に前任校などがあれば、問い合わせはしますが、今回は記載がありませんでした。教員免許状をとったのが埼玉県なので、県をまたいだやりとりも難しい。

いずれにしても、大きな問題があれば、教員免許状は持てないので、免許状がある以上、『性善説』が前提になっていました。臨時任用講師の数が足りていなくて、人選が限られているという面もあります」(担当者)

教育職員免許法では、教員が禁固以上の刑に処せられたり、懲戒免職になったりすると、教員免許状は「失効」することになっている(同法10条)。また、度を超えた非行などに対しては「取り上げ」の処分もある(同法11条)。しかし、今回の教員の場合、免許状は生きたままだった。

「わいせつ事件を起こしたら『一発アウト』という運用なら、今回のような事態は起きなかったでしょう。ただし、本人の再チャレンジの問題もあって線引きは難しい。今回は、結果的に問題のある教員を採用し、市民に申し訳なく思っています。当面は面接を強化していく方針です」(担当者)

●免許「失効」になっても再取得は可能

実は、教員免許状は失効になっても、一定期間後、再取得できる場合がある。

「教員免許状の失効は、教員の欠格事由にあたります(学校教育法9条2号)。しかし、執行猶予期間が満了した場合や、刑の執行後10年が経過したような場合には、刑の言い渡しの効力が消滅(刑法27条、同法34条の2)し、もはや欠格事由に該当しなくなりますので、再取得が可能となります」(村木弁護士)

文科省のHPによると、学校で単位を取り直す必要はなく、更新講習を受講・修了し、免許管理者へ申請すれば良いようだ。

「教員免許が失効されると官報に掲載されますので、そこから前科の有無を確認できます。また、新聞報道やインターネットなどで氏名を検索することもできるでしょう。

他方、再度、教員免許を授与する際は官報に掲載されるわけではありません。失効後、家庭裁判所の許可を得た上で戸籍の氏名を変えれば、変更後の名前で再交付を受けること自体は可能です。こうなると学校側が前科を確認することは難しいのではないでしょうか」

こうした状況などから、自民党の文部科学部会は6月15日、教員免許を国家資格化し、都道府県の教育委員会ごとに管理している教員の処分履歴などの情報を一元管理すべきなどと提言。政府与党として、国家資格化に向け、早急に取り組むとしている。

「仮に、このような処分歴を一元管理できる制度が整えば、不適格者をチェックすることが容易になることは間違いないでしょう。他方、処分歴が永久に抹消されることなく残るとなると、教員としての再就職の道が事実上絶たれることとなりかねませんので、一定期間が経過した場合には処分歴を抹消するといった救済措置も必要ではないでしょうか」


【取材協力弁護士】
村木 亨輔(むらき・きょうすけ)弁護士
虎ノ門法律経済事務所神戸支店の支店長弁護士。東京本店を中心に、全国に25の支店があり、今後も各地に拡大する予定。本店支店間が相互に連携を取ることにより、充実したリーガルサービスの提供を可能とする。
事務所名:虎ノ門法律経済事務所 神戸支店
事務所URL:http://kobe.t-leo.com/

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転売チケットを購入、コンサートが中止…払い戻しできる?

転売サイトで買ったチケットは、コンサートが中止になった場合などに払い戻しができるのだろうかーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにこんな質問が寄せられた。

投稿者は、どうしても行きたいコンサートのチケットを転売サイトで買ったが、公演が2日前に中止になってしまったという。転売サイトに問い合わせたところ、売り手との間で解決してくれという話になったそうだ。

しかし、売り手とは連絡がつかず、チケットの詳細にも公演中止の際の返金については記載がないという。

仮に売り手と連絡がついた場合、返金を求めることはできるのか。また、転売サイトで購入したチケットは名義が異なることになるが、主催者に返金を求めることはできないのだろうか。正木健司弁護士に聞いた。

●チケットの売り手に依頼して返金請求してもらうしかない

仮に売り手と連絡がついた場合、返金を求めることができるのか。

「転売サイトにおけるチケットの売り手と買い手の間には、契約の内容として、公演が中止になった場合の返金に関する取り決めはないと思われますので、チケットの買い手は原則としてチケットの売り手に対して返金を求めることはできないと考えられます。

