cat_oa-newswitch_issue_aaf0625f77e7 oa-newswitch_0_aaf0625f77e7_VRゲームを進化させる、直径1m内で無限に歩け続けられる装置 aaf0625f77e7

VRゲームを進化させる、直径1m内で無限に歩け続けられる装置

 広島市立大学の脇田航助教は、仮想現実(VR)ゲーム用の360度方向の歩行入力装置を開発した。腰を囲むドーナツ状のクッションの中に荷重センサーを配置し、移動方向を検出する。歩くように脚を上げた動きを計測して歩行や走行としてVRゲームに入力する。直径1メートル程度の装置の中で無限に歩き続けるようなVR体験ができる。

 VRゲームでは全身の動きを狭いスペースで計測し、コンテンツに反映させることが課題になっている。本当に歩いたり走ったりすると広いスペースが必要になり、ヘッドマウントディスプレー(HMD)などの配線の取り扱いが問題になってくる。

 そのため乗馬やサーフィンのような乗り物に乗せて下半身の動きを制限するコンテンツがアミューズメント施設では主流だった。

 今回、脇田助教は、クッションで腰を囲い、脚を動かしても実際には移動しない計測装置を開発した。クッション内部には腰の高さに荷重センサーが配置され、装置に体重をかけるとその力を検出する。さらに膝の上げ下げを、膝の付け根の高さのセンサーで計測する。膝の角度の計測分解能は5―15度程度。膝を上げ下げする速度を移動速度に反映できる。

 検出システムの部品原価2万円で構成できる。研究用試作ではドーナツ状のクッションや架台が高価になっているが、構造自体はシンプルなため量産機ではコストを抑えられると見込んでいる。

 ベンチャーを立ち上げて事業化する計画。まずは施設用のVRアトラクションに提案する。将来は家庭用の歩行入力システムに展開したい考えだ。

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cat_oa-newswitch_issue_aaf0625f77e7 oa-newswitch_0_99dbaeb36720_普通のデータサイエンティストと世界トップクラスのデータサイエンティストの違い 99dbaeb36720

普通のデータサイエンティストと世界トップクラスのデータサイエンティストの違い

 「データサイエンティストと名乗るのは厚かましいというか、自分はむしろ外れ値です」そう切り出した小野寺和樹さんは現在、DeNAのAI本部データサイエンス第一グループに所属している。

 確かにデータサイエンティストには数学や物理学の修士や博士といった理系のバックグラウンドを有する人が多い中、小野寺さんは経済学部出身で数学の知識も「二次関数の頂点がわかるくらい」だという。

 そんな小野寺さんだがKaggle Grandmaster(カグル グランドマスター)という称号を持っている。世界では163人、日本では10人程度しかいない(2019年11月現在)。

【補足説明】Kaggle(カグル)とは、データサイエンティストや機械学習エンジニアが集まる世界最大のコミュニティ。大きな特徴は、誰でも参加可能なコンペティションがあることだ。世界中の企業や研究機関などが提供したビッグデータと課題に対し、モデルの精度を競い合う。各コンペには、数百から数千のチームや個人が参加する。Kaggle Grandmasterになるには、コンペでゴールドメダルを5回獲らなければならない(少なくとも1回はソロ参加)。(*ゴールドメダルは1位を意味するものではなく、10位以内というイメージ)
 「周囲の人みたいに物理学などはやっていないし、高度な数学もわからない。それでも、データをちゃんと見る力さえあればなんとかなると実感している」と小野寺さん。

 データを見るとはどういうことか? 例えば、何万とあるユーザーID同士を一件ずつ比較しているのだという。

誰も手を出さない泥臭い領域に重要なヒント
 「何万件というデータを一つずつ確認する作業は、普通あまりしないと思う。でも、こういった泥臭い作業はアルゴリズムが進化した今の時代でも必要」と語る。なぜそこまでの作業が必要なのか? 後でも触れるが、数学の専門知識がない代わりの人海戦術というわけでもない。2622人中2位になったコンペの事例を交えながら語ってもらった。

 コンペ内容は、食料品をネット注文すると配達してくれるサービス「Instacart」の保有データをもとに、どのユーザーがどのアイテムをいつ購入するかを予測するためのモデルの精度を競い合うものだった。例えば、毎朝ヨーグルトを買っている人がいたとすると、次の日の朝もヨーグルト買うだろう、夜にはきっと買わないだろう、といった予測モデルを作らなければならない。

