「最近は欲が出てきました。今までは、どこかで『私なんかが』という思いや、同年代の他の女優さんが活躍している姿を『ああ、すごいなあ』と、何となく見ていたんですけど、最近はそれがつまらないというか、他人事にできないというか(笑)。『悔しいな』というふうに思っていて」。
【写真を見る】「ういらぶ。」の劇中で度々見られる髪の毛をつかむポーズを披露した桜井日奈子
そう語るのは、女優の桜井日奈子だ。11月9日(金)に公開を迎える人気コミックの映画化「ういらぶ。」では、臆病で自信のない自分を変えたいと願うヒロイン・優羽(ゆう)を熱演した桜井に、King & Prince・平野紫耀との共演秘話や、女優として「変化の必要性」を実感した経験、今後目指す方向性などを語ってもらった。
――本作で演じられた優羽は、自信がないため、幼なじみの凛(平野)にうまく思いを伝えることができない女子高校生です。劇中では変顔にも挑戦されていますが、この作品を経験したことで、女優としてどんな部分で成長を実感できましたか?
瞬発力ですかね。一瞬の画力じゃないですけど、変顔もそうですし、シーンを切って撮影が進んでいった部分があるので「一瞬の画で見せる」という点は、必要な力だなと思いました。
――いわゆるラブコメで、笑いどころも多いです。佐藤祐市監督とは、どんなお話をしながら笑いを生むシーンを組み立てていったのでしょう?
私が頭の中で考えられるのは、まだ1パターンくらいしかないんです。撮影中は、自分の引き出しの少なさを痛感していたんですけど、佐藤監督が「じゃあ、こういうのをやってみて」と提案して、お手本を見せてくださったんです。
それがすごく面白いんですよ!(笑) とても分かりやすかったので、私も「こういうふうにやればいいんだ!」と、自分の中にすぐ落とし込むことができました。監督のお手本が大きかったですね(笑)。
――好き過ぎるが故に、優羽に対してドSになってしまう凛との関係性が一つの見どころになっていますが、凛にいじられる優羽を演じる中では、どんな部分が楽しかったですか?
優羽ちゃんというキャラクターが、自分とは真逆だと思っていたんです。そこが一つのやりがいを感じていた部分でした。自分はこんなにドSなことを言われると言い返しちゃいますし(笑)、言いたいことははっきりと言う性格なんです。
優羽ちゃんが自分とは違うタイプだったという意味で、やりやすかったかもしれないですね。キャラクターが自分に近いと、自分の内からにじみ出てくるもので何とかしようとするんですけど、それよりは、自分と離れている役柄を思い切り演じた方が取り組みやすいので。
平野紫耀は「本当に飾らない人」
――平野さんの印象は、共演する前と後で変わりましたか?
平野さんは、本当に飾らない人なんです。明るいので、平野さんは笑わせようと思って言っていないのかもしれないですけど(笑)、その一言で周りがワッと笑顔になるような言葉があったり、人柄の良さがにじみ出ている感じもありました。
どれだけ撮影が押しても「疲れた」とか、ネガティブな言葉を言っている姿の記憶がないので、本当に現場の太陽のような人でしたね。凛くんみたいには、トゲトゲしていないです。
ただ、凛くんも言葉はトゲトゲしているんですけど、その奥に優しさや愛情のようなものを込めて言っているので、そこは平野さんと一緒なのかなと感じていました。
――劇中では優羽の「変わりたい」というセリフが印象的でした。桜井さんは2015年のデビュー以降、女優として変わりたいと感じた経験がありますか?
お芝居をやりたいと本当の意味で思ったのは、2016年に女優デビューをした舞台(「それいゆ」)がきっかけだと思います。最初は、できないことが悔しかったという思いがありました。そこから女優をやっていこうと決めて今に至るんですけど、最近は欲が出てきました。
今までは、どこかで「私なんかが」という思いや、同年代の他の女優さんが活躍している姿を「ああ、すごいなあ」と、何となく見ていたんですけど、最近はそれがつまらないというか、他人事にできないというか(笑)。
「悔しいな」というふうに思っていて、それって、そういう作品に携わりたかった、自分にもできるんじゃないかと考えている自分がいるということなので、最近は自分が変わっていっているんだなと感じるんです。
――映画初主演を務めた「ママレード・ボーイ」(2018年)を含め、2018年は主演・ヒロイン役を務めた映画が2本公開されました。物語の真ん中に立つことは、どんな点でプラスになりましたか?
