cat_oa-wired_issue_39b83c045e45 oa-wired_0_39b83c045e45_まだ「実用的」ではない量子コンピューターを、なぜ企業は採用するのか──JPモルガンとダイムラーの思惑 39b83c045e45 39b83c045e45 まだ「実用的」ではない量子コンピューターを、なぜ企業は採用するのか──JPモルガンとダイムラーの思惑 oa-wired

まだ「実用的」ではない量子コンピューターを、なぜ企業は採用するのか──JPモルガンとダイムラーの思惑

2018年2月24日 19:00 WIRED

ニューヨーク州ヨークタウンハイツにあるIBMコンピューターセンター内を歩くIBMの量子科学者。PHOTOGRAPH BY CONNIE ZHOU

JPモルガン・チェース銀行は、「クオンツ」と呼ばれるアナリストを大量に抱えている。コンピューターを使って利益を叩き出す専門家だ。そして2018年に入ってからは、「クオンタム(量子)」と呼ぶほうが似合いそうな“従業員”の採用を加速している。彼らが使うコンピューターは直感に頼らず、量子力学の手法を利用してデータを分析するのだ。

資産額が米国最大のJPモルガンは、エンジニアや数学者からなる少数のグループを編成し、金融取引や融資リスクの予測などにおいて、量子コンピューターがどこまで有効活用できるかを探ろうとしている。彼らはインターネットを通じ、ニューヨーク州ヨークタウンハイツにあるIBMの研究所にある過冷却された量子コンピューターにアクセスする。言ってみれば、量子クラウドを使うのである。

この銀行のほか少数の企業が、IBMが開発した量子コンピューターのプロトタイプを利用し始めている。その性能をIBMがさらに高めることができれば、処理能力は膨大なものになるはずだ。

これまで量子コンピューターは、IBM、グーグル、インテルのほか、スタートアップ数社が開発しているが、まだ機能や信頼性が低く、業務に役立つとは言い難い。しかしJPモルガンの幹部たちによると、彼らは従来のコンピューターの発展に陰りが見えてきた場合に備え、いわば“保険”として量子コンピューターに興味をもっている側面もあるようだ。

「ムーアの法則」の失速
半導体の専門家によると、何十年にもわたり演算能力を増大させてきた「ムーアの法則」(「半導体の集積度は18カ月ごとに倍になる」という、ゴードン・ムーア博士による予測)として知られる現象は、いまや終焉を迎えつつあるという。量子コンピューターは、少なくともある特定の分野において、その失速を補う手段となり得るかもしれない。

「これを問題解決に役立てることができれば、演算能力を飛躍的に伸ばせるかもしれません」と、JPモルガン傘下の投資銀行で株式部門の最高技術責任者(CTO)を務めるボブ・シュトルテは言う。

今年1月、ダボスで開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で、マイクロソフトの最高経営責任者(CEO)サティア・ナデラは、量子コンピューターに投資した動機として、ムーアの法則に陰りが見えてきたことを挙げた。すでにマイクロソフトは、同社初の量子コンピューターの生産に向けて動き出している。

マイクロソフトはムーアの法則の波に乗り、その中心的な存在として業界を牽引してきたインテルとの緊密な関係を通じて、現在の規模まで成長した。だがいまは一時の勢いはないとナデラは言う。「ムーアの法則は失速しつつあります」と、彼はフォーラムに集まった投資家や各国政府代表、大物実業家たちに語った。

IBMの量子コンピューター科学者のハンヒ・ペク(左)とサラ・シェルドンが、「IBM Q」の希釈冷凍装置に収められたハードウェアを確認している。PHOTOGRAPH BY CONNIE ZHOU

ダイムラーの最高情報責任者(CIO)であるジャン・ブレヒトも、「Q ネットワーク」と名づけられたIBMの量子コンピューターへの早期アクセスプログラムに参加を決めた。シリコンチップの飛躍的成長が見込まれなくなったことに対する不安が、採用を後押ししたのだという。「現在でもコンピューターの能力に不足があるわけではありませんが、ムーアの法則が飽和状態に達しつつあることは間違いありません」

量子コンピューターを試そうというJPモルガンやダイムラーの動きには、新たな流れに乗り遅れてはならないという意識もうかがえる。IBMの量子コンピューターの導入に乗り出した企業には、両社のライヴァルであるバークレイズやホンダ、さらにはサムスンも含まれる。

それ以外にも関心の高まりを示す数字がある。米調査サーヴィスのCBS Insightsによると、量子コンピューター用の半導体チップ、コンピューター、ソフトウェアなどを扱うスタートアップの資金は、16年には4,300万ドルにすぎなかったが、昨年は2億4,300万ドルにまで膨らんだという。

量子コンピューターの導入が実現したとしても、これがすべての面で役立つわけではない。だが、物理学者やコンピューター科学者らは、比較的小型の量子コンピューターでも、課題の種類によっては従来のスーパーコンピューターを何台か集めた以上に高い能力を発揮できることを、理論的に証明している。

従来のコンピューターは、データの単位として「1」か「0」のビットを用いている。これに対して量子コンピューターは、「量子ビット(キュービット)」を用いてデータを保持する。量子ビットは「重ね合わせ」の状態をつくれるため、1と0の状態を同時に保持できる。これによってデータ処理量を圧倒的に増やせるというわけだ。

量子コンピューターへの期待と不安
産業界が量子コンピューターに向ける関心はますます高まってきている。近年ではマイクロソフトやIBMだけでなく、多くの企業の研究者たちが、比較的シンプルな量子コンピューターを業務に役立てるためのアルゴリズムの研究に力を入れ始めた。

ダイムラーのブレヒトは、IBMの量子コンピューターを早期導入することにした別の理由も挙げている。同社が関心をもつ問題、例えばバッテリー内部での化学構造や化学反応のシミュレーションなどに、量子コンピューターは特に強みを発揮できるのではないかということだ。

そうしたシミュレーションができれば、電気自動車の活用の幅が広がる可能性がある。また、その供給が環境面や倫理面から問題視されている、希少金属であるコバルトへの依存を減らす効果も期待される。

アメリカ国立標準技術研究所(NIST)から少し前にマイクロソフトに入社したスティーヴン・ジョーダンは、量子コンピューターをまず役立てられるのは、化学分野だろうと指摘する。なかでも分子における量子メカニズムのシミュレーションは、量子ビット自体の性質から考えても向いている。

1/5量子コンピューターのシステムを冷却するために用いる希釈冷凍装置。PHOTOGRAPH COURTESY OF IBM RESEARCH

2/5量子コンピューターの内部構造。PHOTOGRAPH COURTESY OF IBM RESEARCH

3/5量子コンピューターの内部構造。PHOTOGRAPH COURTESY OF IBM RESEARCH

4/5IBMの16量子ビットの量子コンピューター。クラウドを通じて利用できる。PHOTOGRAPH COURTESY OF IBM RESEARCH

5/5IBMの量子コンピューターがある研究施設「IBM Q コンピューテーションセンター」の様子。PHOTOGRAPH BY CONNIE ZHOU





























現在、IBMの量子クラウドは20量子ビットのプロセッサーから構成されているが、IBMでは50量子ビットの大型ヴァージョンも登場させた。50量子ビットのプロセッサーやもう少し小型のプロセッサーでも、量子ビットの動作が確かであれば、化学分野で役立つだろうとジョーダンは言う。それを立証する「極めて信頼できる」証拠もあるとのことだ。IBMは昨年9月、小さな分子のシミュレーションがわずか6量子ビットでも可能であることを示している。

ダイムラーやJPモルガンが期待するその他の問題への取り組みについては、その道筋がさほど明確には見えていない。ブレヒトによれば、ダイムラーでは輸送ルートや工場間での部品運搬の最適化にも、量子コンピューターを利用できると期待しているという。さらに、ポートフォリオのリスク分析といったファイナンスの課題解決にも役立つとみている。

こうした問題に対して量子コンピューターがどんな優位性をもつのか、これまでのところコンピューター科学者も証明できていないと、マイクロソフトのジョーダンは言う。「量子を用いたアルゴリズムが実際にどれだけの強みをもつかについては、これからの量子コンピューターで試していくしかありません」

IBMの量子コンピュータープロジェクトでヴァイスプレジデントを務めるダリオ・ギルは、それこそが早期アクセスプログラムが目指すところだと言う。「このプログラムの使命は、商業的に通用する量子ビットアプリケーションを見つけることです」

利益を生み出せるアプリケーションが、確かな現実として登場するのはいつになるのか。ギルも、自動車業界や金融業界のパートナーたちも、まだ明確には口にしない。「わたしの頭のなかには予定などありません。わたしたちは、そうした面からこのプロジェクトの成功を判断するつもりはないのです。これはあくまで予備研究という性格が強いものですから」と、JPモルガンのシュトルテは語る。

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TEXT BY TOM SIMONITE

TRANSLATION BY YOKO SHIMADA

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EVの車内が“映画館”になる!? BMWのフラッグシップ「i7」の充実装備

2022年4月23日 11:00 WIRED

BMWが電気自動車(EV)のサブブランド「i」シリーズを投入したのは、2011年のことだった。これは多くの人がテスラの名を耳にするよりも、ずっと前のことである。

発売されたモデルは小型EV「i3」と、プラグインハイブリッド・スポーツカーの「i8」だった。これは大きな賭けではあったが、ほかの大手メーカーに先駆けてEVの分野で存在感を示し、ブランド価値を生み出しただけでも価値はあっただろう。

これらの最初の2つのモデル以降、iシリーズからは多数のモデル(直近では2021年の電気SUV「iX」)が投入されている。売り上げの面でも完成度の面でも成功の程度はさまざまだが、BMW iは高級EVの世界には手を出そうとしてこなかった。このため、宿敵であるメルセデス・ベンツがフラッグシップEV「EQS」を投入したときには、先を越されるかたちとなったのである。

それ以来、BMWによる高級EVは長らく期待されてきた。また、メルセデスに先を越されたことについては、BMWの社内で少々どころではない苛立ちがあったことは想像に難くない。

