毎週木曜夜7時58分から放送の「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系)は、第一線で活躍中の医師たちが、病院選びのコツや最新の健康法など、医療に関するさまざまな疑問に答える知的エンターテイメントバラエティです。
今回「テレ東プラス」で取り上げるのは、社会人になって感じる他者との違いや、仕事がらみの心の疲労について。同番組のレギュラー医師の姫野友美先生に、早速相談してみましょう。
Q:子どもの頃から "天然" だとか、 "落ち着きがない" と言われ、社会人になってからも仕事でよくミスをしてしまいます。最近「大人のADHD(注意欠如・多動性症)」という言葉を耳にし、もしかして自分もそうなのでは......と心配になりました。どのように自分と向き合っていけばいいでしょうか。
―― ADHDではどのような症状があるのでしょうか。
「ADHDはいわゆる発達障害の一つで、最近では大人のADHDを"片付けられない症候群"などとも呼んでいますね。ADHDにみられる主な特性には、『多動性』『衝動性』『不注意』の3つがあります。多動性は文字通り、集中力が続かず落ち着きがなく、貧乏ゆすりをしたり、目的のない動きをしてしまうなど、じっとしていられない状態。衝動性は、衝動買いや、思いついたことをすぐに口に出したり、誤解されるような失言が多いといった症状。最後の不注意は、簡単な仕事上のケアレスミスが目立つ、期日や約束が守れない、時間の管理ができない、やたらと忘れ物が多い、仕事を順序立てて行うことができない、などの症状が起こりやすくなります。
このような特徴を並べてみると、皆さんの中にも多かれ少なかれ同じような傾向を持ち合わせていると感じる人がいるのではないかと思います。私自身も何かをやりながら片付けることが苦手なので、こういう側面もあるなぁと振り返ってしまったくらいです」
―― ADHDの原因は何ですか。
「ADHDは大脳の前頭前野の働きに関連しているといわれています。脳の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンといった脳内ホルモンの不足によって、言葉や行動がうまく制御できない状態になっているんですね。場合によっては薬物療法などの治療や環境調整が必要ですが、今のところ日常生活が支障なく送れているなら、自分なりに生活上の工夫をしていくことから始めてみましょう。ADHDかどうかについては厳密な診断基準がありますので、すでに周囲とのトラブルに発展していたり、仕事や家庭生活でさまざまな問題が生じていたりするようならば、一度専門医を受診してみることをおすすめします」
―― 工夫というと具体的にはどのようなことをすればよいですか。
「大人の発達障害については、最近メディアでよく取り上げられていることもあり、その情報から "片付けられない私はなんてダメな人間なんだ" "アレもできないし、コレもできない" と、どんどん不安になっている方が少なくないようです。でも、ほんのちょっとした工夫で解決できることもあるんですね。例えば、失言が多い人ならば、言いたいことをいったんメモに取り、それを話すべきかどうか考え直してから発言する。期日や約束が守れないという人は、自分であらかじめスケジュールを立てておいて、その通りに行動してみる、などです。今はスマホも普及していますから、その機能を利用してアラームを設定するといった自己管理のパターンをつくることも効果的です。スケジュールについてはきっちり詰め込まずに余裕をもって組み、それを一度誰かに見てもらうようにしましょう。
自分では大丈夫だと思っていても、他者から見れば絶対に無理だと思えるものかもしれません。衝動買いをしやすい人も、あらかじめ買い物に行く日と買う物を決めておきます。余分なお金やクレジットカードは持ち歩かないようにしたり、誰かに買い物に同行してもらうとより安心ですね。また、人から頼まれごとをした場合は、安請け合いしないように気をつけましょう。ここでも一旦誰かに相談し、確認してもらうことがトラブル回避につながります。その際は、 "あとからお返事します" の一言も忘れずに。
ひどく忘れ物が多い人は、むやみに片付けず、自分の生活動線上に必要なものを置いておくというのも一つの手です。"なんで廊下に?"と思われたりするかもしれませんが、本人にとってそれが有効であればその方がいいと思いますよ」
―― 心配なら身近な人に協力を求めるべきなのですね。
