石黒エレナ、インタビュー(2) レースクイーンをめざす、あなたへ
もくじ
ー RQの責任、そしてその意味とは
ー レースチームの中におけるRQ
ー 2年間のレースクイーン経験で得たもの
RQの責任、そしてその意味とは
現在、モデル・キャスターなどタレントとして活躍している石黒エレナさんのインタビュー第2回目は、2013〜2014年の2年間に渡って活躍していたレースクイーン(以下、RQ)時代を振り返り、彼女自身が考えるRQの仕事と本質を語ってもらう。そこには表面的な華やかさとは異なった世界があったようだ。
スーパーGTの場合、キッズ・ピット・パドックウォーク、レース中においてもステージイベントや物販などあらゆる場面でRQの姿を見ることができる。
写真撮影に応じたり、お客さんにスマイルを振りまいたりと、なにかと「男臭い」サーキットを華やかに彩る彼女達だが、その華やかさや存在自体にも、もちろん意味がある。

その意味とRQの存在意義とは、石黒さん自身の言葉で語っていただこう。
「RQというお仕事自体はスポンサー様の名前を背負って、スポンサー様やチームと皆さん(お客さん)との懸け橋となり、RQを通してファンになってもらったり、名前や商品を広めるための存在だと思っています」
「初音ミクもレイブリックさんの時も、RQだからフワァーっと軽い感じで動いているのではなくて、RQそれぞれが個々で責任を背負って、スポンサー様やチームを周知してもらうために場面場面で動く。そういう意識が強い方に囲まれていたので、すごく大事なお仕事だなというのは、自分でも感じていました」
「たとえばステージイベントの『ギャル・オン・ステージ』では、レース好きの方はもちろん、週末にちょっとレースを見に行こうという感じで来たいただいたお客さんにも、チームを良く知ってもらうために事前に女の子同士でトークの内容を相談するんです」
「チーム名やゼッケン、監督や選手の名前などはもちろんですが、それ以上の魅力をどう伝えるかを考えていました」
レースチームの中におけるRQ
広告塔として、チームの中では直接お客さんに対することが多いRQという仕事。彼女が所属していたチームでは、イベントや物販、来客の対応などでレース期間中、ほとんど休憩の時間も取れないほどだったという。
「今思うと何をしてたのか細かく思い出せないほど、怒涛の2日間でしたね(笑)」
スポンサー・チームをアピールするために、主に外に向けて活動を行うRQ。では、チーム内での関係性はどんなものだったのだろうか?

「初音ミクの時は、ドライバーが谷口(信輝)さんと片岡(龍也)さんで、走るお笑い芸人って言われているくらいだったので、チーム全体が和気あいあいとして、仲が良かったですね。移動や空き時間には、いろいろな話もしましたし」
「ただ、レース中はシリアスな状態なので、ドライバーさんとは一切話しをしなかったですね、レース中は、ピットに入ることがあってもエンジニアさんの邪魔にもならないように。360°目を配って、かなり気を使っていました」

「エンジニアさんにちょっとでも『そこどいて』と言われるようなことがあったら、その子の非といいますか、そんなこと自体は起きてはいけないことだと思っていましたから」
「もちろんチームにもよりますけど、RQはアピールの方の仕事ですから、レースでは絶対に邪魔にはならないように心がけていました。そういう意味では、皆さんが思っているような、華やかなキラキラしたお仕事ではないですよね」
「RQ同士はひと見知りだったりとか、最初は壁を感じることもありましたが、1年間もありますし、自然と仲良くなってしまいますね。先ほど言ったスポンサー様/チームをアピールする役割ですから、ギスギスした関係では1年間やっていけませんし」
2年間のレースクイーン経験で得たもの
楽しい思い出を語る際の笑顔とは異なり、真剣な表情で「RQとは?」という質問に答えてくれた彼女。その真剣な表情からは「仕事」に対する真摯な想いを知ることができた。
正面から仕事に取組み、チーム・スポンサーの広告塔として過ごしたRQの2年間。石黒さんにとって、何を得た2年間だったのだろうか。そしてその2年間で得た経験から伝えたいこととは?
「人生経験の中でためになった2年間でしたね。(RQをやらなければ)人生で絶対に触れないようなことなどを経験させていただき、身になったという感じ。華やかと思っていたRQの仕事はスポンサー様の名前を背負っている以上、実は責任重大な仕事なんだということも実感できましたし」

「これからRQを目指すなら。華やかな面だけではなくその仕事をしっかり理解したうえでそれでもやってみようという、そういう女の子が増えてくれればいいと思います。もし、スポンサー様などが何もいわなくても、彼女自身でそうして欲しいなと思いますね。チームの一員として。写真を撮られる時も、たとえばなぜコスチュームのここにRAYBRIGのロゴが入っているのかをわかったうえで頑張って欲しいですね」
石黒さんのRQとしての2年間のエピソードから感じられるのは、スポンサーなどの広告塔として外に向けてアピールするという、役割を全うするプロ意識の高さ。その経験は、現在の企業や商品をアピールするというモデルでの仕事でも役立っているという。
次回はRQの話題を離れて、現在の石黒さんの仕事に対する想い、そして自分自身について語ってもらうことにしよう。
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【控えめなスター選手】フォルクスワーゲン・ゴルフGTD ディーゼルのGTI
200psと40.7kg-mを生む2.0Lディーゼル
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
高性能なフォルクスワーゲン・ゴルフで、GTIではない方、ディーゼルエンジンを積むのがGTD。ガソリンエンジンのGTIと比べると、欧州での人気は2:1でGTDが優勢。内容を知れば、特に驚くような割合ではない。
ゴルフGTDが発売されたのは2009年。日本では馴染みがないものの、英国の一般道では見慣れた存在になっている。GTIより価格は安く、燃費は良い。一般道での速さもほとんど変わりないとすれば、GTDに支持が集まっても不思議ではない。
ターボディーゼルが人気だった頃、低回転域から引き出せる扱いやすいトルクは、多くのドライバーを惹きつけた。そこへGTI風のスタイリング要素をかけ合わせれば、大きな成功を掴めることは想像に難くない。
最新の8代目ゴルフにも、GTDが追加となった。だが今回は、GTIを超えるような注目を集める可能性は低い。GTDの動的性能や能力が、GTIに対して弱まったわけではない。ディーゼルエンジンの人気や露出が低いためだ。
スペックを見比べてみると、GTDは従来以上に優れた性能を得ている。価格も高くはなっているが。
