cat_oa-rp53487_issue_349af2de3996 oa-rp53487_0_349af2de3996_埼玉・西川口、いつのまにか「マニアックな中華街」に 風俗店は減少 349af2de3996

埼玉・西川口、いつのまにか「マニアックな中華街」に 風俗店は減少

2018年3月29日 06:50 withnews

 埼玉県の西川口(川口市)と言うと、風俗街のイメージが根強いかもしれませんが、最近は中華料理店の増加が目立ち、インターネットでは「マニアックな中華街」とまとめられています。羊料理、アヒル料理、四川省の串料理、東北地方の郷土料理など、よく知られている「日本式中華料理」と違い、メニューには中国語しかなかったり、店員と日本語が通じなかったりと、店によってはまさに「プチ海外旅行」。西川口で長年中華料理店を営んでいる店主は「10年ほど前から『グルメの街』を目指した結果、外国人住民の増加とともに、中華料理を始めとする各国の料理店が増えてきた」と話します。

JR西川口駅から少し歩いた路地に中華料理店が点在する

一歩踏み込んだら旅行気分 オーソドックスでなくB級中華? 

 JR西川口駅の西口。駅前はチェーン店が並んでいますが、奥へ一歩進むと、火鍋、シルクロード(新疆ウイグル族)の料理、四川串鍋料理、上海料理、またアヒル(モミジ、手羽先、ネック、砂肝…)といった中華の専門店が次から次へと現れます。

 ひとことに中華料理と言っても、馴染みのある中華麺や、青椒肉絲(チンジャオロース)、回鍋肉(ホイコーロー)、坦々(タンタン)麺などでなく、日本に住む中国人にとっても新鮮です。

 日本人がここを歩くと、「別世界」という感じで、まさに旅行気分も味わえます。

西川口のアヒル料理専門店。胡椒が効いたピリ辛の味は中国でもB級グルメとして人気が高い。

本格的な中国東北地方の郷土料理

 中華料理の看板を通り抜け、10分ほど歩くと、中国東北地方(旧満州国)の郷土料理のお店「滕記熟食坊」(テンジシュシーファン)に出会います。看板の下には「東北鉄鍋燉(ドンペイティゴドゥン)」の大きな文字が見えます。

 中国の東北地方というと、黒竜江省、吉林省、遼寧省の三つの地域を指します。店主夫婦は最も北部に位置する黒竜江省・佳木斯(ジャムス)市出身で、極寒の地の郷土料理を日本に持ち込んできました。

中国東北地方郷土料理のお店「滕記熟食坊」の外観。「東北鉄鍋燉」が看板料理になっている。
 「鉄鍋燉」の特徴というと、テーブルに埋め込まれた大きな鉄鍋に肉や野菜を入れ、じっくり煮込むことです。大きな鉄鍋ならではのいい匂いと湯気が漂います。

 鍋の名前は食材により異なります。例えば「東北農家燉」にはスペアリブとモロッコインゲン、甘くないトウモロコシ、かぼちゃが入っています。「殺猪菜」は豚肉や豚のモツ、豆腐などと発酵した白菜の煮物を入れます。

 さらに東北名物料理の「小鶏燉蘑菇」(鶏肉と東北名産の紅キノコの煮物)があり、鉄鍋で煮ると格別に味が深くなります。魚鍋の「鯉と豆腐の煮物」も高い人気を誇り、わざわざ1時間以上車を運転して来店した中国人客もいました。

 鉄鍋を注文すると、トウモロコシのパンもその場で焼いてくれます。練った生地の塊を、鉄鍋の縁あたりにペタッと貼り付け、鍋の熱で芳しく焼き上げ、パリパリとした食感もあり、美味しいです。

 こうした郷土料理は、東北地方の出身以外の中国人ではめったに目にすることがないです。遼寧省出身の夫も都市部に暮らしていたため、このような鉄鍋料理は1~2回ぐらいしか食べたことないと言います。

出来たての「東北農家燉」。湯気が立ち、食欲を誘う。

鉄鍋が大人気 日本人客が3割へ メニューは中国語だけ

 「滕記熟食坊」のおかみの興(シン)さんによると、この店は2年ほど前にオープンしました。最初は中国人客が圧倒的に多かったそうですが、口コミなどで日本人にも人気が高まり、感覚的に日本人客が3割近くなっているそうです。

 メニューは全部中国語です。日本語が書かれていない理由を尋ねると、「おかずの日本語名が分からないんです」と興さんが恥ずかしがりながら話しました。ただ、料理の写真を載せているので、日本人客も注文には困らないそうです。
 
 興さんはある程度日本語が話せますので、日本人客の接客や、電話予約を受け取っています。「ほとんどの予約電話は日本人客からのものですね」。そして店主である夫を含め、ほかの店員はあまり日本語が話せないそうです。

 この店の鉄鍋はかなり大きいため、4人以上のグループで食べるのがオススメです。多人数のほうが賑やかで、水餃子、アヒル料理、鶏の燻製など、ほかにも本場のメニューを楽しめます。食べきれない場合は、テイクアウトもできますので、少人数で行っても心配ありません。

メニューもすべてが中国語で表記されている

孔子の73代目が語る西川口の変化

 「滕記熟食坊」は開店して2年ほどですが、すでに中華料理の店が増えていたそうです。西川口はいつ頃から「グルメの街」に変身してきたのでしょうか。

 警察などによると、西川口には1990年代から2000年代前半にかけて、違法な性風俗店が乱立していました。新風営法施行以前からあって営業が認められた店の周辺の営業禁止地域に違法店が次々開店し、「西川口流」などとという隠語も誕生。それが警察の取り締まりで07年までに、大半の店が廃業に追い込まれました。

 同時に「同伴」や「アフター」でにぎわっていた「まともな飲食店」も、客を失いました。「風俗店が摘発されてクリーンになりましたが、空洞化も起きてしまったんです」。こう話すのは、西川口に店を構えて27年になる中華料理「異味香(イーウイシャン)」のオーナーで地域の商店街連合会青年部にも入っている山田慶忠(よしただ)さん(49)です。

 山田慶忠さんの本名は孔慶忠さんで、実は『論語』で有名な孔子の第73代目子孫(末裔)。お父さんは第72代目の孔憲蕚さんです。お父さんの代から日本へ移住し、1991年に「異味香」を開店。山東料理を提供し続けています。ちなみに、孔子の家計図(世家譜)によると、「憲」は72代目で共通する文字で、73代は「慶」、74代は「繁」になっているそうです。現在世界中に孔子の子孫は200万人を超えていると言われています。
県警保安課などによると、西川口には90年代から00年代前半にかけて、違法な性風俗店が乱立。新風営法施行以前からあって営業が認められた店の周辺の営業禁止地域に違法店が次々開店し、売買春を指す「西川口流」やイニシャルを取った「NK流」という隠語も生まれた。県警の取り締まりで違法店は07年までに廃業。周辺の飲食店も次々と閉じた。
出典:2017年4月17日朝日新聞夕刊「まるでリトルチャイナ 埼玉・JR西川口駅周辺 風俗店が減り、中国料理店が急増 」

「異味香」の店主・山田慶忠さん

B級グルメの町を目指したが、中華街は「自然発生」

 山田さんによると、転機になったのは、08年に西川口で開催された埼玉県内のB級グルメ大会でした。そこから、西川口を「グルメの街」として売り出そうと企画し、数年後には山田さんが地区の名物になる「焼焼売」を開発。しかし、中華料理の店はその動きとは関係なく、自然発生的に増えてきたそうです。

 「飲食店が撤退するたびに、中華料理店がその空きを埋める感じですね」と話す山田さん。すべての店が成功するわけでなく、撤退する店も多いそうですが、その場所にまた別の中華料理店が開店するなど入れ替わりがめまぐるしいそうです。

 さらに話を聞くと、「自然発生」した背景について、考えられる理由をいくつか挙げてくれました。

 まずは立地の良さです。東京につながる交通の便がよく、家賃も東京都内と比べ安いことから、「都内で成功した中華料理店のオーナーが、気軽に西川口で支店を開くことができる」と指摘します。
 
