SIMフリースマホ乗り換えの前に2016年冬の最新事情をチェック!
2016年冬のSIMフリースマホ市場は、各メーカーともハイエンドから低価格モデルまで幅広くラインアップを展開。話題の「格安スマホ」の契約を考えているユーザーはもちろん、個性的なスマホが欲しいユーザーも満足させる製品が一気に登場した。
今回は格安スマホの契約を考えている、もしくは個性派スマホが欲しいユーザーにこの冬注目のSIMフリースマホを紹介。さらに「格安スマホ」を提供している注目のMVNOについても解説していく。
格安スマホは価格競争からサービス競争へ ユーザー流出が続くキャリアは別ブランドで対抗
2016年は「格安スマホ」といった呼び方で、さまざまな企業が提供する低価格な料金プランと、SIMフリースマホがすでに当たり前となり、キャリアからの乗り換えユーザーが爆発的に増加した年となった。今回は、2016年冬の格安スマホとSIMフリースマホのトピックを解説。後半では注目のハイエンドスマホを紹介する。
最初にあらためて「格安スマホ」について説明しておこう。
格安スマホを提供する事業者やの多くは、自社で携帯電話サービスの設備を持っていない企業が、ドコモやauなどが持つネットワークを有償で借りて提供している。業界用語ではそういった事業者をMVNO(仮想移動体通信事業者)と呼ぶ。
設備はドコモやauのものを借りているため、利用できるエリアは同じだ。ただし、料金プランや実効通信速度、サポートなど各種サービスは事業者によって異なる。
多くの事業者は、料金の安さを重視して「通信料込み月1728円」などの低価格なプランを用意している。最近では低価格プランとSIMフリースマホのセット販売も充実し、スマホに詳しくない初心者でも契約しやすくなってきた。
これをふまえて、最新の格安スマホのトレンドを見ていこう。
LINEがモバイル通信事業にも参入 競争は価格からサービスに
2016年は総務省の割引規制などスマホ市場の変化もあり、安くスマホを使う方法として格安スマホに注目が集まった。
そこで、各社ともスマホ初心者が格安スマホを契約しやすいよう、店頭の受付窓口の充実に力を入れはじめた。現在では多くの格安スマホ事業者が家電量販店や独自ショップでの即日MNP(番号ポータビリティー)契約に対応している。料金面でも、通話定額プランやSIMフリースマホとのセット販売など、ドコモやau、ソフトバンクの三大キャリアと同じように契約できるプランが増えつつある。
さらに、2016年秋に参入した「LINEモバイル」は、LINEなどのSNSサービスの通信料が無料になるサービスを開始。ケイ・オプティコムの「mineo」は、基本料金が月額864円高くなる代わりに通信の混雑を回避できる「プレミアムコース」の試験サービスを実施。格安スマホの競争は、当初の価格競争からサービスやサポート体制の競争へと移行しつつある。
ワイモバイルとUQ mobile、大手もサブブランドで参入を開始
格安スマホが話題になるなか、ソフトバンクは自社のサブブランド「Y!mobile(ワイモバイル)」で対抗。KDDIグループの「UQ mobile」も、2016年秋冬から店頭販売やCM展開を本格化し始めた。
この2社の料金プランは各種割引を除くと最安で月3218円(最初の13ヵ月は月2138円)からと、最安価格はほかの格安スマホよりも月1500円ほど高い。しかし、この2社は格安スマホの多くが混雑で繋がりにくくなる平日昼間も、快適な通信速度で利用できることが多い。
この2社を契約する場合は、利用するスマホに注意が必要だ。
Y!mobile利用時の注意点
Y!mobileのSIMは、多くのSIMフリーAndroidスマホでそのまま利用できる。Y!mobileのサイトでも、ASUSやファーウェイなど、全メーカーの全製品ではないが接続実績を公開している。
一方、iPhoneのSIMフリー(SIMロックを解除した端末を含む)端末の場合は、動作するもののテザリングを利用できないという制限がある。
