格安SIMの通信容量を節約するにはWi-Fiを活用せよ、と言われるようになってだいぶ経つ。Wi-Fiと一言で言っても、自宅の光ファイバー回線などもあれば、カフェのWi-Fiや乗り物のWi-Fiなどたくさんあり、うまく活用すれば、非常に低コストでインターネット接続が可能。
格安SIMは十分に安いが、格安SIMにプラスして大容量を低コストで使いたいという人に向いている。
無料のWi-Fiサービスの利用は意外とカンタン
動画配信サービスの普及はもちろん、スマートフォンで撮った写真をすべてクラウドにアップロードしてしまう設定の普及などで、今やパケット量が足りないという人が増えてきたように思う。
去年までなら月間2GBで余裕だったもののが、最近は5GBオーバーも当たり前という人もいる。そこで注目されているのがWi-Fiだ。
Wi-Fiが接続確認性を担保するだけの意味だったころから関わってきた筆者にとって、インターネットに繋がった無線LANを「Wi-Fi」と呼ぶにはまだ抵抗があるのだが、気づけばスマートフォンの操作メニューでも無線LAN=Wi-Fiということになっており、まあそういう流れなのだろう。
容量が足りなくなったときはWi-Fiといっても、家に自宅回線がなければ、有料/無料問わず外部のWi-Fiを使うことになる。ドコモ、au、ソフトバンクと契約しているスマートフォンユーザーであれば、一応無料で使えるものもあるが、格安SIMでは用意されているサービスは少ない。
そこで、各種の無料公衆Wi-Fiを使う方法だが、個々の無料Wi-Fiにそれぞれ登録して使う方法もあるが、横断的に使える無料アプリの利用が圧倒的に便利。
一度登録すれば、エリアに行けばすぐ使えるほか、エリア検索機能なども充実しているため、各サービスを横断的に場所検索ができることも非常に大きなメリットだ。
代表的なものとしては、NTT-BPの「Japan Connected-free Wi-Fi」がある。訪日外国人向けにステッカーが貼ってあるお店を街中でも見かけるが、特に外国人専用としているわけでなく、日本人でも利用できる。無料のWi-Fiを横断的に使える。
そのほかにも、たとえば「タウンWiFi」など、無料Wi-Fiを横断的に利用できるアプリがある。
Japan Connected-free Wi-Fiでも網羅していない無料Wi-Fiもあるため、利用する場所によってはこちらの利用もよさそうだ。
なお、タウンWi-Fiは、実際の接続先の利用規約や許諾画面をスルーするようになっていたため、ほかの無料Wi-Fi事業者などとトラブルになったことがある。無料Wi-Fiの場合、利用規約や許諾はスルーできない重要な問題のため、横断的なアプリを利用していてもしっかり確認しておきたい。
無料Wi-Fiはただ無料というわけではない
無料Wi-Fiで一般的に指摘されるのがセキュリティーの問題。無料Wi-Fiの提供者によってパスワードなどの通信内容が盗聴されて悪用されるなどという話をもあるが、実際はもっと別のところにあると考えている。
信用をなくしてまで通信内容を盗聴して悪用するよりも、もっと価値の高い情報が得られる可能性があるからだ。
たとえば、Japan Connected-free Wi-Fiの利用規約には、利用者の利用情報を統計的情報として協力事業者などに提供するとある。
接続情報を利用すれば、行動状況や範囲などを把握できる。訪日外国人旅行者があちこちでJapan Connected-free Wi-Fiを使えば、旅程を細かく把握でき、人気の観光地だけでなく、どのような順番で、どのような時間帯に訪れ、どのくらい滞在したかもデータとして蓄積でき、次のサービス開発に活用できる。
SNS認証ができるサービスであれば、SNSとの履歴統合も可能だ。
そして、店舗のWi-Fiは、やろうと思えばもっと情報を取ることも可能になる。
以前より、スマートフォンやPC端末から出るWi-Fi電波を探して受信し、個々の人物の行動把握をするという技術はあったが、昨今はSSIDの秘匿はしないことが一般的になり、設定さえしなければ端末が自分から電波を出してWi-Fiのアクセスポイントを探すことはほとんどなくなった。
そこで、店舗の無料Wi-Fiに接続するアプリが稼働していれば、端末側から店舗のWi-Fiに自分から接続しにいく。そうすれば、個々の端末の持つネットワーク上のユニークな識別番号であるMACアドレスがWi-Fiサービス側に渡り、個人特定も可能になる。
店側からみれば、肌身離さず持ってるスマートフォンを持つ人間の来店時間や頻度を正確に把握できることになる。
ここから先はあくまで可能性としての話だが、店が持つポイントカード履歴の利用時刻と少しずつ照合していけば、来店を重ねるごとにスマートフォンとポイントカードの紐付けはほぼ可能になる。
また、来店客がそれほど多くなければ、Wi-Fiのデータから客を特定できたり、防犯カメラ映像と時間で照合すれば……などと、次々にデータとデータがつながっていくことも可能となる。
前述のJapan Connected-free Wi-Fiでは、利用規約に「属性情報等を、利用者を特定可能な情報と結びつけることはありません」となっているのでまずは安心だが、Wi-Fiの接続情報はアクセスポイントを設置した側の情報でもあるので、モラルの低い企業が運営しているとなると話は別。通信内容が漏れることよりも用心しなければならない可能性があることは覚えておきたい。
いざ、使ってみると……やや遅い!?