 次に、中国人の多さです。「西川口はもともと鋳物が盛んで、今は工場で働く中国人が多い。中国人の住民が増えたため、中華料理への需要も高いのでは」と話します。  
 
 そして、西川口のイメージ。日本人にとってはマイナスなイメージが残るかもしれませんが、「外国人はその固定観念にあまり取られていない」と山田さん。

風俗店が集中していた2003年当時の西川口。こうした街のイメージは外国人にはない出典:朝日新聞

競争は激しくなるなか 町中に活気付いている

 山田さんによると、「マニアックな中華街」としてネットで知られるようになると、メディアによる取材も増え、宣伝効果や口コミなどで、足を運んでくれるお客さんも増えたそうです。

 山田さんは「異味香は老舗の中華料理として、競争も感じているが、町全体が活気づいていて、いい傾向」だと感じています。

 ただし、課題も。店の入れ替わりが激しく、なかなか地域全体の店の概要が把握しにくいという現状があります。

 また中華料理店に限りませんが、マナーの問題もあります。例えば安易に油を捨ててしまう店があるので、「油の垂らし問題」は地区の問題になります。店舗のゴミはまとめて業者に頼んで廃棄するものですが、一部ではそのまま住民用のゴミ捨て場を利用して、トラブルになるケースもあるそうです。

 街が活性化しつつも、こうした新たな問題の解決が課題になっています。

西川口に店を構えて27年になる老舗中華料理店「異味香」

異文化の町もいいかも

 横浜の中華街や都内で中華料理が多い池袋では、中華料理店が密集するだけでなく、ほかの観光やショッピングの施設が併存しているため、いい相乗効果があります。現在、西川口は「マニアックな中華街」になりつつあるも、集客するような目立った施設は特にありません。

 山田さんは西川口が「異文化の町」と考えているようです。中華料理だけでなく、インド料理、タイ料理、韓国料理など、各国の本場に近い味を堪能できるため、「異文化」のほかに観光・レジャー施設が設立されれば、より魅力ある西川口になるのではないかという考えです。

 「マニアック」、「異文化」など、西川口の町は、今後もますます目が離れません。

外部リンク

cat_oa-rp53487_issue_349af2de3996 oa-rp53487_0_0e2ca141d5be_ハマ弁だけじゃない「昼食15分問題」 横浜市が延長検討も「5分だけ」、それでも「大きな一歩」の理由 0e2ca141d5be

ハマ弁だけじゃない「昼食15分問題」 横浜市が延長検討も「5分だけ」、それでも「大きな一歩」の理由

2019年2月21日 07:02 withnews

 「15分って軍隊みたい」「どう考えても不健康でしょ」。横浜市の市立中学校で給食代わりに利用されている配達弁当「ハマ弁」。その試食会で硬いハンバーグを食べようとし、箸が折れた記事を配信しました。すると、ハマ弁への突っ込みに加え、「昼食時間が15分」に多くのコメントが来ました。実はこの問題は横浜市議会やネットで度々話題になっており、先日の市議会でも質疑がありました。(朝日新聞横浜総局・高野真吾)
>>【画像】昼食は15分、じゃあ休憩時間は? 昼休みの内訳をグラフ化すると……意外に多い「あの時間」

市議が熱弁「余裕のない時間配分」

 「余裕のない時間配分になっている」

 19日午前、横浜市の本会議場壇上。かっぷくの良い横山正人市議(自民党)が声を張り上げました。仲間の自民党市議席から「そうだ」のかけ声が出ます。

 横山市議は、ハマ弁が当日注文の全校実施で「より一層の普及が見込まれる」と述べる一方、「昼食時間については一考の余地がある」と前振り。そして、いわゆる「昼食15分問題」に切り込んで行きました。

 熱弁が続きます。

 「よくかんで食べることの大切さなど、食育の重要性が高まっている今、改めて中学生に余裕のある昼食時間の設定することは、大きな意味があると考えます」

 再度、最初よりも大きな声で「その通り」「そうだ」のかけ声が議場に響きました。本会議場の議員たちは横山市議以外、ほぼ口を開いていません。それだけに、こうしたかけ声は目立ちます。

 横山市議は「中学校昼食の推進」に関する質疑を次のように切り上げました。

 「昼食時間の延長について(中略)教育長の見解をお伺いします」

3区で延長検討、教育長が淡々と「見解」

 横山市議の質疑が終わった後、指名された鯉渕(こい・ぶち)信也教育長が同じ壇上に立ちました。淡々とした口調で「見解」を述べます。横山市議との熱量の違いが印象的です。

 「食育の観点からも、ゆとりある食事時間を確保することは大切です」

 横山市議の問題意識に呼応した答えです。さらに市内で具体的な検討が進んでいることを明らかにしました。
 
 「適切な時間配分について学校長に対し要請を行い、青葉区や磯子区、金沢区などでは区内の学校で昼食時間を伸ばす検討をしていると聴いております」

 市教委によると過日、校長たちを集めた全体校長会で、市教委から昼食時間の延長を考えるよう校長たちにお願いしたそうです。学校の始業、終業や昼食時間などの日課表は、学校ごとに校長が決めていることが背景にあります。

5分延長でも「大きな一歩」なのは……

 市教委からの要請に応じ、青葉区、磯子区、金沢区の複数の校長が4月から昼食時間を5分延ばし20分にする検討をしているとのことです。昼食時間を5分延長した分は、始業や終業時間を変えるなど全体の時間割を調整して、時間を確保すると言います。

 休憩時間に取材に応じた横山市議は次のように語りました。

 「昼食時間の延長は3区の学校から始まり、市内の全18区に広がっていくことになるでしょう」

 教育長から具体的な区名を引き出すのに、横山市議はかなり注力したとのこと。それだけに、今後の広がりの可能性を語る表情は充実していました。

 こう書くと、読者は「えっ、わずか5分の延長じゃん」「20分になるだけでしょ」「小さな変化すぎる」と突っ込むかもしれません。

 それでも記者も「大きな一歩」だと考えています。ゼロ回答だった時もあるからです。

1年半前にも議題に

 2017年9月13日の議会でも、ある議員が横山市議と同様に昼食時間を取り上げました。共産党の古谷靖彦市議です。議事録をめくりお伝えします。

 古谷市議は質疑で「中学校の昼食時間が15分しかないという問題について伺います」と切り出しました。

 「そもそも昼食を15分で食べるというのは余りにも短すぎると思いますが、これで食育を図るにも健康面でも十分な食事時間だという認識なのかどうか、伺います」

 また、生徒の健康面や食育の観点だけでなく、教師の労働環境の側面からも質問しています。2013年に教職員の実態調査をした際、休憩時間が「10分程度という回答」だったそうです。

「その後休憩時間を法定どおりに取らせていないことに対して何らかの改善策を講じられたのかどうか、伺います」と続けました。

当時は「ゼロ回答」

 当時の教育長は以下のように答えています。

 「昼休み時間を延ばすためには、決められた授業時数や勤務時間をもとに、始業時間を早める、終業時間をおそくする、あるいは夏休みを短縮するなどの調整が必要となります」

 議事録には「『で、どうなるの』と叫ぶ者あり」との記述があります。確かに、教育長のスルーの答えには、だからどうするのか聴きたくなります。

 食事時間に関しては「食育や健康面において昼食時間が大切だということは十分認識しています」とし、「引き続き、しっかり食べることを指導していきます」と述べました。

 教師の休憩時間については、「業務改善の支援や人員配置の充実等の取り組みを実施してきました」が「具体的な改善策には至っておりません」と引き取りました。

 この時の教育長の回答と比較すると、19日の現教育長の回答は具体的です。

 古谷市議には男4人の子どもがいて、うち1人は市内の公立中学校に通っています。2011年に市議に初当選して以降、昼食問題に積極的に取り組んで来たそうです。
 取材に対し、古谷市議は以下のように話しました。

 「ハマ弁自体の問題は別にし、昼食時間を伸ばすことは賛成です。最近は、市側と話しても『(親が作る)愛情弁当がうんぬん』とは言わなくなってきました。だいぶ路線が変わってきたと感じています」

