機能的にはスマートウォッチ未満だが、電子ペーパーを文字盤からベルトまで全面的に採用した自由な柄の着せ替えウォッチ。炎天下でも見やすく、金太郎型スマートウォッチとは別の路線を行く21世紀のオモシロ腕時計
ゼンマイ仕掛けの腕時計が地上に生まれ出てから、(諸説あるが)すでに200年は経っているだろう。
基本的には同時攻撃や挟み撃ちをより確実なものとしてSYNC(同期)するための軍需製品だった腕時計が、いつの間にか生活必需品となり、今ではスマホの普及で生活非必需品となり、クラシカルなアクセサリーとしての復活を遂げつつある。
クォーツの発明と応用である安価なデジタルウォッチの登場以来、腕時計のバリエーションは増える一方。
現在ある腕時計の種類だけをざっと見ても、歴史ある手巻きゼンマイ式、クォーツアナログ腕時計、クォーツデジタル腕時計、電波腕時計、ソーラー電波腕時計、衛星電波腕時計、スマートウォッチなどなど……。
そして、今回紹介するのはスマートかどうかよく分からない文字盤&ベルト模様着せ替えE-INK腕時計「FESWatch U」だ。
電子ペーパー腕時計のニューモデル「FESWatch U」
電子ブックリーダーをお使いの方なら理解されていると思うが、基本的に昨今の液晶画面と比較してE Ink(電子ペーパー)の画面書き換え速度は恐ろしく遅い。
なのでE Inkを使って腕時計を作った場合には秒針の表示は難しい。また分針を1分進めるにも、画面全体をリフレッシュして描き換えるので、画面全体をクリアして再度1分進めた文字盤を再描画する。
当然、バッテリーを消費するので、長時間駆動の推奨設定は常時時刻表示はオフなのだ。
初代FES Watchを買った当時、気に入って毎日腕に装着していたら、よく喫茶店や街中で声をかけられた。
先代機は加速度センサーの働きで、時刻を見ようと腕を動かすと現在時刻表示をするため、腕時計全体が大きくリフレッシュして白黒反転したりする。
それを見た多くの人が不思議に思ったのだろう。多分、その反応は今もそれ程変わってはいないだろう。
初代のFES WatchはE Inkそのものを腕時計の文字盤とベルトの連続する形に打ち抜いたイメージの極めてシンプルな構造の腕時計だった。
一見して、ごく普通の見慣れた腕時計と比べると、あまりに貧相臭い感じがしないでもないが、保守伝統的な腕時計をたくさんコレクションしている筆者などから見ると、極めてシンプルでイノベーションを感じる“ゆるいチープ感のあるいいデザイン”だったと思う。
今回の2代目FES Watch Uは、初代のFES Watchの文字盤あたりを、ステンレス製のベゼルでガッチリと包んだだけのデザインに変貌を遂げた。
これをまともな腕時計の目指す正常進化で、より豪華なイメージに進化した……と考えるかどうかはユーザーにもよると思うが、常に斜に構えた筆者は別にして、ほとんどの人は望ましい改善方向だと考えるだろう。
購入したパッケージを開けてみると、最大の特徴はクレードル(充電ドッキングステーション)が標準で付属していることだ。
従来のFES Watchはボタン電池で駆動し、バッテリー切れになると、(公式には)メーカー持ち込みしないと電池交換できない女性用宝飾ファッションウォッチのショパールみたいな存在だった。
FES Watch Uも初代モデルと同じくシリコンラバー製のバックル型で腕に装着する。筆者の買った初代機は、バックルサイズ(長さ)と同じくらい電子ペーパーの領域が大きく、すぐにバックルのゴム素材と電子ペーパーが端っこで剥離し、今はアロンアルファでくっつけて騙しながら使っている。
今回のモデルは、バックルのサイズ(長さ)に対して電子ペーパーの領域が小さく、普通に考えれば、表示領域のシュリンク(縮小)であり、初代のモデルより退化だと言えなくもない。
しかし、その分、電子ペーパーとバックルの一体感は良く、末端の処理もビューティフルだと言えるのでここは我慢との妥協点かも。
本体背面のステンレス裏ブタには、クレードルでの充電用端子と、Bluetoothの強度確保のためのスリットが見える。
文字盤とベルトの柄をダウンロードして時計を飾れる!