もっとも、チケットの売り手が任意に公演の主催者に連絡をとり、主催者に返金を求めてくれるのであれば、チケットの買い手としても返金を受けられる可能性はあるといえます」

転売サイトで購入したチケットは名義が異なることになるが、公演の主催者に返金を求めることはできるのか。

「まず、主催者がそもそもチケットの転売を禁止していた場合は、基本的に返金を求めることは難しいといわざるをえません。

次に、主催者がチケットの転売を禁止していなかった場合は、チケットの買い手としては主催者に対し、債務不履行に基づき損害賠償請求を求めることが考えられますが、そもそも主催者と契約関係にあるのはチケットの名義人である売り手であり、転売サイトでチケットを購入した人と主催者の間には契約関係がないというべきですから、これも基本的に難しいと考えられます。

したがって、この場合も、チケットの買い手としては、主催者と契約関係にある売り手に依頼して、主催者に対して返金請求してもらうのが原則であると考えます」


【取材協力弁護士】
正木 健司(まさき・けんじ)弁護士
先物取引,証券取引,デリバティブ取引などの投資被害事件,金融商品取引訴訟を多数取り扱う。名古屋先物証券問題研究会事務局長。先物取引被害全国研究会幹事。全国証券問題研究会幹事。愛知大学法科大学院非常勤講師(消費者法)。愛知県弁護士会消費者委員会投資被害対策チーム長。K&A投資被害弁護団事務局長。
事務所名:弁護士法人名城法律事務所
事務所URL:http://www.meijo-law.jp/

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部活パワハラで顧問に賠償命令…被害をどう立証すべき?

空手の強豪校で女性顧問からパワハラを受けたとして、元女子部員2人が学校法人や顧問らを相手に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は6月13日、学校法人や顧問に計約120万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。

報道によると、2人は特待生として入学。態度を理由に高3時のインターハイ予選前に全体練習への参加を禁じられたり、希望する大学へのスポーツ推薦も拒否されたりしたという。

暴言や体罰など部活動の顧問によるパワハラ行為。ブラック部活に悩まされた場合、パワハラを立証するにはどうしたらいいのだろうか。学校問題に詳しい高島惇弁護士に聞いた。

●パワハラ被害を立証するためには?

「まず、外傷を伴う体罰については、怪我をした部位を写真撮影したり、当日医療機関で受診して診断書を作成してもらったりすることが重要です。このような証拠は、当時第三者から何らかの暴行を受けた事実を推認(根拠をもとに推測)させますし、損害を直接立証する点でも重要になります。

これに対し、外傷が残らない体罰や暴言については、ICレコーダーによる録音や部員の証言による立証が考えられます」

しかし、ICレコーダーによる立証は困難もありそうだ。

「体育会系の部活動の場合は、部活中ICレコーダーを保持し、録音するのは現実的ではありません。部員の証言についても、学校や顧問との関係悪化をおそれて在学中はなかなか協力してもらえないのが実情です。

その一方で、顧問のパワハラ行為が長年にわたって継続しており、OBOGを含めて不満を抱いている生徒が多数いる場合は、事件を契機として複数の部員が協力してくれるケースも存在します。同種の被害を受けている生徒や卒業生に働きかけるのが重要かもしれません。

その他、練習の様子を第三者が動画撮影しているケースもありますので、その場合は撮影した動画を提供してもらうよう働きかける作業が重要になります」

●証拠を集められなかったら?

証拠を集められなかったら、何もできないのだろうか。

「証拠を確保できない場合は、学校に対し調査報告を要請することが考えられます。

この点、さいたま地裁(平成27年10月30日判決)は、次のように、学校の調査報告に関する一般的義務を認定しています。

『教師による児童に対する暴行の疑いがある場合、当該児童の保護者はもとより、当該学校に在学する保護者が、暴行の存在の有無、対象児童の特定、暴行の原因、再発を防止する対策の内容等について知りたいと思うのは当然のことであり、学校がこれらの点を調査し、保護者らに報告するとともに、上記対策を講じ再発を防止する一般的義務を負うと解する』