はるかぜちゃんも過去に発信

 この昼食時間問題では、ある著名人のつぶやきがネットを賑わせたこともあります。横浜市立中を卒業した俳優の「はるかぜちゃん」こと春名風花さんです。

 春名さんは2017年7月、次のようにツイッターでつぶやいています。

 「ぼくは食べるのが遅いので中学校三年間ずっとおなかがすいていました。部活のある日は家に帰るまでおなかが持たなくて倒れそうでした」

 「今は高校に売店があるので、授業も落ち着いて聞けます」

 そして、こう続けています。

 「中学生がゆっくりお昼ごはんを食べられる横浜になってほしいです」

これからもウォッチ

 記者(42)は埼玉県川越市の公立中の出身です。30年ほど前、その公立中で給食を食べていました。クラスメイトと話をしながら、のんびりと給食を食べた楽しい思い出が、四半世紀を過ぎても残っています。

 食が細くなっている、いまの倍は食べたでしょうか。今の体重65キロに足すこと15キロ、80キロ近い体格だったので、よくおかわりをしたものです。

 食育という言葉は知らない田舎の中学生でしたが、はるかぜちゃんのようにおなかを空かせることはありませんでした。ずっと「ふつー」と感じていましたが、もしかしたら恵まれていたのかもしれません。

 横浜市内3区の昼食時間延長は、外から来た者が持っている「ふつー」が、ここ横浜に来る一歩となるのでしょうか。横山市議の見立て通りに18全区に広がっていくのか。地元記者として、きっちりウォッチしていきます。

外部リンク

cat_oa-rp53487_issue_349af2de3996 oa-rp53487_0_9a61b9376e0b_芸人が「社会問題」発信 せやろがいおじさんが目指す「ネット議論」 批判が来たら……「ゴメン!」 9a61b9376e0b

芸人が「社会問題」発信 せやろがいおじさんが目指す「ネット議論」 批判が来たら……「ゴメン!」

2019年2月21日 07:02 withnews

ネットは社会を分断する?

平成の初めの頃は、インターネットが新しい言論空間を作ると期待されていました。ところが、今、ネット上で飛び交うのは炎上の嵐。結局、ネットは社会を分断しているのではないか……と思っていた時、出会ったのが芸人の「せやろがいおじさん」でした。沖縄の海を背景に赤いふんどしで叫ぶ、あの人です。「批判は3つに分けられます」。自分を攻撃する言葉ともしなやかに付き合う、せやろがいおじさんの活動から、ネットで自らの意見を主張することの可能性について考えてみました。(朝日新聞記者・篠健一郎)
>>【動画】せやろがいおじさんが朝日新聞でマスコミを斬る! 「マスゴミと言われてるけど…」

柔軟で謙虚なせやろがいおじさん

記者11年目の私は、4年半ほど前から実名・顔出しで記者ツイッターを使っています。

ニュースについて感想を言ったり、会見場から実況中継ツイートをしたり。ただ、自分の意見を書くときは、かなり慎重になります。正直、つぶやく前に何度か読み返すことも。

誰かを傷付けるようなツイートではないか、内容に誤りはないか。そんなことを考えていると、誰も反応しないよな、という味気ないツイートに……もちろん反応も基本薄いです、はい。

そんな私にとって、せやろがいおじさんの動画は、新鮮な驚きがありました。

「お~い」とコミカルな呼びかけから始まる動画では、外国人技能実習制度や教員の労働環境などの硬派な時事問題に対して、そうした問題から一見すると縁遠そうな芸人という立場から、自分の意見を大声で叫びます。活動拠点にしている沖縄の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画や昨秋の沖縄知事選についても、自らの言葉で語っています。

歯にきぬ着せぬ主張に圧倒されがちですが、私が注目したのは動画に誤りがあったときの柔軟な対応と謙虚な姿勢です。

誤り認め「続編」配信

例えば昨年9月に配信した「東京オリンピックのエゲツないボランティア募集について」という動画。

当初、宿泊費・交通費が自腹だった東京五輪ボランティアの募集要項を「奴隷急募のお知らせ」と批判。その上で、そうした予算計画を作った「お偉いさん方も給料もらいませんよね?」と指摘しました。

翌10月に「続編」として別の動画を配信します。その中で「前の動画でお前らも無給で働け!的なことを言うてもうたけど、アレはちょっと俺も言いすぎた。ゴメン!」と謝りました。これについてせやろがいおじさんに聞いたところ、動画に対して「働いた分はもらっていいと思うけど」というコメントがあり、確かに「無給で働け」よりも「みんな適正な額をもらおう」のほうがメッセージとして建設的だと思った、と言います。

1本目の動画についたコメントを見ると、好意的なものがほとんどでした。それでもそうしたコメントの数ではなく、自分が採り入れるべきだと考えた意見に対して、せやろがいおじさんは、想像以上に謙虚な気持ちで向き合っていました。

今月に配信した競泳の池江璃花子選手が白血病と診断されたことを受けて、白血病患者のためにどんなことができるかを主張した動画でも、間違いの指摘を受けたとして、修正した動画を再アップしています。

原稿に数時間、撮影後にボツも

動画をアドリブで作っている、とよく勘違いされるそうなのですが、実は、1本の動画で話す内容を考えるのに数時間かけています。

「僕の情報が間違っていて、その動画が拡散され、結局デマの発信源になるのは避けたいし、僕の考えが偏っていて、差別を助長するようなことになったらすごく嫌だなと思っている」

原稿を書いているときも、動画を撮影しているときも、自分の意見について自問自答。撮影後にやはりおかしいとお蔵入りにしたものもあるそうです。

「最低限の下調べはします。でも『こいつの言っていること、矛盾あるな』と指摘されるのはしかたがないし、僕の意見が全て正しいということではないので、僕も勉強しながらという気持ちでやっていますね」

ツイッターで動画の内容の間違いを指摘されることもありますが、謝りがある場合は素直に認め、「今後も勉強しながら発信する様努めますので、今後ともご指摘&お付き合い宜しくお願いします」などとツイートをしています。

自分への批判に対して論破しようという人が多い、ネットの世界において、かなり珍しい対応です。

「批判されたら、ウッとなりますよ、ウッって」と笑顔を浮かべつつ、せやろがいおじさんなりの批判との向き合い方について教えてくれました。

批判とどう向き合う?

「批判は3つに分けられます」

「ただ、文句を言いたいだけの人、本当に僕の間違いを指摘してくれる人、指摘してくれるけど汚い言葉の人、この3つです」

「それを仕分けし、ただ悪口を言いたいだけの人は完全にスルーで気にしない。指摘してくれる人に対しては間違っていました、と謝ることもあります」

「3つ目の汚い言葉で指摘する層が一番敵というか、敵というと言い方は悪いのですが、戦う存在という感じで。いろんな批判を仕分けしながらやっています」

一つ一つの批判を冷静に見極めて対応するせやろがいおじさん。「ネット上のコメントはすべて罵詈雑言」と、ひとくくりにするのではなく、正しい指摘を素直に受け入れ、柔軟に自分の意見を変えていき、さらに議論を深めていく謙虚な姿勢が見て取れます。

そんな姿に、ネット上での議論の深め方のヒントがあるように感じました。

一方で、そもそも芸人が社会問題をなぜ語るのか、と聞かれることも多く、本人の中にも迷いがあったそうです。


「芸人×社会問題」の可能性

「漫才コントは笑いの力で、純粋に笑いだけを目的としてやっている。でも難しい話題を取っつきやすくする手段として、笑いを使うのも、笑いの力です。ただ、笑いを目的としたコント漫才も続けていく。そこはみんなに見てほしい」

同時に、今では芸人が語るからこその可能性を感じていると言います。

「せやろがいおじさんをやるようになり、いろんな人と出会いました。僕の動画で笑いながら、そのことを知れたとか、笑って言ってくれてすっきりしたとか。LGBTのことを言ったときは、生きづらさが解消されました、という意見をいっぱいもらいました」

「こういう新しく出会った人の期待に応えられるように、せやろがいおじさんとして今やっていることも取り組んでいきたいなと思い、なんとか自分の中で折り合いをつけています」

朝日新聞社でマスコミを斬る!

