そもそも「風邪」とは?
さて、寒さが厳しくなってきて、「風邪をひいてしまった!」と言ってくしゃみをしたり鼻をすすったり、あるいは熱でうなされて寝込んでしまった人もいらっしゃることでしょう。
誰もが一度はかかったことがある「風邪」。今日は風邪に対する正しい知識を解説しましょう。
まず、「風邪を治す薬は(ほとんど)ない」という事実をみなさん知っていますか?
風邪とは、喉や鼻がなんらかの微生物にやられてしまって生じる病気のことをいいます。医療機関では、「感冒」とか「急性上気道炎」ともいわれます。風邪を引き起こす微生物の8割から9割がウイルスであり、200種類以上もいるといわれています。ですから、風邪を引き起こしたウイルスを調べることは困難なので、通常は調べません。
しかし、その微生物の中には爆発的な流行を起こすことがあるウイルスがいて、医療機関ではそのウイルスを調べることが一般的になっています。そのウイルスがあの「インフルエンザウイルス」です。インフルエンザウイルスには有効な薬剤がありますが、その他の風邪を引き起こすウイルスには有効薬はありません。だから、「風邪を治す薬は(ほとんど)ない」といえるのです。
ちなみに「抗生物質」はウイルスには効果がありません。しかし、風邪ではなく、喉が腫れる扁桃腺炎であったり、副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)の場合は、適切に抗生物質を使わなければならないことが多いので病院を受診してください。
基本的に風邪なのであれば、普通の体力を持っている人ならば、3日程度で治ることがほとんどで、長くかかったとしても1週間です。もし1週間以上、熱・喉の痛み・鼻水の症状が続くのであれば医療機関を受診することをお勧めします。
とはいっても、風邪をひいてしまったらやっぱり辛いですし、仕事や勉強を休むことができない人も多いことでしょう。
そこで、みなさんに私が実践している5つの風邪対策をお教えしましょう。
1. よく寝て、よく食べる
風邪を治すためには、自分自身の免疫力を高めなくてはいけません。そのためには、安静と睡眠が重要です。無理に出社して、他人に風邪をうつしてしまい会社のスタッフが全滅……なんてことを避けるためにも、できれば仕事を休みたいところです。
とはいえ、どうしても休めないことが多いと思うので、やらなければならない仕事だけをして早めに自宅へ帰りましょう。栄養をしっかり摂ったほうがもちろんいいのですが、どうしても食べられないのであれば無理に食べることはしなくていいです。ただし、水分はしっかり補給してください。オススメはスポーツドリンクです。
2. 湿度の管理
冬場はどうしても室内が乾燥するので、喉や鼻にウイルスが侵入しやすくなってしまいます。そこで有効なのが加湿器です。室内の湿度は40~60%を目安にして加湿しましょう。
3. 手洗いとうがい
日々の行動で忘れがちなのが、手洗いとうがい。ウイルスは、空気中から口に直接入ってくるだけではなく、ウイルスのついたドアノブなどを触った手から口に入ってくることもあります。指先だけではなく指の間や手首も洗いましょう。そして、手を拭くときは、清潔なタオルやハンカチで。
4. マスクを有効利用しよう
マスクは、他人からウイルスをもらわないためだけではなく、自分がウイルスをばらまかないようにするために必要です。風邪をひいてしまったときはもちろんですが、風邪をひいていないときにもマスクを有効活用しましょう。マスクは、鼻と接するところに針金が入って密着できるタイプがおすすめです。
5. 市販薬の活用
風邪を直接治す薬はありませんが、気になる症状を抑える薬はあります。総合感冒薬でなんとなく治療するよりも、いま自分が気になる症状に合わせて薬局で購入してみることをお勧めします。
●鼻水が気になる:花粉症の薬を購入するといいでしょう。アレジオンやアレグラは、病院で使用している薬と同じなのでおすすめです。
●喉の痛み、発熱:最近、薬局でもロキソニンが買えるようになったので使用してみてください。ただし、漫然と長く使うことはオススメしません。
●咳:テオフィリンという成分が入っている鎮咳薬がおすすめです。アネトンせき止め顆粒、ミルコデ錠といった製品名で売っています。
前述したように、風邪は自宅で治せる病気ですが、以下の場合は病院に行きましょう。
・痰の性状がひどい
・咳が続く、息苦しい
・喉が痛くて、食べたり水が飲めない
・39度以上の発熱
また、喘息や心臓病、糖尿病などで病院に通院している場合は、風邪をこじらせやすいので早めに受診をしましょう。
風邪は辛いですが、適切に対処すれば数日で改善しますのでご安心ください。しかし、1週間たっても症状を引きずる場合は、無理をせずに近所の内科医院へ行ってみてください。
文:菅原 道仁