今年5月に、明治「カール」の東日本販売が8月の生産分を持って終了との発表がありました。また、同社「サイコロキャラメル」も昨年3月で全国販売が終了など、今まで当たり前にあると思っていたスナック菓子が姿を消しています。
私は1962年生まれで高度経済成長期に少年時代を過ごしました。その頃にはよく見かけたのですが、いつの間にか見なくなったスナック菓子が少なくありません。そこで、今は無き懐かしのスナック菓子を振り返ってみたいと思います。
■さり気なく姿を消していた、定番のチョコレート
まずはチョコレートから。高度経済成長期のチョコレートで思い出すのは、江崎グリコ「アーモンドチョコレート」(1958年)でしょうか。「ひとつぶの青春」というキャッチフレーズで、松田聖子さんや小泉今日子などのアイドルタレントがCMに起用され、若者向けの商品となっていました。現在は「アーモンドピーク」となり、大人向けの商品となっています。同社「セシルチョコレート」(1974年)もCMにアイドルを起用し、若者向けの定番チョコレートとしておなじみでした。
高度経済成長期でもう一つ記憶にあるのが森永製菓「ハイクラウンチョコレート」(1964年)。タバコのボックスのようなパッケージに入っていた高級感あふれるチョコレートでした。滅多に食べられないので、親から買ってもらったときはとてもうれしかったです。明治の「ミルクチョコレートデラックス」(1957年)もデラックスと商品名にあるように、ちょっと豪華なチョコレートでした。
バブル期に入ると、時勢に乗ったチョコレートが発売されました。当時、ブームになったスイーツ、ティラミスをチョコレートにしたロッテの「ティラミスチョコレート」(1991年)です。ただ流行に乗っただけではなく、技術的にはR・E・P製法(レア・エマルジョン・プロセス製法)という乳化技術が確立したというバックグラウンドがあります。
■隠れた人気を誇っていた「ガム」たち
次にガムを紹介します。ロッテのチューインガムはクールミントガムやグリーンガムのような定番商品がおなじみですが、高度経済成長の頃はコーヒー味の「コーヒーガム」(1962年)や香水の香りの「イブ」(1972年)がありました。これらのフレーバー、当時の子どもにとっては大人の味、憧れのフレーバーでありました。数年前に最近も復刻版が販売されましたが、それだけ記憶に残るガムだったのでしょう。
また、1980年代のスポーツドリンクブームに乗って発売されたのがロッテ「クイッククエンチガム」(1978年)です。唾液の分泌を促し、渇きをいやすというガムでした。こちらも復刻版が販売されたことがあります。
■絶妙な「ネーミング」が忘れられない?
その他の甘味スナック菓子でいうと明治の「クリームキャラメル」(1934年)や「ヨーグルトキャラメル」(1966年)などのキャラメルやシュースナックチョコレート「ポポロン」(1976年)も販売終了となりました。これらは遠足のおやつに欠かせないお菓子たちでした。ポポロンは「♪ポポロン・ロンロン・ポポロンロン~」というCMソングもおなじみでしたね。
甘いお菓子はこれくらいにして、塩味のスナック菓子も挙げてみたいと思います。CMも話題になった製品というと、エスビーの「鈴木くん」「佐藤くん」(1984年)「5/8チップス」(1979年)でしょうか。「鈴木くん」は塩味、「佐藤くん」はチーズ味のスナックでしたが、コンソメ味の「田中くん」、サラダ味の「山本さん」(どちらも1985年)もありました。「5/8チップス」は一般的なポテトチップスの8分の5のサイズで、子どもにも食べやすいこととネーミングのユニークさで人気となりました。
以上、消えたスナック菓子について紹介いたしました。どの品も子どもから青年向けでして、販売終了は少子化の影響が大きいのではないかと思いました。逆に言うと、高度経済成長期はスナック菓子だけでなく、テレビ番組、雑誌、玩具なども含め、子どもたちにとっては夢のような時代だったのではないかと思います。
【著者プロフィール】
久須美 雅士
All About 「コンビニグルメ」ガイド。清涼飲料水研究家。本業は専門学校の教員。 新潟市横七番町の生まれ。今も新潟市に住む。1988年仕事で中国に行き、中国語のコカ・コーラびんを入手したのをきっかけに清涼飲料水容器のコレクションを始める。1992年 清涼飲料史の研究を開始、1995年にマガジンハウス「ブルータス」コレクター特集に登場。翌年、コレクションを基にソフトドリンクの歴史を紹介するホームページ「The Archive of Softdrinks」を開設。 1997年 雑誌・新聞等での執筆活動を開始。1999年 清涼飲料水、スナック菓子等をテーマとしたメールマガジン「B級グルメ読本」を発行。(現在廃刊)2016年9月現在 現在所蔵しているジュース缶の数は約19,000本。 著書は「ザ・飲みモノ大百科」(扶桑社刊・1988年、串間努氏との共著)、「自分史のドリル」(扶桑社刊・2000年) など。