石黒エレナ、インタビュー(2) レースクイーンをめざす、あなたへ
もくじ
ー RQの責任、そしてその意味とは
ー レースチームの中におけるRQ
ー 2年間のレースクイーン経験で得たもの
RQの責任、そしてその意味とは
現在、モデル・キャスターなどタレントとして活躍している石黒エレナさんのインタビュー第2回目は、2013〜2014年の2年間に渡って活躍していたレースクイーン(以下、RQ)時代を振り返り、彼女自身が考えるRQの仕事と本質を語ってもらう。そこには表面的な華やかさとは異なった世界があったようだ。
スーパーGTの場合、キッズ・ピット・パドックウォーク、レース中においてもステージイベントや物販などあらゆる場面でRQの姿を見ることができる。
写真撮影に応じたり、お客さんにスマイルを振りまいたりと、なにかと「男臭い」サーキットを華やかに彩る彼女達だが、その華やかさや存在自体にも、もちろん意味がある。

その意味とRQの存在意義とは、石黒さん自身の言葉で語っていただこう。
「RQというお仕事自体はスポンサー様の名前を背負って、スポンサー様やチームと皆さん(お客さん)との懸け橋となり、RQを通してファンになってもらったり、名前や商品を広めるための存在だと思っています」
「初音ミクもレイブリックさんの時も、RQだからフワァーっと軽い感じで動いているのではなくて、RQそれぞれが個々で責任を背負って、スポンサー様やチームを周知してもらうために場面場面で動く。そういう意識が強い方に囲まれていたので、すごく大事なお仕事だなというのは、自分でも感じていました」
「たとえばステージイベントの『ギャル・オン・ステージ』では、レース好きの方はもちろん、週末にちょっとレースを見に行こうという感じで来たいただいたお客さんにも、チームを良く知ってもらうために事前に女の子同士でトークの内容を相談するんです」
「チーム名やゼッケン、監督や選手の名前などはもちろんですが、それ以上の魅力をどう伝えるかを考えていました」
レースチームの中におけるRQ
広告塔として、チームの中では直接お客さんに対することが多いRQという仕事。彼女が所属していたチームでは、イベントや物販、来客の対応などでレース期間中、ほとんど休憩の時間も取れないほどだったという。
「今思うと何をしてたのか細かく思い出せないほど、怒涛の2日間でしたね(笑)」
スポンサー・チームをアピールするために、主に外に向けて活動を行うRQ。では、チーム内での関係性はどんなものだったのだろうか?

「初音ミクの時は、ドライバーが谷口(信輝)さんと片岡(龍也)さんで、走るお笑い芸人って言われているくらいだったので、チーム全体が和気あいあいとして、仲が良かったですね。移動や空き時間には、いろいろな話もしましたし」
「ただ、レース中はシリアスな状態なので、ドライバーさんとは一切話しをしなかったですね、レース中は、ピットに入ることがあってもエンジニアさんの邪魔にもならないように。360°目を配って、かなり気を使っていました」

「エンジニアさんにちょっとでも『そこどいて』と言われるようなことがあったら、その子の非といいますか、そんなこと自体は起きてはいけないことだと思っていましたから」
「もちろんチームにもよりますけど、RQはアピールの方の仕事ですから、レースでは絶対に邪魔にはならないように心がけていました。そういう意味では、皆さんが思っているような、華やかなキラキラしたお仕事ではないですよね」
「RQ同士はひと見知りだったりとか、最初は壁を感じることもありましたが、1年間もありますし、自然と仲良くなってしまいますね。先ほど言ったスポンサー様/チームをアピールする役割ですから、ギスギスした関係では1年間やっていけませんし」
2年間のレースクイーン経験で得たもの
楽しい思い出を語る際の笑顔とは異なり、真剣な表情で「RQとは?」という質問に答えてくれた彼女。その真剣な表情からは「仕事」に対する真摯な想いを知ることができた。
正面から仕事に取組み、チーム・スポンサーの広告塔として過ごしたRQの2年間。石黒さんにとって、何を得た2年間だったのだろうか。そしてその2年間で得た経験から伝えたいこととは?