そしてついにBMWは、フラッグシップである「7シリーズ」のEV版となる「i7」を発表した。EQSとは対照的に、BMWはこのモデルに搭載する技術について熟慮を重ねたようである。

BMWは1月に開かれた世界最大級の家電見本市「CES 2022」で、自動車用のシアターシステム「BMWシアタースクリーン」を発表している。i7は、このシステムを搭載した最初のモデルだ。8K画質で31インチ(32:9)のウルトラワイドディスプレイに車載用ストリーミングシステム「Amazon Fire TV」を搭載し、Bowers & Wilkinsのダイヤモンド・サラウンド・サウンド・システムを組み合わせている。

また、リアドアのアームレストには、「タッチ・コマンド」と呼ばれるスマートフォンのようなタッチスクリーンが搭載され、ちょうど手を置く位置にディスプレイが配置されている。内装については追って取り上げるが、まずは仕様から始めることにしよう。

PHOTOGRAPH: BMW
プラグインハイブリッドも追って投入
まず、新型7シリーズのEV版として最初に投入されるモデルは「BMW i7 xDrive60」で、今年の下半期に発売される予定だ。来年にはプラグインハイブリッドモデルの「750e xDrive」と「M760e xDrive」が控えている。

BMWによると、ほかにもEVモデルが2023年後半にラインナップに加わる。そこには最上位モデルとして、最高出力が492kWの「i7 M70 xDrive」が含まれる。

i7 xDrive60は、セルの高さがわずか110mmの非常にスリムなバッテリー(101.7kWh)を床下に搭載し、航続距離はWLTPモードで367~388マイル(590~625km)になるという。つまり、一般的な利用で走る距離よりも300マイル(約483km)以上も余裕があるということだ。バッテリー温度を最適化する電動フローヒーター(5.5kW)も搭載されており、これが航続距離の長さに大きく影響している。

モーターの出力はリアが230kW、フロントは189kWで、計400kW(544馬力)で最大トルクは745Nm。時速0マイルから時速62マイル(約100km)まで4.7秒で到達する。

充電はAC(交流)で最大11 kW、DC(直流)で最大195kWの出力に対応する。高出力の急速充電ステーションなら、わずか10分で106マイル(約171km、WLTP基準)相当をチャージできるという。

豪華なシアターシステムの実用度
ほぼ無音で富裕層を運ぶよう設計されたエグゼクティブカーなので、新型BMW i7のサイズは大きい。巨大と言っていいサイズで、全長は5.5m近くになる。

より正確には、全長は130mm伸びて5,391mmに、全幅は48mm広がって1,950mmに、全高は51mm大きい1,544mmになった。こうしたサイズ拡大のおかげで、BMWはi7の内装の目玉であるあのシアターシステムを導入できたのである。

「BMWシアタースクリーン」のディスプレイは天井から下りてきて、室内の横幅いっぱいに広がる。
PHOTOGRAPH: BMW
つまり、フロントシートの裏側にタブレット端末を取り付けるような方法は、後部座席の同乗者がコンテンツなどを楽しむ方法として時代遅れということのようだ(それに調べてみたところ、タブレット端末のようなディスプレイはBMWが想定していたほど人気のオプション装備ではなかった)。代わりにBMWは、多忙で映画好きなエグゼクティブのために新たなオプション装備を生み出し、衝突試験をクリアさせている。

後部のドアパネルには、情報ディスプレイを兼ねたタッチスクリーンが組み込まれている(BMWは「タッチ・コマンド」と仰々しく呼んでいる)。この画面を押すと、天井から31.3インチで8K画質のタッチ式ディスプレイが下りてきて、Amazon Fire TVを起動できる。この画面は室内の横幅いっぱいのサイズだ。

ディスプレイが下りると、後部座席の窓とパノラマガラスサンルーフのブラインドが自動的に閉まり、後部のアンビエントライトが暗くなる。そして画面は最終的に、天井の内張りからフロントシートの背もたれにまで広がる仕掛けだ。

素晴らしい技術のように思えるし、実際にそうだと言える。だが、実際に後部座席に座って試してみたところ、快適に視聴するには大画面が顔に少し近すぎるように感じた。

もちろん、人々がこの近さに慣れることもあるかもしれない。またBMWによると、画面を近づけたり遠ざけたりして「好みの視聴距離」に固定できるというが、実際のところ動かせる範囲は限られている。それでもBMWは、ワイドスクリーンのシネマ体験に相当する鑑賞環境を、(おそらく)安全基準を満たしながらi7の後部座席に何とか収めることができたのだ。

リアドアのアームレストには、「タッチ・コマンド」と呼ばれるスマートフォンのようなタッチスクリーンが搭載されている。
PHOTOGRAPH: BMW
シアタースクリーンは、移動中に自分のデバイスからコンテンツを再生したり、Amazonプライム・ビデオやNetflixなどのコンテンツを流したりできるだけではない。ディスプレイに内蔵したカメラにより、ビデオ会議システムにもなるのだ。つまり、アウトバーンを疾走しながらZoomで会議に参加できるようになる。これでもう、会議から逃れることはできない。

このまるで映画館のような鑑賞体験はBluetoothヘッドホンでも、Bowers & Wilkinsの素晴らしいサウンドシステムでも楽しめる。(これもまた)オプションのBowers & Wilkinsのダイヤモンド・サラウンド・サウンド・システムは、36個のスピーカーを搭載している。

スピーカーのうち4個は天井の内張りに配置され、1,965Wという驚異的な出力を誇る。フロントシートと後部座席の背もたれに内蔵した振動子により、低音を体で感じられる仕組みだ。なお、標準のシステムも18個のスピーカーを搭載しており、合計出力は655Wにもなる。決してお粗末なものではない。

技術のための技術?
新型7シリーズに搭載された数多くの最新技術のなかには、「技術のための技術」とでも呼べそうなものも含まれている。例えば、自動ドアのような装備だ。

自動ドアのオプション装備をつけると、クルマのキーや車内のボタン、専用アプリ「My BMW」、音声コマンドのいずれかによって、前後のドアを開閉できるようになる。この物理的にドアに触れることなく自動開閉できる「4つの方法」に、BMWは期待を寄せているようだ。

しかし、実際のところ手で開閉したほうが早いのではないかと思える。なお、車体の両サイドに搭載された12個の超音波センサーが柱や人、ほかのクルマを検知して、当たりそうな場合はドアがそれ以上開かないようになっているようだ。

BMW i7 xDrive60の価格は、米国では11万9,300ドル(約1,527万円)から、英国では10万7,400ポンド(約1,798万円)からとなる見込みだ[編註:日本では「i7 xDrive60 Excellence ザ・ファーストエディション」が1,900万円となる]。

(WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)

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cat_oa-wired_issue_39b83c045e45 oa-wired_0_hsychvgszfwm_アマゾンの倉庫作業員が決行したストライキの数々は、高まる労働運動の始まりにすぎない hsychvgszfwm hsychvgszfwm アマゾンの倉庫作業員が決行したストライキの数々は、高まる労働運動の始まりにすぎない oa-wired

アマゾンの倉庫作業員が決行したストライキの数々は、高まる労働運動の始まりにすぎない

2022年4月5日 11:00 WIRED

アマゾンの3つの倉庫で働く労働者が職場を離れるストライキを決行したのは、2022年3月16日の夜明け前のことだった。ニューヨーク市クイーンズにある2つの配達拠点と、ワシントンD.C.の郊外に位置するメリーランドの配達拠点の合わせて60人以上の従業員が、米国のアマゾンの倉庫で初めて複数の州にまたがるストライキを決行し、時給3ドル(約370円)の値上げを要求したのである。

アラバマ州ベッセマーやニューヨーク州スタテンアイランドの倉庫における労働組合の結成に向けた投票が注目されるなか、非公式の労働組合であるAmazonians United(AU)は全米のアマゾンの施設で運動を起こし、勝利している[編註:スタテンアイランドでは4月1日、アマゾンの施設として米国初の労働組合の結成が従業員の投票による賛成多数で可決した]。


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雑誌『Jacobin』のインタビューによると、労働者主導のこの運動は、水の利用を制限したアマゾンに抗議するためにシカゴの倉庫で働くひと握りの労働者が19年に集まったところから始まった。「リーダー不在の運動ではありません」と、クイーンズの倉庫のひとつで先日のストライキに参加したAUのメンバーのアイラ・ポロックは語る。「リーダーシップに溢れる運動なのです」

この組合はシカゴ、ニューヨーク、メリーランド、サクラメント、ノースカロライナなどに公式の支部があるが、水面化で行動を起こす労働者もいる。そうした労働者は、アマゾンに賃金やその他の条件について労働組合との交渉を求める全国労働関係委員会(NLRB)の承認を得る方法ではなく、社員同士が集まって活動する労働者の権利を行使している。つまり、問題が発生したらそれを提起し、労働条件を改善するための運動を起こしているということだ。

条件を勝ち取ってきた実績
AUのメンバーは、この数年で昇給や以前は認められていなかった社員とパートタイム労働者への有給休暇の付与、新型コロナウイルスの安全対策の実施などの条件を勝ち取ってきたという。条件のなかには、硬い倉庫の床の全面に疲労を軽減するマットを設置することや、長時間の立ち仕事の労働条件の改善など、小さいながらも影響力の大きいものもある。

シカゴの労働者は21年12月、賃上げを要求するために複数の施設でストライキを決行したところ、22年の初めに1.45ドルから2.30ドルの時給の引き上げに成功したという。なお、この昇給はシカゴ周辺の20カ所以上の施設の従業員を対象とする定期的な給料の見直しの一環だったと、アマゾンは説明している。


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こうした仲間たちの活動に触発されたクイーンズやメリーランドの施設を含む6つの倉庫の労働者は、5分間の休憩時間の延長、人員不足の解消、悪天候の場合の規則、3ドルの昇給を含む要求の書かれた嘆願書を、21年12月にアマゾンに提出した。労働者によると、メリーランドの職場の現在の最低賃金は15.90ドル(約1,950円)、クイーンズでは15.75ドル(約1,930円)だという。

