ヘブリスギョン岩月
【連載・地下4回】地下芸人数珠繋ぎ。今回のゲストは、ヘブリスギョン岩月さん。もちろん彼の事を知っている人はほとんどいないだろう。私もその一人だった。しかし、地下芸人の方と話していると何かと地下芸人界の最有力候補として、彼の名前が挙がるのだ。だったら、会うしかない。それがこの企画なのだから……。 岩月さんの芸歴は24年で事務所には所属せずフリー、同期には元Wコロン(2015年解散)の木曽さんちゅうさんがいるそうだ。
とにかく生気がない岩月さん
「生気がなくないか?」
ーー岩月さん、初対面で失礼かもしれませんが、大丈夫ですか?
岩月(以下、岩)「何がですか?」
ーー目が死んでいるような気がするんですが……。
岩「わ、わかりますか? なんか最近、疲れがまったく取れないんですよ。もう48歳ですし、クタクタで。メシも、コンビニの期限切れ商品をもらって食べていますしね。一日一食だとやっぱり力が出ない。なんかカラダもダニに刺されているのか痒くて痒くて」
ーーあの、突然ですが占い師さんに岩月さんの今後のことも含めて、鑑てもらいませんか?
岩「もちろんです! よろしくお願いします!」
ーー声が、デカいっす!
「ギブ大久保さん」だ。
実現! 地下芸人を地下占い師が占う
ーーギブさんどこですか? ギブさん?
ギブ大久保(以下、ギ)「はい、ここです」
ーーあれ、トランプマン?
ギ「違いますよ。ギブ大久保です」
ーーあっすみません、似てるなと思って。ちなみに、そこは違いますよ。
ギ「占いではココと出たんですが……」
ーーいや、ここです(大丈夫かな……)。
ギ「まぁ、とりあえず、外観を鑑てみましょうか」
ーーあの、一階なんですが。
ギ「そうですか、二階と出たんですが……」
ーーいや、一階ですから。
ギ「では、改めてもう一度」
ーーどうですか? 何か映ります? 何か見えますか?
ギ「やはり、中に入らないとわかりませんね」
ーー!!
ギ「では、部屋を案内してください」
ーースルーですか……。
ギ「えっ?????? これは???????」
ーー!!!!!!!!
ギ「一旦、退散しましょう」
ギ「やばいな、あの部屋……」
ーー着替えちゃった! 早っ!
ギ「やばいですよ、あの部屋は。占いどころじゃないですわ」
ーーそれを占うのが仕事じゃないですか! お願いしますよ!
よほどの衝撃だったのか、嫌がるギブさんを説得し、突入してもらうことに。というか、岩月さんはどこにいたのだろうか……。
ギ「では、改めて」
ーーお願いします!
岩「さっきから、何を騒いでいるんですか?」
ーー出た…………!!!
ーー岩月さん、目に力入りすぎじゃ? あ、すみません、あまりの衝撃で……。
岩「たしかに、ウチに来た人は3分と持たないですから。どうします? 帰りますか?」
ギ「出来ることなら………」
ーー入りますよ、ギブさん!
ギ「玄関がクローゼットみたいになっている! ひどいな、これじゃあ中に入れないないぞ」
ギ「こりゃあ、酷いわ……。足の踏み場もない」
そして入室するや否や、気持ち悪くなったギブさんはトイレへ。そこには衝撃的なモノが……⁉
ギ「こっこっこれは‼」
ーーだから職務放棄しないでください。逃げ足早いな!
ギ「今の見ました! ゴキブリの死骸ですよ! なんで放置しているんですか?」
ーー私に聞かれても困りますから。とにかく戻りますよ!
深呼吸し、気持ちを落ち着かせてから再度入室。しかし、この部屋は汚い。
ギ「岩月、これやばいでしょ」
ーーこれ、ヤバすぎないですか?
岩「あっ、これは……、冬をイメージしま……」
ーー嘘でしょ! ホコリでしょ! 普通、こんなにホコリって溜まります?
岩「ここに住んで18年になりますが、自慢じゃないですけど一度も掃除してないですから」
ーー本当に自慢になりませんよ、それ。
岩「ちなみに布団も……」
ーーそれ以上言わないでください。
ーーあれ?