「人生経験の中でためになった2年間でしたね。(RQをやらなければ)人生で絶対に触れないようなことなどを経験させていただき、身になったという感じ。華やかと思っていたRQの仕事はスポンサー様の名前を背負っている以上、実は責任重大な仕事なんだということも実感できましたし」

「これからRQを目指すなら。華やかな面だけではなくその仕事をしっかり理解したうえでそれでもやってみようという、そういう女の子が増えてくれればいいと思います。もし、スポンサー様などが何もいわなくても、彼女自身でそうして欲しいなと思いますね。チームの一員として。写真を撮られる時も、たとえばなぜコスチュームのここにRAYBRIGのロゴが入っているのかをわかったうえで頑張って欲しいですね」
石黒さんのRQとしての2年間のエピソードから感じられるのは、スポンサーなどの広告塔として外に向けてアピールするという、役割を全うするプロ意識の高さ。その経験は、現在の企業や商品をアピールするというモデルでの仕事でも役立っているという。
次回はRQの話題を離れて、現在の石黒さんの仕事に対する想い、そして自分自身について語ってもらうことにしよう。
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特別色と極上の内装 「FペイスSVRジャパンSVエディション」 試乗で見つけたジャガーらしさ
ビスポークを選ぶという贅沢
執筆:Ohto Yasuhiro(大音安弘)
馬車の時代から、富裕層によって乗り物は、自己表現の1つであった。
【画像】FペイスSVRと、ジャパンSVエディション【比べる】 全62枚
それは富や権力の象徴でもあるため、裕福なオーナーたちは競うように豪華な馬車をオーダーした。それを請け負ったのが、専門のコーチビルダーである。
その後、自動車の誕生により、高級車のニーズは馬車から自動車へとシフトしていき、彼らのボディ作りのノウハウは自動車のボディ製造に活かされるようになる。
その頃の高級車の製造は分業制であり、シャシーとパワートレインを自動車メーカーが行い、ボディはコーチビルダーが担っていた。
このため、顧客は自由に好みのスタイリングを持つクルマを手にすることができた。高級車とは完全フルオーダーの「ビスポーク」が基本だったのである。
ジャガーの創業者であるウィリアム・ライオンズは、元々は、サイドカーの製造を手掛けていたが、その経験を活かし、会社を自動車ボディのコーチビルダーへと発展させていく。つまり、ビスポークこそが、ジャガーの原点ともいえるのだ。
最新ジャガーのラインナップも、豊富なオプションが用意されており、顧客の好みに合わせた1台を作り出すことが可能だ。
しかし、今や高級車も大量生産の時代である。豊富なオプションを備えるジャガーと言えど、限界はある。その限界を取り払うビスポークに特化した部門が「SVO(スペシャル・ビークル・オペレーションズ)」なのだ。
「ジャパンSVエディション」とは
ジャガーFペイスSVRの最大の特徴は、508PS型と呼ばれるエンジンにある。
電動化シフトの今、マルチシリンダーエンジンは希少。さらにピュアエンジンとなれば、フィナーレを迎えている段階だ。
しかも5.0LのV8エンジンに加え、スーパーチャージャーをドッキングさせているのだから、贅沢この上ない。ランドローバーよりも、早く電動化シフトを掲げるジャガーにとっては、まさに最後の晩餐といえる。
因みに、フルモデルチェンジが発表されたレンジローバー・スポーツは、新型では、V8エンジンがBMW製の4.4L V8ターボに切り替わるため、おそらくSVRも、このエンジンがベースとなる可能性が高い。ピュアジャガーエンジンとしてのV8は、Fタイプと同モデルのみとなっているだけに、カーガイにとっては極めて価値のある1台といえよう。
その実力は、最高出力550ps/6500rpm、最大トルク71.4kg-m/3500rpmと圧倒的。ガソリン及びディーゼル共に、2.0L 4気筒ターボに統一された標準仕様車と比べると、パワーは2倍以上、トルクはディーゼルの1.6倍にもなる。まさにモンスターSUVだ。
しかし、今回の主役である「SVR」は、さらに一味違う。
SVOが、日本のジャガーファンのために、腕を振るい、特別なカスタマイズを加えた「SVRジャパンSVエディション」なのだ。
つまり、SVOが専門とする高性能化と専用カスタマイズの魅力が一気に味わえるという贅沢さ。その象徴が4色のボディカラーであり、これらはSVビスポークチームと連携して設定され、全てが日本初導入色となる。
各色は5台ずつのみとなるため、SVRの希少性に輪をかけてレアだ。
インテリアとサウンドが最上級
試乗車は、「ワカモレ」というアボカドを使ったサルサ(ソース)をモチーフとしたボディカラー。高性能SUVにおいしそうな色が使われているのは、ちょっと面白いところ。
もちろんインテリアもアップグレードが図られており、ウィンザーレザーを使った最上級のもの。
装備についても、22インチの鍛造アルミホイール、ピクセルLEDヘッドライト、ヘッドアップディスプレイ、パークアシスト、スライディングパノラミックルーフ、MERIDIANサラウンド・サウンドシステムを追加するなど抜かりはない。
2016年に日本上陸を果たしたジャガーFペイスだが、2021年モデルで内外装の大幅アップデートを実施した。特にセンターディスプレイは、大型のタブレットデザインとなったのが印象的なポイントだ。
SVRの武器であるV8エンジンは、スターターボタンを押す瞬間から、クルマ好きを快楽への道へと誘う。重厚なエンジンサウンドは、どんな音楽よりもドライバーを高揚させてくれる。
この独特のサウンドは、失われてしまう前にぜひ味わっておくべきだろう。従来同様にドライブモードセレクト「ジャガードライブセレクター」が装備されており、ダイナミックモードを選択すると、アクセルレスポンスやシフトタイミングなどが、スポーツ走行モードに切り替わる。
エンジンだけじゃない ジャガーらしさがある
さらにSVRには、フラップ内蔵のエグゾーストシステムが装備されるため、エンジンサウンドもより刺激的に変化する。因みに従来のATシフトに使われていたダイヤル機構は、新たなドライブモードセレクターとして継承されている。