「わたしたちは業界トップクラスの給与、競争力のある福利厚生、そして誰もが社内で成長する機会を提供できることを誇りに思います。社内の従業員の意見を確実にくみとる方法をいくつか用意していますが、表立って意志を表明したいと考える一部の社員の権利も尊重しています」と、アマゾンの広報担当者は声明でそう説明していた。

ストライキが決行された事情
アマゾンは倉庫フロアへの電話の持ち込みを禁止する規則を1月に導入したが、労働者側は撤回を求めて嘆願書を提出している。「この要求は即座に勝ちとれました」と、メリーランドのDMD9と呼ばれる施設の荷物の仕分け担当のリンダは語る。複数の竜巻が発生したイリノイ州の倉庫で6人の従業員が亡くなったあと、携帯電話の持ち込みを禁止する規則を復活させたことでアマゾンは非難を浴びたばかりだった。

ところがアマゾンは、嘆願者たちの主要な要求である3ドルの賃上げを3月16日までに受け入れなかった。「そこでアマゾンに要望を伝えるべくストライキを決行したのです」と、クイーンズの倉庫で荷物の物流の処理を担当するアイラ・ポロックは言う。

最初の倉庫は午前2時45分、次の倉庫では午前4時、そして最後のメリーランドの倉庫では午前6時30分に労働者は施設を退出した。主催者によると、施設によって異なるものの、ストライキに参加した人数はその施設の人員の約45%から75%に相当するという。

組合のメンバーで支えられた労働者は、早朝から配達所の外に集まってスピーチをしたり、食べ物を分け合ったりしていた。「誰が一緒に退出するのか職場には不安が渦巻いていました」と、DMD9の問題解決部門に務めるマイケル・カーターは語る。「それでも誰もが準備できていました。集まったメンバーは、まるでサッカーチームのように団結したのです」

目の見えない視覚障害者のカーターは、昇給があれば通勤に使うシャトルバスの乗り場までの交通費の足しにできるという。ワシントンD.C.郊外は物価が高く、カーターも彼の同僚も精神的にも肉体的にも疲れ果てるまで働かなければならない。

そして経済的な心配はストレスに拍車をかける。昇給があれば「経済的に安定するだけでなく、今日のランチを買えるだろうかと考えるほど切羽詰まることもなく、もう少し落ち着いた生活ができるようになります」と、カーターは言う。

労働組合の結成を阻むアマゾン
AUの労働者には、小売・卸売・百貨店労働組合(RWDSU)が主導したアマゾンのベッセマーの倉庫の従業員を対象とする労働組合の設立を巡る投票の過程に落胆した人もいる。アマゾンが労働組合の結成に反対する24時間体制の会合を開く目的でコンサルタントを送り込んだという話を聞いたり、アマゾンが労働組合の設立に反対票を投じるよう促すメールやチラシを労働者に送りつける様子を目にしたりしたからだ。

労働組合は21年3月に1,798対738で敗れ、組合の結成は成立しなかった。しかし、アマゾンが当初の投票の際に労働法に違反していたことが判明したことから、22年3月に再投票が実施された[編註:ベッセマーでは賛否が僅差となり、異議の出た票について当局が聴聞会で審査する見通しになっている]。

米国の労働法は、雇用主が勤務時間中に労働組合に反対する会合を開き、労働組合の主催者を敷地内から締め出すことを認めている。これは雇用主にとって非常に有利な内容だ。こうした会合を禁止する「団結権保護法(PRO法)」は21年に下院を通過しているが、いまは議会で滞っている。

「あまりわたしたちの力になる方法とは思えなかったのです」と、DMD9のリンダは言う。「一方で、上司に直談判して『お願いだから働いてくれない? そうでないとお金が入らないから』といった具合に、わたしたちの価値を認めさせることは本当に力になります。この力をはっきり実感できるものです」

「700人もの人が労働組合を結成したいと表明していたのです」と、労働組合の結成に賛成票を投じたベッセマーの倉庫の労働者についてポロックは指摘する[編註:ベッセマーでは2021年4月に労働組合の結成が否決されている]。

「しかし、結局のところ政府が『それでは足りない。労働組合は結成できない』と言ったのです。労働組合を結成してはならないと命じる政府の言いなりにはならないというのが、わたしたちのスタンスです。ベッセマーにいる700人の労働者は、労働組合が必要なら労働組合のように行動し、労働組合を結成すればいいのです。そうすることで多くのものを勝ち取れますから」

ベッセマーでの敗北によって労働運動の希望が打ち砕かれた21年、多くの人がアマゾンに対抗するための新しい方法が必要だと主張した。そうした人は、アマゾンの構造は意図的に労働組合の結成を阻害しているように見えると指摘する。

なにしろ、離職率は天文学的な数字だ。労働者は監視の目が厳しいと不満を漏らしている。アマゾンの資金は底なしのようで、同社の巨大な物流ネットワークはどんな障害も吸収する力を備えている。

21年にアマゾンの労働組合の結成を決議した労働組合のInternational Brotherhood of Teamsters(Teamsters Unionとも呼ばれる)は、結成にはアマゾンの複数の施設の労働者を味方に付けるとが重要だが、NLRBの投票は施設ごとにしかできないと説明する。労働組合の発起人の多くは、法的強制力のある団体協約が労働者の力になると考えている。

とはいえ、AUは労働法が21世紀の職場に追いつくまで待とうとは考えていない。NLRBが認定した労働組合以外の労働運動も、いつだって起きているものだ。例えば、市民運動の「Fight for $15」によって、かつてファーストフード店の労働者は大幅な賃上げを勝ち取っている。

これは始まりにすぎない
AUは過去に勝利を収めているものの、会社側からの報復を受けていないわけではない。インターネットディア「The Intercept」の報道によると、シカゴでのストライキのあと、労働者はアマゾン側からの脅迫や懲戒処分に苦しんだという(『シカゴ・トリビューン』によると、同社はこの件に関する苦情について取締役会を通して解決したが、不正な行為とは認めていない)。

12月のシカゴでのストライキの翌日、アマゾンは従業員にとって組織をつくりやすい環境を整えることでNLRBと和解している。施設の作業エリア以外の場所での労働者の集会を許可し、その権利を労働者に通知することで合意したのだ。

アマゾンがニューヨークとメリーランドの労働者に賃上げを認めなければ、反発は強まるだろう。AUのメンバーは、これらのデモ活動は社内で高まりつつある運動の始まりにすぎないと考えている。

「労働者階級の人々には力があります」と、ポロックは言う。「ただ、その人たちの大部分はまだそのことに気づいていないだけなのです」

ひとつの問題の解決を目指すのではなく、倉庫内のパワーバランスを変えることに関心があるとポロックは語る。「重要なことは、わたしたちには問題に気づき、それを変える力があるということなのです」

(WIRED US/Translation by Nozomi Okuma)

※『WIRED』によるアマゾンの関連記事はこちら。


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年に一度のアマゾンの大セール「Amazonプライムデー」が開催された。世界中で大量の商品が売れるこの時期に合わせて、同社の物流センターなどで働く人たちの一部はストライキを決行するなど、労働条件の改善を求めて反発を強めている。だが実際のところ、ロボットだけの物流センターなど成立するのだろうか?



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巨大テック企業を規制するEUの「デジタル市場法」は、本当に効果があるのか? 導入合意を巡る企業側の本音

2022年4月5日 08:00 WIRED

米国の反トラスト法(独占禁止法)に基づく規制においては、「巨大テック企業を解体せよ」が合言葉になっている。そしていま、欧州も独自の合言葉を手に入れた。それは「巨大テック企業を解体するのではなく、門戸を開かせよ」である。

これはフランスのデジタル経済大臣であるセドリック・オからの助言であり、彼は欧州連合(EU)が新たに導入する「デジタル市場法(DMA)」の起草を主導した人物だ。オは欧州において巨大テック企業に対抗する新たな抜本的規則について交渉する際、そうした言葉が常に頭にあったという。「DMAはいま、そうした役割を果たそうとしています」と、オは3月25日の記者会見で語っている。

この記者会見の数時間前の24日深夜。欧州議会は、アプリの市場をこじ開けて小規模事業者の参入を促すことを目的とする意欲的な新規則としてDMAの施行に合意した。2022年中に施行される予定のDMAは、アップルやグーグル、Facebook運営元のメタ・プラットフォームズといった企業に対し、自社のサービスと競合他社のサービスとの「ひも付け」を義務づけるものだ。


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欧州議会議員によると、DMAの施行によってアップルはiPhoneユーザーが競合他社のストアからアプリをダウンロードできるようにしなければならない。また、メタが運営するWhatsAppは、ユーザーが競合するメッセージアプリとやりとりできるようにすることが求められる。

これに違反した場合は、世界全体の売上高の最大20%に相当する罰金が課される。欧州委員会はさらに、企業の合併にストップをかけることもできる。

こうした動きについて米政府は「反米主義的」と糾弾している。だが、欧州議会議員たちはその批判を一蹴し、巨大テック企業の市場支配力を抑制すべく、欧州がリソースを集中できるような規則を設定した。DMAの対象となるのは、時価総額が750億ユーロ(830億ドル)以上で、EUでの月間アクティブユーザーが4,500万人以上の企業のみだ。

もたらされる最大の変化
厳密に言えば、欧州議会とEU加盟27カ国の代表者による最終的な採決はまだ済んでいない。だが、承認は形式的なものにすぎないとみなされている。欧州委員会の執行副委員長でデジタル責任者のマルグレーテ・ベステアーは、DMAが10月にも施行されるだろうとの見解を3月下旬に示している。

ひとたび施行されれば、テック企業には競争を妨げていないことを証明する義務が生じる。「欧州委員会は今後、テック企業は公正を欠いたビジネスモデルであると証明する必要はありません」と、DMAに関する協議を主導してきた欧州議会議員のアンドレアス・シュワブは言う。

「欧州の人々にとっての最大の変化は、いちばん人気だからという理由でそのサービスを使う必要がなくなることです」と、チェコ共和国の欧州議会議員で欧州緑グループ・欧州自由連盟に所属するマルセル・コラヤは言う。