せやろがいおじさんへの取材は朝日新聞本社で行いました。

せっかくなら取材だけでなく、いまのメディア業界をいつものあの調子で一刀両断してもらいたい。そう思い、おそるおそる相談したところ、快く引き受けてくれました。

いったいどんな斬り方をしてくれるのかと思っていたら……オフィスを走り回って大声で叫び、仕事中の記者にちょっかい出し、寒空の屋上で思いっきり跳びはねる。いつもの動画そのままの「暴れっぷり」でした。

撮影の合間に自身のスマホを何度ものぞき込む姿がありました。そこには数時間かけて書いたという今回の原稿がありました。冷静な頭で考えた原稿に、熱い思い込めて叫ぶせやろがいおじさんの活動の一端に触れ、周りの意見に耳を傾けながら、日ごろ思ったこと、感じたことを構えすぎずに発信していこうと思いました。

外部リンク

cat_oa-rp53487_issue_349af2de3996 oa-rp53487_0_6af9f7953e62_おじいちゃんがツイッター開設! 発明品「方眼ノート」の解説がカワイイ 今度は自ら発信、早くもバズった 6af9f7953e62

おじいちゃんがツイッター開設! 発明品「方眼ノート」の解説がカワイイ 今度は自ら発信、早くもバズった

2019年2月21日 07:00 withnews

 2016年の正月に話題になった「おじいちゃんの方眼ノート」。特許をとったものの数千冊の在庫を抱えていた手作り商品が、突然ツイッター上で拡散して完売しました。そんなノートを作り続けている町工場の社長が先日、ツイッターアカウントを開設。今度は75歳になった自らがノートの魅力を発信しようという試みで、早くも注目を集めています。
>>【画像】これが「方眼ノート」。水平に開くのでコピーやスキャンの時に黒塗りにならず、ギリギリまで書ける

1分48秒の動画

 「はい、あの~ 今日は水平開きノート、マスコミの方では『おじいちゃんのノート』というかたちでもって、ある程度知られるようになりましたノートのことについて、ちょっとご紹介させていただきます」

 2月19日、そんなセリフから始まる1分48秒の動画がツイッター投稿されました。

 登場するのは、東京都北区にある中村印刷所の社長・中村輝雄さん(75)。手にしているのは、自社の製品「水平開き方眼ノート(ナカプリバイン)」です。

 コピーやスキャンの時に真ん中に黒塗り部分が入らず、見開きのギリギリまで書き込むことができるノートで、特許も取得しています。

 初々しくて手作り感満載のこの動画。「ほのぼのする」「おじいちゃんの可愛らしい商品説明に惹かれて、たった今注文しました」といったコメントが寄せられ、リツイートは9千、いいねは2万を超えています。

こんなノートです

 このノートが最初に注目を集めたのは2016年の正月。中村さんと一緒に開発した男性の孫娘のツイートがきっかけでした。

 当時は、特許も取得して性能は評価されていたものの、数千冊の在庫を抱えてたころ。

 「使ってもらえば、良さがわかってもらえるのに」と考えていた男性が、孫娘に「これ、学校の友達にあげてくれ」とノートをまとめて渡しました。

 受け取った孫娘は「学校じゃ、あんまりノート使う人いないしなー。そうだ、ツイッターでやりとりしてる絵描きさんとか喜ぶかも」と思い、ツイッターにノートのことを投稿。

 すると、使い方を指南してくれたり、今すぐ買える量販店を教えてくれたり、多くの人たちがコメントを寄せてくれて、拡散しました。

 その後、ネットメディアや新聞、テレビに取り上げられて在庫は一掃。一気に人気商品になり、銀行からは融資の申し出まで来ました。

 2017年には、「ジャポニカ学習帳」で知られるショウワノートとコラボしたノートも発売されています。

なぜ今ツイッターを?

 そんな中村さんが1月下旬、中村印刷所のツイッターアカウントを開設。さきほどの動画は、このアカウントで投稿されたものです。

 いったいなぜ、このタイミングでツイッターを始めたのか? 中村さんに尋ねるとこんな答えが返ってきました。

 「記事が海外にも翻訳されて、直接うちにノートを買いに来る外国人の方がいらっしゃるので、iPadを買ったんです。せっかくだから、他にも何か使えないかとツイッターを始めました」

 投稿の中身は、検品作業の様子などノートに関するものだけでなく、天気やNHKの朝ドラなどさまざま。

 「年甲斐もなく始めましたが、いたって大まじめにやってます。自分が映っている動画は家族に撮ってもらってるんですよ」と照れくさそうに話します。

 早くも話題になったことについては「今回の動画で、はじめてノートのことを知ったという方も結構いらっしゃいました。これからもどんどん発信していきたいです」

外部リンク

cat_oa-rp53487_issue_349af2de3996 oa-rp53487_0_402a8d55398d_禁止から一転、「シャウエッセン」がレンジ調理を解禁した理由 商品自体は従来のままで…日本ハムに聞いた 402a8d55398d

禁止から一転、「シャウエッセン」がレンジ調理を解禁した理由 商品自体は従来のままで…日本ハムに聞いた

2019年2月20日 07:00 withnews

 日本ハムのウィンナー「シャウエッセン」のレンジ調理が“解禁”されたことが、ネット上で注目を集めています。これまでパッケージ裏面に控えるよう注意書きがあったのに、なぜ一転したのか? 製法や味に変化はあったのか? 日本ハムを取材しました。
>>【画像】レンジ調理法はこちら。本数やワット数で目安時間が異なる。解禁前後の裏面の注意書きの比較も紹介

ホームページで宣言

 日本ハムが15日、ホームページ上でこんなコメントを出しました。

 ◇ ◇ ◇

 シャウエッセンは、手のひらを返します。

 私たちは心配性なあまり、これまでシャウエッセンのレンジ調理を、おすすめしてきませんでした。

 それどころか、加熱し過ぎて破裂してしまうことを恐れ、「禁止」さえしておりました。

 (知らない方も多いかも知れませんが……)

 しかし、今はカンタン調理が求められる時代。

 世の中の時短ニーズをうけ、繰り返し、繰り返し、テストした結果、加熱時間の目安を定め、ついに「解禁」することになりました。

 しかも、レンジ調理は、脂が閉じ込められるため、濃厚でおつまみ向き。

 というボイルとはまた違った、おいしい発見も。

 「禁止」から「解禁」へ。

 心配し過ぎたがゆえの、急な手のひら返しを、お許しください。

 レンジでもおいしい! シャウエッセンが、一皮むけました。

 (……こんな大胆に宣言して良かったのかなあ……、また心配しちゃっています)

以前は禁止していました

 ツイッター上でこのコメントが紹介されると、「単身赴任のおじさんには感激のお知らせ」「普通にレンチンしてた」「でもやっぱりボイルして食べるのが好き」といったコメントが寄せられ、話題になっています。

 以前のパッケージ裏面を見ると、「皮が破れる恐れがありますので、電子レンジやオーブンでの加熱はお控えください」とあります。

 2月上旬から順次新しいパッケージに切り替わっており、「電子レンジの場合」という項目が追加され、ウィンナーの本数やワット数に応じた目安の調理時間が記されています。

解禁の狙いは

 シャウエッセンは発売から35年目を迎えたロングセラー。シェアの2割近くを占める人気商品ですが、購入者の過半数が50~60代だといいます。

 レンジ調理解禁の背景には、時短ニーズに加えて、より手軽に調理できることを若年層にアピールする狙いもあるようです。

 解禁にあたって商品は従来のままで、このための改良などはしていません。何度も調理時間を検証して目安を記したそうです。

味に違いは

 他の調理法と比べて、味に変化はあるのか? 日本ハムのマーケティング推進部の担当者はこう説明します。

 「シャウエッセンのおすすめの調理法は『黄金の3分ボイル』ですが、ひと口食べるとあふれてくるおいしい『音』、たしかな『食感』、とびだす『旨み』をレンジ調理でも味わうことができます。脂が閉じ込められやや濃厚な味わいなため、特におつまみ向きです」

 話題になったことについては、こう話します。

 「単に電子レンジ調理OKという打ち出しではなく、『シャウ・レンチン!』というワードを強く打ち出し、禁止していた調理方法を『手のひら返し』と表現しました。レンジOKという情報がお客様にとって有益な情報なので話題になったと認識しています」