最高出力は16ps増しの200psを獲得し、最大トルクは2.0kg-mほどプラスされ、40.7kg-mとかなり太い。燃費は従来のNEDC値からWLTP値へ変わったため直接の比較はできないが、19.2km/Lとされる。最新GTIの13.5km/Lよりかなりイイ。
デュアル・アドブルー噴射を備えるSCRフィルターを搭載し、2.0L 4気筒ディーゼルはNOx排出量も抑えている。速いだけでなく、環境にも優しい。
7速DSGと相性のいいGTD
サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式、リアがマルチリンク式というGTIと同じ構成。オプションとして、アダプティブDCCダンパーを組むことができる。
インテリアは、基本的にその他のゴルフと共通。実際に押せるボタンが削られ、インターフェイスがモニターに集約されたことは、AUTOCARの読者ならご存知だろう。
GTDとして注目したいのが、色使いは異なるものの、GTIと同じセミバケットシートが据えられること。表面がパンチング加工された、レザー巻きのステアリングホイールも共通だ。
運転姿勢は刺激的ではないにしろ、しっくり落ち着ける。センターコンソールには、バイワイヤで接続されたシフトノブが添えられる。GTDで選択できるトランスミッションは、デュアルクラッチATの7速DSGのみとなる。
ゴルフGTDは、ATとの相性が良い。ディーゼルターボとしては吹け上がりが良いものの、エンジンは低回転域で重たい印象がある。ガソリンターボほどエキサイティングではないから、知的に変速してくれるDSGに変速は任せておいた方が良いと思う。
力強さも音響面でも、2.0Lターボディーゼルはたくましい。サウンド・アクチュエータを静かに切り替えたいほど。標準のコンフォートのままでも、エンジンノイズはタグボートのように迫力がある。ちょっとうるさくて、疲れてしまう人もいるだろう。
スポーツ・モードではさらに賑やかになる。激しくGTDを攻め立てるような場面なら、怒鳴るようなノイズはドライバーの充足感を高めてくれるけれど。
パワーよりシャシーの方が勝っている
フルスロットルでの加速は、興奮度は高くはないものの勢いは良い。しかしGTDが得意とするのは、シャープな中間加速。7速DSGが中段に入ったままでも、蹴飛ばすように速度を高める。
スポーツ・モードを選択すると、変速タイミングは高回転域まで使う積極的な設定になる。プラスティック製のシフトパドルを使う頻度も、少なくて済む。
試乗車は18インチ・ホイールに、オプションのDCCダンパーという組み合わせだった。英国の一般道でも非常によく機能していたようだ。
筆者が試した範囲では、コンフォートの設定から3段階引き締めた状態が良いと感じた。アダプティブ・サスペンションは、英国郊外の道を柔軟に受け流してくれる。
高速道路を穏やかに長時間走りたい時は、少し柔らかくしたくなるかもしれない。GTIクラブスポーツのようにまくし立てて走りたいなら、さらに硬くすると良いだろう。
コーナリング中にアクセルを戻すと、オーバーステアが生じることもある。だがGTDの安定性は高く、磨き込まれたサスペンションが自然な挙動を生んでいる。
フロントタイヤ側には、VAQと呼ばれる電子制御油圧式のLSDが装備されている。GTDのハンドリング精度とトラクションが高められ、一般道ではパワーやドライバーの技術よりシャシーの方が勝っている印象だった。
8代目ゴルフの控えめなスター選手
フォルクスワーゲンは、ディーゼルの排気ガスを浄化する技術代として、GTDの価格を引き上げた。英国価格は、GTDが3万2840ポンド(472万円)に対し、GTIが3万3510ポンド(483万円)となる。
この価格差なら、パワーで勝るガソリンエンジン版を選択した方が賢明ではある。しかし、GTDと相性の良い7速DSGを同様に搭載した場合、GTIの価格は3万5000ポンド(504万円)を超える。
さらに速度道路を巡航すれば、GTDの燃費は23.0km/Lくらいにまで伸びる。ランニングコストも踏まえると、GTIとの経済性の差は一層広がることになる。
ライバルとの比較でも、ゴルフGTDは優勢だ。電子制御油圧式のLSDがGTDには備わるが、ディーゼルエンジンを積むフォード・フォーカスSTやBMW 120d Mスポーツには装備されていない。
基本的に優れたゴルフGTIのシャシーを、そのまま受け継いだゴルフGTD。アダプティブDCCダンパーを装備すれば、多くのドライバーが求める以上に正確で奥行きのある操縦性を叶えてくれる。
環境規制が厳しくなる中で、ディーゼルエンジンの余命は長くはない。しかし、ゴルフGTDの魅力は従来以上に高くなったようだ。8代目ゴルフの中で、控えめなスター選手と呼んでもいいとさえ思う。
フォルクスワーゲン・ゴルフGTD(英国仕様)のスペック
価格:3万2840ポンド(472万円)
全長:4284mm
全幅:1789mm
全高:1456mm
最高速度:244km/h
0-100km/h加速:7.1秒
燃費:18.2-19.2km/L
CO2排出量:137g/km
車両重量:1465kg
パワートレイン:直列4気筒1968ccターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:200ps/3600-4100rpm
最大トルク:40.7kg-m/1750-3500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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【内装/外装/価格/詳細は?】フィアット500/500 C 限定車「ミモザ2」発売
ミモザの花をイメージした限定車
FCAジャパンは、フィアット・ブランドのコンパクトカー「500(チンクエチェント)」、「500 C(チンクエチェント・シー)」に、専用ボディカラー「ハッピー・イエロー」を採用した限定車「ミモザ2」を発売する。
イタリアでは、毎年3月8日の「国際女性デー(女性の日)」に男性が大切な女性にミモザの花を贈る習慣がある。今回発売される「ミモザ2」は、そのミモザの黄色い花をイメージした日本向けの限定車。
専用の「ハッピー・イエロー」のボディカラーとインストゥルメントパネルを特徴とし、ブラックのエクステリアミラーハウジングを装備。
また、カブリオレモデルには、アイボリーのソフトトップを採用した。
価格(税込)は、500ミモザ2(200台限定)が、208万円。カブリオレモデルの500 Cミモザ2(50台限定)が、274万円。
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【自動運転新時代】レベル3「ホンダ・レジェンド」1100万円/100台限定 存在意義とは?