 Kaggleのオフィシャルブログに掲載された小野寺さんのインタビュー記事には、具体的なある局面が示されている。ユーザーID54035の8回目までの購買データをもとに、9回目に何を買うのかの考察だ。

出典:http://blog.Kaggle.com/2017/09/21/instacart-market-basket-analysis-winners-interview-2nd-place-kazuki-onodera/
 「この人の購買履歴を見ると、コーラをよく買っていることがわかる。でも、8回目の注文時にはコーラを買っていない。これがどういうことなのかが気になった。データをよく見てみると、フリッジパックコーラという12本セットのバルク品を購入していた。これを買っているのでコーラを買っていないと推察した。ためしに他のユーザーの購入動向を見てみたところ同じような傾向があった。フリッジパックコーラはコーラの代わりになっている、逆もまた然りと結論づけた」

この分析のすごさのポイント
 この表を見れば、コーラを買う頻度が非常に高いことやコーラとフリッジパックコーラがカテゴリー的に似ていることがわかり、それをもとに何かしらの推察をすることは比較的容易ではないだろうか。なぜオフィシャルサイトに掲載されたのか? どういった点が注目されたのか?

 取材に同席した小野寺さんの上司の原田慧さんは次のように語る。原田さんは数理学の博士号を持つKaggle Masterだ。「実はフリッジパックコーラはコーラの代わりだということをコンピュータが理解することはかなり難しい。文字列を読み込んで、二つの商品が似ていることまでは気づくかもしれないが、ここまでの断言はできない。関連に確信を持って気がつけたのは小野寺さんがデータを目で見たからに他ならない。

 私自身、結構なKaggler(Kaggleに取り組む人)だが、そもそも個別のデータからこの表を作ること自体がすごい。普通ここまでやらない。

 多分、彼は思いつくことを全部やって、それでもまだ気になることがあって、個別のユーザーIDを見はじめたのだと思う。そこで、『1』が続いた後の『0』を見つけた。この表を見せられたらみんなその点が気になるだろうが、そもそも個別のデータをユーザーの気持ちを理解するために見に行こうという発想ができる人はあまりいない」

理論的アプローチだけでは見落としてしまうもの
 コンペで支給されるデータは、膨大な行数のCSVファイルだ。上の表はそのデータから小野寺さんが作ったものだ。このユーザーのIDは5万台の番号だが、小野寺さんは片っ端からユーザーの購買データを見たのだという。

 この発見の知見を取り入れたモデルの改善によって、順位が3位から2位に上がった(*コンペ期間中、何度でもモデルを改善し再提出してよい)。さらに現在、Instacartのサービスの一部に小野寺さんが作ったアルゴリズムが実装されている。

 ユーザーの個別的なパターンや商品の関連性などを考慮できていない従来的なモデルでは予測の精度が落ちる。

 小野寺さんは、「通常、9番目の情報を予測するために一番重要なのは直近の情報。明日その人は何を買うのか予想する時には1年前の情報よりも今日の情報が参考になりやすい。多くの人は直近の情報をめちゃくちゃ重要視するので、8番目のコーラを買わなかったというデータのインパクトが大きくなる。1、1、1、0と来ているので、『この人はもうコーラを買わないのかな』と考え、次に来るスコアは0〜0.5くらいだという判断になる。

 しかし、自分のモデルでは『コーラの代わりにフリッジパックコーラを買っていて、コーラとフリッジパックコーラはほぼ同じ。また、フリッジパックコーラは新しい商品というわけではなく、連続で購入される傾向も低いこともわかっている。だから次はコーラを買う』という根拠で、1に近づけることができた」と説明する。

 小野寺さんが取り組んだ手法は数学的な理論で代替できるのだろうか?