ソフトバンク(2015年5月以降に発売された機種)の端末は、SIMロックを解除することでY!mobileのSIMを利用できるようになる。ただし、ソフトバンクとY!mobileともに、端末の接続や各種サービスの動作保証や動作検証を実施していない。端末によっては利用できない機能がある可能性もある。
UQ mobile利用時の注意点
UQ mobileのSIMをSIMフリーのAndroidスマホで使う場合、Androidスマホ側が通信仕様として「au VoLTE」に対応していないと利用できない。au VoLTE対応のSIMフリーAndroidスマホは、ASUSの「ZenFone 3」や富士通の「ARROWS M03」、ALCATELの「IDOL 4」などいくつかの端末に限られる。SIMフリーのAndroidスマホでUQ mobileのSIMを使いたい場合は、必ずUQ mobileの動作確認情報で対応端末かどうかを確認しておこう。
iPhoneのSIMフリー(SIMロックを解除した端末を含む)端末の場合は「iPhone SE」と「iPhone 6s/6s Plus」で利用できる。だが、最新の「iPhone 7/7 Plus」は今のところ動作確認端末に入っていない。独自の実験では、iPhone 7にSIMを入れてもテザリングを利用できないという制限があった。
UQ mobileでも条件付きだが手持ちauのスマホをそのまま利用することが可能。「Galaxy S6 edge SCV31」などのVoLTE対応スマホ(2015年5月以降に発売された機種)は、SIMロック解除したうえで「VoLTE用マルチSIM(mini/micro/nano)」を利用できる。それ以前のLTE対応スマホの場合は、一部を除きSIMロック解除なしにサイズに合った「LTE用SIM」を利用できる。だが、端末によってはUQ mobileのSIMを使えないものもある。手持ちのauスマホをUQ mobileで使いたい場合は、必ず動作確認端末をチェックしておこう。
2016年冬のSIMフリースマホは特にハイエンド系が充実
2016年冬のSIMフリースマホのトレンドと、ハイエンドモデルについてチェックしていこう。
最新SoC「Snapdragon 821」搭載スマホが登場
国内のSIMフリースマホといえば、これまではアップルのiPhoneやグーグルのNexusシリーズを除けばミドルクラスからエントリークラスの端末がほとんどだった。だが、2016年に入って各端末メーカーからハイエンドモデルが複数登場している。
なかでも、人気が集中したため11月末現在受注停止中のASUS「ZenFone 3 Deluxe(ZS570KL)」は、ドコモやau、ソフトバンクのハイエンドモデルも採用していないクアルコム製の最新SoC「Snapdragon 821」(クアッドコア)を採用。現時点で、国内最速Androidスマホといえるモデルになっている。
ハイエンドSIMフリースマホとミドルクラスの「ZenFone 3」をAntutu Benchmark 6.2.6でテストした結果が下記のグラフだ。
Snapdragon 821を搭載したZenFone 3 Deluxe(ZS570KL)のスコアは、多くのハイエンドスマホが搭載するSnapdragon 820搭載モデルよりもひと回り高い。とにかく処理性能が高いスマホが欲しいというユーザーは要注目のスマホだ。
一方で、最新のミドルクラス端末「ZenFone 3」が搭載するSnapdragon 625も、2年ほど前のハイエンドクラスのスコアを記録する。これだけ処理性能があれば、通常用途はもちろん、高画質なゲームもおおむね快適に動作する。価格と性能のバランスを重視するなら、5万円以下のミドルクラススマホも狙い目だ。
DSDS(デュアルSIMデュアルスタンバイ)対応で 国内でも2つの電話番号を利用できるように
2016年冬モデルもうひとつのトレンドが、2つの電話番号を同時に待ち受け出来る“DSDS”(デュアルSIM・ュアルスタンバイ)機能だ。