ついに自動運転レベル3の時代へ
text:Kenji Momota(桃田健史)
editor:Taro Ueno(上野太朗)
ついにベールを脱いだ、世界初の自動運転レベル3機能「ホンダ・センシング・エリート」を搭載したレジェンド。
オンライン記者発表会見では、動画を使ってこれまでの乗用車では実現できなかったさまざまな機能を紹介した。
近年量産されている、「自動運転技術(または、自動運転化技術)を使った」と形容されるクルマ、例えば日産プロパイロット2.0搭載のスカイラインや、次世代アイサイトのオプション設定でアイサイトXの装着も可能なスバル・レヴォーグなどと、新型レジェンドのホンダ・センシング・エリートはどうちがうのか?
順を追って説明する。
まず、ハンズオフ機能付車線内運転支援機能とは、一般的なACC(アダプティブ・クルーズコントロール)として作動するが、先行車など周囲の状況を把握する性能は高い。
次に、ハンズオフ機能付車線変更支援機能では、ドライバーが周囲の安全を確認した状況でドライバー自らがウインカー操作をすると、クルマのシステムが搭載する各種センサーで周囲の状況を判断したうえで車線変更を始める。
もし、隣の車線で車両が接近する場合などは車線変更の動作に移ることをクルマのシステムが中止する。
ここまでは、日系メーカー、またドイツメーカーやテスラなどと、クルマの動作としては大きなちがいはないように思う。
世界初は、これから先だ。
最大恩恵「トラフィックジャムパイロット」
ハンズオフ機能付高度車線変更支援機能、端的にいえば、自動での追い越し装置だ。
手順としては、ドライバーは一般的にはACC(アダプティブ・クルーズコントロール)である前述のハンズオフ機能付車線内運転支援機能での走行中に、高度車線変更支援システムのスイッチを押す。
すると、例えば同一車線で(法定速度内で)車速の遅い先行車を検知した場合、クルマのシステムがドライバーに車線変更をすることを告知してから、車線変更をおこない、追い越しが完了してから元の車線に自動的に戻る。
ここまで来ると、たしかに「自動運転だ」という感じを持つ人も多いだろう。
それからもう1つ、ドライバーにとってレベル3から大きな恩恵を受ける機能がある。
それが、トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)だ。
前述のハンズオフ機能付車線内運転支援機能で、高速道路など自動車専用道での渋滞で低速走行中など「ある条件」を満たしていると、同一車線内でハンズオフに加えてドライバーはDVDを視聴したり、スマホの操作をするなど、運転以外の行為を行うことが可能となる。
ただし、たとえば豪雨や降雪によってセンサーが外部の状況を検知できないなど「条件外」になると、システムがドライバーに運転を代わるよう、音声、表示、またシートベルトの振動などを通じて要求してくる。
開発担当者の表現する「レベル3の壁」?
開発担当者は、レベル3の壁と表現した。レベル2とレベル3はまったく別物という意味だ。
このレベルだが、ホンダが会見で使用した図表では自動運転ではなく、「運転自動化」のレベルの定義という表現した。
そのうえで、レベル1とレベル2は運転支援であり「操舵の主体」は「ドライバー」。
一方、レベル3、レベル4、そしてレベル5は自動運転で「操舵の主体」は「(クルマの)システム」と記載している。
つまり、レベル3を実現するためには、システムに対して極めて高い安全性が求められ、仮にシステムのトラブルが生じれば、ホンダは訴訟に直面したりブランドが傷つくリスクがある。
それでもトヨタやスバルなどより先に世界初のレベル3を量産した経緯について、筆者が開発担当者に質問したところ、開発担当者は「ウサギと亀」を例えに出して次のように答えた。
「(以前は)ホンダは比較的(自動運転開発で一般的に)遅れていると思われていた。それが2020年に高速道路でのレベル3実現に向けたステートメントを出した」
「そもそもホンダには安全性と信頼性を愚直に追求しようとする企業風土があり、結果的にウサギを超えていた」
レベル3の研究開発での実走行距離は累計130万kmにおよび、ホンダは安全性と信頼性を「論証してきた」という。
Nボックスはいつレベル3に?
さて、発表された新型レジェンドの価格だが、通常モデルのメーカー希望小売価格は724万9000円に対して、なんとその1.5倍の1100万円に達する。
販売方法は、限定100台のリース販売となる。
そのうえで、商談時には技術や操作方法などの丁寧な説明を心掛け、また特定整備認証におけるアフターサービスを徹底する。
開発担当者は、今後の自動運転レベル3の普及について「今日がまず第1歩だ。日本市場で社会(の全体)が、またユーザーがどう捉えるのか、(慎重に)見極めながら、今後の事業計画を立てていきたい」と説明した。
また筆者は、この会見をNボックスのなかで視聴しており「Nボックスがレベル3になるのはいつごろだと(個人的に)思うか?」と聞いたところ……。
「自動運転には故障があっても大丈夫なように、冗長性が求められ(Nボックスが採用しているホンダセンシングのような)運転支援とは設計がちがう」
「Nボックスでは……」
「10年、20年度には(レベル3に対応する)そうした時代が来て欲しいと思う」と少し困ったような表情で答えてくれた。
レベル3という本格的な自動運転が軽自動車まで広く普及していくかどうかは、ホンダが指摘するように、ユーザーがレベル3をどう思い、社会全体でどう取り入れていくのかにかかっている。
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【価格/詳細は?】ジャガーFペイス 2021年モデル受注開始 V8 5.0L「SVR」進化
Fペイス発売以来初の大幅改良
ジャガー・ランドローバー・ジャパンは、SUVの「Fペイス」の2021年モデルの受注を開始した。2016年の発売以来の大幅変更となる。
Fペイスは、スポーツカー「Fタイプ」由来のテクノロジーとデザインを取り入れ、高い実用性と効率性を兼ね備えたジャガー初のSUV。
2016年に発売され、「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー2017」などを受賞した。
Fペイスの2021年モデルでは、ひと目でジャガーとわかる洗練されたデザインを踏襲しながら、ボンネット、フロントグリルメッシュバンパー、およびLEDライト(フロント&リア)などのエクステリア・デザインを刷新し、よりダイナミックで力強い印象に仕上げたという。
インテリアも、センターコンソールをはじめ、ステアリングホイール、ドライブセレクターなど、英国のクラフトマンシップと機能美が細部にまで追求された精巧な仕上げになった。
V8 5.0Lモデル進化/30台限定車設定
エンジン・ラインナップは、最高出力204ps、最大トルク43.8kg-mを発揮する、2.0L直列4気筒インジニアム・ディーゼル・エンジン(MHEV)を導入する。
ハイパフォーマンスグレードの「SVR」に搭載する5.0LのV8スーパーチャージド・ガソリン・エンジンは、最大トルク71.4kg-mを誇り、0-100km/hを4.0秒、最高速度を286km/hに進化させている。
また、最新のインフォテインメント・システム「Piviプロ」やブラインドスポットアシスト、クリアイグジットモニター、アダプティブクルーズコントロールなどの多彩なドライバー支援システムを標準装備し、安全性や利便性を高めた。
Fペイスの2021年の発売を記念した特別仕様車「ローンチ・エディション」を30台限定で用意。
エクステリアカラーに「ローンチ・エディション」専用色のポルトフィーノブルー、インテリアカラーにシエナタンを設定した。
ブラックエクステリアパック、ピクセルLEDヘッドライト(シグネチャーDRL付)、22インチグロスブラックホイールなど、スポーティさに特化した仕様で、ヘッドアップディスプレイやアクティビティキー、パークアシストなどの便利な機能も充実させた。
2021年2月18日より受注が開始されており、価格(税込)は710万円~1350万円。特別仕様車「ローンチ・エディション」は1068万1000円。
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【2021年カレンダー埋まる】F1第3戦、開催地ポルトガルに決定 5月2日GP決勝
シーズン後半にスケジュール修正も?
text:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
F1は、2021年シーズンで唯一未定となっていた第3戦(5月2日)の開催地を、ポルトガルのアルガルベ・サーキットに決定した。ポルトガルGPはイモラで開催されるエミリア・ロマーニャGPの2週間後に行われる。イモラは中国GPに代わる開催地として選ばれている。
3月に2021年シーズンの開幕戦が開催される予定だったオーストラリアGPは、パンデミックの影響で延期された。当時、オーストラリアの新型コロナウイルスの発生率は低かったものの、他の地域で増加していることから当局が延期するよう要請した。結果、オーストラリアGPは11月18~21日に開催され、開幕戦は3月28日にバーレーンで行われることになった。
2020年のオーストラリアGPは、メルボルンでの練習が始まる直前にマクラーレンのチームメンバーが新型コロナウイルスの陽性反応を示したため中止された。その後、スケジュールが組み直され、開幕戦は4か月間延期された。
世界各地でロックダウンや渡航制限が続いているため、2021年のカレンダーも同様に修正されることになる。F1は「可能であればシーズン後半に再スケジュールを組む可能性がある」として、中国当局やプロモーターと話し合いを進めている。
F1は今年も過去最高の23レースを開催する予定だ。
運営の幹部は「新型コロナウイルスの状況を監視するために、プロモーターやパートナーと緊密に協力していく」と述べ、2021年のシーズン中に観客がトラックサイドに戻ることを期待している。
F1の新CEOでありランボルギーニの元CEOであるステファノ・ドメニカリは次のように語った。
「昨年の大成功を受けて、F1が再びポルティマン(アルガルベ・サーキット)でレースを行うことを発表できて興奮しています。わたし達をここまで導いてくれたプロモーターやポルトガル政府のハードワークと献身的な努力に感謝しています」
「昨年、17レースを安全に開催し、困難な時期に何百万人ものファンにスリリングなレースをお届けできることを示しました。2021年シーズンにも自信と興奮を持っています。今シーズンも安全な方法でポルティマンにファンを迎え入れたいと考えており、その計画の詳細についてはプロモーターと協力しているところです」
2021年シーズンのF1カレンダー
3月28日 – バーレーンGP
4月18日 – エミリア・ロマーニャGP
5月2日 – ポルトガルGP
5月9日 – スペインGP
5月23日 – モナコGP
6月6日 – アゼルバイジャンGP
6月13日 – カナダGP
6月27日 – フランスGP
7月4日 – オーストリアGP
7月18日 – イギリスGP
8月1日 – ハンガリーGP
8月29日 – ベルギーGP
9月5日 – オランダGP
9月12日 – イタリアGP
9月26日 – ロシアGP
10月3日 – シンガポールGP
10月10日 – 日本GP
10月24日 – アメリカ合衆国GP
10月31日 – メキシコシティGP
11月7日 – サンパウロGP
11月21日 – オーストラリアGP
12月5日 – サウジアラビアGP
12月12日 – アブダビGP
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【直6エンジン・サルーン比較】ボルボ164とデイムラー・ソブリン2.8 1968年の同級生 後編
走るオフィスのようなボルボ164の車内
text:Andrew Robrts(アンドリュー・ロバーツ)
photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
デイムラー・ソブリン2.8が、高速でドライバーを1日中突き進ませてくれるのに対し、ボルボは164走るオフィスのよう。フロントシートには、快適性を高めるランバーサポートの調整機能もある。少し実用的な眺めで、レザー張りの内装に違和感もなくはない。
ソブリンでは複眼のメーターを眺めて運転するところだが、164ではフェイクウッドのダッシュボードに大きなサイドバー・タイプのスピードメーターが鎮座する。低い位置にあるヒーターの送風口とコラム式のATセレクターが、当時らしさを強める。
今となっては、1960年代のテレビで流行ったギャグを耳にするより、はるかに珍しい2台だ。初代ジャガーXJの生産が終了したのは1973年。2.8Lの直列6気筒エンジンが選択されたのは、2万2555台に留まった。
ブランド違いのデイムラー・ソブリン2.8はさらに少ない。わずか3221台でしかなかった。
ボルボも、フラグシップ・サルーンの展開には苦しんだ。1972年にボッシュ製インジェクションを採用するが、144の上に位置する164は伸び悩む。1975年にボルボ264が発売されると当時に、164の生産は終りを迎えた。
マーク・ユーレットが所有するボルボ164は、オースチンA110ウエストミンスターに乗っていた彼の祖父が、自身の退職祝いとして購入したもの。1969年に、VHV539Gのナンバーを取得している。
「祖父はボルボを愛していました。1989年に亡くなると、祖母の移動手段としてわたしが運転してきました。状態を保つために、いくつかの修理も加えています」。とユーレットが振り返る。
高速の追い越し車線でも問題なし
1991年に祖母が亡くなると、クルマの所有権をユーレットが引き継ぐ。祖父の気持ちも受け継ぎ、ボルボのコンディションを維持する決意をしたという。
一般道を試乗させてもらう。ボルボ164は思いがけず速く、クルージングが得意。オプションだったパワーステアリングのアシストが大きく、操舵感は軽い。
「3.0Lの直列6気筒エンジンは、現代の交通の流れへ簡単についていけます。高速の追い越し車線でも問題ありません。車齢51歳のボルボに追い越されると、多くのドライバーは二度見するようですね」。ユーレットが笑う。
「クラシックカーで長距離を運転すると疲れるものですが、164なら流れるように運転するだけ。2019年のグッドウッドでは、前入りして友人と会うために夜中を走りました」
「片道160kmの旅でしたが、最高でしたよ。到着するまで清々しい気持ちでいられました。サスペンションはドライバーに優しい。コーナーを活発に走らせると、大きくボディロールしますけどね」
かつての自動車誌に載った、スポーティな魅力はほとんどないという内容には、彼も賛同する。「ボルボ164は、そのために作られたクルマではありません」
一方で、デイムラー・ソブリンを大切に乗っているダレン・ニューナム。幼い頃の思い出がきっかけだという。「父が同じクルマに乗っていたんです。6歳の頃、これに乗る日が来るかもしれない、と父が話したことがありました。その通りになりました」
メルセデス・ベンツCクラスより快適