試乗時はあいにくの雨模様のため、V8の加速力を試すのは控えたが、それでも滑らかに吹け上がるエンジンと力強い加速は、快感のひとこと。もう一歩、踏み込みたい誘惑に駆られる。
もちろん、エンジンが独り歩きすることもなく、ステアリングや足回りも、SVRならではの走りが楽しめるようにチューンされていることを感じる。
意外だったのが、その走りに、ジャガーらしいしなやかさを持ち合わせていることだ。
以前のFペイスは、標準車を含め、強固なボディを活かすハードな足回りの印象が強く、スポーティなキャラクターが重視されていた。
しかし、最新のFペイスは、スポーティさを守りつつ、ジャガーらしい懐の深さを感じる滑らかな走りが味わえるようになった。
これはSVRの味付けというよりも、Fペイスの熟成が進んだためと考えられる。
SVスペシャリストセンターが日本へ
ジャガーにとって新境地だったSUVも、いよいよジャガーネスを実現できるようになったのだろう。天候によりSVR特有の魅力を存分に味わうことこそ叶わなかったが、Fペイスの進化による魅力に気が付けたことは、大きな収穫であった。
日本専用にアレンジしたFペイスSVRを見て、SVRに惹かれただけでなく、自分だけの特別なFペイスを手にしたいと考えた人もいるのではないだろうか。その夢を叶える環境作りも着々と進行中だ。
ジャガーとランドローバーでは、SVOの手掛けるモデルを専門に扱う「SVスペシャリストセンター」を全世界で展開してきた。それが2022年より日本でも導入されることになったのだ。
まずは5大都市+αとなる全国の8拠点に限定されるが、そこではSVモデルの展示車及び試乗車が用意され、SVの専門家が常駐。SVモデルに対する顧客のニーズに応え、ビスポークモデルなどのプレミアムサービスを提供するとしている。
少し英国が近く感じられるような特殊かつ贅沢なオーダーシステムの導入が、日本のクルマ好きたちにどのような喜びを提供してくれるようになるのかも、注目していきたい。
FペイスSVRジャパンSVエディション スペック
価格:1646万円
全長:4755mm
全幅:1960mm
全高:1670mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
車両重量:2130kg
パワートレイン:4999ccV型8気筒スーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:550ps/6500rpm
最大トルク:71.2kg-m/3500rpm
ギアボックス:8速オートマティック
乗車定員:5名
駆動方式:四輪駆動
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もう少し快適なら尚良 シトロエンC4 ピュアテック155へ試乗 クロスオーバーの3代目
155psの1.2L 3気筒ターボガソリン
3代目シトロエンC4が登場したのは、2020年。それ以前は一般的なハッチバックだったが、最新版ではクロスオーバー風の見た目へ一新されている。
【画像】新型シトロエンC4 欧州の競合クラス・クロスオーバーと写真で比較 最新C5 Xも 全119枚
AUTOCARでは既に昨年、新しいC4へ試乗している。その時は、ピュアテック130のシャイン・プラスと呼ばれる上級グレードだった。130psを発揮する1.2L 3気筒ターボガソリン・エンジンに、8速オートマティックが組み合わされていた。
今回試乗したのは、同じシャイン・プラスというグレードながら、ピュアテック155。同じエンジンを搭載するが、最高出力は155psと、よりパワフルに味付けしてある。
ピュアテック130と155の違いとしては、0-100km/h加速が9.4秒から8.5秒へ短くなることが1番かもしれない。一方で燃費は若干悪くなり、15.6-17.3km/Lがうたわれる。
また、英国価格は130より約1000ポンド高くなる。残価設定の月払い額は増えるものの、3年後の残存価格は500ポンド(約8万円)高い。
もしシトロエンに積極的な走りを求めるなら、追加費用を支払う価値はあるだろう。しかし、古くから手頃な価格で快適性や洗練性を優先してきたフレンチ・ブランドであることを考えれば、穏やかな130でも充分に思える。
快適性は過去のシトロエンに迫れていない
以前に3代目シトロエンC4へ試乗した時は、独特の落ち着いた雰囲気と、良好な燃費効率、長距離移動を安楽にこなせる特徴などを評価している。だが、その能力を充分には発揮しきれていないことにも触れられている。
プロダクトとしての洗練性は高いものの、シトロエンらしい快適性や外界との隔離感はいまひとつ。運転の質感を高めるはずのドライブモードなどの技術は、動的なプラスにはなっていないとまとめられていた。
今回ピュアテック155へ試乗した印象も、概ね同じといえる。控えめのドライビングスタイルなら、多くのライバルモデルより快適に運転できることは間違いない。だが、過去の理想にまでは迫れていない。
ハイドロニューマチック・サスペンションを採用していた50年前のシトロエンが存在していなければ、納得できたかもしれない。だが現在のC4のプログレッシブ・ハイドロリック・クッションは、柔らかいものの、それに匹敵する滑らかな路面処理を得ていない。
従来のC4カクタスよりは良い。とはいえ、不自然にボディロールを抑え込むより、フォルクスワーゲン・ゴルフのように適度にコシのある乗り心地の方が、筆者好みでもある。
一方で、ある程度スピードが増すと、ステアリングフィールがドライバーに自信を抱かせる。イメージとは違うかもしれないが、悪くはない。雲に浮かんだような乗り味とは少々異なる。
8速ATは、いまひとつやる気に欠ける。変速はもう少しクイックで良いだろう。
エンジンや車内空間など褒めたい点も多い
気になる部分を並べてしまったが、3代目シトロエンC4には褒めるべき点も沢山ある。まず、3気筒ターボエンジンが素晴らしい。
日常的に必要な能力を、不足なく発揮してくれる。カタログ値通りの力強さを備え、燃費も良好だ。サウンドも耳障りではない。ピュアテック・ユニットは過去数年間、エンジンオブ・ザ・イヤーを掴んでいないけれど。