これまでもSIMスロットを2つ搭載する端末はあったが、通常は4G/3G対応スロットと、日本ではサービスが提供されていないGSM方式向けのスロットだったので、国内では事実上1スロットしか利用できなかった。
2016年秋冬のDSDS対応スマホは、4G/3G対応スロットと3G対応スロットを搭載。日本でも両方のスロットを同時に利用できるようになった。
両方のスロットに通話対応のSIMを入れると、両方のSIMで電話の待受ができる。また、電話発信の際にどちらの電話番号でかけるのかを選べるほか、データ通信と音声通話でSIMを分けることも可能。ビジネスとプライベート用途を1台のスマホで使い分けたいユーザーに便利だ。
DSDS対応スマホはハイエンドとミドルクラスが中心。現在、国内で発売または発表されているモデルは以下とおり。
【DSDS対応スマホ】
(モトローラ)Moto G4 Plus
(モトローラ)Moto Z
(モトローラ)Moto Z Play
(ZTE)BLADE V7 MAX
(ZTE)AXON 7
(ZTE)AXON 7 mini
(ASUS)ZenFone 3
(ASUS)ZenFone 3 Deluxe(ZS550KL)
(ASUS)ZenFone 3 Deluxe(ZS570KL)
(フリーテル)SAMURAI KIWAMI(極)2(12月22日発売予定)
(フリーテル)SAMURAI RAIJIN(1月27日発売予定)
2016年冬オススメのハイエンドSIMフリースマホ4機種
それでは、2016年冬注目のハイエンド端末4機種をチェックしていこう。4機種ともキャリア版ハイエンドクラスの処理性能をもち、ASUSの5.7型モデル「ZenFone 3 Deluxe(ZE570KL)」はキャリア版を超えるモンスタースペックとなっている。処理性能を重視するユーザーはハイエンドスマホをチョイスしよう。
最新SoC搭載、ZenFoneシリーズのフラッグシップモデル ASUS「ZenFone 3 Deluxe(ZE570KL)」
●直販価格9万6984円(受注停止中)
フルHD解像度の5.7型有機ELディスプレーに、最新SoCのSnapdragon 821と6GBメモリーを搭載。圧倒的な処理性能を持つ端末だ。内蔵ストレージ容量はなんと256GBで、PCとファイル転送する際はUSB Type-C端子から高速なUSB3.0規格で接続できる。
外装はスリムなフルメタルボディーで、アプリの動作など高い負荷をかけても極端に熱くなることはなかった。カメラは4軸光学手ぶれ補正対応の2300万画素で、指紋認証センサーを搭載。ハイレゾ対応イヤフォンも付属する。意外性のある機能は搭載していないが、DSDS対応を含めた最新スマホに求められる機能をしっかり搭載した端末だ。
なお、ZenFone 3 Deluxe(ZS570KL)は発売直後にメーカー予想を超える注文があり、2016年12月3日現在受注を停止している。早期の販売再開を願いたいところだ。
「ZenFone 3 Deluxe」シリーズ購入の際、気をつけたいのはハイエンドの5.7型モデル「ZenFone 3 Deluxe(ZS570KL)」と、ミドルクラスの5.5型モデル「ZenFone 3 Deluxe(ZS550KL)」という、外観やデザインはほぼ同じでスペックおよび仕様が異なる2モデルが存在する点。5.5型はSnapdragon 625を搭載したミドルクラスの製品。使い勝手は良いのだが、処理性能は全く異なるので購入時には間違えないよう注意したい。
外付けモジュールと合体! 光学10倍ズームも楽しめる モトローラ「Moto Z」
●実売価格9万2660円前後
最薄部5.19mmのボディーに、WQHD(1440×2560ドット)解像度の5.5型有機ELディスプレーとSnapdragon 820、メモリー4GBを搭載。バッテリーは2600mAhと通常利用には問題ない容量だ。
