テキスト入力専用マシンとして登場した「ポメラシリーズ」。今年は発売10周年となるが、その記念モデルともいうべき新製品が「DM30」だ。実売価格は4万6440円。
2011年11月月発売の「DM100」や、2016年10月に発売された「DM200」は、ストレートタイプのキーボードで一般的なクラムシェルスタイル。さらにDM200はバッテリーに充電型の内蔵タイプを採用していた。
しかし「ポメラシリーズ」といえば、2008年に登場した「DM10」や「DM20」、女性向けの「DM5」など折りたたみ型のキーボード+乾電池駆動というのが特徴となっており、DM100の発売以降も根強い人気となっていた。この人気をうけて発売されたのが今回の「DM30」だ。
キーボードは左右に開閉する観音開きタイプ。開閉時にキーボード部分がスライドする機構のため、開いたときに左右に若干のスペースが空く。それでもキーボード部分の横幅は前モデルのDM200とほぼ同じ。キーピッチは横17mm、縦15.5mmだ。
キー配列は一般的なJISで、ファンクションキーもある6段タイプ。ただし電源ボタンもキーボードの配列に入っており、Deleteキーの右側に配置。さらに半角/全角キーは左上2段目、Escキーの下になっている。
タイピングの感触はかなり軽く、クリック感はあるもののぺたぺたとした印象。キーボードを開くとスタンドが自動で出てくるので、テーブルの上などでタイピングするぶんには問題なし。ただ膝の上などにおいた場合、キーボードの開閉を固定する機能がないので、タイピングはちょっと厳しい。
持ち運びという点では他の追随を許さない
本体サイズは折りたたみ時が約156(W)×126(D)×33(H)mmで、使用時は286(W)×131(D)×33(H)mm。重量は電池なしの状態で約450g。アルカリ単3電池2本を装着した状態での実測は509gだった。やはり折りたたみ時のコンパクトさは秀逸。小さな鞄でもちゃんと収納できるので、機動性は高い。
ディスプレーは6型(800×600ドット)で、液晶ではなく、電子ペーパーパネルを採用。コントラストが高く、映り込みもないため視認性も良く、明るい場所での文字入力には◎。ただしバックライトは搭載していので、暗い場所で文字入力をする場合は画面が見えにくくなる。飛行機などで周りが暗くなった場合は、読書灯などをつける必要がある。
文字は見やすいものの、気になるのが残像。文字変換やスクロールをさせると、直前に表示されていた文字がうっすらと残る。テキスト入力に邪魔になるほどではなく、メニュー表示から入力画面に戻ったり、メニューの「表示」→「リフレッシュ」、もしくは入力画面でF12キーを押すと完全に画面が書き換わり残像を消すこともできる。
またタイピングして文字が表示されるまでの反応も、液晶ディスプレーと比べると若干遅れる。コンマ何秒というレベルだが、完全にタッチタイプができるタイピングが速いユーザーには、やや違和感が生じるレベル。ディスプレーの残像とあわせて購入を検討しているユーザーは、実機を展示しているショップなどで確認してほしい。
編集機能としては、DM200でも好評だったアウトライン機能を装備。小説や論文など長文を入力するユーザーにはうれしいポイント。また白黒反転表示や、縦書き表示にも対応。文字サイズは12ドットから64ドットまで8段階から指定できるので、好みの入力環境にカスタマイズできる。
書くことに集中できる
PCやタブレットだと意外とできない
日本語変換は「ATOK for pomera」を搭載。DM200はATOK for pomera[professional]だったので、DM100に搭載されたATOK for pomeraに改良を加えたもの。外部辞書との連携機能も用意されており、SDカード経由でPCのATOKで登録した辞書を反映させられる。
バッテリーは前述のように電池式でアルカリ単3電池2本で動作する。連続使用時間は電池の種類などにもよるが約20時間。予備の電池を持っていれば、バッテリーを気にせず使用できるのはうれしい。さらに充電機能はないものの、充電地のeneloopも利用可能なのでコスト的にもオトク。電池設定もeneloop用に変更できる。さらにバックアップ用としてコイン電池の「CR2032」も使用。こちらの電池寿命は約2年とのこと。
そのほか機能としては、DM200からカットされているものも多い。たとえばWi-FiやBluetoothといった無線機能は装備していない。そのためメールを使った自動同期や、タブレットやスマートフォンの外部キーボードとして使うといった機能には対応していない。
ただし東芝のWi-Fi搭載SDカード「FlashAir」に対応。別途購入してDM30のSDカードスロットに装着すれば、スマートフォンのアプリと連携してワイヤレスでテキストデータの送受信ができる。また8000文字までのデータなら、QRコードに変換してスマートフォンで読み出すことも可能。通常のSDカードを使ったり、本体のmicroUSBにPCとケーブルでつないで外部メモリーとして認識させてデータをやりとりする方法も用意されている。
今回のレビューのため、DM30をいろいろなシーンで使ってみた。この原稿もベースはDM30で書いているが、一般的な原稿を書く場合は頭で文章を考えてそれをタイピングするので、電子ペーパーの反応などはあまり気にならないレベル。ただし、発表会などで速記的に聞いた文章をそのまま書き出す場合は、ややストレスがたまる反応だ。
とはいえさっと取り出して、執筆できるのは快適。ポメラについては「テキスト入力だけの機械ならPCやキーボードを連携させたスマホやタブレットでもできる」という意見も聞く。しかし同業者なら解ってもらえると思うが、PCやタブレットでの原稿執筆はメールやSNSの着信通知などで意外と集中力をそがれる。その点DM30なら、通知を気にせずテキスト入力だけに集中できる。
DM200も併売されているので、多機能なストレートタイプのDM200と、折りたたみでクラシックなポメラのDM30。テキスト入力に集中したいユーザーは、気に入ったほうを購入して損はない。