優しいクリーム色のソブリン2.8は、英国で偶然発見した1台。驚くことに、父のデイムラーと色や年式、スペックもまったく同じクルマで、ワンオーナーだったという。
1978年にレストアも受けている。「わたしは実際に乗りながら、修復を加え続けて来ました。2019年には全塗装と、インテリアを仕立て直しています。サイドシルやフロアは、オリジナルの鉄板のままです」
「走行距離は7万4000kmほど。わたしが手に入れたときは6万9000kmくらいでした。ステアリングは驚くほど軽いんですよ」。滑らかな走りが好きだというニューナム。
「電動の燃料ポンプや点火系統など、小さなアップグレードは施してあります。今では信頼性も高い。家族が乗っているメルセデス・ベンツCクラスより、はるかに快適だと思いますよ」
2.8L直列6気筒エンジンは、海外で人気が出るだろうとジャガーは予想していた。小さな排気量の方が、税制的にメリットを受けられる国で。しかしブランド内での競争や、エンジンの不具合は悩みのタネでもあった。
それでもニューナムは、素晴らしいエンジンだと信じている。「3.4Lや4.2Lほどパワフルではありません。でも、速さを競うクルマではないですからね。ボルグワーナー社製のATは、クルマにぴったり。MTのデイムラーとはだいぶ雰囲気も違います」
最近、デイムラー・ソブリンとボルボ164は注目度が高くなってきている。当時の優れたモデルとして。「ソブリンはここ5年ほどの間に、沢山の視線を集めるクルマになったようです」。ニューナムも実感している。
同時期に生まれた印象的なサルーン
「わたしがソブリンを買ったのは2007年。その頃は立ち止まってクルマを眺める人など、ほとんどいませんでした。今ではとても美しいと、多くの人が言葉にしてくれます」
ユーレットも同調する。「164で学校の送り迎えをしていますが、とても目立ちます。わたしが手放すことはないでしょう。唯一、乗って楽しむ手段として息子に受け継がせたいとは考えています」
ジャガーXJファミリーの中で、ソブリンの重要な位置づけを理解する人は多くなかった。1969年の英国では、隣近所から注目を受けることもなかった。
かたや、ボルボは164を記憶に残るキャッチコピーで送り出した。「文明化の足りない世界へ、文明化されたクルマを」。カラーテレビのあるリビングを理想とした当時のビジネスマンには、理想的なクルマに写ったのだろう。
異なる背景ながら、同時期に誕生した印象的なルックスを持つ2台のサルーン。お互いを静かに尊重し高め合うように、今日まで共存してきたのかもしれない。
ボルボ164とデイムラー・ソブリン 2台のスペック
◇ボルボ164(1968-1975年)のスペック
価格:2048ポンド(新車時)/2万ポンド以下(288万円以下/現在)
生産台数:14万6008台
全長:4724mm
全幅:1733mm
全高:1454mm
最高速度:173km/h
0-97km/h加速:11.3秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1483kg
パワートレイン:直列6気筒2978cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:131ps/5000rpm
最大トルク:20.9kg-m/2500rpm
ギアボックス:4速マニュアル/3速オートマティック
◇デイムラー・ソブリン2.8(1968-1973年)のスペック
価格:2356ポンド(新車時)/2万8000ポンド以下(403万円以下/現在)
生産台数:3221台
全長:4816mm
全幅:1772mm
全高:1343mm
最高速度:189km/h
0-97km/h加速:11.0秒
燃費:6.0km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:1537kg
パワートレイン:直列6気筒2792cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:182ps/6000rpm
最大トルク:25.1kg-m/3750rpm
ギアボックス:3速オートマティック
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【驚くほど深い能力】ポルシェ911カレラ(最終回) 長期テスト クルマとの相互関係
積算1万2151km 最も有名なスポーツカーの1台
text:Mark Tisshaw(マーク・ティショー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
世界で最も有名なスポーツカーの1台といえるポルシェ911。長期テストでは、ほぼ素の状態に近いカレラを検証してきた。
ポルシェ911は、よく知っているクルマのように乗りやすい。一方で1台だけで過ごしていると、素性の良さが見えなくなりがちだ。
楽しいことはわかっていても、どれだけ楽しいのか、毎日の短距離移動がどれだけ活き活きしたものになるのかは、比較しないと見えにくい。いかに精巧に設計・製造されているのかも、感じ取りにくい。慣れとはそいうものだと思う。
長期テストでは、最高のスポーツカーを普段使いするだけでなく、どの程度の内容が本当に必要なのかも確かめてきた。
ポルシェは、911のボディ・バリエーションの拡充に余念がない。同時に質素なモデルを選んでも、オプションの追加で結果的に金額が釣り上がることも珍しくない。長期テストのカレラでも、オプション金額は車両代の10%に届いている。
短くも素晴らしい911との暮らしだったが、このカレラの内容ほどもいらないかもしれない。走りに関係あるオプションは、1145ポンド(16万5000円)のカレラSホイールと1844ポンド(17万円)のスポーツエキゾーストくらい。
2つのオプションが装備されていなくても、幸せにポルシェ911と過ごせたと思う。残りのオプションは、見た目的な部分や快適機能に関わるもの。オーナーの好みに依存する部分だ。
強い印象を与える911のカタチ
最もシンプルな911を選んでも、よりパワフルでゴージャスな911と同じくらいの特別感があると思う。英国価格はそれでも8万2795ポンド(1192万円)もする。乗っていて、ほかのクルマに引け目を感じることもない。
たとえ運転しなくても、一度乗れば多くの人に確かな印象を残してくれる。特にそのきっかけとなっているのが、ボディのカタチ。911の見た目は、いつも911。当然のことのように。
911を運転する時間が長くなるほど、その印象は強いものになっていく。ボディもインテリアも、細部まで作り込みは素晴らしい。
立体的なエンブレムが飾られた、リアの造形豊かなプロポーション。きれいに整えられた面構成と、ブレーキランプのデザイン。こんなデザインのテールライトを持つクルマは、ほかに例がないと思う。
