今回のことば
「これから先の30年、さらにその先を見据えたときに、イメージングシステムは、さらなる柔軟性と発展性が必要である。より高いレベルの映像表現の世界へと招待するという思いで、新たなイメージングシステムを開発した」(キヤノンの真栄田雅也代表取締役社長兼COO)
EOSシリーズの累計生産台数は9000万台
キヤノンは、35mmフルサイズCMOSセンサー搭載の「EOS R」を、2018年10月下旬から発売する。
EOS Rの新製品発表会で、キヤノンの真栄田雅也代表取締役社長兼COOは「新たなスタートを切る記念すべき発表会」と位置づけ、「これから先の30年、さらにその先を見据えたときに、イメージングシステムにはさらなる柔軟性と発展性が必要になる。これまでのEOSとEFレンズで積み上げてきた伝統と技術を継承しながら、新たな可能性を追求し、より高いレベルの映像表現の世界へと招待する。このような思いで新たなイメージングシステムを開発した」とする。
EOS Rは、キヤノンが、フルサイズミラーレスカメラという新たな領域に踏み込んだ重要な意味を持った製品だ。
キヤノンは、1936年に国産初の高級35mmカメラとなるハンザキヤノンを開発し、カメラの歴史をスタート。真栄田社長は「80年以上の歴史のなかで技術革新を続け、写真、映像文化の発展に貢献してきた。こうした長年の歴史のなかでも特筆すべきは、1987年に誕生したEOSシステム。54mmの大口径、完全電子マウント、レンズ内モーター駆動を備えたカメラシステムは、当時の常識とカメラ技術の水準では考えられないほど革新的であり、合理的なものであった」と語る。
また、「EOSシステムは、快速、快適、高画質という開発コンセプトのもとに改良を加え、時代の要望に応えながら撮影領域の拡大を目指した。レンズ、センサー、映像エンジンの三位一体の技術を持ち、これらのすべてを自社で開発、生産し、最適な設計ができることが最大の強みである。設計技術と優れた生産技術が必要であり、最新鋭の自動化技術と、人にしかできない技術を組み合わせて生産し、レンズ生産の匠の技術も受け継がれている。設計技術と生産技術の両輪で、精度と信頼性が成り立っており、それが強みである。だからこそ、30年以上に渡りプロフォトグラファーからカメラ初心者までの幅広い顧客に支持されてきた」と真栄田社長は胸を張る。
2017年9月には、EOSシリーズの累計生産台数は9000万台に達し、EFレンズは1億3000万本を達成した。2003年から15年連続で、レンズ交換式デジタルカメラでの世界シェアナンバーワンを継続しているという実績を持つ。
レンズ性能を最大限に発揮する「EOS R」
一方で、キヤノンでは、2018年3月に、「満を持して発売した」(キヤノンマーケティングジャパンの坂田正弘社長)とするミラーレス一眼カメラ「EOS Kiss M」を発売している。
同製品は、販売開始以来、国内レンズ交換式カメラで、毎月連続首位を獲得。2018年上期(1~6月)の国内ミラーレスカメラ市場が前年同期比7%増となるなか、キヤノンは1~3月は前年同期比24%増、4~6月は同47%増と業界平均を大きく上回る成長を遂げた。
キヤノンマーケティングジャパンの坂田社長は、「キヤノンはミラーレスカメラにおいても最も多くの支持を得ているメーカーだ。ファミリー層、ママ層をはじめとして、写真コミュニケーションを楽しみたいという若い層にも受けている。施策が的確に顧客の心を掴み、新たな顧客層を呼び込むことができた。新たな顧客層の開拓は、カメラ業界にとっても意義があることだ」とする一方で、「EOS Kiss Mは新たな顧客を開拓したが、早くフルサイズミラーレスを投入してほしいという声も多かった。EOS Rは圧倒的な高画質と新次元の映像表現を可能にする新システムであり、多くのキヤノンファン、カメラファンの期待に応えられるカメラである」と述べた。
EOS Rは、有効画素数約3030万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーと、最新の映像エンジン「DIGIC 8」との組み合わせにより、高画質で表現力豊かな撮影が可能にしたのが特徴だ。また、デジタルレンズオプティマイザーが、連写速度に影響なく使用できるため、連続撮影時でも快適さを損なわずに「RFレンズ」の性能を引き出すことができる。明るいレンズと組み合わせることで室内や夜景などの暗いシーンでも高画質な撮影が可能だ。
さらに、多様なシーンに対応する「デュアルピクセルCMOS AF」と「RFレンズ」の駆動制御を最適化したことにより、最速約0.05秒の高速AFを実現。ピントを合わせたい場所を最大5655のポジションから選べるため、自由な構図で撮影できる。また、EOSシリーズ初となるEV-6の低輝度限界を達成。肉眼では被写体の判別が難しい暗い状況でも高精度なピント合わせを実現する。
キヤノンの真栄田社長は、「EOS Rシステムは、レンズ性能を最大限に発揮できるように開発した。これまでは実現できない高性能設計が可能になり、カメラとレンズ間の高度な情報通信により、いまだに到達したことがない高画質と撮影領域を拡大。さらなる使いやすさを実現する」と説明。
開発を担当したキヤノン イメージコミュニケーション事業本部ICB製品開発センターの海原昇二センター所長は、「RFレンズは、将来はどんなことが考えられるか。制約がなくなったらどうなるか。そうした観点から、レンズに足かせをしてはいけないという判断で、光学性能を追求した」とし、「大口径であり、バックフォーカスが短いほど、光学設計の柔軟性が増す。つまり、いままで作れなかったレンズを作れることにつながる。その柔軟性によって、想像以上に圧倒的な画質を実現できた」と自信をみせる。
そして、キヤノンの真栄田社長は、「レンズ設計の自由度が格段にあがったことで、光学性能をさらに一段引き上げる設計を実現した」と語る。
ターゲットとしているのは、現在、フルサイズ一眼レフカメラを持っていたり、EFレンズを持っているユーザーだ。「性能の高さとともに、マウントアダプタでEFレンズを使用できるようにしているため、レンズ資産を生かせることも訴求したい」(キヤノンマーケティングジャパンの坂田社長)とする。また、「APS-Cカメラを使っていて、フルサイズカメラにステップアップしたいユーザーに対しても、APS-Cカメラと同じサイズ感と操作性を提供できる点を訴求していく」とする。
同社の調査によると、次もフルサイズカメラに買い換えたり、買い増したりしたいというユーザーは、フルサイズユーザーでは82%に達し、APS-Cカメラでは約7割に達するという。
「ミドルクラス以上のユーザーは、フルサイズに対して、高い購入意欲を持っている。こうしたカメラファンを、EOS Rの新たな映像表現の世界に招きたい」(キヤノンマーケティングジャパンの坂田社長)と語る。
フルサイズミラーレスという新たなステージに踏み出したEOS R。キヤノンマーケティングジャパンの坂田社長が、「EOSの流れを汲みつつも、新たな可能性を秘めたカメラである。写真を進化させ、写真の楽しみを一層広げたい」とすれば、キヤノンの真栄田社長は、「キヤノンは、入力から出力まで、イメージングシステムを進化させ続ける。EOS Rによって提案する、新たな映像表現を体験してほしい」と語る。
長年をかけて誕生したEOS Rが、これから長い歳月をかけて、どんな進化を見せるのかも楽しみだ。
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