加えて、手頃な価格も魅力的。主なターゲットとなる若いファミリー層も喜ぶ、フォード・フォーカスと同等の設定に英国では抑えられている。
リアシート側の空間も広々としており、実用性も高い。リアハッチを持ち上げれば、ベビーカーと大きな買い物袋が余裕で収まる荷室空間が広がっている。リアのサイドウインドウも、C4カクタスとは違ってしっかり開く。
スタイリングも悪くないと思う。個性的でありながら、近年のクロスオーバー人気にしっかり乗れている。これでもう少し動的な質感や印象が磨かれば、より良いのだけれど。
シトロエンC4 ピュアテック155 シャイン・プラス(欧州仕様)のスペック
英国価格:3万385ポンド(約507万円)
全長:4360mm
全幅:1800mm
全高:1525mm
最高速度:207km/h
0-100km/h加速:8.5秒
燃費:15.6-17.3km/L
CO2排出量:133-145g/km
車両重量:1299kg
パワートレイン:直列3気筒1199ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:155ps/5500rpm
最大トルク:24.4kg-m/1750rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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英国最古の老舗メーカー、モーガン 生産台数「倍増」目指す 若者を取り込む新事業戦略とは
伝統的な自動車メーカーに「転機」
モーガンの新CEOであるマッシモ・フマローラ氏は以前、ランボルギーニでスペシャル・プロジェクトの責任者を務めていた。英国企業のトップに移って数週間、ロンドンにある旗艦店舗でAUTOCARの独占インタビューに応えてくれた。そこで彼が語ったのは、モーガンの今後の方向性についてだった。
【画像】クラシカルなデザインに心惹かれる【モーガンの現行モデルを写真で見る】 全105枚
フマローラが最も重視するのは、モーガンの真正性を「確実に」維持し、そのユニークな価値と特性を増幅させることである。モーガンの精神もまた、より広い範囲に浸透させる必要がある、と彼は言う。次に優先すべきは、会社が成長するためのあらゆる機会を見つけ、生み出すことだ。「これまでの遺産は保険ではありません。将来のために良い計画を立てなければなりません」
モーガンは現在、年間約800台を生産しており、人気モデルの3ホイーラーが販売終了した昨年も、680台という輝かしいセールスを記録した。その70%は海外に輸出され、70の市場に流通する。その中でもフランス、ドイツ、米国が最大の市場である。
5年後には年間1500台規模への成長を目指しており、フォード製エンジンを搭載した新型モーガン・スーパー3(3ホイーラーの後継)の登場も、事業拡大のための布石だと捉えている。
三輪車のスーパー3は、四輪車よりも各市場の規制に適合しやすいため、特に米国での成功のチャンスを秘めている。モーガンのベストセラーになるのも、そう遠くないだろう。
このように生産台数が現在の倍近くに膨れ上がる可能性があるため、工場と人員の大幅な増強が必要となる(新しい塗装工場がまもなく稼働開始予定)。そして何より、モーガンの経営陣交代もその大きな理由の1つである。
冒険的なライフスタイルブランドへ
モーガンを所有するイタリアのプライベート・エクイティ企業インベスト・インダストリアル社は先月、これまで同社の「生え抜き」であるスティーブ・モリス氏が務めてきた会長兼CEOの役割を分割すると発表した。モリスは会長の座につき、新たにフマローラ氏がCEOとして経営責任を負うことになったのだ。
金属加工の見習いとして英ウスターシャー州の工場でキャリアをスタートしたモリスは、これまで会社の経営にあらゆるレベルで深く関わってきた。車種が増え、投資額が増加し、設備と人員の充実、そして電動化が進むにつれて、戦略的な思考が必要になってきたとモリスは言う。
フマローラはエンジニア出身で、大手OEMや少量生産の高級車メーカーで30年のキャリアを持ち、自身の強みとして「国際的な経験」と「世界市場に対する理解」を挙げている。フィアット、FCA、アウディ、フェラーリ、ランボルギーニなどではマーケティング業務に携わることが多かったという彼は、次のように語っている。
「当社の製品は、若い世代を惹きつけることができると確信しています。伝統もいいですが、もっと冒険的なライフスタイルのブランドにする機会もある。オーナーが自らそう言ってくれているのです」
いずれにせよ、新CEOの就任で、モーガンの戦略が改めて検討されることは明らかだ。まだ結論は出ていないが、少なくとも「複数の重要課題」が議論の焦点になるだろうというのが、2人の意見だ。
さまざまな課題 ブランド価値守れるか
1つ目の課題は、モーガンに第3のモデルが必要かどうか、あるいはいつごろ必要になるかを見定めること。現在、プラス・フォーとプラス・シックスは、その類似性から1つのモデルとして分類されている。
2つ目は、EV時代に向けた新たなパートナーシップの構築と、BMWとのエンジン供給契約など既存の提携関係の見直しである。
3つ目は、いつどのように電動化に移行し、米国や一部の極東地域など変化の遅い市場向けにいつまでICEモデルを製造するのか、ということであろう。モーガンはすでに、既存モデルの電動化をほのめかす発言をしているが、ハイブリッド化とEV化のどちらを検討しているのかは明らかでない。モーガンは最近、最高技術責任者(CTO)としてマシュー・ホール氏を採用し、新しい電動化部門のトップに据えている。
フマローラはさまざまな会社を渡り歩いてきたが、これまでもずっとモーガンが大好きだったそうだ。「モーガンの一番好きなところは、クルマがオーナーの生活の質を大きく向上させてくれるところです」と彼は言う。
「ビッグブランドには、どこかよそよそしいところがあります。素晴らしいクルマを持っていても、誰もがそのクルマについて話せるわけではありません。モーガンに乗っていれば、誰も距離を置く必要はないのです。当社のクルマを運転することで、喜び、自由、友情、そして楽しさを得ることができます」
デザインにも大きな変化?
