トイレのドアは内開きがいい?それとも外開き?住宅の場合は外開き、公共施設では内開きが一般的です。今回のリフォームの現場からでは、それぞれのメリット、デメリット、そしてトラブル事例もご紹介します。
部屋のドアの開き方は、廊下から押して室内に入る内開き
ドアの内開きとは部屋の内側に開くこと、外開きはその逆で部屋の外側に開くことを言います。さて、皆さんの家のリビングや寝室、子ども部屋のドアはどちらに開きますか?
住宅の場合、部屋に入るドアは、廊下から室内に向かって押して入る開き方、つまり内開きが基本です。理由は、外開きではいろいろ不便なことがあるからです。
例えば、狭い廊下側にドアを引いて開けるには、身体を大きくねじる必要があります。また狭い廊下側にいきなりドアが開けば、廊下にいる人とぶつかる危険があります。実はガイドYuuも、とある住宅で廊下を歩いていたところ、外開きのドアがいきなり開いて衝突、眼鏡が割れてしまったことがあります。
またドアを通じて部屋に招きいれるという意味からも、部屋のドアは内開きであるのが自然です。しかしトイレのドアとなると話は別です。築年数が新しい家は外開きがほとんどですが、古い家では内開きの家も多く見られます。さて皆さんの家はどちらに開くでしょうか?この開き方にも理由があります。
内開きのドアがついたトイレの床には段差がある
築30年より古い一戸建てのトイレでは、内開きのドアが多く見られました。もちろんトイレ内が特に狭い場合は、物理的に外開きになります。しかし、トイレは狭い廊下に面していることが多いため、内側に開く余裕がある場合は、内開きにするケースが多く見られました。
この内開きドアのトイレには、ひとつ特徴があります。それは敷居から床面が一段下がっていることです。その寸法は約10cmほどで、廊下から段差ができるので、バリアフリーでよく問題になる箇所です。
なぜこんな段差があるかと言えば、ひとつにはスリッパがドアに引っかからないようにするためです。内開きでドアを開ければ、床に置いたスリッパにぶつかります。そこでスリッパの高さの分、床を下げることで引っ掛かりを解消しました。
また以前のトイレは床がタイル張りになっていて、水を流して掃除ができるよう、床に排水口がある家もありました。そのような仕組みの場合、廊下と同じ高さでは水があふれてきてしまいます。そういう意味でもトイレの床は一段下がっていたのです。
住宅のトイレのドアが外開きになった理由とは
さてトイレのリフォームで多いのは、手すりを付けたり床の段差を無くしたりといったバリアフリーの工事です。バリアフリーリフォームが一般的になり始めたのは1990年代頃~です。
そこで困ったことが起きました。トイレの床の段差を無くしてしまうと、内開きのままではドアを開けた時にトイレのスリッパを引っ掛けてしまうのです。
また住環境と健康に関する意識が高まるにつれ、トイレの中で脳溢血で倒れるケースが多いこと、その際に倒れた身体が邪魔になり外からドアを開けて助けに入れないことなどが周知されていきました。
そうなればトイレのドアに限っては外開きのほうがずっと便利で安全です。中で人が倒れていてもすぐに助けに入ることができますし、ドアとスリッパがぶつかる心配もありません。ただし狭い廊下から手前にドアを引いて開くわけですから、通行人とドアがぶつからない間取りや、ドアの幅を狭くするなどの工夫が必要になります。
内開きと外開きのドア、それぞれのメリット・デメリット
住宅のトイレにおける、内開きと外開き、それぞれのメリット・デメリットを改めて確認してみます。
内開きのメリットは、ドアを開けても廊下にいる人と衝突する危険が無いこと、ドアを開け放したままでも通行の邪魔にならないことです。
デメリットは、床に段差が無いとスリッパとぶつかること、狭いトイレでは中で身動きがとりにくくなること、もちろん車いすではとても使いにくく、また中で倒れた時に身体がジャマになり外から助けに入れないなどです。
外開きのメリットは、狭いトイレでも中で身動きが取りやすいこと、ドアの開閉にスリッパがジャマにならないこと、中で倒れても外から助けに入りやすいことです。デメリットはドアを開けた時、外に人がいるとぶつかる危険があることでしょう。
このように考えていくと、ドアを開けた時の危険さえ防ぐことができれば、トイレは外開きが便利であることがよくわかります。
公共の施設では内開きが多い、外開きだと危険なことも。
このように現在では住宅のトイレは外開きドアが主流ですが、デパートなど公共の場では内開きが主流です。
理由は、外開きは空室の際にドアを開け放しておくと通行のジャマになり、勢いよくドアを開けると外にいる人にぶつかってケガをする恐れがあるからです。
また外開きは、鍵のかけ忘れで誤って開けられてしまうと対処できず、丸見えになってしまうのも困ります。内開きなら内側からパッと手で押さえればドアを閉めることができ、万が一外から押されても押し返すことができます。実は内開きは防犯に強いという特長があります。
たまに公共の場で、外開きのトイレに出会うことがあります。以前、古いホテルのトイレで空室がたくさんあるのに気付かず、行列ができていたことがありました。原因は外開きのドアが閉まっていて、遠目では使用中か空室か区別がつきにくかったのです。最近ではフォーク並びをすることが多いので、ひと目で空室と分かることがいかに大事かを実感させられた出来事でした。
新しいトイレのドアの形、引き戸やスライド折れ戸なども
さて、イマドキの住まいづくりでは、トイレのドアは内開きor外開きという二択から、もっと便利で安全なドアが登場しています。
例えば、引き戸にすれば、開け放しても廊下側のジャマにならず、狭くても比較的身動きがしやすく、車いすでも使いやすいなど、内開きと外開きの弱点をカバーしながら更に便利に暮らせるようになります。
引き戸を取り付ける袖壁が無い場合は、今のドア幅の中で室内にも室外にも干渉が少ない、折れ戸のような形状のドアがあります。
トイレのドアの開き方ひとつでもこれだけ様々な理由があります。リフォームのプランを立てる時には、日々の暮らしをよく思い出して、細やかな配慮で本当に暮らしやすい住まいづくりを考えていきましょう。
文:Yuu