「そうですね、やはり協力を求めることは必要だと思います。もし自分が"ADHDなのでは?"と疑うなら、会社の同僚や先輩などに "私のことどう見えますか?" と聞いてみるといいでしょう。 "〇〇は苦手だよね" "午前中の仕事は速いけど、午後になると集中力が落ちるよね" など、苦手なパターンを客観的に見てもらうことができますし、仕事の割り振りなどを上司と相談する際の材料にもなると思います。ADHDの人はマルチタスクが苦手だったりすることが多いので、悩んでいるようであれば、身近な人の力を借りることを考えてみてください」
Q:20代の会社員です。仕事のことが頭から離れず、休日も気分が落ち込んで、一日中布団から出られずに寝て過ごしています。上手に気分転換するコツがあれば教えてください。また、サプリメントや漢方薬は抑うつの改善に効果があるのでしょうか。
―― 一日中寝ていたいほどふさぎ込んでいる方のようです。やはり体を休めることは大事なのでしょうか。
「休みの日もずっと仕事のことを考えているようですね。仕事をするとき、大抵の人は言語や計算、分析など論理的なこと司る左脳を使っていますが、休みの日にまで左脳を使っていてはどんどん消耗してしまいます。仕事とは全く関係ないことをして、脳の違うところ、つまり右脳を使うようにするといいですね。そうすると左脳が休まり、少しエネルギーを回復させることができます。具体的には、右脳はイメージや感覚的なものを司るので、運動をしたり、好きなスポーツを見たり、音楽を聞いたり、美術に触れるといった過ごし方がおすすめです。料理も気分転換になるのでいいですよ」
―― ということは、相談者のように布団から出ずにいるのではなく、むしろ他のことをした方がよいのですね。
「そうなんです。寝て過ごしているとどうしても嫌なことやミスしたりしたことなどを考えますよね。そのことに集中してしまうのはよくないです。だから考えていたことがどうでもよくなってくるように、右脳を使うような別の行動をした方がいいんですね。実はこうした抑うつ気分は、脳の中のドーパミンやセロトニンなどの脳内ホルモンが不足して起こっています。本来なら脳内ホルモンを増やすことが第一なのですが、それまでの間、使いすぎている方の脳を休ませてあげて節約をするわけですね」
―― 脳内ホルモンを増やすにはどうしたらいいのですか。
「ドーパミンやセロトニンは脳内で作られる物質ですが、その原料になるものが必要です。主要な原料としては、タンパク質、鉄、亜鉛、ビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムがあり、そのほか葉酸やビタミンB群、ミネラルなども重要になります。ところが、ストレスがかかると、脳内ホルモンがどんどん消費されてしまい、栄養素が足りなくなってくるんですね。元の状態に戻すには、原料となる栄養素を十分に補って、脳内ホルモンの産生を促さなくてはいけません。
そのためできることは、まずは食事をしっかりと摂ること。食事もせずに1日中寝込んでいるのはNGです。むしろふさぎ込んでいるときこそ、肉や魚、卵などのタンパク質をしっかり摂るいう意識が必要ですね。特に女性は鉄が足りなくなりやすいので、食事から十分摂りにくいものはサプリメントで補ってもいいと思います。また、抑うつに効果のある漢方薬もありますから、あまりに落ち込むようなら専門医に相談してくださいね」
―― やはり食事で補うことが一番なのですか。
「もちろんそうです。食事をおろそかにしては元も子もありません。普段から食生活が乱れていたり、コンビニのおにぎりだけで済ませてしまっている人はうつになりやすい傾向があるので、3食しっかりとバランスよく食べる習慣をつけるだけでも、体や脳は回復してきますよ。"ストレスを感じるなぁ"と思ったときも、食生活を見直すことで回復は早まりますし、予防効果も期待できます。
脳は全エネルギーの20%を使う大食漢な臓器です。じっとしていてもお腹は空きますし、仕事や勉強に集中したりすると余計に消費が激しくなります。一番栄養を必要としている脳がエネルギーダウンしないように注意したいですね」
―― 心の健康と栄養に深いつながりがあることがわかり、あらためて毎日の食事の大切を感じました。姫野先生、わかりやすい解説をありがとうございました
今回お話を伺った姫野先生も出演する「主治医が見つかる診療所」。本日10月18日(木)放送では、最新の栄養学に基づき、好きなものを食べながらムリせず脂肪を減らす驚きのテクニックを続々ご紹介します! 「脂肪を減らす」と聞くと、「我慢や苦労」といったイメージが伴いますが、どうやらそうではないよう。今回は、芸能人の食生活を2人のカリスマ栄養管理士がチェック! 「正しい食材の選び方」さえ分かれば、実は食べても脂肪は減らせる! 実際にその方法に挑戦した芸能人たちには、驚きの成果が!
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