モリスとフマローラがせっせと設計しているモーガンの未来計画には、4年前にその概略が明らかにされた「新時代」モデルも含まれているようだ。
ジョン・ウェルズ率いるデザインチームが構想したこのモデルは、デザインの時代性を従来より20年ほど進めて、ジャガーEタイプのような1960年代のスタイルへと移行させるものだ。
当初、このモデルはプラス・フォーやプラス・シックスと同じアルミニウム製「CX」プラットフォームを採用するとされた。2025年頃に登場し、価格はアストン マーティン・ヴァンテージに近いとも言われていた。
しかし、時代は変わった。このモデルはEVとして登場し、高騰するバッテリー価格に見合った新しい価格体系を導入するというのが現実的なシナリオだろう。今のところ、モーガンはこのプロジェクトについて口を閉ざしており、スーパー3を最優先すると明言している。
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スズキから最高出力432psのハイブリッド・スポーツカー! バイクエンジン搭載のコンセプト公開
ハヤブサのエンジンに電気モーターを組み合わせ
スズキは、家庭用ゲームソフト『グランツーリスモ7』向けに、革新的なハイブリッド・パワートレインを搭載したコンセプト「ビジョン・グランツーリスモ」を導入した。
【画像】見て楽しい、走って楽しいスズキのクルマ【スイスポやジムニーを写真で見る】 全93枚
オープントップの2シーターで、スズキの二輪部門と四輪部門の技術を融合した、ユニークな四輪駆動スーパースポーツカーだという。スポーツバイクのハヤブサに搭載されている最高出力190psの1.3L 4気筒エンジンを搭載している。
スズキのバイクエンジン搭載車は、2001年のGSX-R/4コンセプト以来だ。
さらに、3基の電気モーターを組み合わせ、総合出力は432ps/9700rpm、最大トルクは62.2kg-mに向上している。エンジンのパワーは後輪に、3基の電気モーターのうち2基のパワーは前輪に供給される。
バーチャル空間で楽しむスーパースポーツ
インテリアでは、操縦桿スタイルのステアリングホイールの両脇にデジタルミラースクリーンが配置され、ドライバーに大きくフォーカスしたコックピットデザインとなっている。
また、「最先端の軽量化技術」を駆使し、970kgという軽量化を実現した。
スズキは次のように述べている。
「スズキ・ビジョン・グランツーリスモは、ブランドのスポーツマインドに溢れた四輪駆動のスーパースポーツとして、伝説の名車GSX-R/4を最新の技術で蘇らせたVGTです。スズキが贈るピュアスポーツの世界をぜひお楽しみください」
このクルマは現在、『グランツーリスモ7』の5月26日のアップデートにより配信されている。市販車につながるものではないが、将来採用される可能性のあるデザインや技術が示されている。
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走行中のEVに、ワイヤレスで給電 山梨県など産学官5者が世界初「電界結合方式」で実験へ
もう1つの非接触充電 実証実験へ
執筆/撮影:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)
山梨県、甲斐市、学校法人 日本航空学園、富士山の銘水 株式会社、および富士ウェーブ 株式会社は、産学官の5者連携で、世界初の「電界結合方式」によるEVワイヤレス走行中給電の本格的な実証実験を開始する。
【画像】「電解結合方式」の説明図と実験詳細【解説図】 全6枚
事業の開始に際し、2022年5月25日に都内で事業発表および協定式が行われた。
ワイヤレスによる電力伝送技術は、日常生活の未来を創造する可能性を秘めており、今回のEVをはじめ家電・住宅やロボット分野への応用も期待されている。
山梨県では、富士山の銘水グループで、ワイヤレス給電の研究や技術を活用した製品開発・製造・販売を行っている富士ウェーブが2021年2月に県内に設立されたことを契機に、ワイヤレス給電の技術に着目した。
同年11月には国立大学法人 豊橋技術科学大学を含めた連携協定を締結するなどの取り組みを進めてきた。
EVのワイヤレス給電方式は、停車中に行えるものや、走行中に行えるものでは「磁界結合(電磁誘導)方式」と「電界結合方式」が考えられ、それぞれ開発が進められている。
今回、富士ウェーブが開発した電界結合方式とは、舗装路面内にステンレスなどの金属平板を敷いて電気を流し、その上を車体の底面にアルミ板などを装着したEVが走行し、空間を隔てて対向する金属板の間で電力を伝える方式だ。原理的には、コンデンサーと同じものになる。
「磁界結合方式」との違い
つまり、EVはこの路面を走行するだけで充電が可能で、一般道なら20mくらい、高速道路なら40~50mくらいの間隔で電源を備える。
この方式は一般道だけでなく高速道路での使用も前提にしているので、EVの車速は100km/hでも走行中に充電することができる。
したがって、充電のための停車は不要となり、車載のバッテリー容量も最小限で済む。
また、急速充電が不要になることでバッテリーの充放電頻度は少なくなり、バッテリーの寿命も延びる。EV普及への貢献性は、きわめて高くなるというわけだ。
いままでの路面と車両にコイルを使う「磁界結合方式」では、コストや制御、そして安全性(路面に金属などがあると発熱する)などの問題から、実証実験や開発は滞っていた。
この「電界結合方式」は富士ウェーブが独自に開発したもので、安全性、省エネ、コストといった問題をクリアして、バッテリーEVが抱える課題を解決し、脱炭素社会における次世代自動車の決定版を目指す。
次世代の都市づくり 「山梨モデル」とは
具体的には、2022年6月から日本航空学園の敷地内に1周約500mの周回コースを設置し、実証実験を行う。
「電界結合方式」による大規模な実証実験は、世界初の取り組みとなる。実証実験用の電源は、当面は東京電力から供給されるが、将来的には太陽光発電などによる電源も予定されている。
これと並行して、2026年度までは、ワイヤレス家電開発&製造事業や、ワイヤレスハウス開発事業も行う。
2027年度~30年度には、山梨県内の各自治体と連携・協力しながら、脱炭素社会の実現に向け、ワイヤレス給電をコア技術とする「未来社会の実験場」として、山梨県内で次世代型都市づくりを行い、「山梨モデル」を確立する。
そして2031年度以降、山梨モデルを国内外を問わず世界に発信・事業展開し、世界中の脱炭素化や豊かな街づくりへの貢献を目指していく。