外部リンク

cat_oa-rp53487_issue_349af2de3996 oa-rp53487_0_d51fc4ecf90c_小学生が「認知症」を体験……その時、教室で起きたこと「いつも通り、普通に生きているだけ」 d51fc4ecf90c

小学生が「認知症」を体験……その時、教室で起きたこと「いつも通り、普通に生きているだけ」

2019年2月20日 07:00 withnews

 認知症の人の視点を小学生が体験したら? 「階段の段差がわからへん」「おばあちゃんこんな気持ちやったんやな……」。そして「いつも通り生きてるだけ」。仮想現実(バーチャルリアリティー=VR)の最新技術を使った教室では、予想外の小学生らしい発見がありました。(朝日新聞記者・金澤ひかり)


>>【画像】幻が見える、段差が分からない…認知症VR動画で見える景色

6年生40人が体験

 VRで認知症を体験したのは、大阪市立大空小学校の6年生40人です。 授業では、まず、大阪市北区社会福祉協議会のコミュニティーソーシャルワーカー2人が認知症について説明しました。
  講師の山本久美子さんは「最近の子ども達は、認知症という言葉は知っているものの、核家族化で同居している家族が認知症になるという経験が少なく、自分ごととして認知症を捉える機会が減っています」。そんな子供達にはまず、「認知症」自体を正しく理解してもらい、その授業を受けたという経験を持ってもらうことに主眼を置きたいとのことでした。


【〈認知症〉
 厚生労働省研究班によると、65歳以上で認知症の人は2012年時点で約462万人。いくつかのタイプがあり、記憶障害が典型的な症状の「アルツハイマー型」が最も多く、7割近くを占める。脳出血など脳血管障害が原因の型が2割ほど、幻視などを伴う「レビー小体型」が4%ほどとされる。高齢化で25年には高齢者の5人に1人の700万人に増えるとみられている。65歳未満で発症する若年認知症の人も09年発表の厚労省調査で推計約3万8千人いる。――朝日新聞デジタル特集ページ「介護とわたしたち」(http://www.asahi.com/national/eldercare/)】

「みんなも欲しいもの、何度も繰り返すでしょ?」

 山本さんの話の中で、特に子どもたちが反応を示したのは、山本さんが「みんなはクリスマス前には、何度も欲しいものをお父さんお母さんに伝えない?」と聞いたときでした。
 子どもたちは山本さんの問いに大きくうなずき、その続きに耳を傾けました。

 「みんな、大切なことだったり、言ったか不安になったりするときに、何度も同じことを言いますよね。認知症の人も同じです」と山本さん。

 「ほかにも、認知症の人は、さっき食事をとったのに忘れてしまって、またごはんを食べたいと言うこともあります」と話すと、一人の児童が「質問!」と、すっと手を挙げました。
 
「忘れてしまうなら、記録しておけばいいんじゃないですか?」
 
 山本さんは少し考えてから「みんな、宿題やろうと思っているときに『宿題やりなさい!』と言われたり、頭ごなしに言われたらカッとするでしょう?誰でも決めつけて言われるのはいやなものです。決めつけずに、まず聞いてほしいなと思います」

 山本さんは、講義を通して「認知症の方がいたら、手助けをしてほしい」と何度も繰り返し伝えました。



ハコスコを手にわくわく

 認知症の人への接し方などを学び、さあVR体験です。

 子どもたちは「なあ、VRって知ってる?」とわくわくした表情。
 段ボールの箱に、VR動画を映し出すスマートフォンを設置した「ハコスコ」を両手で持ち、音声ガイダンスに沿って3分程度のVR動画を見ます。


 認知症VRでは三つの体験ができます。
 (1)自分のいるところが分からなくなり道に迷う
 (2)階段を降りようとするが高低差が分からない=空間認識の欠落
 (3)自宅のリビングに見えるはずのない女の子が見える=幻視症状

 子どもたちはハコスコをのぞき込みながら、口々に「高さがよくわからなくない?」「歩きにくい」「みえないはずのものが見える」などと感想を言い合っていました。


認知症の曽祖母の「つまずき」理解した

 階段を下りる体験をしたある児童は「そらおばあちゃんもつまずくわ」と口にしました。授業を見学にきていた、その児童の母親によると、児童は認知症の曽祖母(98)と同居しています。最近は自宅で、「よさそうなお店やな」と、実際にはそこにいないはずの友人とお茶会をしていたり、夜中にトースターでパンを焼いたりしているそうです。
 児童の母親は「登校前、息子は『今日は絶対行かなあかん』と本人が言っていました。学びたいという意識があるんだなと感じました。今日の学びも踏まえ、おばあちゃんが楽しい日々を過ごせるようにこれからもサポートしたい」。


「寄り添い、相談に乗れるように」

 このほかにも、児童からは「VRで階段を下りる体験をしたけど、高さがわからなかった。リアリティーがあって、認知症の人の気持ちが分かった」という声や、「VRでは(道に迷っている場面で)急に後ろから呼ばれて怖かった。認知症の人に寄り添ったり、相談に乗ってあげたりしたいと思った」という感想が聞かれました。


認知症の人、どういう思いで生きている?

 VR体験後、子どもたちは数人ずつのグループに分かれ、「認知症でつらい思いをするのは誰だろう」「困っている認知症の人がいたら何ができるだろう」「認知症の人はどんな思いで生きていると思う?」という三つのテーマで議論し、発表しました。
 子どもたちの感想で目立ったのは、「認知症の人はどんな思いで生きていると思う?」の問いへの答えでした。

 「いつも通りに生きている」「いつも通りだから、普通に接してほしい」「割と楽しく生きている」などと、認知症の人の生活は特別大変なことではなく、普通の生活だという視点での発表が多くありました。

 98歳の認知症の曽祖母がいる児童の母親は「大人だと大変だと思うことを子どもはそうはそうは思わないのかもしれないですね」と話します。以前、児童に「おばあちゃん何回もおんなじ話をしてくるね」と話しかけたところ、「何回も答えたったらええやん」と返事が返ってきたときにも、そう感じたそうです。

 講師の山本さんは「子どもたちからは、高齢者の感情を汲み取った意見が多くあったように思います」。


意外だった「普通に生きている」

 子どもたちの授業後、私も認知症VRを体験をしましたが、確かに階段の段差がわからないし、自分がどこにいるのかもわからず不安になる気持ちを体験することができました。
 だからこそ、授業を受けた子どもたちは「認知症の人は困りごとがあって大変だから手伝ってあげたい」という感想を持つだろうと思っていました。しかし、多くの子どもたちが口にしたのは「認知症の人も普通に生きている」というものでした。さらに、一歩踏み込み、「普通に生きているけど、できないことがあるので手伝ってほしい」というものもありました。

 同じ社会に生きる「普通」の人たちが、どうすれば「普通」のまま生きていけるのかを考えていく姿勢を、子どもたちに教えてもらった気がします。


◇   ◇   ◇

 今回の授業は「認知症フレンドリーキッズ授業」として、朝日新聞厚生文化事業団が実施した出前授業です。今回の大阪市立大空小学校での授業が初めての試みで、4月から大阪市内を中心に展開していく計画です。

外部リンク

cat_oa-rp53487_issue_349af2de3996 oa-rp53487_0_14005c955d43_DeNA守護神「遠ーい」と語る練習場、移動に人柄 ハマの番長は… 14005c955d43

DeNA守護神「遠ーい」と語る練習場、移動に人柄 ハマの番長は…

2019年2月19日 10:49 withnews

 2月はプロ野球の春季キャンプが、各地で行われています。沖縄県宜野湾市でキャンプを張る横浜DeNAベイスターズは、今年からブルペンとサブグラウンドが遠くなりました。守護神も「遠ーい」とつぶやくほど。そこで移動に採り入れられたのが、レンタサイクルです。あえてママチャリの選手や「ハマの番長」は唯一、自前の自転車を使うなど、移動にも選手・コーチの人柄がにじんでいました。(朝日新聞スポーツ部記者・井上翔太)

>>【画像】移動にレンタサイクル 使い方に見えるDeNA選手の人柄

自転車に乗ってブルペンを離れる山崎康晃投手

記者のツイートに守護神も反応

 これまではメイン球場の右中間後方に、ブルペンとサブグラウンドはありました。しかし現在は、新しい室内練習場の建設工事が行われています。

 宜野湾市によると、完成予定は今年10月。その後、様々な検査を経て、実際に使われ始めるそうです。

建設中の新しい練習場=2019年1月30日撮影
 では、新しいブルペンとサブグラウンドはどこに?