「DMAが『ゲートキーパー』と呼んでいる大手のプロバイダーがいます。こうした企業は多数のユーザーを抱えており、それをサービスの優位点として活用しています。市民は必ずしもいちばんいいとは思わないものの、ユーザー数が最も多く、友人や取引先の大部分が使っているからという理由でサービスを利用しているのです」

小規模なサービスには不利になる?
そうした状況を、DMAは変えようとしている。WhatsAppのユーザーは10月以降、この枠組みにテック企業が加わればSignalやTelegramといったほかのメッセージサービスのユーザーとやりとりできるようになるのだ。

しかし、小規模なメッセージサービス企業が実際にWhatsAppとの相互乗り入れを望むかどうかは不明である。ドイツ発のメッセージアプリ「Threema」の広報担当者は、「相互利用できるようになれば、トップ企業の解体どころか独占的な地位が高まるでしょうね」と指摘する。

Threemaには1,000万人以上のユーザーがいるが、月額か年額で利用料を支払っている。「プライバシー面で不安があるAという無料メッセージアプリの既存のユーザーが、プライバシー重視の有料アプリBとやりとりようになれば、Bには料金を払わなくなります。つまり、Bは唯一の収入源を失うことになるのです」


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相手が使用しているプロバイダーを知らずに連絡をとることは、世間では普通のことだと思われているのだと、欧州議会議員のポール・タンは言う。「そうしたやりとりが普通でしょう。ThreemaやSignalが望んでいなかったとしても、それだけが理由というわけではありません。そのほうがユーザーも便利なのです」

ただし、相互運用性については、ほかのサービスに広げるどころか、それが薄まるような一定の妥協もなされた。そうした“骨抜き”とも言える状況に、タンなどの一部の欧州議会議員は落胆を示している。

「ソーシャルメディアの相互運用性は遠い未来に先送りされてしまいました」と、ドイツの欧州議会議員マルティン・シルデヴァン(左派同盟の共同議長)は『WIRED』US版にメールで説明している。また、別のアプリのメンバーをグループチャットに入れるまでユーザーが3年も待たなくてはならない点は、「恥ずべきこと」だとも指摘している。

欧州のテック企業の懐疑的な見方
DMAは、欧州と米国の巨大テック企業との関係を再構築すると欧州議会議員が約束している“双子のテクノロジー法案”の片割れだ。もう片方となる「デジタルサービス法(DSA)」は違法なコンテンツに焦点を当てている一方で、DMAは欧州大陸全体で長年表明されている不満に応えるものとなる。

スウェーデンを拠点とする音楽配信大手のスポティファイは、アップルの「App Store」の手数料が「Apple Music」に「不当な優位性」を与えていると主張している。また、スイスのメールプロバイダーのProtonMailは、グーグルやアップルが初期設定を利用してAndroidスマートフォンやiPhoneで自社のメールアプリを優先的に扱っていると主張している。マイクロソフトがクラウドサービス「OneDrive」を自社製品と“抱き合わせ”で販売していることについて、ドイツのクラウドプロバイダーのNextcloudは、競争を阻害していると非難している。

それでも、欧州のテック企業にはDMAを両手で歓迎する雰囲気はない。ProtonMailの創業者のアンディ・イェンは、「EUはもっと踏み込めたはず」と語る。

イェンは、ユーザーが新しいデバイスを設定する際にメールプロバイダーの一覧、つまり「選択画面」を表示することを提唱している。「これまでに公表されていることを総合すると、選択画面が適用されるサービスは非常に限られるようです。しかし、確かなことは最終的な文言を見るまでわかりません」

「わたしたちは、(DMAには)巨大テック企業の反競争的な行為を止めるほどの力はないと考えています」と、Nextcloudの創業者兼最高経営責任者(CEO)のフランク・カーリチェックは指摘する。「さらに、DMAの効力は実際の施行状況に左右されます。DMAの真の成果が判明するまでには時間がかかるでしょうね」。フランスで価格比較サービスを展開するKelkoo GroupのCEOのリッチ・ステーブルズは、DMAに「変革を促す可能性はある」とだけコメントしている。

すでに出始めた影響
欧州議会議員のタンは、企業はDMAについて、DMA以前の法律を基準に判断すべきではないと主張している。EU加盟国が施行した一般データ保護規則(GDPR)とは異なり、DMAを実施する主体は欧州委員会だ。「これは大きな変化です」とタンは指摘する。

そして、企業の問題に対する具体的な答えが条項に含まれていなくても、幅広い問題に対処するためのツールは含まれていると付け加える。「第10条では、欧州委員会がゲートキーパーに新たな義務を課すことができるとされています」

しかし、DMAに抵抗してきた巨大テック企業からも懐疑的な見方が上がっている。ブリュッセルに拠点を置くトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)EUによると、グーグル、アップル、フェイスブック(現在はメタ・プラットフォームズ)、アマゾン、マイクロソフトの代理人を務めるロビイストたちが2019年12月以降、欧州議会ならびに欧州委員会の職員と計48回にわたって会合を重ねている。だが、すべての欧州議会議員がロビイストとの会合を公表しているわけではないことから、これは一部にすぎないとTIは指摘している。

アップルの広報担当者は、「DMAの一部の条項によって、わたしたちのユーザーにプライバシーおよび安全性の面で不必要な脆弱性がもたらされます。一方で、ほかの条項では、わたしたちが多額を投資している知的財産の使用料請求を禁止する項目が含まれていることを懸念しています」と語る。グーグルは、消費者の選択や相互運用性に関するDMAの理念の多くを支持するものの、「一部の規定によってイノベーションや欧州の人々の選択の幅が減る可能性について懸念しています」と主張している。

アマゾンは、DMAが同社にとってどのような意味をもつのか調査中だという。DMAの影響を受ける数少ない欧州の巨大テック企業の1社である旅行サービスの「Booking.com」を運営するブッキング・ホールディングスは、メタと同様にコメントを避けている。マイクロソフトで欧州政府関連を担当するバイスプレジデントのキャスパー・クリンジは、会社としてDMAに「協力する」と述べている。

施行前のDMAが、すでに効力を発揮し始めている兆候も出始めた。欧州議会議員が最終的な会合を開く前日の3月23日、グーグルは新たな規則に従う意向を示したのである。Spotifyが独自の決済システムをAndroidアプリで試すことを許可したのだ。

「DMAに効力があることはすでに示されていると思います。(欧州議会で)合意される前からです」と、欧州議会議員のシュワブは言う。

(WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)

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巨大化するグーグルが、世界的な「独占禁止法の網」に捕らえられようとしている


影響力を増す大手テック企業に対し、各国の競争当局が独占禁止法に基づく罰金を科すのみならず、ビジネスのやり方を改めるよう求める動きが加速している。なかでもトルコでの独禁法訴訟は、検索エンジンの巨人であるグーグルがもつ“権力”の核心に迫っている。



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光を反射する物体が何でも“盗聴器”に!? 驚きの「光学スパイ技術」の中身

2022年4月4日 19:00 WIRED

極度の心配性の人たちなら、きっと最新の盗聴技術に対抗するためのチェックリストを頭のなかに用意していることだろう。

例えば、盗聴マイクが仕掛けられていないか自宅やオフィスをくまなく調べること。携帯電話は電磁波をさえぎるファラデーバッグか、冷蔵庫にしまっておくこと。場合によっては手もちのデバイス類から内蔵マイクを抜き取ってしまうこと──といった具合だ。

ところがある研究者グループによって、このリストに驚くべき項目が追加された。「室内に置かれた軽量で金属製の物体すべてを窓から見えない場所に移すこと」というものだ。

光を反射する物体から“盗聴”
イスラエルにあるネゲヴ・ベン=グリオン大学の研究グループが、2022年5月にシンガポールで開催される情報セキュリティ会議「Black Hat Asia」で、ある最新の監視技術を発表する。部屋の中に光を反射するものが置かれていて、そのいずれかが窓からほんの少しでも見えていれば、誰でも市販の機材を使って室内の会話を盗聴できるというのだ。

その手法とは、望遠鏡のレンズに取り付けた光学センサーを、室内にある光を反射する物体に向けるというものである。アルミ製のゴミ箱や金属製のルービックキューブなどにセンサーを向けたところ、それらの物体の表面の振動を検出し、音声を“再現”して会話を傍受できたという。


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過去には同じように、ごくわずかな振動を読み取り、離れた場所から対象者の会話を盗聴するという実験例がある。こうした実験とは異なり、この新たな技術は小声での会話を聞き取れるうえ、利用できる反射物の種類もはるかに多い。また、室内の音声を事後に復元するわけではなく、リアルタイムに盗聴できるという。

「話者の近くに軽くて光るものが置かれていれば、そこから反射される光を分析することで話の内容を復元できるのです」と、この研究の中心人物であるベン=グリオン大学教授のベン・ナッシは語る。彼のほかに、ラス・スウィッサ、ボリス・ザドフ、ユヴァル・エロヴィッチが研究に参加した。「この技術が優れている点は、リアルタイムに使える点です。スパイ活動中に会話から得られた情報に応じて、即座に動くことが可能になります」

会話が生み出す「音の振動」が鍵
人が話すときには音波が生じて気圧の変化を生み、室内に置かれた物体を目に見えないほどかすかに振動させる。ナッシらの技術は、この現象を利用したものだ。

実験では、光を感知して電気信号に変えるフォトダイオードが望遠鏡のレンズに取り付けられた。レンズのとらえる範囲が広いほど、またセンサーに届く光の量が多いほど結果は良好だったという。

このときフォトダイオードは、電気信号をアナログからデジタルに変換するコンバーターと標準的なPCに接続されていた。このふたつの機械は、フォトダイオードが発する電気信号をデータに変換し、望遠鏡が検知した物体の反射光の揺れをリアルタイムにとらえる役割を果たした。