この判例は下級審であって、暴行の疑いにのみ言及したものであるため、他の事案でも当然に調査報告義務が認定されるわけではありません。しかし、学校に対し調査報告を要請したにもかかわらず、怠った場合には、その懈怠(=けたい、本来行うべきことをやらなかった)につき、学校への損害賠償請求を検討する余地はあるかもしれません」

最後に高島弁護士は次のように指摘する。

「顧問のパワハラ行為は昔から多数指摘されているところであって、社会的に問題視されるようになった現状においても、一部の学校では未だに根強く存在するのが実情です。近年は、卒業後に法的措置を講じる生徒保護者もだいぶ増えてきました。将来的にパワハラ行為を立証すべく、在学中にきちんと証拠を確保する作業を行うことが重要だと思います」


【取材協力弁護士】
高島 惇(たかしま・あつし)弁護士
退学処分、学校事故、いじめ、体罰など、学校内におけるトラブルを精力的に取り扱っており、「週刊ダイヤモンド」にて特集された「プロ推奨の辣腕弁護士たち」欄にて学校紛争問題が得意な弁護士として紹介されている。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp

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「ヤクザは絶滅危惧種だ」元山口組顧問弁護士が語る

日本最大の指定暴力団「山口組」が3つに分裂するなど、ヤクザを取り巻く状況の変化が慌ただしい。ことに世間の風当たりは強く、そのシノギ(収入)も年々厳しくなっているといわれる。さらに、共謀罪(組織犯罪処罰法)も成立した。はたして、ヤクザは生き残れるのか。長年にわたって山口組の顧問弁護士をつとめた元弁護士で、作家の山之内幸夫さんに聞いた。

●「ヤクザは特殊詐欺をあまりやっていない」

――なぜ、ヤクザのシノギが厳しくなったのか?

賭博、売春、薬物が、ヤクザの基本的なシノギです。それに加えて、民事介入暴力が、非常に肥大化していました。債権取り立て、倒産整理、闇金・高金利などの収入源がありました。一番大きかったのは、不動産バブルのときの地上げですね。あのころが一番、金が流れました。

それらが国の法律によって、できなくなっていくんですよ。たとえば、倒産整理、総会屋、示談屋、競売屋はほとんどなくなった。総会屋もほぼいない。交通事故の示談もない。倒産整理もなくなりました。ただ、建設利権、土木・建設に絡む収入源は最近まで残っていました。

――建設利権とは何でしょうか?

談合を仕切ったり、下請けを取りに行く仕事です。人夫の供給や砂利、産廃、いろんな下請け仕事をゼネコンから地元に振り分けてもらう仕事があるんです。暴力団排除条例によって、そこからも締め出されています。つまり、民事介入暴力のシノギがどんどん小さくなっていっているんです。

また、伝統的な賭博、売春、ノミ行為、覚醒剤などのシノギもほとんどダメです。相対的にマシなのは覚醒剤くらいでしょう。闇カジノ、オンラインカジノはまだ伸びていますが、昔ながらの鉄火場タイプは全滅、ノミ行為もほぼダメ。売春も捕まってしまいます。伝統的な資金源も極めて細っています。

――振り込め詐欺は?

「特殊詐欺」というんですけど、ヤクザは実際はあんまりやってないんですよ。半グレとか、大学出てるカタギがやってるんです。ヤクザは引き出し係のほうに使われていますよ。自分たちで企画していないんです。ヤクザでない連中がやっているんですね。ヤクザは窃盗などで食いつないでいて、ボロボロ崩れていっていますよ。組員もものすごい減っていっています。

僕はむしろ、ヤクザを「絶滅危惧種」としての保護を考えないといけないと思いますよ。ヤクザというのは、江戸時代から続く一つの文化ですから、ただ潰せばいいというものではないと思いますけどね。

――なぜ潰すべきではないのでしょうか?

