世界には、投資や寄付の見返りとして国籍や市民権を給付する国・地域がある。しかしそうした「合法的にセカンド・パスポートを購入でき出来る国・地域」の中でも、取得するのに支払う金額とその価値に差があるようだ。
パスポートの価値ランキングの基準にされている「ビザなしで入国出来る国の数」だけではなく、投資や事業によって利益を得られる機会を考慮すると、1600万ドルの投資で取得でき、世界100カ国にアクセスできるロシアのセカンド・パスポートが最も安価のようだ(2015年データ)。
行動範囲は若干狭くなるが一家(大人2人、子ども2人)そろって2829万円、つまり一人当たり707万円という良心的な金額でパスポートが買える、ドミニカ共和国のような国もある。
価値の高いセカンド・パスポート10カ国・地域
ランキングと申請に必要な寄付金・投資は以下のとおりだ(2016年プレミア・オフショア・データより編集部まとめ)。
10位 キプロス共和国 283万ドル
9位 オーストリア 226万ドル453万ドル
8位 マルタ 157万ドル
7位 ブルガリア 事業投資・国債購入で120万ドル
6位 セントクリストファー・ネイビス 29万5000ドル、不動産投資で最低50万ドル
5位 アンティグア・バーブーダ 27万5000ドル、投資で50万ドル
4位 ドミニカ共和国 25万ドル
3位 グラナダ 不動産投資で24万ドル
2位 セントルシア 20万ドルから25万ドル、国債購入で50万ドルから55万ドル
1位 ロシア 16万5000ドル
「セカンド・パスポート」とは?国籍・市民権の違い
「セカンド・パスポート」とはその名称の通り、「二個目のパスポート」だ。日本は国籍法14条1項に基づき 単一国籍しか認められていないが、(多重国籍者として生まれた22歳以下の日本国籍者を除く)多くの国で複数のパスポートを所有することが認められている。
日本では「国籍」と「市民権」が同じ枠組みに属するため理解しづらい感覚であるが、基本的にこれらは別物である。国籍が自国に所属する権利そのものであるのに対し、市民権は選挙権なども持つ国民に与えられる。しかし日本国籍を持つ人間が他国で市民権あるいは国籍を取得すると、日本国籍を失うことになる。
因みに「永住権」は国籍や市民権を所有していないが、永住権を持つ国・地域に永住する権利である。海外で暮らす日本人は日本国籍を維持するために、永住権のみを取得しているケースが多い。
最も価値のあるセカンド・パスポートはブルガリア?
多重国籍が認められている国の人々は比較的気軽に他国の市民権や国籍を取得し、セカンド・パスポートを使い分けているようだ。取得条件は国・地域によって異なるが、上記に挙げたような一部の国では寄付や投資をすることで、パスポートが取得可能なプログラムを提供している。
金額は25万ドルから454万ドル(約2829万円から5億1347万円)まで様々だが、果たしてそれだけの価値があるのかどうかが気になるところだ。
国際事業サイト「プレミア・オフショア」のライター、クリスティン・リーブス氏は、最も価値のあるセカンド・パスポートにブルガリアを挙げている。
総額120万ドル前後と(約1億3584万円)と強気な金額だが、世界153カ国にビザなしで旅行できるほか、EU諸国に自由に移住あるいは労働出来る権利が手に入る。事業投資と、国債投資の二通りの方法から選べる点も嬉しい。
ロシアのパスポートが16万ドル(約1814万円)で手に入るというのは、納得できるような意外でもあるような複雑な印象だ。ロシアはあくまで「自国の事業拡大に貢献する投資」 であることを強調している。
注意したいのは多くのセカンド・パスポートの申請には、巨額の手数料が課される点だ。一例を挙げるとマルタの場合は157万ドル(約1億7766万円)だが、手数料を加算すると180万ドル(約2億 368万円)前後にまで跳ね上がるようだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)