 答えは、投手陣がランニングなどをする芝生「多目的広場」のさらに向こう側です。メイン球場のネット裏から、直線距離で約300メートル、歩くと4分ほどはかかります。

 私が下見などでキャンプ地を訪ねた1月30日、ツイッターでこれを紹介しました。すると抑えの山崎康晃投手から返信が…。実際に移動したとみられる動画が、「ブルペン遠ーいですね」というコメントとともに、届いたのです。


ルールは「余っていれば使う」

 そこで、練習中の移動手段に選手が使っているのが、球団が用意した「レンタサイクル」です。

 ただ、すべての選手に1台ずつ割り当てられているわけではありません。選手向けのスポーツバイクが10台ほどの他、球団職員用のママチャリも10台弱。1軍キャンプに参加している投手は19人。ブルペンで投球練習をするときは、3人の捕手もやってきます。

 計22人が「余っていれば自転車を使う」という運用。時として、自転車が足りなくなる場合があります。

ずらりと並ぶ選手向けのスポーツバイク

あえて歩くルーキー、器用に乗る選手も

 東洋大から昨秋のドラフト1位で入団した上茶谷大河投手は、ブルペンで投げ終わった後、自転車が余っていたのに、芝生を歩いていました。新人だから、気を使っているのか「先輩のために残しているの?」と聞くと、首を縦に動かしました。

 その後、再びブルペンに向かう時に聞いてみると「荷物があるので、乗ると危ないと思って」。確かに、このときはシャドーピッチングのため、グラブとスパイク、タオルを持参。両手がふさがっていました。

ブルペンで投げ込むドラフト1位入団の上茶谷大河投手
 ただ、スポーツバイクには、かごが付いていないのに、上手に乗りこなす投手もいました。上茶谷投手と同学年の5年目、飯塚悟史投手です。
 
 その手法は、両方のスパイクをハンドルに履かせるように装着させるというもの。どんな状況でも臨機応変に対応する力は、プロでのキャリアの長さたるゆえん?

 他にはグラブとスパイクを片手で持ちながら、ハンドルを握る投手も。手が大きいプロ野球選手ならではの操作法です。

撮影時はスパイクを履いたままだった飯塚悟史投手。「自転車に乗ってるときの写真は恥ずかしいです」

あえて「ママチャリ」も

 戸柱恭孝選手は、スポーツバイクに乗らず、あえてママチャリを使っていました。

 マスクなど、投手以上に荷物が多い捕手は、前かごがあった方が安心のようです。ただ、行きも帰りもプロテクターとレガースの防具は着けっぱなし。その姿は、何ともシュール。

 カメラを向けると「お、朝日新聞さん、いいの撮れましたか? 使ってくださいよ」と明るく話しかけられました。使ってますよ~。

防具を着けてママチャリで移動する戸柱恭孝選手

自分用にストックする選手も

 使い方は、人それぞれ。

 雨が多かったキャンプ前半、国吉佑樹投手は自転車で移動していたところ、泥はねで背中が汚れてしまったそうです。そのため雨のときや、水たまりがあるときは、歩いて移動していました。

 話を聞きながら並んで歩いていると、自分用の1台を室内練習場のそばにあるテントに隠していた三嶋一輝投手が、追い越していきました。その背中には、はねた泥がいくつも付着していました。

芝のぬかるみなど関係なく自転車で移動する三嶋一輝投手

「番長」だけ自前

 整ったリーゼントから「ハマの番長」と呼ばれ、今季から投手コーチに就任した三浦大輔投手コーチだけが唯一、自前の自転車を使用。黄緑色の1台は、他のスポーツバイクと並ぶと目立ちます。

 取材する立場としては、そのとき三浦コーチがどこにいるのかの目印になって、大変ありがたい存在です。

黄緑色の自転車で疾走する三浦大輔投手コーチ
 ちなみにブルペンの近くに止まっていた自転車が黄緑色だけだったとき、山崎康晃投手が乗ろうとしていました。

 これは、もちろん冗談。笑みを浮かべながら、とことこと歩いて引き上げていきました。

外部リンク

cat_oa-rp53487_issue_349af2de3996 oa-rp53487_0_16dc6b0c848e_母親が「教祖」になる恐怖…石田ひかりさんと元ギャルモデルが語る育児の本音 「ワンオペ状態」にモヤモヤ 16dc6b0c848e

母親が「教祖」になる恐怖…石田ひかりさんと元ギャルモデルが語る育児の本音 「ワンオペ状態」にモヤモヤ

2019年2月19日 07:00 withnews

 ギャルママモデルを経て、3児の母になった日菜あこさんと、中学生の2人娘を育てる俳優・石田ひかりさん。ともに「ワンオペ」育児を経験しました。モヤモヤとした思いを抱きながら、周囲にSOSが出せない母親を、どう笑顔にできるのか? 母親が「教祖」になる瞬間。ママ友とのちょうどいい距離感。仕事をしながら子育てをする2人が、本音で語り合いました。(編集・構成=withnews編集部・神戸郁人)
>>【漫画】「構え!」と叫ぶ、ご飯投げる…赤ちゃんとの関係、恋人に例えると?漫画から伝わる育児の過酷さ

どうして、ママが制服を?

 日菜さんは福岡県出身。20歳の時に長男を、20代半ばで長女と次女を出産しました。2009年から約5年間、ギャルママ向けファッション雑誌「I LOVE mama」(休刊)で専属モデルを務め、現在は子どもたちとの日常をブログで発信しています。

 そんな経験から、孤立しがちな若い母親を対象に、育児について学べるセミナーを開催したそうです。どうやら、ちょっと変わった趣向なようで……。


石田さん「今は子育て支援のプロジェクトを進めているそうですね。何でも、昨年はセミナーを開いたとか」

日菜さん「若いママたち向けの『ママ高』ですね。出席者には、高校生風の制服を身につけてもらいました」

 ママ高は昨年9月~同年末まで、毎月1回開かれ、26~36歳の10人が参加しました。講義以外にも、観光地へ遠足に行ったり、子育ての悩みを共有できる場を設けたりしたそうです。

 それにしても、なぜ制服を着るのでしょうか?実は、深い理由があるといいます。

日菜さん「私は『子育てアドバイザー』という民間資格を持っていて、育児のやり方や心構えを研究しています。講演会で、子どもとの関わり方などについて語ることもあります」

「同時にママたちから、子育てに関する相談を受けることも、少なくありません。彼女たちは、とてもまじめで一生懸命です。だからこそ疲れ切っていて、いくら知識を詰め込んでも意味がないと、あるとき気づいたんです」

 参加者の中には、10代や20代前半で子どもを授かり、年相応の楽しみを経験出来なかったという人も。そこで日菜さんは「制服を着ることで、ママではない自分を解放して欲しい」と考えたのだそうです。

石田さん「日菜さんも、早くに子どもを産んでいますね。自分の経験が生かされている部分はありますか?」

日菜さん「はい!実は昔、「子どもが子どもを産んで」などと批判されたことがあるんです。すごくショックで、誰かに子どもを預け、買い物や遊びに出かけるなど、とても出来ませんでした」

「『自分は楽しんではいけないんだ』という思いが強く、息が詰まってしまうこともありました。だからこそ、先輩ママとして力になれるのでは、と思ったんです」

 月に一度の集まりで元気になれるなら、人の手を借りたっていい――。日菜さんが、ママ高で伝えてきたことです。どんどん服装がおしゃれになるなど、目に見えて明るさを取り戻すお母さんも多かったといいます。

