「毎日バスタブにお湯」が正解?医師が考える正しい節水
お風呂は浴槽にお湯を一度にたくさんためて入るので、水の使用量がとても多いように感じます。特に雨が少なくダムの貯水率が減り、取水制限の可能性などが報じられると、多くの人が節水を意識し、毎日お風呂にたくさんのお湯を張るのに気が引けるということもあります。また、夏はもともとシャワーだけという方が多いのも事実です。実際にシャワーの方が節水になるのでしょうか?
家族でシャワーは節水にならない?バスタブとの水量比較
自治体が水道の使用水量を算定する際の資料などによると、一般的にシャワーの使用水量は毎分8~15リットルとされています。この数値から計算すると5分間シャワーを使った場合、水量は多い場合で約75リットルです。
もしあなたが1人暮らしでさっと汗を流すだけでよいような場合はバスタブを使用するより節水になるかもしれません。しかし家族で住んでいる場合、3人がシャワーを使えば200リットルを超えることになります。
浴槽の容量は一般的なバスタブで160~180リットル。家族の人数やシャワーを浴びる時間にもよりますが、3人以上がシャワーを浴びるなら、浴槽にしっかりお湯を張った方が節水にもなり、また経済的だということがわかります。また、夏でもバスタブに浸かった方が疲労回復などの効果も高いといったメリットも捨てがたいものです。
節水のために有効?お風呂の残り湯の活用法
普段、みなさんは職場の同僚や友人と、家庭でのお風呂の入り方などについて改めて話す機会は少ないでしょう。
私の研究室には、仕事柄、多くの方がお風呂や温泉について取材や打ち合わせにおいでになるため、お互いにご自身のお風呂のことを話す機会がとても多いのです。その際、各家庭でのさまざまなお風呂の入り方を聞いてお互い新鮮な驚きを感じることも多いものです。
その1つが、残り湯の利用方法です。残り湯を次の日洗濯に利用するという方もいますが、中には残り湯を当然のように翌日以降も何回も沸かし直して入浴されているという方もいました。その理由は1度入っただけで捨てるのは水がもったいない、ということでした。確かに節水効果は大きいと思いますが、衛生面では大丈夫でしょうか?
節水効果はあっても危険?残り湯の沸かし直しのリスク
残り湯を翌日以降も沸かし直して入浴するのは、たしかに節水効果は大きいでしょう。しかし、医学的にはあまりお勧めいたしません。
その理由は、残り湯には、細菌にとって栄養分になる入浴した人から出た汚れが必ず含まれており、ここに「温かい湯」という細菌が大繁殖するための環境が整ってしまっているからです。
少し前の研究ですが、成人5名が入浴した残り湯を一晩おいて翌朝検査をしたところ、大腸菌群が残り湯100mL中に2万5千~26万も認められたという報告*があります。もともと、日本の水道水は基準が大変厳しく、国の水道水質基準によると大腸菌は「検出されないこと」とありますので、この大腸菌群はもともと水道水に含まれていたものではなく、入浴した人の体に付着していた大腸菌が、温かい湯と入浴した人から出た汚れ(栄養分)で、一晩で大増殖したものと考えられます。
もちろん、沸かし直しをしたところで殺菌されるほどお湯の温度は上がりません。残り湯を一晩取っておいて、翌日沸かし直して入浴するということは、ばい菌だらけの湯に浸かるということになってしまいます。このことから考えると翌日の沸かし湯への入浴はお勧めできません。
節水のこと、体へのことを考えると、特にファミリー世帯は結局毎日浴槽に湯をはって入浴するのが良さそうですね。総合的に何がよいのかのバランスを考えて、毎日の入浴時間を上手に楽しみましょう。
文:早坂 信哉