教育に科学技術を活用
「教育(Education)」と「科学技術(Technology)」をかけ合わせたことば「エドテック(EdTech)」。教育の分野に科学技術を活用する取り組みのことをあらわします。これからの学びを大きくかえるともいわれるエドテックについて、デジタルハリウッド大学の佐藤昌宏教授に教えてもらいました。(編集委員・沢辺雅俊)
安く簡単に学習効果アップ
Q(質問) エドテックとは何ですか。
A(佐藤教授の答え) デジタル技術を使って教育をかえていくことです。AI(人工知能)などの先端技術もあれば、スマートフォンなど、すでに身近なものもある。学校にかぎらず、幼児からおじいさん、おばあさんまでが対象です。
大事なのは「ビフォー・アフター(前後)」でかわること。学習効果が劇的に上がる、教えるのが簡単になる、費用が安くなる、時間が短くてすむなど、デジタル技術を使って、学びがかわるのです。たとえば英会話。通学制の英会話教室にくらべ、オンライン英会話では費用が20分の1に。1対1で話せるので、会話量も格段に増えます。
Q これらのほかに、どんなものがありますか。
A 表計算アプリも、その一つ。計算の構造がわかり、プログラミングに対する理解が深まります。
海外で盛んなのがMOOC(大規模公開オンライン講座)。モンゴルの少年が活用し、アメリカの名門大学へ進みました。
身近なのはYouTubeです。自身の知的好奇心を徹底的に追いかけられます。
塾などで導入されてきているのが「アダプティブ・ラーニング(適応学習)」の手法です。一人ひとりの理解度に合う問題を、タブレットに示していきます。どこでつまずいたかを分析し、関連する基礎的な問題を提示できたりします。先生はファシリテーター(声がけ)の役割ですね。
入試がなくなるかも?
Q 学ぶ側にとっては、どうかわりますか。
A ログ(記録)がネットワーク上に残れば、学校で学んだことを塾の先生が引きつぎ、そのつづきを家でやれるようになる。パソコンがあればテキストを持ち運ぶ必要もありません。
いまの入試は「一発勝負」が中心ですが、日々の小テストなどの記録が蓄積されたら、それが証明になる。受験がなくなるかもしれません。
Q なかなか進まない面もありそうですが……。
A たしかに公立学校では予算や使い道に制約がありますが、日本の経済規模で文教費は決して小さくない。各国で急速に進展するなか、経済産業省や文部科学省でも進めています。
Q 小学生やその家族にアドバイスはありますか。
A やりたいことは何か、考えてみましょう。おしゃれが好きなら、服は何でできているか、素材はどういうものか――。好きなものをネットで「深掘り」することで、勉強につながります。保護者は、それをすすめる「声がけ」をしてほしいですね。
佐藤昌宏さんプロフィール
映像制作やコンピューターグラフィックスなどを教えるデジタルハリウッド大学の教授で、経済産業省の有識者会議「『未来の教室』とEdTech研究会」の座長代理なども務める。著書に『EdTechが変える教育の未来』。
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