「子育てはほめられないもの」

 日菜さんの言葉に触発され、石田さんも自身の育児体験を語り出します。

石田さん「私は31歳の時に長女を産みました。初めての経験で、当然分からないことだらけです」

「母からは『あせもができたら大変よ』と言われていたので、娘が起きるまでずっと側にいました。目を覚ますと、夜中であってもお風呂に入れるなど、毎日必死でしたね」

「ただ、夫は仕事の関係で生活が不規則なため、あまり頼れなかった。母に手伝ってもらうなどして、何とか乗り切れたものの、精神的にきつい時期もありました」

 一方の日菜さん。夫と育児に関する考え方が異なり、やはり1人で子どもと向き合う時間を、多く過ごしていました。モデル時代は3人の子どもと、地元の福岡から上京し、撮影に臨んだといいます。

日菜さん「育児は『やって当たり前でしょ」と思われがちで、他人に認められないことが多いんです。でも撮影の時だけは、「可愛いね、すてきだね」とほめてもらえた。石田さん同様、仕事が息抜きになっていましたね」

石田さん「分かります!それに、子どもと自分だけの世界って、すごく狭い。小さいうちは口答えもしないので、母親が絶対的な権力を持ってしまう瞬間があります。

「いわば『教祖』みたいなもの。その状況が怖いのもあり、徐々に仕事を再開し、社会とつながるようにしました」

日菜さん「子どもと離れる時間を持った方が、逆に優しくなれますもんね」

「ママ友」をつくる意義

 ともに「ワンオペ」状態の育児を経験した2人。行き詰まった時に救いとなったのは、「ママ友」の存在だと口をそろえます。

 石田さんは、娘たちが幼稚園に通っていた頃、よくママ友の手を借りていました。仕事で家を空けている間、園への送り迎えを頼んだり、一緒に遊んでもらったり。他のお母さんたちと触れあう機会にもなり、心身両面で助けられたそうです。

石田さん「仲の良いお母さんの中には、子どもがパンツをはき忘れてきても、おおらかに笑って済ませてしまう人もいたんです。私なら気が気でなくなるだろうから、すごくうらやましかった(笑)。全く違う性格のお母さんと知り合えたのは、とても良かったですね」

日菜さん「すてきな話……!私も、育児に苦労している人と話して、共感してもらえた時は本当にうれしかったです。悩みが解消しなくても、分かってもらえるだけで良いんですよね。ママ友がたくさんいると、子どもとの向き合い方について、学べる機会も増えますし」

「一方で、距離感も大事だと思います。『ママ高』のメンバーたちは、元々私が契約していた雑誌のファンでした。居住地が違うため、幼稚園の事情や、互いの夫の年収といった生々しい話をする必要がありません。だから、楽しい時間だけ共有する関係が築けたんです」

 日々言葉を交わす人、限られた時間しか会わない人。それぞれの立場に応じて、打ち明けられることがあります。選択肢があることで、お母さんの気持ちは楽になるのでしょう。

「早く終わらないかな」を「いつか終わってしまう」に

 対談終盤、話題は育児の方法論に。日菜さんは「心でする育児」というスタンスを大事にしている、と語りました。

日菜さん「私は育児をする時、必ず『大好きだよ』という気持ちを込めています。そうすると、「作業」になりがちなおむつ替えも、優しく出来るようになりました。これを『心でする育児』と呼んでいます」

石田さん「その言葉について、別のインタビューで『子どもに優しく出来ない時は『この子を一番大切にするんだった』と思い直している』という趣旨のことおっしゃっていましたよね?私自身、その発想は頭になかったので、すごく響きました!」

日菜さん「ありがとうございます!一番手っ取り早く改められるのは、やはり自分の構え方なんですよね。子どもが泣きやまない時、その顔をじっくり見て、意外と面白い表情をしているのに気づけた時もあります(笑)。気持ちが変わると、楽に生きられることもあるんです」

石田さん「気持ちと言えば、『早く子育てが終わらないかな』ではなく、『この時間はいつか終わってしまう』と思えたら、もっと楽に過ごせたのに……とよく考えます」

日菜さん「とてもよく分かります!私の息子は明るい性格で、小さい頃は騒がしい時もあり大変でした。でも当時の動画を見ると、声が高くて可愛い(笑)。今は声変わりしているから、なおさら。いつか聞けなくなると意識していたら、うるさいなんて思わなかったです」

石田さん「その気持ちを社会全体で共有できると、もっと良いですね!」

日菜さん「おっしゃる通りですね。電車の中で泣いている子どもを見て、「今しかない、成長中の姿なんですね」と感じてくれる人が増えたら、すてきだと思います!」

安心して命をつなぐために

 育児中のお母さんが置かれる状況は、生やさしいものではありません。一人でわが子と向き合う中で追い込まれ、虐待につながるなど、悲しいニュースもあふれています。

 2人の会話には、お母さん自身の暮らしに役立つヒントが詰まっていると感じました。同時に、当事者たちを取り囲む人々の眼差しこそが変わっていくべきとも思います。

 早い段階で親となったり、人混みで乳飲み子を抱えていたりする男女に、たくさんの温かい手が差し伸べられる。そんな社会でこそ、安心して命をつなぐことが出来るのではないでしょうか。

 子育ての負担や喜びを、多くの人々と分かち合う環境をつくるには、何が必要か。私自身、しっかり考えたいと思わせてくれる対談でした。

(神戸郁人)

外部リンク

cat_oa-rp53487_issue_349af2de3996 oa-rp53487_0_9eca493dc9e1_はじける笑顔で「自殺防止」ポスターへの違和感 制作者に狙いを聞いてみた「正解はない、でも……」 9eca493dc9e1

はじける笑顔で「自殺防止」ポスターへの違和感 制作者に狙いを聞いてみた「正解はない、でも……」

2019年2月19日 07:00 withnews

 生きるのがつらいな、と思ったとき、目の前にどんなポスターがあったら「相談してみよう」という気持ちになれるでしょうか。「ひとりじゃないよ」とキャッチコピーがついたポスターに違和感を感じた大学院生の「むしろ自殺したさが増す」とのつぶやきが、昨年末、ツイッターで話題になりました。ツイートの反響から見えてきたものとは。そして、ポスター制作者の狙いはなんだったのでしょうか。(朝日新聞記者・金澤ひかり)
>>【画像】劣等感や同調圧力感じる人も……。最新のポスターはどうなっている?

駅でみかけたポスター「むしろ自殺したさが増す」

 話題のツイートは、大阪府立大学大学院で不登校の子どもたちの権利保障などについて学んでいる石田まりさん(ツイッターアカウントは「むらさき」@12resw) です。

 昨年12月、過去に駅でみたポスター写真を紹介し、「笑顔がまぶしくて…自分の感性的には…むしろ自殺したさが増すようなものばかりなのは…なぜだ…」とつぶやきました。

 「このツイートをした時点では違和感を言語化できていなかった。ただおかしいと何げなく投稿しただけだったんです」と石田さん。リツイートは2万1000件を超え、多くの声が寄せられました。思わぬ反響に多さに「とにかく驚いた」と話す石田さん。その反響を読むうちに「言語化できていなかった違和感の正体」が少しずつはっきりしてきたと言います。

違和感の正体は

 「まず、キャッチコピーの『ひとりじゃないよ』という言葉は、一人をよしとしない社会を象徴しているように思いました。それに、『自分はひとりなんだ』という劣等感を促進させてしまうと思ったんです」
 「さらに、写真の舞台は学校です。学校にいづらくてしんどいと感じている子もいるのに。モデルの子が笑顔なのも、『笑えない状況なのに…』と思わせてしまいます。グループを写していることも疑問です。みんなが同じ表情をしていることが同調圧力を感じさせ、『みんなの輪に入らないと』という圧力と同時に、『入れない自分の孤独感』を感じさせてしまいます」

 一方、反響の中には「ポスターの何がいけないのかわからない」「気にしすぎているからしんどいんだ」という意見もありました。

 「様々な意見があっていいと思います。ただ、このポスターをみてしんどいと感じる人がいることは事実です。それに鈍感になってはいけないし、声の大きな人が、繊細な人の感じ方を抑圧するようなことがあってはいけないと思います」


ポスターは関西1800の駅に

 ポスターを制作したのは、悩みを抱える人に向けた相談窓口を開設している「NPO法人国際ビフレンダーズ大阪自殺防止センター」です。毎週金曜日午後1時~日曜日午後10時まで電話相談を受け付けている団体で、昨年3月にはLINE相談も実施しました。10代からの相談は、電話では1割、LINEでは9割程度あるといいます。