やはり自分の引き出しのなさを実感しましたね。監督に「ああしてみて、こうしてみて」と言われて、初めて自分の中でイメージが広がるので…。映画は、監督のものとも言われますよね。
監督がおっしゃったことを素直に表現できれば、もちろんいいんでしょうけど、そうではなくて、他の現場でも感じたことですが、自分から「こういうのはどうですか? ああいうのはどうですか?」と提案できるようになったら、もっと面白いのだろうなと思うんです。
佐藤監督は、この現場で「何が出るか分からない女優は面白い」と仰っていました。「それって、何が出るか分からないようなお芝居をしろってことですか?」というふうに、どこかで思っていて、勝手にプレッシャーを感じていたんです。
でも、私にはそれができなくて…。どうしても普通になってしまって、たぶん監督は面白くなかったかもしれないなと思うんですけど(笑)、せめて「言われたことは全力でやろう!」と考えていました。
もっともっと経験を積んで、面白い女優になりたいという思いもありますし、私が出ているから「あ、見よう」と言っていただけるような女優さんになるのが目標です。
ダークな作品も興味あり
――佐藤監督は公開中の映画「累 -かさね-」も手掛けられています。ダークな作品への興味は?
すごくあります! それこそ、私は「累 -かさね-」を鑑賞したタイミングで佐藤監督にお会いしているんですけど「ヒナコはもっと悪い女を演じたら面白そうだな」と言っていただいて(笑)。
そんなことを言っていただいたのは、初めてだったので、うれしかったですね。
悪い女を演じるときは、ぜひ佐藤監督にお願いしたいです(笑)。監督の中ではいろいろと想像できていて、どこかで見抜かれている部分もきっとあると思いますし(笑)。挑戦してみたいです。
――女優として、明確な目標は設定されていますか? 例えば朝ドラ(連続テレビ小説)で主演など。
いっぱいありますよ~!(笑) 「ういらぶ。」もそうですし、「ママレード・ボーイ」もそうなんですけど、作品を一つ一つ終えて進んでいくうちに、目標って、いっぱい出てくるんです。
例えば「こういう方と共演したい」とか。朝ドラも出たいと思いますし、「連ドラ主演やりたい!」とか、たくさん出てきています。
目標を絶対にクリアしようと思うので、一つ一つを紙に書き出して、壁に貼っているんです。私は言霊をちょっと信じていて、かなえたい夢は文字にしていこうというスタンスなので。でもこの間、貼ってあるのをすっかり忘れて、お母さんを家に呼んじゃったことがあって、ワー!って全部取りました(笑)。やっぱり、見られるのはちょっと恥ずかしいですね(笑)。
――公式ファンクラブサイトの開設があった他、カレンダーの発売も控えていますね。2018年はどんな年になりましたか?
2018年も、新しい初めての経験をたくさんしたので、成長の年だったなと感じています。2019年も、もっと成長したいと思っています。まだ経験していない初めてのことがたくさんあるので、頑張っていきたいです!
――逆にやり残したな…と感じていることはありますか?
プライベートですね。お休みはあるんですけど、それを充実させられているかには疑問な部分があって(笑)。一人カラオケとか、一人映画とか、同じようなことを毎回してしまっているので、一人で遠出するとか、電車に乗って遠くまで行くとか…。
自分の人生をいろいろと積んでいかないと、女優さんとしての幅が広がらないと思うので、プライベートでも、もっといろいろな経験をしていきたいなと考えています。
――では、最後に。新たな発見をしたり、壁に直面したこともあった「ういらぶ。」は、桜井さんにとって、どんな作品になりましたか?
私が演じた優羽ちゃんは、世間の人が「桜井日奈子って、こういう子だよね」とイメージするキャラクターに近いのかなと感じているんです。でも実は、自分とは全然違うし、真逆だと思っています(笑)。
なので、この作品のイメージを付けていただいた上で、「実は全然違うんだよ?」という作品を、またどこかでできたらと思っています。
「ういらぶ。」は、世間が思う「ザ・桜井日奈子」は、こうなのかな?という作品でした。「実は違うんだよ。ニシシ」みたいな(笑)。(ザテレビジョン・取材・文・撮影=岸豊)