身近にはいるはずなのに案外よく知らないのが、ティーンエイジャーのスマホの使い方だ。今回はドイツ、ベルギーなどで接した欧州のティーンエイジャーの事情をレポートしたい(欧州といっても広く、文化も異なるので、あくまで一部のトレンドであることをお断りしておく)。
ちょっとしたインスタントメッセージでも動画を送るのが普通に
ベルギーの首都ブリュッセルに住むLさん、15歳の女の子だ。欧州連合(EU)の本拠地があることから、さまざまな国の出身のEU関係者が多く住む。Lさん自身の父親もイタリア出身で、EU関連の仕事でブリュッセルに住むことになったが、生まれも育ちもブリュッセル。そしてイタリア語、フランス語、英語、オランダ語を操り、エリート校のヨーロピアンスクールに通う。
Lさんは、テスト前を除くと一日2時間半ぐらいスマートフォンを使う。なかでもメッセージとカメラはよく使う機能だ。ここまでは私の想像の範囲内だったが、彼女のメッセージたるや、テキスト早打ちも見事なのだが、その多くが動画なのだ。
待ち合わせの場所に着いたが、友達はまだ来ていない。LさんはiPhone SEを取り出しセルフィーの姿勢をとると、「ハーイ、Lだよ。もう着いたよ。待ってるねー」と慣れた様子で動画を撮影、Snapchatで友人に送った。確かに相手にはLさんがどこにいるかよくわかるというメリットがあるが、彼女はそのため(だけ)に動画メッセージを送っているのではない。
「こっちの方が楽しいじゃない」とLさん。Siriのおかげでやっと端末に向かって話しかけることに慣れてきた私とは大きな違いだ。友人とのやりとりに使うのはSnapchat、WhatsApp、Instagram、iMessageの順。4サービスとも動画メッセージ機能があるが、Snapchatを利用するのは、「フィルターがある。私の顔が可愛くなるから」とLさん。
Snapchatはやりとりの頻度に応じて「ベストフレンド」などのアイコンがつく。それも仲間内で遊びの要素を盛り上げるようだ。メッセージが一定時間後に消えるのがSnapchatの特徴、同様にFire、Smirkなど友達と自分の関係を示すアイコンも変化する。これらを「消えちゃう前にスクショを撮って保存して見せ合う」のだそうだ。
女子はiPhone、男子はAndroid
「Snapchatにはそろそろ飽きてきた」 次のサービスのチャンス!?
Lさんがビデオでメッセージを送る相手は数十人に限られている。「そもそも始めた時は動画でチャットしたいけど、みんなが同時におしゃべりできることは少ない。だったらビデオメッセージを送ろうって」。「入力が面倒臭いの?」という私の質問には、「うん、打ってられない。それに私たちの流行語や流行の短縮語を知らないから、すごいスピードで打つと勝手に変な自動補完が入ってしまう」とのこと。LINEのスタンプのようなものはあまり惹かれないようだが、テキストメッセージにはスマイリーやハートマークなどの絵文字が入っている。
サービスの使い分けは、Instagramは「自慢したり、流行をチェックするときに」、WhatsAppは「とりあえずみんなやっているから、親しくない人にはこれ。仲良くなると、Instagram持ってる? Snapchatやってる? という風になる」と言う。最近はそのSnapchatにも少し飽きてきたようだ。なお、ビデオメッセージを送り合うのはほとんどが女友達。「男子はやっていないんじゃない?」とのことだった。
端末は女子はiPhone、男子はSamsungなどAndroidが多いようだ。
つづいては、ドイツ・ベルリンのRさん一家のF君は17歳のお兄さん。画面が割れたSamsungを折りたたみできる皮のケースに大切に入れて使っていた。Snapchat、WhatsApp、Instagramと”必須”のアカウントはすべて持っているがあまり発信しない。それでもヒマさえあればスマホを触っている。誕生日のプレゼントには、スマートフォンと連携するGoProのような小型のカメラを買ってもらった。夏休みのキャンプで遊んでみるつもりだ。
妹のMさんは13歳、夏休み前についに念願のスマートフォンを買った。中古のiPhone 6だ。「スマートフォンはiPhoneって決めていたから」とMさん。兄のF君は「品質が良いのはiPhoneだけど、iOSはいろんなことができないよ」とアドバイスしていた。
ブリュッセルのLさんによると、Androidは男子はSamsung、女子はHuaweiのイメージがあるという。10~15年前、Samsung(フィーチャーフォン時代)が女性にアピールしてシェアを増やしていったのだが、それは過去のことのようだ。
Lさんが楽々と(恥ずかしがることなく)、iPhoneを構えてメッセージを録音して送る姿にはショックを受けた。iPhone10周年だが、iPhoneが広めたタッチのインターフェイスから、新しいインターフェースが求められているのかもしれない。あるいはLさんの「Snapchatは飽きた」と言っていることは、次なるメッセージアプリ誕生のチャンスはあるということだ。
おまけ:中国で「HTCって何ですか?」
この10年、ベンダーの浮き沈みがあったが、最後に先週行った中国の上海で25歳の女の子と話していた時にびっくりしたことを紹介したい。
「どんなスマホが人気なの?」という質問に、彼女が挙げたのは「Oppo、Xiaomi、Vivo」。「Huaweiは?」には「うん、良いですね」。「Lenovoは?」は「あまり聞かない」。「HTCは?」には「HTCって何ですか?」。
そう、HTCを知らなかったのだ。iPhoneの名前は一番に出てこなかったなのだが、iPhoneについて聞いてみると「買えるなら当然iPhone(を買う)でしょう」とのこと。メディアで言われているよりも中国でのiPhone離れは進んでいないように感じた。