首都圏外郭放水路(写真提供・国土交通省江戸川河川事務所)
「競技場周辺は遊水地ですから、当然です。あまり知られていませんが、国土計画上は、スタジアムのある窪地は川なんです」
「鶴見川流域には、日産スタジアムのほかにも、多くの遊水地があります。ふだんは水を抜いてありますが、災害のときだけ水を入れるのです。川の流域にある団地などにも、調整池があります。その数は、4900カ所。国と自治体が、流域全体の問題として取り組んだ結果です」
「大きな要因は2つ。台風の進路と治水対策の結果です」
「東京都東部には、低い土地に何本も大河川が流れています。しかし、上流にダム、中流には調節池や遊水地、下流にも放水路など、幾重にも対策がとられているんです」(土屋氏)
10月16日の八ッ場ダム。水位は高いまま
「江戸川上流の八ッ場ダムは、完成直後で、試験湛水を始めたところでした。台風上陸後には、ほぼ満水になり、約1億トンの雨水をここで受け止められた。
「放水路は5つの川から水を取り込めますが、今回すべて同時に取り込んだのは稀な状況です」(江戸川河川事務所)
“地下神殿” が10月12日から15日にかけて江戸川に排出した水は、50mプール約8000杯ぶん、東京ドームなら約9杯ぶんという途方もない量だ。
「台風直撃後は49万トン、最大貯留量の9割まで水がたまった」(東京都第三建設事務所)というから、ぎりぎりの攻防だったのだ。
(週刊FLASH 2019年11月5日号)