昨年の秋ごろから国内での販売も始まり、注目を集めているスマートスピーカー。具体的な出荷数などは明らかになっていないが、日本語の認識精度/読み上げ精度の向上やスキルの充実なども進み、浸透しつつあるようだ。
新世代のEchoは音質が格段に進化
一方で、課題と言えるのが音質だった。しかしハードウェアの世代が変わることによってこの点でも改善がみられる。
Alexa対応のスマートスピーカーであるEchoシリーズの新ラインアップは9月に米国で発表になり、国内でも「Echo Dot」「Echo Plus」「Echo Show」「Echo Sub」の予約受付が始まっている。特にEcho DotとEcho Plusが重視しているのは、部屋の離れた場所からでも聞こえる音量の大きさと、迫力ある重低音の再生だ。
10月11日に実施された記者向けの説明会でその一端を体験した。
製品の特徴のひとつが、Echoのマルチルーム再生の技術を応用した2.1ch再生だ。最新世代の「Echo Plus」2台(もしくは既発売のEcho)とEcho Subを組み合わせることで実現し、Wi-Fi接続で3台のスピーカーが連携する。
まず驚かされるのは迫力ある重低音。デモされていたステージでは、床が少し浮いていることもあり、ビリビリとした振動を感じる。新開発したEcho Plusのスピーカーも中域、高域がクリアーで、距離を取って2台を並べれば十分に広いステレオ感が得られた。
電源ケーブルは必要になるが、機器間がワイヤレスでつながる点もポイント。スピーカー自体は小型であるため、室内のレイアウトに制約があるリビングなどでも、比較的自由度が高く設置ができる点は魅力だ。
最も小さい第3世代の「Echo Dot」もスピーカーユニットが1.6インチと大きくなり、音量が70%向上。音質面でも声が聞き取りやすい、クリアな印象となった。従来機種は安価なこともあり、質感も音質もプアな印象だったが、やや丸みを帯びた形状でファブリックのナチュラルな質感も◎。1年前の機種からの改善を感じた。アナログ出力に加えて、Bluetooth接続で外部の機器と接続できるので、本格的なオーディオシステムを持っている人でも拡張しやすいだろう。
10.1型ディスプレーが付いた第2世代の「Echo Show」も、小型の本体とは思えない豊かな低域の再生が可能な機種となっている。スマートスピーカーは、室内で動きながら、部屋の様々な場所で利用するのが普通だ。ドルビーの技術を採用しており、大きめの部屋でも十分な音量で音声が再生できるのは利点だし、動画コンテンツなどを見る際には、やはり臨場感を求めたくなる。こういった要望にも十分応えてくれる音質ではないだろうか。
スマートホームを実現するために、温度センサーは必要
一方Echo Plus/Echo Showは、ZigBee対応で、スマートホームを強く意識した製品だ。Echo Plusには今回から温度センサーが搭載され、部屋の温度が分かるが、これは暖房機などを利用することを想定したもの。複数の部屋に置かれた、様々な家電機器を連携させるためには必要な機能だ。
説明会では、家庭内にある様々機器と連携するためのSDKについても紹介された。ALEXA SKILL KITを利用したスキルの数は、Echo Spotが登場した7月以降、4倍に増えており、現在1500以上ある。
海外ではAlexa対応家電のリファレンスデザインとしてAmazonブランドの電子レンジなども発表されている。
「Smart Screen SDK」は、すでにレノボの製品やソニーのテレビで採用されている。ディスプレーを利用して、音楽やカメラなどを利用できる。またスキルとスキルを連携させられる「SKILL CONNECTIONS」を利用したプリンターがエプソンやキヤノンから登場。Echo Showなどで表示した写真を150以上のプリンターで出力できるという。
また、画面サイズや形状の異なる複数のEcho製品や、テレビ接続が前提のFireTVなどでの利用を想定してUIの統一を図るためのデザイン言語「ALEXA PRESENTATION LANGUAGE」(APL)で、簡単に高品質な画面が設計できるとしている。例えばEcho Spotの円形で小さな画面でも、一番見せたいところを見やすく示すことができるという。すでに日本では出前館、JTBなどがAPLを使ったスキルを開発中で、10月中に開発者向けのパブリックベータ版も提供するという。
さらにAmazon Payを利用することで、決済にも対応。アミューズメント施設のチケットをEcho Showから購入したり、出前を取ったりといったことが可能だ。Amazon Payは日本赤十字社と連携して、スキルで災害の寄付を募る試みでも利用されている。
待望のFireTVとの連携も実現する
年末にかけての展開としては、先日発表された「FireTV Stick 4K」で、日本でもようやくAlexa対応が実現した点がある。従来のFireTVでも音声を使ったコンテンツの検索は利用できたが、検索結果が画面に表示された後は、リモコンでそれを選ぶ手間が必要だった。
新しいFireTV Stick 4Kでは、4K/HDR(HDR10+とDolbyVision)に対応。ビデオ再生だけでなく、天気、Q&A、音楽再生、カメラ対応など、Echoが持つ機能を幅広く利用できる。Echoデバイスから直接FireTV Stickに話しかけられることで、手ぶらで観たい映画や情報を呼び出せることになり、利便性がさらに増しそうだ。12月の発売に合わせて、EchoをFireTV Stickに対応させるアップデートを実施予定だ。
Echoとの連携で、FireTV Stickの応用範囲もさらに広がりそうだ。例えば、Amazon Musicの再生中には歌詞が表示されるし、楽曲の再生だけでなく、早送りや時間を指定したスキップといった操作も声で可能となる。Echo Spotの発売に合わせて紹介された「Arlo」などネットワークカメラの映像をテレビの大画面で再生することもできる。何より「○○を再生して」の一言で、目的のコンテンツを呼び出せる点はシンプルで分かりやすい。
AlexaデバイスのAV連携機能としては、これ以外にも先日対応が発表された、audible(月額1500円)で38ヵ国40万タイトルの書籍を聴けたり、SDKを利用して、Alexaを使ったAVデバイスのコントロール機能も用意されている。ソニーのブラビア、東芝のレグザ、ヤマハのMusicCast対応機器など、6メーカーから対応商品が出ている。
年末にかけてAlexa対応の他社製品も続々と出てくる。ボーズやSONOSのサウンドバーは一例だが、ソニーコミュニケーションネットワークが昨日発表した、Home AIサービス「MANOMA」向けの「ホームゲートウェイ」もAlexaに対応し、家庭内の様々な機器と連携できるようになっている。
新しいEcho Dotの販売価格は5980円、Echo Plusは1万7980円、Echo Subは1万5980円でいずれも10月30日の発売。Echo Showは第2世代。10.1型ディスプレーを搭載。Echo Showの販売価格は2万7980円で12月12日の発売を予定している。Echo PlusとEcho Showは、ZigBee対応のスマートホームハブを内蔵する。