 「数学的なアプローチは可能だろうが、よくわからないパターンがあるということがわかって終わりでしょう。コーラの代わりになる商品があることがあらかじめわかっていればモデルを作れるだろうが、そもそも代わりがあるんじゃないかという発想に至ることが重要だった。僕みたいな数学屋だと、『まあ、一回だけたまたま買わない、なんてこともあるのかな。終わり』という思考になる」(原田さん)

データだけではわからないから使う人の気持ちになる
 精度を向上させるために小野寺さんがしたことがもう一つあった。自身がInstacartのユーザーになることだった。コンペで支給されるデータはCSVファイルのみ。小野寺さんは「これだけではわからないことがある。例えば商品の売られ方や使い勝手はウェブサイトを実際に見てみないとわからない。サービスを使う人の気持ちになりたかった」と語る。ウェブサービスを触ってみたことで、品物の配置と売れ行きの関係性や、商品のピックアップのしやすさといったUX(顧客体験)との関連性にまで考えが及んだ。

 膨大なデータを見る、ユーザーの行動を想像する、ユーザーとしてサービスを利用する、こういったことの積み重ねで予測精度は少しずつ改善する。

 「データは納得するまで見る。コンペは期間中に自分の順位が世界で何番目なのかわかる。1位じゃないということは何か見落としていることがあるということ。そしてひたすら考える」(小野寺さん)

 最後に、データサイエンティストとして仕事をするには、プログラミングのスキルはどの程度必要かと質問すると意外な答えが返ってきた。

 「データサイエンスをやる上で、プログラミングの勉強は二の次、三の次で構わない。今回のコーラのような傾向を見つけてアルゴリズムをプログラムでどう書くかという部分では、確かにプログラミングのスキルによる差が出るかもしれないが、そもそもその特徴を見つけられるかが勝負の肝。if文のような初歩的な構文ができれば基本的には大丈夫だと思う」

取材後記~DeNAのユニークな制度~
 DeNAにはデータサイエンスチームのメンバーに対して、業務時間を使ったKaggleへの参加を認める制度がある。小野寺さんは業務時間の30%をKaggleに充てている。データサイエンティストは、ビジネス上の問題をデータサイエンスとして解くべき問題に落とし込むことが重要だ。小野寺さんは、仕事で出てきた問題をKaggleに近い考え方で解くだけでなく、Kaggleでいうところの課題を作る、つまり解くべきに値する問題を作るところまでを担っている。Kaggleで得られた知見は、DeNAのゲームやヘルスケア、スポーツ事業等の各サービスの向上につながっている。(取材・平川 透)

小野寺和樹氏(おのでら・かずき)
AI本部AIシステム部データサイエンス第一グループ、データサイエンティスト。Kaggle Grandmaster。Kaggle世界最高ランク37位。大学卒業後、銀行系基幹システム開発に従事。金融コンサルとして金融機関の審査モデル構築に携わりつつ、2015年にACM/KDD 主催のデータマイニングコンテスト KDD Cup 2015 にて準優勝。2017年、KaggleのInstacart Market Basket Analysisにて準優勝。現在はDeNAにて各種サービスの機械学習活用に向けた開発を行っている。

原田 慧(はらだ・けい)
AI本部AIシステム部データサイエンス第一グループマネジャー。数理学博士、Kaggle Master。前職ではコンサルタントとして金融機関向けのデータ分析に従事する傍ら、数学力とデータ分析コンペティションで鍛えた技術力を活かし新規分野開拓、社内外の分析技術者育成に従事。2018年2月にデータサイエンスチームの立ち上げメンバーとして入社、現在はマネージャーとして多くのプロジェクトに関わりながら、個性的なメンバーを率いる。

ニュースイッチオリジナル

【ファシリテーターのコメント】
Kaggleを覗いてみると、開催中のコンペの情報を見れます。コンペに参加しなくても、様々な組織がどんなデータと課題を持っているのかがわかるので、データサイエンスとは具体的にどういうことなのか多少感じることができるでしょう。小野寺さんは「データを見る」とさらりと言っておられましたが、Kaggleから適当に落としたパブリックデータはものすごい量で、一個ずつ見るなんて生半可な気持ちではとても無理だと思いました。タイトルの最初に使った「普通」という単語、あまり好きじゃないし意味の捉え方も難しいし用いるか否かどうしようかとぐるぐる考えた挙句今回は使おうと思いました。
平川 透

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cat_oa-newswitch_issue_aaf0625f77e7 oa-newswitch_0_4a35ae2ed894_経営危機脱却の切り札?JDIがスマホ指紋センサー量産へ 4a35ae2ed894

経営危機脱却の切り札?JDIがスマホ指紋センサー量産へ

 ジャパンディスプレイ(JDI)は2019年度内に東浦工場(愛知県東浦町)でスマートフォン向け指紋センサーの量産を始める。既存のディスプレー技術を応用し、モバイル機器による電子決済の普及で高まるセキュリティー対策需要に応える。スマホ用液晶パネルへの依存を軽減するため、有機ELパネルと並ぶ新規事業と位置付ける。経営危機脱却の切り札となるかが注目される。