こうして研究者たちは、かすかな光の変化と話者のいる室内に置かれた物体の振動とを相互に関連づけ、話の内容を再現することに成功したのである。

研究チームはハイエンドなアナログ・デジタル変換器(A/Dコンバーター)を使ったいくつかの実験で、話者が光沢のある金属製ルービックキューブから10インチ(約25cm)ほど離れたところで75デシベルの大声で話している場合に、この技術を使って音声を復元できることを証明してみせた。また、高性能の望遠鏡を使うことで、対象からの距離を115フィート(約35m)まで伸ばすことができたという。

ルービックキューブ以外に実験に使われたものは、銀色に光る鳥の置物、光沢のある金属製の小さなゴミ箱、光沢を抑えたアルミ製のコーヒー缶、アルミ製のスマートフォンスタンド、そして窓に取り付けられた薄い金属製のベネチアンブラインドだった。


復元された音声が最もクリアに聞こえたのは、スマートフォンスタンドとゴミ箱を使った場合だった。最も不鮮明だったベネチアンブラインドについても、単語すべてが問題なく聞き取れた例がいくつかあった。

窓を覆うブラインドを利用した盗聴技術とは、何とも皮肉な話であるとナッシは指摘する。「室内のプライバシーを守るためのブラインドなのに、人が近づきすぎると振動板の役割を果たし、その振動から音声を復元されてしまうわけですから」

ベン=グリオン大学の研究グループは、冷戦時代の有名なスパイ事件で使われた「グレートシール・バグ」と呼ばれる飾り板の名にちなみ、この技術を「リトルシール・バグ」と名付けた。そのスパイ事件とは、1945年に旧ソ連からモスクワの米国大使館あてに贈呈された米国の国章を彫り込んだ木製の飾り板の内側に、当時の技術では検出不可能なRFID(無線自動認識)盗聴器が仕込まれていたことが何年も経ってから発見されたというものだ。

ナッシは「リトルシール・バグ」を使うことで、同じようなスパイ行為が可能だと示唆する。何の変哲もないように見える金属製のトロフィーや置物をギフトとして送りつければ、絶対に気づかれる恐れのない盗聴器として使えるはずだというのだ。

それどころかナッシは、標的となった部屋の窓からのぞき見できる位置に机があり、そこに都合よく軽くて光沢のあるものが置かれているような場合にも、おそらく盗聴は可能だと主張する。

もっと遠くの音をリアルタイムに
ナッシらのほかにも、長距離光学スパイ技術によって音声会話の傍受が可能であることを示した人々がいる。マサチューセッツ工科大学(MIT)、アドビ、マイクロソフトの共同研究チームは「ビジュアル・マイクロフォン」という名の装置を14年に完成させ、室内に置かれた観葉植物の葉やポテトチップスの袋を撮影した動画を分析することで、ナッシらと同じように振動を検出して室内の音を再現できることを実証した。

しかしナッシによると、ベン=グリオン大学のグループの装置はより小さな音を拾えるうえ、「ビジュアル・マイクロフォン」のチームが用いた動画分析の手法に比べデータ処理の手間をはるかに軽減できるという。


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実際にベン=グリオン大学のグループにより、カメラよりもフォトダイオードを使ったほうがより効率的で望ましい結果を得られることが確認された。その結果、これまでよりさらに多種類の物体を利用して、遠くの音をリアルタイムに聞き取ることが可能になったのだ。

「スパイ活動への貢献という意味で、一歩前進したことは間違いありません」と、かつてMITで「ビジュアル・マイクロフォン」の開発に携わった研究者のひとりで、現在はコーネル大学に所属するエイブ・デイヴィスは語る。光学的な盗聴行為を目的としてつくられた別種のカメラを使えば、さらなる技術の発展も望めそうだと彼は常々考えているという。

「わたしたちのつくったものがショットガンだとすると、ベン=グリオン大学の研究は『ショットガンに改良を加えてライフル銃をつくりました』と言っているようなものです」と、デイヴィスは言う。

すでに諜報機関が活用中?
この手法が現実の世界で通用するかどうかはまったくの未知数だと、コンピューター科学者として長年にわたりサイドチャネル攻撃の研究に取り組むコーネル大学のトーマス・リステンパートは指摘する。サイドチャネル攻撃とは、「リトルシール・バグ」のように情報のやり取りから意図せぬ機密漏えいを引き出す技術である。

リステンパートの指摘によると、ベン=グリオン大学の研究グループが実験で検知できた75デシベルという数値は、会話の音量としては比較的大きいものであり、実際には室内のエアコンや音楽、スピーカーからの音声といった雑音にじゃまされる可能性があるという。「それでもコンセプトを実証するための実験としては、十分に興味深いものだと思います」と、彼は言う。

これに対してベン=グリオン大学のナッシは、この技術の有効性は十分に証明されているのだから、自分たちが実験に費やした数千ドルをはるかに超える数百万ドルの予算をもつ諜報機関なら、さらに実践的かつ強力なツールに進化させることは可能だと訴える。それどころか、すでに実現しているかもしれないとも彼は指摘する。

「かなり前から利用できていたはずの技術です。おそらく何年も前から実際に使われていたでしょうね」と、ナッシは言う。「わたしたちがいま公にしつつある技術は、いくつかの機密機関がすでに長いこと利用してきたものばかりであることは、ほぼ間違いないでしょう」

つまり、人に言えない秘密をもつ人は、期せずしてスパイの盗聴器になりそうな光るものをデスクから一掃しておいたほうがいいということだ。さもなければ窓の日よけを下ろしておこう。ただし、ベネチアンブラインドはおすすめできない。

(WIRED US/Translation by Mitsuko Saeki/Edit by Daisuke Takimoto)

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『WIRED』日本版の実験区、SZメンバーシップを拡張する先に見据えるメディアのかたち

2022年4月4日 10:00 WIRED

インターネットがまだ普及すらしていなかった1993年、『WIRED』の記念すべき創刊号において、ファウンダーで発行人のルイス・ロゼットは創刊の言葉として以後の『WIRED』にとっての絶対的な存在証明となる言葉を綴った。

── 情報が溢れる時代において、究極のラグジュアリーとは、意味と文脈である。

ネット以前の時代に人類はすでに「情報が溢れている」と感じていたことが感慨深いけれど、この言葉がいまほど真実だと思える時代もほかにないだろう。『WIRED』はこれまで単にニュースや情報を伝えるのではなく、その意味を深く掘り下げ、文脈を果敢に紡いで読者に届けるメディアとして唯一無二のポジションを築いてきた。それは、新しいテクノロジーが次々と社会の価値観を揺さぶり、一足飛びに変革していく時代にあって、多くの人々が、まさに「ラグジュアリー」として求めていたことだったのだ。

これまでWIRED.jpは基本的に、デジタル上の広告モデルに支えられた無料記事によって構成されてきた。だが情報技術が発達しターゲティング広告への規制が各国で取り沙汰されるなど文字通り「情報が溢れる」時代のなかで、真に「意味と文脈」を伝えるメディアであり続けるためには、両翼となりえるもうひとつの推進力が必要となる。『WIRED』日本版は2018年のリブートにおいて「実装するメディア」を掲げ、そのための“実験区”として翌年にはサブスクリプションサービス「SZメンバーシップ」をローンチすることで、読者と共にあるメディアとしての進化を目指してきた。

サブスクリプションサービス「SZメンバーシップ」とは
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特に、毎週木曜日の夜に、編集部が気になるゲストを招いて公開インタビューを行なう「Thursday Editor’s Lounge」は、クリエイターやアーティストからスタートアップやイノベーターまで多彩なゲストを迎えてすでに50回を超える音声記事がアーカイブされている。無料で参加可能なSZメンバーと、毎週のように実験区で顔を合わせる、そんなイメージで開催している人気オンラインイベントだ(一般の方も有料で参加可能)。

メーター制のペイウォールを導入
さらにこの4月からは、WIRED.jpにメーター制のペイウォールを導入し、有料サービス(SZメンバーシップ)の範囲を拡大していく。それによって『WIRED』の実験区にさらに多くの読者に足を踏み入れていただき、そうした熱心なメンバーに支えられながら、これからも一緒に未来を実装していくメディアを運営していきたいと考えている。

と言っても、WIRED.jpのペイウォールが提示される対象は、最も『WIRED』の記事を愛読する上位数%だ。それ以外の読者はこれまで通りにWIRED.jpを無料で楽しんでいただきたい。逆にこの上位数%の方々には、ぜひこの機会に『WIRED』の実験区であるSZメンバーシップに加わっていただけたらと、心から思っている。

「フリーミアム」モデルの実現
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事実上コピーやシェアが無限に可能なデジタルの潤沢さに根ざしたニューエコノミーにおいては、最も熱意に溢れエンゲージメントが高い上位数%のユーザーが享受するプレミアムな有料サービスによって、無料コンテンツを含めたエコシステム全体が支えられる。「フリー+プレミアム」の造語であるこのモデルは、すでにゲームやメディアの世界では一般的だ。遅ればせながら、その発信地である『WIRED』の日本版もこれを実践していきたい(US版は18年から導入している)。

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『WIRED』日本版 編集長



松島倫明



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Web3、あるいは所有と信頼のゆくえ:雑誌『WIRED』日本版VOL.44の発売に際して、編集長から読者の皆さんへ


雑誌『WIRED』日本版VOL.44が3月14日に発売された。特集テーマは「Web3」。いま急速に注目を集めるこの新しいムーブメントは、NFTやメタバースまでも包含し、自律分散型のインターネットを再び自分たちの手に取り戻そうとしている。新たなる革命の真髄に「所有」と「信頼」というキーワードから迫る総力特集に寄せて、編集長・松島倫明からのメッセージをお届けする。



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急増する「超スピード配達」を担うダークストアが、都市で新たな問題の“火種”になっている

2022年4月4日 08:30 WIRED

アムステルダム北西部のファーゲルストラートという住宅街にある赤レンガづくりのアパートの間の狭いガレージに、食料品や日用品などを宅配するZappが引っ越してきたのは、2021年5月のことだった。地元住民の多くは、“ダークストア”という言葉など聞いたこともない。

