タッチパネルがないレジャーホテルが増加中
近年、ラブホテル業界に大きな「変化」が見られるようになってきました。以前、下記の記事でも触れましたが、リゾート感を醸し出す施設やグルメに力を入れる施設といった進化型が増加しているということも、変化の1つです。呼称も今やレジャーホテルが業界では一般的です。
【参照】
・ラブホで「グルメなステイ」がカップルにひそかな人気
・ラブホテルは「レジャーホテル」の時代へ!
この記事でもレジャーホテルと表現します。
そんな中で“変化”が著しいのが、レジャーホテルの象徴ともいえる客室を選ぶタッチパネルや自動精算機。誰にも会わずにチェックインや精算ができるシステムですが、実は最近、フロントのある施設が目立つようになりました。フロントにはしっかりスタッフが立っており、対面で料金や鍵のやりとりが行われます。
「できれば人に会いたくない」というゲストも多い業態ですが、なぜ、レジャーホテルにフロントを設けるのか!? その秘密に迫ります。
※タッチパネル式のレジャーホテルにも、正確には遮蔽されているフロントがあり、区分のため業界では一般的なフロントを「オープンフロント」と呼ばれていますが、本記事では単に「フロント」と表現します。
レジャーホテルの定義って?
そもそも、レジャーホテルとは何なのか? まずは、レジャーホテルの法律的な定義を確認したいと思います。
レジャーホテルに限らず、宿泊料を受領して人を宿泊させる営業をする場合は、旅館業法という法律が適用されます。旅館業法という名称ですが、旅館のほかに「ホテル」「簡易宿所(カプセルホテルやホステルなど)」「民宿」とカテゴライズされています。レジャーホテルは主にホテル業としての届け出がされています。
最近事件にもなった話題の民泊は、いずれにもあてはまらないのに、宿泊料を受領して人を宿泊させていることから、旅館業法に違反しているとの指摘がされています。これについては別稿に譲りたいと思います。
話を戻しましょう。特定の設備を持つレジャーホテルは、風営法【風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律】第2条第6項第4号の「専ら異性を同伴する客の宿泊・休憩の用に供する政令で定める施設を設け、当該施設を当該宿泊・休憩に利用させる営業」に該当。旅館業法の許可を受けた上で、風営法の届け出をしなければならず、店舗型性風俗特殊営業の4号営業に分類されます。よってホテル業界ではレジャーホテルを4号営業ホテルとも呼んでています。
すなわち、タッチパネル式や自動精算機などの設備を設ける場合は、風俗営業法上の届け出が必要となります。4号営業では、看板の規制や18歳未満の者を客として立ち入らせることを禁止するなど制限が多くなります。
そんな中、業界団体では、「休憩・宿泊施設なのに風俗営業に分類されるのは問題である」とし、風俗営業の枠から外すべきだという動きが見られるようになりました。
オープンフロントやレストランがある理由
既述のとおり、最近のレジャーホテルでは、立派なフロントやレストランなど備える施設を多く見かけるようになりました。
レジャーホテルにフロントがある理由。勘の良い方でしたら前述の解説でおわかりでしょう。つまり、風俗営業法が規定する条件にあてはまらない施設が誕生しているということなのです。このような施設は、4号営業ホテルという呼称に対して、新法営業ホテルと呼ばれています。
フロントやレストランを設けることは、4号営業ホテルではないことの前提条件です。よって、新法営業ホテルではフロントやレストラン、バースペースなどを設けることになるので、おのずとスタッフの直接的な人的サービスが提供されることになります。冒頭に述べたようなタッチパネルなどがなくなっているのも、そのためです。
もちろん、デイユース(休憩利用)もできるなど、従来どおり男女が特定の目的だけのために利用する施設という側面も保っています。しかし、高感度な客室設備を有するケースは多く、たとえば女子会に利用するなど、多様な目的に対応する施設になっています。
また、近ごろは“窓のはめ殺し”や“妖艶”といった、従来のイメージからは想像できないような施設が増え、オープンエアのテラスや露天ジャグジー、キッチンを有するコンドミニアムのような施設など、レジャーホテルの進化はとまりません。
ついには宿泊客のターゲットまでも変わってきているのです。
訪日外国人観光客やファミリーもターゲット?
近ごろ問題となっているホテル難民問題。訪日外国人客の増加でホテルの稼働が上昇、料金も高止まりで、一般のホテル予約が困難になっています。そのような中で、新法営業ホテルは訪日外国人客やビジネス客など、それこそ従来のターゲット以外も視野に入れ、進化を遂げています。18歳未満でも利用できるのも、新法営業ホテルだからこそでしょう。
ケバケバした淫靡なイメージがなく、入退出も自由で、さらにはレストランで食事を楽しめるとなれば、落ち着いたホテルステイの機能性は高くなります。ホテルカテゴリーのボーダーレス化とも言えるかもしれません。1点疑問なのは、レジャーホテルの客室に常備されている避妊具などの扱いをどうするか。これは、カップル以外が利用する場合は撤去、テレビのアダルトチャンネルも停止するなどの対応がとられるとのことです。
ホテルはハード・ソフト・ヒューマンといわれますが、これまで、接客がなかったレジャーホテルでは、客室のハードやアメニティなどに力が入れられてきました。ここにきてにわかにヒューマンも注入し、注目されるレジャーホテルが増えています。秀逸な客室のハードやアメニティに加え、気の利いた人的サービスが加われば、ある意味で最強といえます。
今後もホテルカテゴリーのボーダレス化は更に進んでいくことでしょう。追って、秀逸なレジャーホテルの紹介もしていきますのでこうご期待!
※本記事の執筆に際しては、業界専門誌である季刊レジャーホテル(綜合ユニコム)・金江広編集長のご協力を賜りました。
文:瀧澤 信秋