Moto Zの最大の特徴は、背面に合体装着できる周辺機器「Moto Mods」の存在。標準で付属する木目調の背面カバーのほか、ハッセルブラッドブランドの光学10倍ズームカメラ「Hasselblad True Zoom」や、JBL製スピーカー「JBL SoundBoost Speaker」などが用意される。とにかく個性的なスマホが欲しい人にとっては、この冬いちばんの注目モデルだ。
「合体装着は気になるがMoto Zは高い」と感じるユーザーには、同じくMoto Modsが利用できるミドルクラス端末「Moto Z Play」(実売価格3万3000円前後)がオススメ。最薄部6.99mmとMoto Zと比べてやや厚いが、その代わりに大容量の3510mAhバッテリーを搭載。日常でより使いやすいモデルとなっている。
高音質チップ搭載、VR対応に期待の高コスパモデル ZTE「AXON 7」
●実売価格6万4500円前後
WQHD(1440×2560ドット)解像度の5.5型有機ELディスプレーに、Snapdragon 820とメモリー4GBを搭載したハイエンド端末。この性能で6万円台前半という価格はかなりお買い得だ。
日本市場向けスマホとしては、グーグルのNexusシリーズを除いて唯一グーグルのVRプラットホーム「Daydream」への対応予定が明言されている。2016年度内にAndroid 7.0(Nougat)へのアップデートの提供を開始し、Daydreamへの対応も予定している。
音の再生にこだわった端末で、前面にステレオスピーカーを搭載。ネット動画やゲームを気軽に迫力ある音で楽しめる。さらに、ヘッドフォン端子からの出力には、ハイエンドオーディオ機器でおなじみの旭化成エレクトロニクス製D/Aコンバーター「AK4490」を採用。ハイレゾ音源も高音質かつ少ないノイズで出力できる。
ライカのダブルレンズでこだわり撮影を楽しめる ファーウェイ・ジャパン「HUAWEI P9」
●実売価格5万4800円前後
ライカレンズを採用したデュアルカメラが特徴の端末。片方には一般的なのRGB1200万画素センサー、もう片方にはモノクロの1200万画素センサーを搭載。これにより、より鮮やかな発色と陰影をリアルに描ききる解像感を実現。また、モノクロセンサーだけを使って、モノクロフィルムのような高感度かつ解像感の高い独特の写真も撮影できる。
デュアルカメラを活かした機能として、レンズの視差情報を使った一眼デジタルふうのボケ表現にも対応。撮った写真は撮影後でもピントの位置や絞りの量を変えられる。
ハイエンドスマホとしては、発色の良い5.2型フルHD(1080×1920ドット)解像度液晶に、自社ブランドのSoCである「Kirin 955」を搭載。3Dグラフィックの処理能力はクアルコム製の「Snapdragon 821」や同820採用スマホに劣るが、それでもミドルクラスの製品と比べればかなり高い性能を誇る。 カメラや一般的なアプリ利用中心の人にお勧めの端末だ。
SIMフリー版iPhoneは値下げで割安なイメージに キャリア版6sシリーズ以降のユーザーはSIMロック解除も視野に
SIMフリー版iPhoneは、Apple Store店頭やオンラインで購入できる。ハイエンド端末ということもあって高価だが、「iPhone 7」の発表後からは値下げや仕様変更にやや購入しやすくなってきた。特に「iPhone SE」は値下げで16GBモデルが4万8384円、64GBモデルが5万3784円と処理性能と見ると割安なイメージ。最初から格安SIMでiPhoneを運用したいユーザーはSIMフリー版の購入がオススメだ。
現在ドコモやau、ソフトバンクで「iPhone 6s」以降のモデルを契約して使っているユーザーは、多くの場合iPhone購入日から6ヵ月後からのSIMロック解除が可能。SIMロック解除したiPhoneは格安スマホ事業者のSIMでもそのまま使えるので、今後格安スマホへの移行を考えているユーザーは解除手続きをしておくと良いだろう。