今回の協定式には、山梨県からは長崎 幸太郎 知事、甲斐市からは保坂 武 市長も出席した。
協定式にあたって、長崎知事は「この実証実験を契機に、新しい産業を山梨県に創出したい。そのための支援をしていく」、また「現在計画されている富士山登山鉄道にも、この技術は応用できるのではないだろうか」と語った。
保坂市長は、「日本のほぼ中央に位置する山梨県の、ほぼ中央に位置する甲斐市が、脱炭素社会の中心地となることを目指したい。甲斐市としても全力でサポートし、この技術が世界的に貢献できれば喜ばしいことだ」と語った。
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アルピナB3およびD3 S 新デザインに出力向上 最高速度300km/h超の改良新型、欧州発表
エンジン出力向上 内外装もリフレッシュ
アルピナB3およびD3 Sの改良新型が欧州で発表された。ベースとなるBMW 3シリーズのフェイスリフトに合わせ、出力向上、エアロダイナミクスの改善、デザイン変更、新しい車載システムなどを実装している。
【画像】動力性能とラグジュアリーな乗り心地の融合!アルピナB3/D3 S【改良新型を3シリーズや従来型と写真で比較】 全120枚
アルピナB3は、3.0L直列6気筒エンジンを搭載し、最高出力は495psと、改良前と比べて32ps向上している。トルクも3kg-mアップの74kg-mとなった。
0-100km/h加速はB3セダンで3.6秒、ワゴンボディのB3ツーリングで3.7秒とされている。最高速度は305km/h。
一方、アルピナD3 Sは、3.0L直列6気筒ディーゼルエンジンに、48Vスタータージェネレーターによるマイルドハイブリッドを採用。改良によりスロットルレスポンスと効率を向上させたという。
従来より5ps高い360psと、546kg-mftのトルクを発生する。0-100km/h加速は、D3 Sセダンで4.6秒、D3 Sツーリングで4.8秒。最高速度は270km/hで、燃費は17.4km/lを達成している。
両モデルとも、フロントとリアにエアロダイナミクスを向上させるパーツが追加されるなど、さまざまなデザインの変更が行われている。インテリアでは、14.9インチの曲面ディスプレイに加え、デジタルドライバーズディスプレイとBMWの第8世代iドライブが搭載されている。
欧州では現在予約は始まっており、価格はB3が8万8600ユーロ(約1200万円)から、D3が7万7050ユーロ(約1040万円)からとなっている。納車は10月の開始予定。
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最も安い欧州車 シトロエン・アミ、英国価格は約120万円 紳士の食指は動くか?
2人乗りのカジュアルな都市型EV
超小型EVのシトロエン・アミが、英国で7695ポンド(約122万円)から販売されている。英国の市販四輪車の中で最も安いモデルだ。
【画像】フランス産の超コンパクトな2人乗りEV【シトロエン・アミを写真でじっくり見る】 全54枚
アミは、デジタルメーター、前後LEDライト、パノラマサンルーフ、USB充電ポイントを標準装備している。一人乗りのアミ・カーゴも導入され、価格は7995ポンド(約127万円)から、積載スペースは400Lとなっている。
販売はオンラインでのみ行われる。シトロエンによると、アミを予約した「2000人以上」にまもなく連絡を取り、手続きを完了させる予定だという。今のところは予約段階にあるが、まもなく正式販売が開始される。
シトロエンは、装飾的なグラフィックなどを追加できるパーソナライゼーション・オプションを公開している。英国では、ジャングル、トゥッティ・フルッティ、ブリティッシュ・グローブトロッター、カモ、トライブ、トレンディの6種類の純正グラフィックが用意される予定だ。
また、フランス在住の購入者であれば、自分の撮った写真から炎やペットの絵といった特注デザインを作成することも可能。
アミはもともと英国で販売する予定ではなかった。しかし、シトロエンのマネージング・ディレクターであるユーリグ・ドルチェは、消費者からの熱心な要望を受けて、英国導入にゴーサインが出されたのだと語る。
「アミに対する反応は圧倒的で、もう『NO』とは言えない勢いでした」とドルチェ。
「アミは、単に人気のあるクルマというだけでなく、当社が考える未来の交通のあり方、つまり手頃な価格と使い勝手を体現しています。英国で販売することで、どんなマーケティング・キャンペーンも決して真似できないような方法で、その価値を伝えることができるのです」
スマホ感覚で購入? 新規顧客獲得に
左側通行の英国でも左ハンドル仕様のみが販売されるが、全幅1390mm、全長2410mmと非常にタイトなため視界が広い。英国の市場環境に合わせ、充電プラグの変更、ヘッドライトの調整、マイル/km表示のキャリブレーションなどが施されるが、それ以外はフランス仕様とほぼ変わらない。
アミは、その奇抜なデザインと小さな車体だけでなく、市街地や短距離での使用のみを目的とした性能も注目されている。最高速度は45km/hに制限され、航続距離はわずか74kmだ。英国では運転免許が必要だが、欧州の一部の国では14歳から運転できる。
シトロエンのヴァンサン・コベCEOは昨年、AUTOCARに対し、「アミの哲学は、携帯電話と同じくらい手頃な価格であることです」と語った。これまでの9000人の顧客のうち80%が新規顧客であり、50%がディーラーに足を運ばずに購入したという。
「当社にとって、このクルマは現在のシトロエンを表現する1つの手段であると同時に、新しいeコマース経済への道を開くものでもあるのです。学びのあるクルマです」
「今日のシトロエンは、手頃な価格でパーソナルモビリティを提供することを目的としています。もし、500kmの航続距離とオールラウンドな性能、完全な自動運転を求めるなら、ファミリーカーに10万ポンド(約1600万円)を支払う用意をしなければなりません」
「シトロエンはそれが正しい道だとは思っていませんし、それに代わるものを提供するための努力を惜しみません」
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前年比2倍も売れた! 急速にEVシフトが進む背景 日本はどうなる?
前年比「2倍」も売れた
2021年は2020年に比べて、EV(電気自動車)とプラグインハイブリッド(PHEV)が2倍売れた。
【画像】最近増えた「小さいEV」【4選】 全191枚
ついに、世界的なEVシフトが明確になったのか?