宅配アプリが品物を届ける拠点として使う小さな倉庫のダークストアについて、「そこで何をしているのか、どんな仕事をしているのか正確には知りませんでした」と、地元住民のアレックス(仮名)は言う。


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それから1年も経たないうちに、このファーゲルストラートの小さな車庫は、ダークストアが地元住民との争いの火種になる可能性を示す極端な例となった。この住宅街で暮らして7年になるアレックス(配達員とのさらなる衝突を避けるために匿名希望)によると、いまでは1日10〜15件の配達があり、大型トラックが狭い通りを頻繁にふさいでいるという。

「24時間、年中無休なのです」とアレックスは話す。「おかげで配達員が深夜も早朝も出入りしています。夜中の2時にわたしの家の窓の前に立って、たばこを吸いながら大声でしゃべって休憩している人たちがよくいるのです」

このような状況が1カ月続くと、配達員と住民の緊張状態は頂点に達し、互いににらみ合うようになったとアレックスは言う。「何度かけんかしそうになりました。配達員のひとりがわたしに向かってきたことがあって、とても恐ろしかったです」

激化する競争と住民とのトラブル
オランダでは宅配アプリを展開するGorillasやGetir、Flink、Zappが市場を支配すべく競争を激化させており、この1年でダークストアが急増している。22年1月の時点で、アムステルダムだけでも31軒のダークストアがあった。

オランダは国土が狭く人口密度が高い上、土地が平坦なので宅配業者が参入しやすい。こうした点が参入する企業にとっては魅力なのだと、マーケティング会社であるカンターのアナリストのヤラ・ウィーマーは説明する。

食料品の宅配需要も急増している。ウィーマーによると、宅配アプリを使っているオランダの消費者の数は21年から22年1月までの間に3倍以上増え、70万人に達したという。

ところが、宅配アプリを展開する4社がさらに素早く商品を届けられるよう住宅街のダークストアの開設場所を巡って争うようになると、騒音や歩道をふさぐ自転車、交通量の増加に対する苦情がオランダ中で噴出するようになった。

アムステルダムで聞かれる苦情には、ダークストアの従業員による脅迫やセクハラ、つかみ合いのけんかなども含まれており、住民は自分たちの住む地域から宅配会社を追い出そうと動き出している。

ファーゲルストラートは、ダークストアに対抗すべく住民が動いた最も顕著な例だ。この地域の住民は嘆願書の草案を作成し、迷惑行為を記録するためにInstagramのアカウントを開設した。

住民のエリザベスは昨秋のある夜、ファーゲルストラートにあるZappのダークストアの従業員に大きな音を出さないよう伝えた。すると、「苦情をやめなければ友人たちをエリザベスのアパートに向かわせる」と、制服を着た人物(配達員も倉庫スタッフも同じ制服を着ている)に言われたという。

「具体的に何をするとは言いませんでしたが、脅迫的だったことには違いありません」と、エリザベスは語る。実際、Zappのダークストアに出入りしている人物に、何度か夜遅くに家まで尾行されたという。エリザベスによると、ほかの女性住民たちからも、セクハラされたりやじを飛ばされたりしたとの苦情が出ている。

Zappはセクハラを一切認めないポリシーを掲げている。このためファーゲルストラートのダークストアで住民と配達員との間に争いが起きていると聞いて「驚いた」と、Zappの戦略担当バイスプレジデントのスティーヴ・オヘアは言う。「住民とは早い段階から定期的に会っており、話し合いではかなり友好的な関係を保っていましたから」

ダークストアの開設を禁止する動きも
アムステルダムの住民はダークストアの従業員と衝突しているが、ほかの都市の住民は単に騒音や歩道を占拠する自転車に迷惑しているだけだ。それでもこうした近隣トラブルは、地元の政治家がダークストアの急速な拡大に歯止めをかけようと動く動機となっている。

アムステルダムが欧州で初めてダークストアの新規開設を1年間禁じた都市になったのは、1月27日のことだった。この決定は規制の流れをつくり出している。それから1週間後、ロッテルダムも同じくダークストアの新規開設を禁止している。2月半ばの報道によると、デン・ハーグやフローニンゲン、アーネム、アムステルフェーンも、特定の地域でのダークストアの開設を禁止する政策を検討しているという。

このような政策が広まれば、食料品を素早く配達する事業モデルにとって問題になる。10〜20分以内に注文を届けるというアプリの目標を達成するために宅配会社は住宅街に拠点を置くが、それは地元の住民にこうした拠点の近隣に住むことを強要することでもある。


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アムステルダムのいたるところで住民とダークストアの従業員との対立が深まっている様子を、配達員も見ている。29歳のアフマド・アラベド・アルムヒメッドも、そのひとりだ。アムステルダム・ニーウ=ウエストを担当するZappの配達員として21年10月に1カ月間働いていたアラベド・アルムヒメッドは、その短い期間でも住民とZappの従業員が争う様子を見たという。

ある住民が倉庫に卵を投げつけると、配達員6人が駆けつけて住民と対峙した。「6人は住民が暮らす建物に押し入ろうとしていました」と、アラベド・アルムヒメッドは言う。この件に関してZappはコメントを差し控えている。

Gorillasの配達員として5カ月働いた学生のラムジー・ラビディによると、街なかで注文された商品を配達しているときに受ける「不気味で人種差別的なコメント」を気にする配達員もいるという。「一部の配達員はストレスがたまり、この状況をどうにかしようと攻撃的になるのだと思います」と語るラビディは、これが一部の配達員が住民とけんかする動機になっているのかもしれないと指摘する。この件についてGorillasはコメントを差し控えている。

動き出したアムステルダム市
アムステルダム・ウエストで苦情が増えたことを受け、市職員のメラニー・ファン・デル・ホルストは該当の地域を訪ねた。「そこでこれは深刻な問題であり、単なる苦情として済ませてはならないと気づいたのです」と、ファン・デル・ホルストは語る。

ファン・デル・ホルストの担当の地域では現在9社の宅配会社が営業しているが、食料品を短時間で配達する会社の急拡大は、Airbnbがこの地域で急速に普及しさまざまな問題を引き起こしたときと似ているという。そうした問題がきっかけとなり、アムステルダム市当局は市民が自宅を貸し出せる日数の上限を年間30泊とする新しい規制を20年に施行した。

「素早く行動して厳しい規制を施行しなければならないのだと、Airbnbの件でわかりました」と、ファン・デル・ホルストは言う。そして、宅配アプリを運営する企業によるダークストアの新規開設を禁じる今回の措置は、市当局が新たな政策を策定するまでの時間を稼ぐためのものだという。

現時点では、ダークストアを取り締まったり開設場所を制限したりする方法はないのだと、禁止措置を導入したアムステルダム副市長のマリーケ・ファン・ドーニンクは言う。「わたしたちの街は小さくまとまっていて、住宅街の空き物件はダークストアを適切に収容できる空間や建物であるとは限りません」

専用の倉庫をつくるという解決策
地元の当局者と住民、配達員は、ダークストアの場所がよくないことが問題だと口を揃える。Gorillasの配達員だったラビディは、配達員の自転車が道をふさいでいると近隣住民からたびたび苦情を受けていたと言う。「人が歩く場所以外に自転車を停められる場所がなかったのです」と、22歳のラビディは語る。「住民ではないわたしでさえ、これにはいらいらしていました」

専用のダークストアをつくることで問題を解決できる可能性があると、不動産サービス会社JLLのEMEA地域のサプライチェーンディレクターを務めるアシュリー・スマートは語る。「既存の区画や建物を転用したり、駐車場などの土地を買い取ったりする方法を検討しています」と、スマートは説明する。そうすれば、エレベーターや荷物の積み下ろし場所、電気自動車(EV)の充電ポイントなど、アムステルダムのような場所にあるダークストアに欠けているものを提供できると、スマートは考えている。

だが、こうした解決策には時間がかかる。ダークストアの新規開設を一時的に禁じることで問題の拡大は防げるかもしれないが、既存の拠点で生じている緊張関係は緩和されないだろう。むしろ、悪化するかもしれないというのが、宅配会社のひとつであるFlinkの考えだ。

「アムステルダムやロッテルダムでのわたしたちの宅配サービスの需要は高いです。市の決定により拠点を増やせなくなったので、既存の拠点にしわ寄せがいくと思います」と、Flinkの広報担当者は説明する。

アムステルダム東部のZappの拠点から約20mの場所に暮らすヤン(仮名)は、Flinkの主張には一理あると言う。ヤンによると、近くのZappのダークストアは倉庫が手狭であることから移転の準備をしていたのだ。「ところが、新規開設を禁じられたので、別のよりいい場所に移転できなくなってしまったのです」

この6カ月間、ヤンは騒音のせいで眠れず、医師から処方された睡眠薬を飲んでいるという。「ないと眠れないので、薬を飲むほかありません」

(WIRED US/Translation by Madoka Sugiyama/Edit by Nozomi Okuma)

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役割を終えた人工衛星に“乗っ取り”の危険性:研究者の実験から明らかに

2022年4月3日 17:00 WIRED

近年、稼働中の人工衛星が抱えるセキュリティ上の脆弱性が独立研究者や米軍から指摘されている。これらの人工衛星は、主に耐久性や安定性、長期間の稼働を念頭に置いてつくられており、セキュリティに対する意識はどうやら低かったようなのだ。

ところが、ワシントンD.C.で3月25日(米国時間)に開催されたセキュリティカンファレンス「ShmooCon」において、人工衛星のライフサイクルの異なる段階に関する疑問を、組み込み機器のセキュリティ研究者であるカール・コーシャが投げかけている。古い人工衛星が廃棄されて墓場軌道(役割を終えた人工衛星を周回させる通常の高度よりも高い軌道)に移行するときには、何が起こるのだろうか?