見た目で素の状態と違っていたのは、カレラSのホイール。フロントが20インチで、リアが21インチと大きい。かっこよく見えるし、乗り心地に大きな影響はないようだ。
逆にわずかなオプションが付いていたことで、本当に必要なオプションは何なのか、モデル展開も含めて考える刺激を与えてくれた。特に長期テスト車のボディカラー、アベンチュリン・グリーンは、予想以上のものだった。
グレーがかったダークグリーンが、これほど強い印象を与えてくれるとは思ってもみなかった。何より、控えめな主張が気に入った。周囲に溶け込み、不必要に視線を集めることもない。汚れが目立ちにくい点もうれしい。
クルマとの相互関係が生む丁度いい深み
AUTOCARの英国読者の中にも同じアベンチュリン・グリーンでカレラSを注文し、大正解だったと感じている1人がいる。911を知っている人だからこそできる、懸命な選択に思える。
運転するほどに、911の魅力を知ることができた。直接的な楽しさや心地よさには、丁度いい深みがある。その核にあるのが、クルマとの相互関係にあると思う。
スターターのスイッチを右に捻り、エンジンを始動する瞬間からクルマとの関係性が始まる。フラット6のノイズでも、始動直後は一番心に響くものだと思う。スポーツエグゾーストを付けていても、911の音響的な個性は以前より薄められているから。
カレラは周囲を威圧するようなクルマではない。ドライバーと一体になり、交差点を曲がるだけでも充足感を与えてくれる。
エントリーグレードの911ですら、最高出力は385psもある。2速か3速でアクセルを踏み倒すと、運転免許が存亡の危機に陥るほどのパワーだ。でも、50km/hから110km/hへ加速する高速道路の合流ですら楽しい。
郊外の開けた道へ出れば、感心するほどの落ち着きとインタラクティブ性で、911を深く味わえる。軽快な変速感と、気持ちよく吹け上がるフラット6。すべての操縦系の重み付けは理想的で、快適でありながら鋭く正確にノーズは向きを変える。
ステアリングホイールを握る手のひらと、シートへもたれる背中には、素晴らしいフィードバックが伝わってくる。唯一気になるとすれば、高速道路などで大きいロードノイズくらいだった。
驚くほど深遠な優れた能力
短い期間だったが、多くの体験をさせてくれた。びしょ濡れのカースルクーム・サーキットでは暴れ馬のようだったが、あの状況では驚くような結果ではないだろう。
シルバーストーン・サーキットでは最新のシボレー・コルベットC8に対峙した。ドリフトもしやすい、自由度の高さを改めて確認させてくれた。家族4人で短距離ドライブを楽しんだり、長距離を走り込んだ同僚もいた。
最後に改めて触れたい911のストロングポイントは、信頼性や耐久性と、総合的な実力の高さ。長期テストの間、いつでもどこでも運転できると感じさせてくれた。これから新しいオーナーのもとへ行っても、思い出深いドライブを重ねていくことだろう。
ポルシェ911はとても特別なクルマだ。その深遠なほど優れた能力には、ただただ驚かされるばかりだった。
セカンドオピニオン
わたしが最初に長期テストの911カレラに乗ったのは、ひどく濡れたカースルクーム・サーキット。四輪駆動の911ターボSで数周走った後、すぐに後輪駆動だと気付かされるほどの違いがあった。
周回速度はそれほど高くないものの、濡れた路面でも自由に扱いやすく、ウェット・サーキットでも楽しく運転できた。そんなエントリーグレードの911で、MTが選べないのが残念に思える。 Simon Davis(サイモン・デイビス)
テストデータ
◇気に入っているトコロ
快適な乗り心地:シャープな操縦性と快適な乗り心地という組み合わせは、小さなマクラーレンと呼びたくなる。
素晴らしい見た目:いつも同じ、とはいわないでほしい。992型のデザインは見事なほどで、長い911の歴史の中でも傑作の1つだと思う。
リアシート:多機能で便利。使い勝手の良いスポーツカーにしている、大切な要素。
◇気に入らないトコロ
ロードノイズ:高速道路を長距離走る場合は、ロードノイズを打ち消すためにラジオの音量を上げる必要があった。
メーターパネル:5眼メーターは少々情報過多。表示は切り替えられるが、ベストと思える組み合わせには出会えなかった。
◇走行距離
テスト開始時積算距離:9672km
テスト終了時積算距離:1万2151km
◇価格
モデル名:ポルシェ911カレラ(英国仕様)
新車価格:8万2795ポンド(1192万円)
現行価格:8万2795ポンド(1192万円)
テスト車の価格:9万891ポンド(1308万円)
◇オプション装備
スポーツエグゾースト:1844ポンド(26万5000円)
14ウェイ電動スポーツシート:1599ポンド(23万円)
フロント20インチ/リア21インチ・カレラSホイール:1145ポンド(16万5000円)
アベンチュリン・グリーン・メタリック塗装:876ポンド(12万6000円)
ダイナミックLEDヘッドライト:699ポンド(10万円)
パーキングアシスト/リアカメラ:464ポンド(6万6000円)
ツートン・レザーインテリア:422ポンド(6万円)
プライバシーガラス:387ポンド(5万5000円)
自動防眩ルームミラー:387ポンド(5万5000円)
ポルシェ・レストエンボス・ヘッドレスト:161ポンド(2万3000円)
ポルシェ・クレスト・ホイールセンター:114ポンド(1万6000円)
◇燃費&航続距離
カタログ燃費:9.3-9.7km/L
タンク容量:64L
平均燃費:8.6km/L
最高燃費:10.3km/L
最低燃費:4.3km/L
航続可能距離:548km
◇主要諸元
0-100km/h加速:4.2秒
最高速度:292km/h
エンジン:2981cc水平対向6気筒ターボチャージャー
最高出力:385ps/6500rpm
最大トルク:45.8kg-m/1950-5000rpm
トランスミッション:8速デュアルクラッチ・オートマティック
トランク容量:132L
ホイールサイズ:20インチx8.5J(フロント)/21インチx11.5J(リア)
タイヤ:245/35 ZR20(フロント)/305/30 ZR21(リア)
車両重量:1505kg
◇メンテナンス&ランニングコスト
リース価格:1053ポンド(15万1000円/1カ月)
CO2 排出量:233-245g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
燃料コスト:338ポンド(4万8000円)
燃料含めたランニングコスト:338ポンド(4万8000円)
1マイル当りコスト:0.22ポンド(31円)
不具合:なし
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【大胆にイメージチェンジ】ヴォグゾール(オペル)・モッカへ試乗 優れた総合力