少し怖い話をしてしまったが、利用規約に注意し、設置企業の信用度などから総合的に判断すればよく、現時点ではそれほど用心することでもない。そこで、実際に使ってみたい。
Japan Connected-free Wi-Fiは街中ではけっこう使える場所が多い。歩きながら使うということは難しいが、エリアのお店に入らなくても店の前でちょっと立ち止まれば使えるという印象だ。
また、都営バスなどバス車内や電車の駅のWi-Fiも多い。都バスで移動中に使えたり、鉄道駅は改札口周辺がエリアになっていることもあり、経路検索やこれから出発するなどのメッセージ送信などに十分活用できる。ホームで電車待ちのひまつぶしにも利用可能だ。
ただし、問題は速度が遅いこと。筆者の行ないが悪いせいなのかもしれないが、高速でサクサクというWi-Fiにはあまり当たったことがない。
店舗などの固定回線もそうだが、バス車内など移動する回線については、バックボーンにLTE回線などを使っていることから、複数の利用者がいれば速さにも限界があるからだ。
それでも、ある程度の速度のインターネット回線がタダで利用できるのだから、ありがたく使わせてもらいたい。
タダのWi-Fiは自宅で使える?
無料Wi-Fiアプリは自宅でも利用できる可能性がある。たとえば向かいがコンビニやコーヒーチェーンという家や、駅隣接の家など、自宅にも無料Wi-Fiが飛んでくるような人だ。うまく使えば通信料の節約が期待できる。
そして、これらの無料Wi-Fiを使うのに何も格安SIMの契約や電話番号は必要ない。
かなり極端な話だが、メールはGmailを使い、通信はすべて無料Wi-Fiでまかなうという方法もできる。自宅が無料Wi-Fiのエリアで、街中や商店の無料Wi-Fiが入るエリアだけでネット接続をするというのであれば、不可能ではないだろう。
一方で、タウンWiFiのように自宅にWi-Fiをリクエストする機能を用意するサービスもある。これはマンションやアパートに無料Wi-Fiの「B-CUBIC」を設置しているブロードエンタープライズにリクエストを送るもので、エンドユーザーにかわって設置交渉をしてくれるというものだ。
基本は格安SIMを使いたいが、予備的な利用はアリ
無料Wi-Fiをメインに生活するのはかなりの冒険だが、格安SIMや少ない容量のデータ契約をしているならば、通信費節約のために無料Wi-Fiをうまく活用するのはアリだろう。
利用する際は、利用規約をしっかり読むほか、一般的なこととして、共通の暗号化パスワードで利用したり、暗号化のない無料Wi-Fiの場合は、https://~ で始まるウェブサイトを中心に閲覧するなど、無線区間での盗聴には十分に注意したい。
それでも、データの漏洩などが気になるというのであれば、特に格安SIMならば月間の高速データ通信容量を増量で対応するしかない。
容量変更は月単位というところがほとんで、変更申込は月末まで受け付けるところもあれば、25日など早めに締め切ってしまうところもあるので、容量変更は早めに準備しておきたい。