意外と簡単だった衛星のハッキング
そんなコーシャと彼の仲間が2021年に得たのは、カナダの人工衛星「Anik F1R」への接続と放送の許可である。この人工衛星はカナダの放送局を支援する目的で05年に打ち上げられ、15年間の稼働を想定して設計されていた。その放送範囲は米南部の国境付近からハワイ、そしてロシアの最東部まで広がっている。

この人工衛星は間もなく墓場軌道に移ることから、利用しているテレビ局などはおおむね新しい衛星へと移行している。だが、アップリンク(送信経路)の利用許可と中継器(トランスポンダー)の空いている枠を利用できるリース契約を得た研究者たちが引き続き通信に利用していた。それらの権利をコーシャたちが引き継ぎ、北半球に向けて放送する機会を得たのである。

「実際に動かせるとは思ってもいませんでしたよ」と、コーシャは語る。「撮った映像が北米全土に放送されるなんて、なんだか非現実的ですね」


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こうしてコーシャのほか、通信機器や組み込み機器をハッキングする集団「Shadytel」のメンバーたちは、別のセキュリティカンファレンス「ToorCon San Diego」の生配信の様子を10月に放送した。3月末のShmooConでは、場所が明かされていない商用アップリンク施設(人工衛星との通信用の電力が供給されている特殊なアンテナを備えた設備)を、人工衛星放送用の司令塔に建て替えるために使った道具について説明している。

コーシャたちの場合、アップリンク施設と人工衛星の両方にアクセスする許可をもっていた。しかしこの実験は、稼働を終えたが静止軌道まで到達していない人工衛星の興味深いグレーゾーンを浮き彫りにしたのである。

「実際、Anik F1Rを含むほとんどの人工衛星に技術的な制約はありません。十分な強度の信号を発生させて送信できれば、人工衛星はそれを受信して地球に送り返してくれます」と、コーシャは説明している。「人々は大きな人工衛星放送用の受信アンテナと強力な増幅器、そして適切な知識が必要になります。それに、もし人工衛星に接続できた場合は、中継機が置いてある施設やその周波数を使っているほかの人よりも高い出力で電波を送出しなくてはなりません」

言い換えれば、静止軌道上の“マイク”に向かって最も大きく叫んだ人の声が増幅されるが、既存の大手放送局を圧倒することは難しいということなのだ。しかし、前例がないわけではない。

例えば、「Captain Midnight」と名乗るハッカーが「Galaxy 1」という人工衛星の信号を1986年にハイジャックしている。Captain Midnightは米国のケーブルテレビネットワークHBOの 「コードネームはファルコン」が放送された際にメッセージを残している。

誰でも接続が可能な人工衛星
最近では、稼働していない人工衛星を利用してハッカーが自分たちの目的を達成しようとすることがある。例えばブラジル連邦警察は、米海軍の人工衛星をハイジャックした39人の容疑者を09年に逮捕しているのだ。この容疑者らは、高出力アンテナやその他のアドホック機器を使い、市民ラジオ(CB)で短距離の無線通信を構築した疑いをかけられていた。

人工衛星には、認証プロセスや制御する機関が存在しない。このため個人で活動するハッカーだけでなく、各国が互いの機器を乗っ取る可能性があるとコーシャは指摘している。「プロパガンダを流したい国家に地上設備があれば、自国の人工衛星を打ち上げずに他国のものを利用できることを意味しています」と、コーシャは説明する。


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乗っ取られる可能性があるのは役目を終えた人工衛星だけではないと、組み込み機器のセキュリティ研究者の崔昂(ツィ・アン)は指摘する。ツィはオープンソースの地上局プロジェクト「NyanSat」を20年に立ち上げた人物だ。

「そこまで稼働年数が経っていない人工衛星でも乗っ取られる可能性があります」と、ツィは語る。だが、稼働をまもなく終える人工衛星のことは次のように解釈しているという。「なにしろ、空からぶら下がっているだけのものですから」

人工衛星のアップリンク機能は排他的で希少ではなく、豊富で利用可能である。そして多元的かつ情報の自由の観点から考え直すことができると、コーシャの仲間のひとりである「Falcon」は指摘している。「人工衛星が誰でも使える公共設備になればいいなと思うんです」と、Falconは遠くを見つめて語る。

(WIRED US/Translation by Naoya Raita)

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“ハッカー”たちは人工衛星の地上局も自作する:たった「1ドル」のDIYキットの実力


人工衛星の地上局を自分で組み立てられるDIYキットが注目されている。オープンソースに基づく研究者向けのキットは原価が約100ドルだが、なんと販売価格はたったの1ドル。衛星データの受信だけでなく、地上局同士が協調すれば宇宙ごみのような小さな物体も検知できるという。こうした取り組みは、宇宙技術の草の根のエコシステムを拡大する役割を期待されている。



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はたしてメタバースは理想の労働環境になりうるか:SZ MEMBERSHIPで最も読まれた5記事(2022年3月)

2022年4月3日 11:00 WIRED

『WIRED』日本版の会員サービス「SZメンバーシップ」では、“特区(スペキュラティブ・ゾーン=SZ)”の名のもとにスペキュラティブ(思索/試作的)な実験を促すテーマが毎週設定され、次の10年を見通すインサイト(洞察)が詰まった選りすぐりのロングリード(長編)をお届けしている。


この3月は、メタバースの中で何百時間も働き続けたコンピューター社会学者の手記が脚光を浴びた。ゲーム理論をテーマにしたポッドキャストで知られるベン・クレメンスが、一日中VRの世界で過ごすことで生じる健康への影響や、家はさながらゴミ屋敷のようになってしまったという体験談について詳細に語っている。

「Web3」のテーマでは、いまやNFT(非代替性トークン)をはじめとするWeb3界隈でデフォルトのソーシャルプラットフォームとなったDiscordのガイド記事に関心が集まった。Discordはもともとゲーマーのためにつくられたもので、いまでもプラットフォーム上にはゲームに特化したコミュニティが多数存在している。いまやDiscordは、ゲームの領域をはるかに超えたさまざまな会話が交わされるスペースへと成長した。

「INTERNET CULTURE」のテーマでは、いまだにテック業界でリベラルアーツが過小評価されている背景を考察した記事が注目された。大手IT企業は人間を理解できないのだから、理解できる人間をとにかくもっと雇えばいいという声がある一方で、社会、文化、倫理関連のデータや専門知識を重視しない限り変化はほとんど見込めないと、専門家は指摘する。

毎週金曜日に注目のトピックスをセレクトしてお届けするWeekly Dispatchからは、ロシアによるウクライナ侵攻がもたらす環境汚染と健康被害の可能性を考察した記事が反響を呼んだ。ここからは、3月に「SZ MEMBERSHIP」向けに公開された記事を中心に、最も読まれた5本を紹介する。



PIXDELUXE/GETTY IMAGES

01 メタバースの中で何百時間も働き続けたぼくが学んだこと

VRアプリを使い、宇宙船から遙か地球を眺めながら、眼前に浮かぶコンピュータースクリーンに向かってこの原稿を書いている。VRヘッドセットを手に入れて1カ月後には物理世界で使っていたデスクを処分してしまった。バーチャル世界で仕事をすることで間違いなく得られるのは完全な静寂と活発な思考だ。>>記事全文を読む



LINDEN LAB

02 メタバースが約束していることは、オンラインゲームでとっくに実現されている

バーチャルなたまり場にデジタル通貨、はては結婚式も──テック企業はいまや、メタバースでの新しいライフスタイルの実現を約束している。だが魅力的な機能のほとんどは、すでにオンラインゲームの中に存在してきた。実現されないままのものは、魅力的でないか、不可能か、欲深いものだけだ。>>記事全文を読む



ROKAS TENYS/ALAMY/AFLO

03 Discord(ディスコード)の始め方──初心者のためのWIREDガイド

いまやNFTをはじめとするWeb3界隈でデフォルトのソーシャルプラットフォームとなっているDiscord。まだ日本ではなじみがなく始めたくても戸惑っているあなたが知っておくべきことを、すべてここでお伝えしよう。>>記事全文を読む



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Busà PHOTOGRAPHY/GETTY IMAGES

04 テック業界ではリベラルアーツがなぜいまだに過小評価されているのか

テック企業が人文系の専門家をいくら増やしても、そのデータや専門性を重視しない限り変化はほとんど見込めない。実際、多くの文系専門家は、テック企業が自分たちの専門性を求めながらも結局は軽視されていると感じている。>>記事全文を読む



TOPSHOT-UKRAINE-RUSSIA-CONFLICT.jpg

ARIS MESSINIS/AFP/AFLO

05 ロシアによるウクライナ侵攻は、甚大な「環境汚染」との新たな“戦争”も引き起こす

ロシアによるウクライナ侵攻は、この地に多くの被害をもたらしている。だが、さまざまなインフラや工場、建物などがロシアによって破壊されていることで、ウクライナに中長期的に重大な環境汚染と健康被害をもたらす危険性が高い。>>記事全文を読む


オンラインイベント「Thursday Editors Lounge」を開催!

4月7日(木)のThursday Editors Loungeのテーマは、「ウェルビーイングをWeb3で実装する」。 雑誌『WIRED』日本版VOL.44「Web3」特集号の刊行記念イべントとして、ゲストに北川拓也を迎える。

これまで客観的にしか測られてこなかった「幸福」の指標を、Web3が変えていくかもしれない──。雑誌『WIRED』日本版最新号で北川拓也(理論物理学者・Well-being for Planet Earth 理事・元楽天常務執行役員CDO)はそう語っている。ウェルビーイングを日本の社会に実装しようと新たな事業を構想する北川は、なぜいま「Web3」に注目しているのか? その実装の道筋を探るべく、重要な6つのキーワードをひも解きながらウェルビーイング×Web3に迫る!