そんなふうに、多くの人が直感的に捉えられる数字がIEA(国際エネルギー機関)から発表されたのだ。
IEAとは、世界29か国が加盟する、エネルギー関連政策に関する諮問機関だ。
そのため、原子力発電施設の視察などについて報道される場合、IEAという名称を見たり聞いたりする人も少なくないだろう。
EVなど次世代車についても、IEAは市場動向や将来予測について報告書をまとめており、自動車メーカー各社やコンサルティング企業なども、IEAの予測値をもとに事業戦略を描く場合が多い。
その報告書である、「グローバルEVアウトルック2022」によると、2021年にグローバルで販売されたBEV(いわゆるバッテリーEV)とプラグインハイブリッド車の総数は約660万台となった。
これは2021年に比べて2倍という急激な伸びである。
さらに、報告書では直近2022年の販売実績にも触れており、最初の3か月(1~3月)で200万台も売っており、その後も引き続き販売が好調であり、2022年は2021年を超える販売実績になりそうだ。
また、EVとプラグインハイブリッド車のグローバルでの保有台数は2021年時点で1650万台に達したという。
予想より急激な立ち上がり?
なぜ、2020年から2021年にかけて、急激にEVとプラグインハイブリッド車がグローバルで売れているのか?
その詳細に触れる前に、まずはグローバルにおけるEV/プラグインハイブリッド車市場に関するこれまでの流れを振り返っておこう。
EVは、自動車産業全体としての創世記である1900年代前半からアメリカなどで販売が始まったものの、アメリカや欧州でのガソリン車開発が急速に進み、量産型EVは姿を消す。
1970年代になり、米国の排気ガス規制であるマスキー法の施行や、いわゆるオイルショックによるガソリン供給量不足やガソリン価格高騰などにより、EVに関する研究や実証試験が研究機関などで進むも、当時の電池やモーターの技術では走行性能がガソリン車と乖離していたため、この時点でも量産型EVは登場しない。
その後、欧州やアメリカで小規模な事業者が小型EVを販売したり、2000年代初頭にテスラが創業するも、販売台数はかなり限定的だった。
大手自動車メーカーによる、本格的な自社EVの生産は、2009年から2010年にかけての、三菱アイミーブと日産リーフが事実上、始めてとなる。
要するに、量産型EVが大々的に世に出てから、まだ10年ちょっとしか経っていないのだ。
販売増の背景には「中国」
2010年代初頭、IEAはもちろんのこと、さまざまな団体や企業が、EVの普及について予想を立てていた。
その振れ幅は極めて大きく、中には2010年代半ばから右肩上がりになるという予想もあれば、2030年近くまではハイブリッド車とプラグインハイブリッド車が主流でEVはまだ少数派というものまでさまざまだった。
では、さらに詳しく国や地域別でEV市場の動きを振り返ってみる。
最も大きな影響力を持ってきたのが、アメリカのカリフォルニア州だった。
1990年に施行されたZEV(ゼロエミッションヴィークル)規制法が、世界で唯一のEVに係る大規模な規制だった。
こうした状況が2000年代後半から変化していく。
中国の民主化政策により自動車の生産と販売が急激に伸び、それと同時に次世代車開発に対して中国政府が注力し始めたからだ。
そうした中、中国政府は上海万博や北京五輪などの国際イベントの開催と連動するかたちで、中国全土でまずは商用車や公共バスでのEV普及政策を実施した。
だが、結果的に普及台数が当初目標に達しない地域が多かったことなどから、この政策は事実上、終焉する。
これと並行するように、中国政府はアメリカ自動車技術会やカリフォルニア州政府と、中国版ZEV法に関する研究を進めていった……。
これから日本はどう出る?
それが現在のNEV(新エネルギー車)規制となった。
購入補助金制度や、ベンチャーへのEV関連事業への後押しを強化したのだ。
ここで、話をIEAの報告書に戻すと、2021年のグローバルでEV/プラグインハイブリッド車販売総数660万台のうちの半数の330万台は中国である。
さらに、欧州では前年比65%増の230万台となったが、これは欧州委員会が推奨する欧州グリーンディール政策による影響である。
つまり、中国と欧州だけで560万台に達しているのだ。
残りの100万台のうち、アメリカが63万台。
前述のZEV法に加えて、バイデン大統領が2021年8月、2030年を見据えたEVなど電動車普及に対する大統領令を発令したことが大きく影響した。
このように、EV販売増の背景には、国や地域での規制が色濃い。
一方、日本では現状で、日本自動車工業会をはじめとして、ハイブリッド車、燃料電池車、水素燃料車、そしてカーボンニュートラル燃料の活用など、カーボンニュートラルに対して全方位体制を敷く戦略だ。
国として、EVシフトを強調する規制に踏み出す用意があるようには思えない。
果たして、中国や欧州が主導するEVシフトがさらに急激に拡大するのか?
それとも、日本の考え方が社会のコンセンサスを得るための「ベーターな解決方法」になるのだろうか?