 大阪自殺防止センターの所長で、相談業務を担うメンバーの一人、北條達人さん(32)によると、今回話題になったポスターは、外部の広告会社に委託し、2016年から作り始めたシリーズだといいます。ポスターは現在、鉄道20社の協力を得て関西の約1800駅に掲示されているといいます。


制作者「いま悩んでいるわけではない人の頭の片隅に」

 「多くの人の目にとまってほしい」との思いから、ポスター制作の大前提には、「鉄道駅に貼ってもらえるものを作る」という目標がありました。
 そのため、ポスター制作の初期から、話し合いには鉄道会社の担当者に入ってもらい、積極的に意見を採り入れました。

 「当初は、相談者側の目線で悩みや苦しみの葛藤を表現した文言であったり、誰かの背中を映したデザインだったり、というものも候補にありました」と北條さん。一方で、通勤通学などで様々な背景を持つ人が利用する特性のある鉄道会社からは、「直接的すぎてショッキングな内容、深刻な表現は避けてほしい」「心温まる表現をお願いしたい」などの意向があったといいます。
 「それなら、いま自殺を考えている人に相談先を伝えるという目的だけではなく、いま悩んでいるわけではないけど『こんな相談先があるんだ』と頭の片隅に残るようなポスターにしよう」と目的を設定したそうです。

 今回、ネットで話題になったポスターには、良い印象を持たないという意見が多くありました。北條さんは、「ツイッターでの意見もちゃんと見ています。全て採り入れられれば理想ですが、『これが正解だ』と結論づけるのは難しいと思っています。これからも模索を続けていきたいと思っています」と話します。


自殺防止ポスターの案を募集

 ポスターへの疑問を提起した石田さんは、ネットでの反響を受けて「#理想の自殺防止ポスター」というハッシュタグを作り、意見を募りました。このタグをつけた投稿には、手の写真とともに「そっと差し出される手を描いてほしい」というものや、「心が病んでいるときは人の顔が怖いから、人の顔がみえないもの」というものもありました。

 「みんなが自分の意見を発信できる環境があることこそが、いいなと思いました」


不登校、トリガーは給食

 石田さんは小学校3年から中学卒業まで、ほとんど学校に行かず、高校は定時制を選びました。「学校に行けなくなった理由はたくさんありますが、通底しているのは『自分で決めていないことを強制されるのが嫌だった』ということです」

 小学生の頃はそこまで意識していなかったものの、入学したときに「たまたま同じ地域に生まれただけなのに同じクラスに詰め込まれている感じがとても不思議だなあ」と感じたといいます。
 「同世代が苦手。みんながわいわいしているところに入っていくことができず、劣等感もうまれました」

 不登校の決定打になったのは給食でした。偏食かつ小食だった石田さんは、小学3年生の時に無理やり食べさせられる給食が苦痛で、給食の時間を避けて登校するようになり、そこから徐々に学校から足が遠ざかるようになりました。


「普通になりたかったのになれなかった」

 中学では「普通になりたい」と、環境を変えようと決めます。小学校時代の知り合いがいない環境を求め、私立中学に進学。短かった髪の毛を伸ばし、服装もそれまでとは一転、かわいらしいものを選ぶようになりました。しかし無理は続かず、2学期から学校には行けなくなりました。

「普通になりたかったのになれなかった」

 石田さんはこの頃が一番しんどかったと話します。「普通を目指したのになれなくて、なれなかった自分がすごく悔しくて。『もう生きたくない』と思った」

 「死にたい」と書いた紙が母親にみつかり、怒られ、泣かれ…。「この社会が向いていない。学校にも行けないし、私はだめ人間だからこれからもしんどい人生が続くだろう。それなら…」と考える日々だったと言います。



いまも生きづらさ、続いているけど

 「いまも生きづらさは全然あります」と石田さん。障害のある弟の存在が、自分が生きる理由になっていると話してくれました。
 
 そんな日々を経てきた石田さん。「これが正解という自殺防止ポスターはない」と話しますが、あえて聞いてみました。
 「むらさきさんはどんなポスターなら相談ができると思いますか?」

「心のセーフティーネット」があってこその相談

 「ゆるさが大事かな。キャッチコピーは『気が向いたら連絡してみて』とか。癒やしのあるゆるキャラとかに登場してもらったりするのもいいかもしれません」

 ただし、相談に至る前には「安心感」が必要だと石田さんは話します。

「私は『心のセーフティーネット』といっているんですが、しんどい状態の人が、その状態から『相談する』という行為をすることは、ステップが高すぎる。いきなり『相談してね』と言われたって、そもそも死を考えるほど辛い人に、相談するエネルギーはないと思う。どうなっても大丈夫だという安心感があってこその相談ではないでしょうか」


模索続ける姿勢、同じ

 しんどさや、生きづらい気持ちを抱える10代に相談先を届けようと始めた「#withyou」プロジェクト。常に「どんな情報や表現なら、しんどい人たちに届くだろうか」という悩みを抱えていました。
 今回の取材でも、同様の悩みにぶつかっている人々の姿がありました。ツイッターで問題提起した石田さんも、大阪自殺防止センターの北條さんも、「どうすれば伝わるか」を考え、あらゆる提言を否定することはありませんでした。
 万人に受け入れられる表現を探ることは困難で、答えがない問いです。ただ、様々なところで「しんどくなったら相談してほしい」と願い行動している人たちがいるということが、つらい思いを抱えているあなたに届いてほしいと思っています。


◇ ◇ ◇

【#withyou ~きみとともに~】
withnewsでは、生きづらさを抱える10代に向けた企画「#withyou」を続けています。いろんな生き方、いろんな相談先があります。「#きみとともに」もつけてツイッター( @withnewsjp )などで発信しているので、みなさんの生きづらさも聞かせてください。

外部リンク

cat_oa-rp53487_issue_349af2de3996 oa-rp53487_0_9e3a66b1e8c6_わんこそば? いえ「にゃんこそば」です! 猫の日まで限定、売り上げの一部を寄付 仙台のそば屋に聞いた 9e3a66b1e8c6

わんこそば? いえ「にゃんこそば」です! 猫の日まで限定、売り上げの一部を寄付 仙台のそば屋に聞いた

2019年2月19日 07:00 withnews

 仙台市のそば店で提供されている「にゃんこそば」が、ネット上で注目を集めています。「猫の日」である22日までの限定で、売り上げの一部は猫の保護活動に取り組んでいる団体に寄付されます。かつて保護猫だった2匹を育てているという店の女将に話を聞きました。
>>【画像】まかない版「にゃんこそば」はこちら。女将の愛猫仕様で、白猫なのでトロロ、鼻は魚肉ソーセージに

そば食堂やぶ信で提供

 仙台市青葉区にある「そば食堂やぶ信」。そこで2月2日から22日まで提供されているのが「にゃんこそば」です。

 具材を使って猫の顔を表現したそばで、耳は笹かま、目はうずらの卵、口元はさつま揚げやニンジン、ひげはネギが使われています。

 実際に食べたという人が写真をツイッターに投稿すると、「ダジャレにもなっていて最高」「可愛くて食べられない」といったコメントが寄せられ、話題になっています。

今年で2回目

 「昨年に続いて今年で2回目なんです」と話すのは、やぶ信の女将・菊地真理さんです。

 店の親方・義信さんと一緒に、かつて保護猫だった茶トラのビッカと、白ネコのニーナを育てているという真理さん。

 猫の保護活動を応援しようと、お店で音楽イベントを開催したこともありましたが、「常連のお客様にも活動のことを知ってもらう方法はないか」と、にゃんこそばを考案したそうです。

 「ポイントはひげを立たせて、猫のやる気を表現しているところです。目の部分のうずらに海苔を使うなどして、ランダムに表情を変えることもあります」

お値段は税込み750円

 かつお節と煮干しも付いて、お値段は税込み750円。売り上げの一部は猫の保護活動に取り組んでいる団体に寄付するそうです。

 にゃんこそばが話題になったことについて、真理さんはこう話します。

 「楽しく食べて、それがボランティアにつながります。ぜひ気軽に食べてください」

外部リンク