キーワード:

・MOTIVATION(モチベーション)

・REPUTATION(レピュテーション)

・LEARN TO EARN(学んで稼ぐ)

・SUBJECTIVE VALUE(主観的価値)

・LONG-TERM VALUE(長期的価値)

・PERSONALIZATION(パーソナライゼーション)


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漁業の工業化によって崩れる海の基本法則:SZ MEMBERSHIPで最も読まれた5記事(2022年2月)


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地球温暖化によって真菌感染症が人類の天敵となるかもしれない:SZ MEMBERSHIPで最も読まれた5記事(2022年1月)


『WIRED』日本版の会員サーヴィス「SZ MEMBERSHIP」では2022年1月、「METAVERSE」「CLIMATE CRISIS」「NFT」「Sci-Fi」をテーマとした記事を掲載した。そのなかから地球温暖化によって脅威を増す可能性が指摘される真菌感染症の実情や、完全な仮想現実としてのメタヴァースの実現を否定するジョン・ハンケの未来像など、最も読まれた5本のストーリーを紹介する。



月面探査の脅威となるレゴリスが新たな産業を生んだ:SZ MEMBERSHIPで最も読まれた5記事(2021年12月)


『WIRED』日本版の会員サーヴィス「SZ MEMBERSHIP」では2021年12月、「SPACE」「ENVIRONMENT」「THE WORLD IN 2022(WW2022)」をテーマとした記事を掲載した。そのなかから月面を覆う粉塵レゴリスの脅威や、メタンガスだけにとどまらない畜牛による環境問題など、最も読まれた5本のストーリーを紹介する。



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自撮りできる自律飛行ドローンをEVに搭載!? ポールスターの新コンセプトは本当に実現可能なのか

2022年4月3日 09:00 WIRED

ボルボの高級EVブランド「ポールスター」が、新たな電動スポーツカーのコンセプトモデルをこのほど発表した。しかも実際に生産される可能性が高そうだ。

「O2」と呼ばれるこの電気自動車(EV)には、ドローンが搭載される予定になっている。このドローンはクルマの後方から飛び出すように設計されており、走行中の様子を撮影できるという。ただし、このドローンについては日の目を見る可能性がほとんどない。

というわけで、まずは実現可能性の高いものから紹介しよう。「O2」は、2020年に発表された「Precept」に続くポールスターのコンセプトカーの第2弾である。完全なEVである「O2」はハードトップを用いたオープンカーで、座席配列は2席+2席となっている。つまり、8歳以上なら後部座席にぴったりと収まるよう設計されている。

PHOTOGRAPH: POLESTAR
アルミニウム接着構造を採用
「O2」のボディには、ポールスターが「Precept」の際に開発したアルミニウム接着構造プラットフォームが採用されている。この構造は4ドアクーペのEVとなる「ポールスター5」にも採用されるもので、金属板が互いに固定され、接着剤とオーブンで硬化させる手法だ。この接着構造により、従来のボディシェルの製造で使われていた3,500〜4,000個の部品が削減される。

この手法の主なメリットは、車体の剛性が向上することだという。自動車生産においては、技術的には必ずしも新しい手法ではない。だが以前は、手間がかかるので主に少量生産のパフォーマンスカーにのみ適していると考えられていた。

それを英国にあるポールスターの研究開発チームは、大量生産への適用に成功したという。さらにこの生産方法により、車体の設計の柔軟性を高められる。例えば、異なるさまざまなホイールベースの調節も比較的容易になる。

またポールスターによると、アルミニウム接着構造によって「O2」はダイナミックなドライビングに適しているという。小さなロール角と高いロールダンピングにより、タイトなハンドリング、そして俊敏でダイレクトなステアリングフィールを実現したというのだ。これが事実かどうかは、2024年に生産が開始され、「ポールスター5」が実際に発売された際に明らかになることだろう。

PHOTOGRAPH: POLESTAR
サステナビリティを重視
コンセプトカーである「O2」については、これ以上の詳細は明らかにされていない。写真からもわかるように角ばった車体のデザインは、ポールスターのライナップに共通する美意識を引き継いでいる。

オーバーハングを最小限に抑えたワイド&ローのボディと長いホイールベースは、クラシックなスポーツカーのプロポーションを具現化していると言える。こうしたなかポールスターは、17年の発表から発売が遅れているテスラの新型「ロードスター」に真っ向から勝負を挑もうとしている。

全長4.65mの「O2」 は、発売予定の「ポールスター5」と同じバッテリーを採用するという。一方、航続距離を最大化する空力技術として、ホイールやボディサイドの空気の流れを向上させるボディ一体ダクト、さらに車体後方の乱流を軽減するエアブレードとして機能するテールライトなど、カモフラージュされたデザインが特徴となっている。

コンセプトカーとはいえ「ポールスター」のブランドを冠する以上は、サステナビリティが必然的に重視されている。またリサイクルしやすいように、繊維が混じらない単一素材の熱可塑性モノマテリアルが内装の多くに採用されている。

発泡体や接着剤、3Dニット繊維、不織布ラミネートなどのリサイクル可能な素材でつくられており、これらのみが内装の柔らかい部品に使われる。さらに、生産には異なるグレードのアルミニウムが使用されているが、アルミニウムのグレードをラベルで表示することで、より簡単かつ効率的にリサイクルできるようにした。

ドローンは実際に動くのか?
それでは、これよりはるかに実現が疑わしいドローンに目を向けてみよう。ポールスターのエンジニアは、後部座席の後ろに立ち上がる特殊なウイングを開発し、車両が走行中でもドローンが離陸できるように、負圧で“穏やか”な領域をつくり出したという。

ドローンは飛行を開始すると、最高時速56マイル(同約90km)の速度で走行する車両に自動で追従する。ドライバーはセンターコンソールにあるタッチスクリーンを使い、海岸線を流しているときの撮影に適した「雰囲気重視」の撮影方法と、「よりスポーティでアクション中心」の撮影方法から走行シーンに合わせて選択できる(これらが具体的に何を意味するのかは不明だ)。

撮影後、ドローンは自動的に車両へと収納される。撮影された映像は、駐車している際に15インチのセンターディスプレイで編集し、SNSなどに共有できるという。

VIDEO: POLESTAR
ボルボの親会社である中国の浙江吉利控股集団(ジーリー)は、ポールスターをはじめロータスやボルボなどの自動車ブランドのほか、さまざまな分野の企業も傘下に収めている。そのひとつが、傘下の吉利科技集団が米国のTerrafugiaを買収して17年に誕生したドローンメーカーのAerofugia(沃飛長空)だ。

Aerofugiaは“空飛ぶクルマ”の開発で知られている。Aerofugiaの一般向けブランドである「Hoco Flow」についてはネット上に情報が見当たらないが、どうやらポールスターと共同で「完璧なドライブシーンを記録する」ことを目的とした移動式離発着ドローンの設計に取り組んだようだ。

ポールスターはコンセプトカー「O2」に合わせて搭載されるドローンのプロトタイプも物理的に用意しているのか、またドローンの飛行時間や衝突回避システムなどはどうなるのか。ポールスターに尋ねてみたが、「現段階では機能的にその段階まで至っておらず、プロトタイプも存在しない」との回答があった。

このドローンが「実現できない」理由
こうしたコンセプトは以前もあった。フォードがトラックの荷台からドローンを離発着させたいと考えていたことを覚えているだろうか。フォードはDJIと提携し、世界最大級の家電見本市「CES 2016」で複数の技術を披露した。その後、「クアッドコプター型デバイス」を車両から展開するアイデアで特許を取得するところまでいったが、まだ実現に至っていない。ポールスターの空飛ぶドローンというばかげたアイデアもまた、おそらく実現できないだろう。

西イングランド大学の航空電子工学・航空機システムのシニア・リサーチフェローのスティーヴ・ライトは、ポールスターによるドローンの開発について控えめに言っても懐疑的な見解を示している。無人航空機を専門としているライトは、学生と共にあらゆるドローンを設計・製造し、テスト飛行をしている人物だ。

PHOTOGRAPH: POLESTAR
「ポールスターが主張するようにあのドローンを動作させることは無理がありすぎて、思わずみんなで笑い転げました」と、ライトは語る。「わたしはポールスターが、走行中の車両の後部からドローンを飛び立たせることができるだろうと思っています。また百歩譲って、車両後部にドローンを着陸させて、機体を回収できることを信じても構いません。でも、このドローンを開発したエンジニアは、どうやらわたしよりはるかに賢いようですね。これがうまくいけば、物理法則を曲げる方法を発見したことになるわけですから」

「まず、ドローンの部品が小さすぎることが問題です」と、ライトは続ける。「ドローンではローターが大きいほうがいいのです。非常にちぐはぐな部品を使うようになったとたんに、すべてがうまくいかなくなります。次の問題は、ドローンのローターの周辺に円形のダクトがあることです。ダクトの見た目は素晴らしいですが、実に面倒なものです。ダクトは大きな吸引力を生み出すので、ドローンを時速90kmで飛行させようとするとエネルギーをどんどん消費してしまいます」

さらにライトは、ポールスターのドローンのバッテリー容量にも疑問を投げかける。「ドローンの真ん中にとても小さなボックスがあります。その大きさだと、飛行時間は10秒程度でしょうね。なぜそれがわかるかというと、わたしも同じような仕様のドローンをつくったからです。同じくらいの速度での飛行時間は約10秒でした」

さらにライトは、このように語る。「ポールスターはドローンを開発し、車両から飛び立たせ、再びクルマに回収できると思います。でも、紹介しているビデオのようにはならないでしょうね」

PHOTOGRAPH: POLESTAR
「わたしは本当に心からポールスターには成功してほしいと思っているので、とても残念な気持ちです。スポーツカーから飛び立ち、道路を走っている自分を追随するドローンを実現してほしいと思っています。ただ悔しいですが、それを手できるのはまだ先のようですね」

少なくとも当面は、このドローンに似たようなものですら実現できないことだろう。しかし幸いなことにテスラの「ロードスター」に対抗するポールスターの「O2」については、見通しがはるかに明るいと言える。「Precept」に対する一般の人々の好意的な反応がポールスターの経営陣を動かし、「ポールスター5」として生産されることになったからだ。

いま、ボルボのポールスター部門の最高経営責任者(CEO)であるトーマス・インゲンラートは、「O2」でも同じことを再びなし遂げたいと考えている。「これはわたしたちが実現できる設計・デザインのほんの一例にすぎないのです」と、インゲンラートは言う。

(WIRED US/Edit by Daisuke Takimoto)

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