ーー布団……、カビ生えていますよね………。
岩「これも冬をイメージ……」
ーーこれ、火事になるのも時間の問題ですよ⁉
ーーこれだって、もはや何がいるのかわかりませんから。
岩「あっ、これはですね…」
ーー説明はいいですから! さすがにヤバくないですか。これ占い的にどうなんですか、ギブさん。
ギ「…………」
ーーギブさん?
ーーボケっとしてる場合じゃないですよ。
ギ「いや、二人が盛り上がっているから……」
ーー拗ねてる場合じゃないでしょ! ちゃんと鑑てくださいよ!!
ギ「すみません。ただ、この部屋狭すぎて、できるかな……」
ーー今気づきましたが、土足ですね……。
ギ「まっ、一応、このスタイルで普段やっていますので……」
ーーでも、自宅ですから、さすがに岩月さんが……。
岩「部屋が汚いから、仕方ないですよ(笑)」
ーーだから、汚くなるんですよ! で、どうですか、この部屋は占い的に?
ギ「調子上がんないですね、なんか邪気が多すぎて……」
ーーその邪気の原因とかを占うのが役目じゃないんですか?
ギ「手相にしてみましょうか?」
ーーどうですか?
ギ「ダメだ、邪気が強すぎて、気持ち悪くなってきました」
ーー憑りつかれてどうすんですか?
ギ「ひとまず、居酒屋行きません?」
ーーどんな発想してるんですか? 飲みたいだけでしょ?
ギ「いえ、決してそんなことは………」
ーー行く気満々じゃないですか!
ギ「しかも、なんかカラダが痒くないですか?」
ーー確かに、さっきから僕もなんか痒いし、空気も悪いですが……。岩月さんは?
ーー生き生きしてますね(笑)! さすが住人。なんか若返っていないですか(笑)?
岩「もう、僕は18年住んでいますからね。さすがに、免疫が出来ているんでしょうね」
ーー初対面の時と全然違う……。
占いをちゃんとやる
ーーあれ? 顔、石田純一さんじゃないですよね??
ギ「それ、よく言われます……」
ーー似てますよ。
ギ「やっぱり」
ーー………。
ギ「何でですかね?」
ーーモノマネとかできるんですか?
ギ「………さっ、占い始めましょうか?」
ーーあ、……お願いします。
ーーあの占い用の眼鏡かけないんですか?
ギ「そうだそうだ、ありがとうございます。だから、石田純一に似てるって言ってきたんですね(笑)」
ギ「私から見て左側に出ているカードからは、芸人を辞めて就職をした場合ですが、とにかく張り切り過ぎてしまうことがわかります。
岩「はっはい………」
ギ「なるほど……」
ーーどうなんですか?
ギ「もっと、努力しないと何も変わりませんよ」
岩「マジですか………!」
ーーそれはどう見ても明らかでしょ! もっと具体的な答えはでてないんですか?
ギ「そうですね、岩月のキャラクターの味をもっと強調するか、まったく別の性格の人とコンビを組むかです。どちらの場合ももっとお笑いを追求して、努力しないと売れないでしょう!」
岩「やっぱりね………」
岩「やっぱりそうか、いや正直ね、48歳なんですが、この年齢までやっていると、もう惰性でしかないんですよ。正直、いつ辞めるか、そのきっかけを探しているくらいなんですよ」
ーー占いでは就職すればうまくいくと出ていますよ。
岩「ただね、こんな私でも一人だけファンがいるんですよ。全く怒らない仏様のような人が。その人のためにも…」
ーー就職した方がよい未来が待っているそうですよ!
岩「………」
ギ「岩月、これが人生をやり直す最後のチャンスかもな………」
ーーなぜ乾杯??
岩「そ、そ、そうですね、いい機会ですし、一度よく考えてみますか。今日はこのような機会を与えてくださりありがとうございました。本当にいい思い出になりました………」
ギブさんの考察
ギ「私も実に多くの芸人さんを占ってきましたが、売れていない芸人さんて本当に部屋が汚いし、物が多いんですよね。売れている人って意外と物が少ないんですよ」
ーーなるほど、それは岩月さんの部屋を見れば一目瞭然ですが………。
ギ「物は少ないし、綺麗にしていますよ。整理整頓、命です!」
ーーあれっ(笑)、ギブさんて、売れてましたっけ??
<ライター・新津勇樹> ◎元吉本新喜劇所属。芸人、役者時代の人脈を活かし、体当たり取材をモットーに既成概念にとらわれない、新しいジャーナリスト像を目指して日々飛び回る。