女性たちに話を聞くと、「離婚できる人はまだいい。一番つらいのは、離婚したいけれどできないことだ」という声が上がる。なぜ離婚したくてもできないのか、その女性たちの心理とは。
まずは経済の問題
子どもが望むなら大学まで行かせてやりたい。それが多くの親の気持ちだ。だからこそ、離婚ができないのだとナミコさん(40歳)は言う。結婚して13年、2人の小学生を抱えている。
「8歳年上の夫はそれなりに地位もあるし、収入もあります。だけど家のなかでは王様状態。ただの頑固オヤジならまだいいんですが、モラハラ発言には悩まされてきました。不快に思う私がいけないんだとずっと思ってきたんですが、ある講習を受けて『これはモラハラで私は怒っていいんだ』と最近気づいたんです」
女のくせにとか、どうしてこれくらいのことが分からないんだとか、ナミコさんに対してはいつも上から目線の夫。かつてはそんな夫を尊敬して一緒になったのだが、今では後悔ばかりだという。
「同じ会社だったんです。確かに夫は仕事ができたし、恋人関係のときは頼もしいと思っていたけれど、一緒になったらいつもバカにされているようで、晴れやかな気持ちで日常を送れなくなってしまいました」
それでも離婚しないのは、もちろんお金の問題。結婚と同時に退職したナミコさんには、離婚しても生活する経済力がない。子どもには望むだけの学校へ行かせてやりたいし、離婚を申し出たら夫が子どもの学費を出すとは思えないから、離婚の「り」の字も言い出せないそうだ。結局、夫が不機嫌にならないよう、日々、心を砕く毎日を送っている。
世間体や親の反応が気になって
女性たちが離婚に踏み切らないのには、他にもさまざまな理由がある。
「3組に1組は離婚していると言われても、私の周囲にはあまりいないんですよね。子どもも私立高校と中学に行っているし、父母そろっている家庭が大多数。そうなると世間体が気になる」(43歳・結婚18年)
「私は親の反応が気になって離婚できずにいます。うちの夫、やけに私の両親に気に入られているんです。仕事と趣味が大事で、全然家庭を顧みない夫ですが、私の親には愛想がよくて。私は親と折り合いが良くなかったんだけど、夫が間に入ってくれることで円満にいっているのもたしか。もし離婚したら実家にも帰れず、親も怒るのが目に見えている。だったら波風立てないのが一番いいなと思うんです。夫には、もう少し一人娘にも目を向けてほしいですけどね」(37歳・結婚7年)
妻がいつでも本音を夫に見せていると思ったら大間違い。離婚したいけれどできない妻たちは、おそらくいつか爆発する。そのときになって夫はうろたえ、初めて妻の声に耳を傾けようとするのではないだろうか。
文 : 亀山早苗