本当に行き場のない連中を抱え込んで食わせている面があるんでね。ヤクザはまともに働けない、協調性のない人たちが多いわけです。家が貧しかったり、親がいなかったり、差別などの事情があるんだけども。どこにも行き場のない連中を抱えて、人として生きていく道を与える役割を果たしているんですよ。それなりの意義があるんです。

世の中に邪な需要があるかぎり、その需要にサービスを提供しているんです。売春もないよりはあったほうがいい。賭博もないよりはあったほうがいい。豊かに発展した国の「ゆとり」だと思います。

●「ヤクザ全体の状況が悪い」

――なぜヤクザになるのでしょうか?

家庭の愛情の欠落ですよ。十分な愛情を与えられていない人が多いです。愛情深いシツケが行き届いていれば、ヤクザには絶対になれないですよ。ヤクザの世界は「人を押しのけようが何しようが自分がよければいい」、あるいは「金がすべてだ」という価値観をもった人間じゃないとやっていけないんですよ。

二つ目は、ものすごい貧乏だったこと。三つ目は差別ですね。そういう背景があっても、おとなしい子はヤクザにならないけど、納得できない連中はヤクザになっていく可能性があります。根性と体一つで、金も権力も握ることができるのはヤクザの世界だけですから。そこに夢を見る可能性もありますよね。

――ヤクザになる人が減っている中で、何を目指しているのでしょうか?

いい車乗って、いい女連れて、酒飲んで、札束キリまくって、贅沢な暮らしができる・・・というのは一つの夢ですわな。もうそんなことできませんけど。ヤクザは懲役と隣合わせですが、その代わりいい目に合うことはありうるということですな。

――警察は、暴力団を絶滅させようとしているのでしょうか?

どうなんでしょうかね。そうは思わないけど。本当に絶滅させようとしたら、組織犯罪集団を組織しただけで罪になる「結社罪」をつくったら一発なんですよ。海外では採用されていますが、日本は採用しないんですよ。全部解散しますよ。だから、暴力団がなくなったらいいとは思っていないんでしょうね。

――それはなぜでしょうか?

暴力団が表に出てるほうが検挙しやすいから、管理しやすいからです。完全な秘密結社になると、管理できません。表に出ているほうが管理できるんですよ。暴力団の手元に犯罪が集まっていれば、犯罪のほとんどを管理することと一緒ですから。泳がせながら、世間を騒がせた事件だけを検挙していくというね。

――暴力団が減っている状況は、犯罪が地下に潜っていることではないでしょうか?

どうでしょうね。特殊詐欺などの犯罪収益が、ヤクザ以外の連中に流れています。ヤクザは生活が苦しいですね。かわいそうなくらいですよ。山口組が分裂して、さらに分裂するのは、ヤクザ全体の状況が悪いからなんですよ。みんな食っていけない。だから、不平不満が出て、分裂してしまうんですよ。

●「共謀罪をうまく使える場面は少ない」

――「共謀罪」は、組織的犯罪集団を取り締まれるのでしょうか?

アメリカみたいに、秘密盗聴とおとり捜査を組み合わせたら、使い道があると思いますよ。しかし、今の暴力団を退治するために必要な法律かといわれると全然必要ない。山口組は、アメリカの共謀罪(コンスピラシー)で裁判にかけられたケースがあります。

少なくとも秘密盗聴はいるでしょうね。しかし、日本は拒絶反応が強すぎます。令状をとって盗聴ができるようになっているけど、ほとんど運用されていません。実際は、盗聴していても、警察は絶対にそのことは言わない。盗聴しておいて、のこのこ出てきたら職務質問とかで捕まえて、盗聴のことを隠していますよ。

共謀罪は、少なくとも秘密盗聴がセットになっていないと使い道ないです。ところが、日本は拒否反応が強いので、簡単には裁判所は令状を出さないし、仮に出しても、「秘密盗聴したうえで捕まえたんか」ということになったら、もめるでしょうね。おとり捜査も日本人になじまない。共謀罪をうまく使える場面は少ないんじゃないでしょうか。

本質的な問題としては、刑法の概念に異質なものを持ち込みますよね。実行行為に着手した段階で犯罪になるのが、「考えただけ」「話しただけ」という漠然としたものを犯罪にしてしまう。そんな異質なものを取り込む必要はないと思いますけど。

(上)「一つになるための再編のはじまり」元山口組顧問弁護士が語る「三つ巴」の意味

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