先代から大胆にイメージチェンジ
text:Tom Morgan(トム・モーガン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
オペルのスタイリングが控えめだったのは昔のこと。新しいモッカも、それを表す1台といえそうだ。
オペルの英国ブランド、ヴォグゾールがラインナップするコンパクト・クロスオーバーが2代目へと代替わりした。ブランド全体へ影響を与えるであろう、大胆なデザインをまとっている。
初代モッカの人気は英国では低くなく、イメージチェンジは意外にも思える。発売は2012年で、これまでに100万台以上のモッカが欧州の道を走ってきた。英国市場は、そのうちの20万台を占めている。
クロスオーバー人気は高まる一方で、競争は激しい。ライバルモデルもスタイリングとテクノロジーのアップデートに余念がない。大胆なモデルチェンジは、モッカでも必要だったのだろう。
オペルがバイザーと呼ぶスリムなフロントグリルも含めて、スタイリングは2018年のコンセプトカー、GTXを彷彿とさせる。グリルといっても空気が抜けるメッシュはなく、塞がれたパネルの中央にエンブレムが付く。
バイザー・グリルは空力特性にも貢献しており、空気抵抗は先代のCd値0.35から0.32へ向上している。ルーフラインの処理も含めて好みは分かれると思うが、従来より明らかに誘目性は高い。見た目のアピール力は、フォード・プーマに並ぶと思う。
ボディ内側のアーキテクチャは、グループPSAで共有となるCMP。プジョー2008やDS 3クロスバック、シトロエンC4、オペル・コルサなどと同じものだ。
コルサと同じパワートレインに充実装備
CMPアーキテクチャの採用で、車重は先代から120kgも軽量化できている。ボディ剛性はエンジンモデルで15%、純EVのモッカeでは30%も向上させているという。
サイズは先代より124mm短く、10mm広い。ホイールベースは2mmだけ伸びた。前後のフロントオーバーハングが短くなり、車内空間を犠牲にせずダイナミックな姿にまとめている。
パワートレインは、コルサと共有。ガソリンエンジンとディーゼルエンジン、先日ご紹介した電気モーターから選べる。
1.2Lの3気筒ターボガソリンは、100psと130psの2段階を設定。ディーゼルエンジンは1.5Lで109psとなる。トランスミッションは6速MTのほか、130psのモッカでは8速ATが選べる。
標準装備は、ベースグレードのSEでは16インチ・アルミホイールにLEDヘッドライト、衝突被害軽減ブレーキなど。エリート・ナビ・グレードを選べばホイールは17インチになり、バックカメラやコネクテッド機能などが追加される。
スポーティな装いのSRIグレードでは、18インチ・アルミホイールにスポーツシート、プライバシーガラスなどが付く。ボディのトリムパーツもブラック・アウトされる。
最上級グレードが、ウルティメイト・ナビ。エンジンモデル専用で、キーレスエントリーやスマートフォンのワイヤレス充電、マトリックスLEDヘッドライトなどが装備される。
すべてのモッカで、クルーズコントロールや標識認識機能などが標準装備。試乗車には、前後のパーキングセンサーやナビ、インチアップしたインフォテインメント・システムが装備されていた。
ドライバーを包むような大きなモニター
インテリアで主張が強いのが、オペルが「ピュアパネル」と呼ぶ2面のモニター。運転席側にラウンドし、ドライバー・フォーカスの雰囲気に仕立てている。
メーターパネルのモニターとインフォテインメント用のモニターが一体に見え、最近のメルセデス・ベンツのようだ。低グレードでは2面とも7インチだが、上級グレードでは12インチと10インチの組み合わせになる。
カスタマイズできる範囲は限定的で、表示はシャープながら特に高精細というわけでもない。しかし、これまでのオペルからすれば大きな前進。アップル・カープレイとアンドロイド・オートにも標準対応だ。
センターコンソールにはエアコン用のボタン類が残され、操作しやすい。着座位置は適度に低く、すべての操作系は手に届きやすい範囲にある。
光沢の強いプラスティック製パネルが多く用いられ、素材や質感は充分。しかし、プレミアム感があるわけでもない。
観察はこのくらいにして走り出してみよう。1.2Lガソリンターボは、モッカのボディサイズに丁度いい。市街地では小気味よく速度を上げ、すぐ静かな回転に落ち着く。エンジンノイズも、急な加速時くらいしか目立たない。
8速ATは、ステアリングホイールのシフトパドルを弾いても、敏感に反応するわけではない。しかしフォルクスワーゲン・グループのものより、信号発進などの振る舞いは良い。一方、急加速を求めても積極的なキックダウンはしないようだった。
クロスオーバーとして総合的な実力は高い
ステアリングの操舵感は、コンパクトカーのように軽い。市街地では運転しやすいものの、フロントタイヤのフィードバックはほとんどない。だがプジョー2008のように、アシストが強すぎると感じることはないだろう。
姿勢制御は、純EV版のモッカeと比べてタイト。300kgもある駆動用バッテリーがないことが貢献していると思われ、コーナーでもよく制御できている。
ただしダイナミックな走りを望むなら、コンパクト・クロスオーバーというカテゴリーの中では、フォード・プーマの方が勝ると思う。
乗り心地は硬めながら、バランスの良い落ち着いた質感には驚かされた。管理の悪い舗装や荒れた路面を走行しても、車内へ伝わる振動は最小限。大きなわだちや隆起部分を越えた時も、プジョーよりしなやかに感じた。
純EV版のモッカeとは異なり、ガソリンエンジン版のコンパクト・クロスオーバーには競合が多い。このモッカも印象は良いものの、それ以上の魅力を備えるモデルは存在する。その筆頭は、英国ではフォード・プーマ。
しかし装備や実用性、価格、スタイリングなど、ヴォグゾール(オペル)・モッカの備える総合的な実力は高い。クロスオーバーの場合、走りが優先順位の一番上に来ることは多くない。多くのユーザーにとって、モッカは強く惹かれる存在となるだろう。
ヴォグゾール(オペル)・モッカ(英国仕様)のスペック
価格:2万7450ポンド(395万円)
全長:4151mm
全幅:1791mm
全高:1532mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:9.2秒
燃費:16.7-17.0km/L
CO2排出量:133-137g/km
車両重量:−
パワートレイン:直列3気筒1199ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:130ps/5500rpm