FES Watch Uは初代モデルとは異なり、スマホと連携使用することでよりエンターテーメント性が加速する設計になっているが、特にスマホユーザーでなくても、目玉となっている文字盤とベルトの柄の変更(以降、文字盤とベルトの柄をまとめて単に「柄」と記する)を楽しむことは可能だ。
出荷時に数多くの柄変更のバリエーションがウォッチ内のメモリ-にプリロードされているので、側面のボタンを押してそれらを切り替えるだけでも2週間近くは、毎日違う柄で楽しめる仕組みとなっている。多少チープだがファッショナブルな柄だ。
文字盤の時刻表示は、「常時表示」モードと側面のボタンを押した時だけ表示する「オンデマンド」モードの2種類から好きな方を設定できる
。
プロのクリエイターが制作し、今のところは無償提供される柄をダウンロード使用したい場合や、自分自身のオリジナル柄を自作したいユーザーは、スマホに「FES Closet U」というアプリをダウンロードする必要がある。
FES Closet UアプリはBluetooth 4.1 LE(Low Energy)を備えているiOS版とAndroid版がサポートされている。筆者はiOS版をiPhone 7 Plusに、Android版をHUAWEI P10 Plusにダウンロード導入し、どちらもまったく問題なく動作している。
前述したようにFES Closet Uアプリで実現できることは、新しい柄のダウンロードや、オリジナル柄の制作、FES Watch Uへの転送、そして自分のFES Watch Uの各種管理だ。
各種管理では、FES Watch Uの文字盤の時刻表示のタイミング(常時あるいはボタン連動)や日時をスマホに合わせる選択設定、そして、自分が使用しているすべての柄の管理ができる。柄は「STORE」と「CLOSET」という2種類でレベル管理できる。
説明は不要かもしれないが、CLOSETは自分の日常使いの着せ替え柄を収納する場所。STOREは、前述したプロのクリエーターが制作した新柄などをダウンロードできる場所だ。
STOREでは「TRY」と「GET FREE」という選択が可能だ。TRYは試着で、気に入らなければ放っておけば、しばらくすれば消えてくれる。
試着してみて柄が気に入ってほしい場合はGET FREEを選択してダウンロードしてFES Watch Uにワイヤレス転送すればいい。
一方、CLOSETでは任意の柄が現在使用中(IN USE)か、CLOSETにはあるがFES Watch U側には未転送(SEND)なのか、CLOSETから削除(DELETE)するかの選択が可能だ。
セッティングのページでは腕時計の日時設定や時刻表示モード、ウォッチの柄の一覧管理やウォッチとスマホの連携登録解除や初期化などを指定して実行することができる。
防水仕様なのでホコリなどを洗い流せる
FES Watch U内部にはリチウムイオン電池が内蔵され、付属の専用クレイドルで約2時間半で満充電となる。
充電中は、ベゼルのすぐ下側にバッテリーアイコンが表示され、満充電で、連続動作時間は約2週間となっている。しかし、時刻の常時表示やオリジナル柄の制作や転送を繰り返していると、この手の製品共通ではあるが、稼働時間はどんどん短くなってくる。
FES Watch Uの本体は、IPX5/IPX7(JIS C0920防水保護等級相当)対応なので、夏場の暑い時期には洗面所で洗うレベルはまったく問題ないだろう。
シリコンラバーのベルトは、汗や水分は吸収しないが、小さなホコリやチリを吸着しやすいので洗えることは重要だ。
柄のデザインを自分で作れるのが醍醐味!
さて、筆者がFES Watch Uを衝動買いした最大の理由は、初代にはできなかった柄をスマホ上のFES Closet Uアプリを使って自由に作り、自分専用の柄をウォッチに転送して、世界でただひとつの自分だけのウォッチを簡単に実現できるからだ。
実際の柄制作の操作は極めて簡単だ。まずFES Watch Uの文字盤とベルトに使ってみたい背景を見つけ、まずそれをスマホのカメラで撮影する。
続いてダウンロード導入したFES Closet Uアプリを起動し、上段の右から2番目にある「+」アイコンをタップすると「CREATE」モードとなり、自動的にギャラリーなどのスマホ内部の写真を選択する画面が表示される。
後は、お気に入りの写真を選び、ピンチイン、ピンチアウト、回転などを行ないサイズと角度をウォッチイメージに最適化。そしてお気に入りの大きさや配置を決める。
続いて、時刻表示のイメージを何種類かのパターンから選択。期待通りにオリジナルの柄ができ上がれば、後はFES Watch Uのボタンを押してBluetoothを起動し、スマホ側からでき上がったばかりの柄を送れば完成だ。
文字盤の柄と時刻表示のサイズやバランス、文字盤と一体となっているベルトの両方に、どういうバランスで絵柄を配置するかは重要だ。
電子ペーパーの白地は決して真っ白ではないので、写真撮影時の被写体のグレー系などの色はノイズとなりやすいので注意が必要。できれば白黒のハッキリした被写体が望ましいだろう。
いくつかオリジナルな柄を作って、凝って深みにハマってくると、撮影写真を事前にレタッチアプリなどでクリアな表示に変換しておいたほうがいいと気づいた。
やっぱり世界で1つだけの柄を割り当てるのが楽しい!
筆者の現在のFES Watch Uは、筆者が携わっているオリジナル大学ノートのプロジェクトのアイコンイメージを取り込んで毎日愛用している。
レタッチアプリで、事前にグレーなどの中間色を排除したモノクロ変換した画像を使えばそこそこビューティフルだ。
ちなみに前回の本連載を画面キャプチャーして、その一部をFES Watch Uの柄として採用してみたが、自画自賛ではあるがなかなか変態的で面白い。
次は、毛筆で書かれたオリジナルの孫子の兵法をウォッチ柄に使ってみようと考えている。
今回の衝動買い
アイテム:FES Watch U
価格:秋葉原TICTACにて4万9680円で購入