今後のEV市場の動向を注視していきたい。
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ホンダ新型「ステップワゴン」 価格/納期は? テストコースで乗って走って、分かったこと
ミニバンのフルモデルチェンジ続く
5月27日、フルモデルチェンジしたホンダ・ステップワゴンが発売される。「#素敵な暮らし」をグランドコンセプトに開発したという。
【画像】新型ステップワゴン 3タイプを比べる【詳細写真】 全155枚
大胆にデザイン変更されたエクステリアは、「自由」と「安心」を表現したといい、カタマリ感のあるシンプルなフォルムが特徴的。
フィットやシビックなどに通じる、最近のホンダのデザイン・フィロソフィが体現されている。さらにいうと、このシンプルさは初代ステップワゴンをオマージュしたそうだ。
特にサイドビューは無駄なキャラクターラインのない、面が強調されたデザインだが、ドッシリ感のある「樽型」にしたいとのことで、何とデザインのためにトレッドを拡大したという。
もちろん、これは操安性能にもプラスに作用する。
シンプル&クリーンな「エア」と、スタイリッシュな「スパーダ」の2タイプが設定される。
そして今回、全モデル3ナンバーサイズとなったのが大きなトピックとなる。
とはいえ、今年1月、ひと足先にフルモデルチェンジした最大のライバル、トヨタ・ノア/ヴォクシーも奇しくもすべて3ナンバーになったので、やはり新世代においてもガチなライバルとなる。
ガソリン/ハイブリッド 各々の特徴
パワートレインは2種類で、ホンダ独自の2モーター・ハイブリッドシステム「e:HEV」を搭載したハイブリッドモデルと、1.5L直噴VTECターボエンジンを搭載するガソリンモデル。
e:HEVモデルには、直列4気筒2.0Lエンジン(145ps/17.8kg-m)が搭載されるが、徹底したフリクションを低減することにより、熱効率の向上を図った。
モーター走行時には、低速域から高速域までモーター(184ps/32.1kg-m)ならではのトルクフルで滑らかな加速、そして車速に対するリニアな加速感を実現した。
一方、クルーズ時にはホンダ独自のシステムであるエンジン直結技術により効率の良い走りとしている。
そして、クランクの剛性を高める(肉抜き廃止/あご下肉盛り)ことにより、静粛性の向上も図られた。
ガソリン車に搭載される1.5Lエンジン(150ps/20.7kg-m)は、シビックのものと同じ型式だ。
エグゾーストやタービンが変更され、ターボチャージャーの過給応答を向上させ、トルクがより早く発生することで、爽快な加速を味わえる。また、ガソリンモデルには、AWD仕様も設定される。
変わる、3列目シートの位置づけ
ところで、ミニバンにとっては室内のパッケージングや快適性が重要となる。が、3列目シートに座って、何の罰ゲームか、と思ったことが幾度となくある。
“閉所恐怖症”で“乗り物酔いしやすい”という最悪の条件を備える個人的事情もあるとは思うが、イベント時の移動などでミニバンが用意された際も、私に限らず、やはり率先して3列目に乗りたがる人はほぼ見かけない。
そもそもスペースが狭く、前方視界も悪く閉塞感この上ない。
さらに、リアタイヤの真上に座っているからゴロゴロうるさいし、乗り心地も悪い。というのが車種問わずミニバン3列目シートの基本的印象だ。
しかし、朗報が!
今回のステップワゴン、3列目を含む室内空間の快適性が格段に向上している。
まず、乗り物酔いしにくい工夫がなされている。何ともユニークなアピールだが、乗員にとっては重要なポイントだ。
テストコース試乗 視界/乗り心地
フロントウインドウの上下部は水平なラインで、そこから左右に伸びるように、3列目シートまで、サイドウインドウが直線的なラインで囲まれている。
クルマの揺れによって酔うわけだが、人間には、水平なラインを見ると三半規管を補正する機能が備わっているそうだ。そしてこの視界確保のパッケージは、ただ今特許申請中とのこと。
シートアレンジもホンダの得意とするところだが、2列目シートが前後にロングスライドするだけでなく左右にも動き、カップルディスタンスも変えられる。
3列目シートが床下に収まりフラットなフロアになるのは従来のまま。
そして、3列目に座った時、ヒップポイントが1・2列目より高く、2列目シートの形状、さらには一番視界を遮っていたヘッドレストの形状も変えることで、開放的になった。
シートクッションの厚みも増しており、座り心地も良くなっている。
3列目はどうだった?
今回、ワクワクゲートはなくなり、通常のリアゲートが採用された。それにより、軽量化が図れたので消音材を入れることができ、3列目は静粛性も高まったのだ。
限られた環境ではあるが、新旧モデルの違いを実際に走行する中で各列シートに座って確認した。
中でもやはり3列目の快適性は格段に向上している。ドライバーとの会話も普通にできる静粛性の高さ。
ちなみに、マイクも設定されているが、80km/hまでは必要ないことを確認。視界の良さに加え、ボディもしっかりしているのでヨーの遅れによる“酔いそう”な動きも感じられない。
もう、3列目が罰ゲームだなんて言いません。
そして、ドライバーにとっても塊感のあるボディは運転しやすく、トレッドを広げながらも最小回転半径5.4m(エア/スパーダ:ライバルより0.1m小さい)という取り回しの良さも確認できた。
価格/納車時期について
執筆:AUTOCAR JAPAN編集部
新型ホンダ・ステップワゴンの価格は、下記のとおりだ。
同社ウェブサイトには、5月23日時点の工場出荷時期の目処は、ガソリン仕様が「4か月程度」、e:HEV仕様が「5か月程度」と記載されている。なお、販売計画台数は月販5000台。
納車までには、ホンダの工場出荷後、ディーラーへの輸送・納車準備の日数が加わることを覚えておこう。
◇e:HEV仕様 価格
e:HEVエア(FF):338万2500円(7名)/340万4500円(8名)
e:HEVスパーダ(FF):364万1000円(7名)/366万3000円(8名)
e:HEVスパーダ・プレミアムライン:384万6700円(FF)
◇ガソリンエンジン仕様 価格
エア(FF):299万8600円(7名)/302万600円(8名)
エア(4WD):324万600円(7名)/326万2600円(8名)
スパーダ(FF):325万7100円(7名)/327万9100円(8名)
スパーダ(4WD):347万7100円(7名)/349万9100円(8名)
スパーダ・プレミアムライン:346万2800円(FF)/365万3100円(4WD)