最大トルク:23.3kg-m/1750rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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【直6エンジン・サルーン比較】ボルボ164とデイムラー・ソブリン2.8 1968年の同級生 前編
装飾なしでも威厳を放つ2台のサルーン
text:Andrew Robrts(アンドリュー・ロバーツ)
photo:John Bradshaw(ジョン・ブラッドショー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
1960年代後半、フォード・コルセア2000Eはクロームのモールとビニール張りのルーフで飾り立て、再び注目を集めようとした。一方でデイムラー・ソブリン2.8やボルボ164の場合、そんなお飾りは必要なかった。
優れたスタイリングが与えられたクルマは、装飾なしでも威厳を静かに放つことがある。誕生から50年以上が経過する今、風格あるクラシックとしての存在感を漂わせている。
1968年、英国のビジネスマンはウーズレー6/110の生産終了を嘆いた。競合モデルのパンフレットを揃えてみても、匹敵するほどの魅力を感じることはできなかっただろう。
フォード・ゾディアック・エグゼクティブやヴォグゾール・ビスカウントには、良いイメージが少し足りていなかった。トライアンフ2.5PIは少々派手すぎた。オースチン3リッターは、ウーズレーのようなブランド力を備えていなかった。
代役不在に悩む人が続出する中で、ボルボが救いの手を差し伸べる。新しい164で。
輸入車という選択に、抵抗を感じた英国紳士もいただろう。しかしボルボは、長い時間をかけて一定の地位を築いていた。
当時のモーター誌は、「快適で高品質なファミリーカーとして、過去最高のボルボ。ほかのメーカーが真似することは難しいでしょう」。と称賛する文面を掲載した。
フロントグリルも見事だった。ボルボのチーフデザイナー、ヤン・ヴィルスガールドは、ウーズレー6/99からスタイリングのインスピレーションを受けたようだ。
アメリカンな見た目から脱却を図ったボルボ
ボルボの期待を背負った164が発表されたのは、1968年のパリ自動車ショー。144の登場から2年後で、B30型と呼ばれる新しい3.0L直列6気筒ユニットを搭載するため、ホイールベースは100mmほど伸ばされていた。
1938年から1958年に製造されたボルボPV800は、タクシーとして英国でも活躍していた。旧式の6気筒ユニットを載せた、先輩に当たるモデルだった。その生産終了から10年後、BMW 2500やメルセデス・ベンツW114がライバルになるモデルが誕生した。
1966年に発表された144は、見落とされがちなクラシック・ボルボだ。アメリカン・スタイリングからの脱却を図った、初めてのモデルだからかもしれない。実際、アマゾンやPV544とは異なり、デトロイト臭はみじんもない。
144は、欧州のエグゼクティブをターゲットにしていた。ロングボディ版の164も同じデザインテーマを受け継ぎ、北米での販売強化に焦点を当てていた。
時を同じくして、ボルボ164へ感心を抱いたドライバーは、ジャガーXJ6の登場にも心が動いたはず。「英国が提供できるベスト・モデルでしょう。過去75年で一番といえます」。と当時のカー誌は褒め称えている。
1968年10月、XJ6はジャガーより立派な容姿に仕立てられ、デイムラー・ブランドからも発売が始まる。「ソブリン・バイ・デイムラー」とうたれたカタログには、「力強い高級感」や「権威的な雰囲気」という言葉が並んだ。
より高価なクルマを不要にするほどの内容
ジャガーXJ6はカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれることはなかった。しかし当時の自動車ジャーナリスト、LJK.セトライトはこれまでになく高い評価を残している。
「より高価なクルマを不要にするほどの内容を備えています。それが最大のポイント。これに匹敵するモデルは、正直思い当たりません」
発表から1年も経たないうちに、ジャガーXJ6は沢山のバックオーダーを抱える。納車待ちの時間を短くするために、1000ポンド高い金額で売買されていたという情報も残っているほど。
高い人気もあり、デイムラー版XJの登場は多くの人が予想するものだった。1960年、ジャガーは英国伝統の自動車ブランドを買収。デイムラーが消滅するのではないか、という噂を一掃するプレスリリースを発表していた。
とはいえ当時の自動車ファンは、ゆっくり衰退するデイムラーを見届けることになる。1964年にはSP250、1968年にはマジェスティック・メジャーやDR450といったデイムラー独自のモデルが次々に終了していった。
1966年に登場した420ソブリンは、ジャガーのバッジ・エンジニアリング。デイムラー・ソブリンもジャガーXJ6をベースとしていた。1962年の2 1/2V8サルーンはジャガーMk2のボディをまとい、2ブランドの融合を示していたのだが。
「フロントグリルの形状は、ジャガーのものよりボディに合っていると思います。インテリアの質感は、デイムラーの方がベターです」。と今回ご登場願ったデイムラー・ソブリン2.8のオーナー、ダレン・ニューナムが話す。
2台に共通する表現できない落ち着き
エンブレムを付け替えたモデルの中で、ソブリンは比較的成功した方だといえる。ベントレーT1とロールス・ロイス・シルバーシャドーの関係性のように、ジャガーはXJシリーズを上手に展開させている。
同時期に英国へ姿を表した、サルーン2台を並べてみる。デイムラー・ソブリンとボルボ164とに共通することは、表現できない落ち着きを漂わせていること。
ソブリンは、ウィリアム・ライオンズ率いるジャガーの優雅なコーチワーク技術を映し出している。「ソブリン・シリーズ1のデザインはオリジナル。ここから後に展開していったんです」。とニューナムが説明する。
ボルボ164のスタイリングは、フォーマルでありながら真面目すぎない。長いボンネットの後ろに細いピラーが伸び、バランスが良い。フロント周りの造形はとても特徴的だ。
「スカンジナビアンなミニマリズムは、当時すでに存在しています。多くの人が164の姿を楽しむように見てくれます」。と笑顔を見せるのは、今回のボルボ164のオーナー、マーク・ユーレット。
この2台で、対象的な部分はインテリアだろう。デイムラー・ソブリンの車内は1970年代の紳士が集まるクラブ的。ダッシュボードには見慣れたメーター類とスイッチが並び、上質な日常を匂わせる空間に仕上がっている。
ヒーターは良く効き、スターターボタンではなく、キーを捻ってエンジンを目覚めさせられる。「ダッシュボードは後のXJとは異なります。レイアウトはシンプルで、後期モデルのような安っぽいプラスティックもありません」
この続きは後編にて。