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いまどきの学校から消えたもの
「'80年代に巻き起こったブルセラブームの影響が大きい。盗撮が増えた時代でもあり、ブルマー姿の女子が性的な対象として見られ、性犯罪につながるとして世間から騒がれ始めたのです」(渋井さん)
「女子の身体の発育は年々早くなっていき、小学校中学年くらいで初潮を迎える児童も多くいたんです。体育の授業中、生理用ナプキンがずれてブルマーからはみ出るのを気にする女子もいて、かわいそうでした。ハーフパンツに変わって安心しましたね」
「高度経済成長の時代には学校が多くつくられ、プールなどの施設も充実させていました。それが地域のためになると考えられていたからです。しかし、施設の老朽化が進む現在では改築にかかる費用負担が大きく、そのうえ少子化も進み、コストパフォーマンスが悪くなってしまったのです」(渋井さん)
「たとえ使っていなくても、メンテナンスは1年間を通して必要。実はコストがかかる施設なんです」(Sさん)
シーソーのこぎ方を先生が教える
「民間委託の場合、個人情報の漏洩や、どのように安全に配慮するのかという問題が残ります」(渋井さん)
「法改正などもあり安全対策が年々厳しくなっていき、使用禁止にせざるをえない遊具が増えました。シーソーや回転するジャングルジムは、実際に事故が多かったんです」
「リスクを考えると最初からないほうがいい、という発想になる。老朽化したら撤去して、新たにつくらない学校が目立ちます」
「最近は遊具で遊んだことのない子どもが増えています。小学1年生の担任になると授業の一環として、シーソーのこぎ方や登り棒の登り方など、校庭にある遊具の使い方をひと通り教えるんです。公園でも遊具を撤去する地域が増えているせいかもしれません」
「理科の実験でおなじみのアルコールランプに代わって、文部科学省はカセットコンロの使用を推奨しています」(渋井さん)
「アルコールランプは日常生活ではまず使いません。カセットコンロを使ったほうが実用的だという考え方もあるのだと思います」
「いまどきの子どもはマッチを使えません。触ったことがないので、擦る方法もわからないんです」(Mさん)
「家庭訪問」から「表札訪問」へ
「'04年に流行した鳥インフルエンザが影響しているのでしょう。動物アレルギーの子どもや教職員への配慮もあると思います」(渋井さん)
「共働き家庭が増え、日中に時間を割いて家へ招く負担は大きい。指定された時間に家にいられない保護者も増えたためでしょう」(渋井さん)
「教員が各生徒が暮らす町へ出向き家の表札を確認─、つまりどこに家があるのか把握できればOKというわけです。そこで保護者と話し込む必要はありません」
「子どものことで話がしたい場合は、保護者に学校へ来てもらい個別面談を行っています」(Mさん)
アップデートされていく学校
「学校・学年・クラス単位で送ることが可能で、休校連絡などが主な使い道。学校によっては“手紙を配り忘れました”“宿題を変更します”など、細かな連絡をしているところもあります」
「当時は学習塾や着物業者などによる名簿の買い取りが頻繁にあり、罰則もありませんでした」(渋井さん)
「名札をつけて登下校させることはやめました。学校内にいるときだけつけるように指導しています。そもそも名札の目的は、教師が生徒を褒めたり注意したりするとき、名前を呼べるようにするためなので」(Sさん)
〈取材・文/高橋もも子〉