 JDIが東浦工場で生産を立ち上げるのは、スマホやタブレット端末向けの静電容量式ガラス指紋センサー。ガラス基板を用いることで、従来のシリコン基板では難しい大面積化を実現し、指全体を検出可能なセンサーサイズを低コストで確保できるという。ガラスの高い透明性も特徴で、ディスプレーとの組み合わせで端末の意匠性を向上させる。 

 これまでの指紋センサー事業は、同じ指紋認証用途で住宅などのドアロック向けで供給実績がある。ただドアロックは市場が限られ、より大きな需要を見込めるモバイル向けに狙いを定めて海外スマホメーカーなどと共同開発を進めてきた。

 今後、指紋センサーの受注が順調に増えていけば、東浦工場だけで賄えない可能性がある。20年度以降に、スマホ用液晶パネルの主力拠点・茂原工場(千葉県茂原市)を候補に増産投資を検討する。

 同じく新規事業と期待する有機ELパネルは米アップルの腕時計型端末「アップルウオッチ」の新モデルに採用され、11月中にも茂原工場で量産を始める見通し。こちらも有機ELパネルの増産対応として、現在操業休止中の白山工場(石川県白山市)の活用に向けた検討に入っている。

 経営危機のJDIは現在の債務超過を解消する資金調達計画を優先せざるを得ない。ただ危機を脱した後の成長戦略も同時に実行しなければ“日の丸ディスプレー”の真の復活はかなわず、指紋センサーなど新規事業の育成が急務と判断した。

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cat_oa-newswitch_issue_aaf0625f77e7 oa-newswitch_0_aa11106c79b6_腕時計の販売は好調でも、業績で明暗が分かれたのはなぜ? aa11106c79b6

腕時計の販売は好調でも、業績で明暗が分かれたのはなぜ?

 時計3社の2019年4―9月期連結決算が12日出そろい、セイコーホールディングス(HD)とカシオ計算機が増収営業増益、シチズン時計が減収営業減益だった。ただ、腕時計の完成品販売は、高級価格帯や人気ブランドを中心に各社とも好調を維持している。

 シチズン時計は時計事業の営業利益が前年同期比37・4%減。アナログクオーツムーブメント(駆動装置)の販売が厳しく「回復が見通せない」(佐藤敏彦社長)。工作機械事業も反動減や設備投資の先送りで営業利益が同33・3%減。20年3月期業績予想は据え置いた。

 カシオ計算機はコンシューマ部門が増収営業増益。「G―SHOCK」など中国市場の電子商取引(EC)向けが伸長。為替影響で20年3月期業績予想の売上高を下方修正したが「それ以外は予想通り」(樫尾和宏社長)としている。

 セイコーHDは時計事業の営業利益が同42・8%増。ムーブメント販売は苦しい状況が続くが、国内外で完成品の販売が好調。20年3月期業績予想の営業利益も上方修正した。

 完成品販売について、上期は消費増税前の若干の駆け込み需要があった。下期への影響について、シチズン時計の古川敏之取締役は「反動減の懸念は少ない」と見る。セイコーHDの中村吉伸社長は「年末商戦までに販売が回復するよう進めている」とした。

日刊工業新聞2019年11月12日

【ファシリテーターのコメント】
ムーブメント販売の苦戦はファッションウオッチなど普及価格帯市場の落ち込みが要因。生産合理化など各社どのような施策を展開するのか気になります。
国広 伽奈子

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景観を損なわない「透ける二次電池」? NTTが開発

 NTTは、従来比で電力量を約50倍に高めた「透ける二次電池=写真」を開発した。大きさを縦約29センチ×横21センチメートルと同10倍にし、性能を同5倍の0・25ミリワット時に高めた。従来はサングラス程度だった平均透過率を同3倍の69%と窓ガラス並みに高めた。市販のデジタル時計に接続した結果、2時間の動作を確認した。

 電解質をゲル化したことで、平均電圧を1・7ボルトから2・5ボルトに高め、透過率の向上につながった。より広い面積での成膜化が可能となり、電池の大型化も実現。新型電池6枚でボタン電池1個分の性能を持つ。

 観光地で景観を損なわずに情報を掲載する透明看板のほか、太陽光発電で得た電力を蓄電できる窓ガラス、スマートグラス用レンズなどへの利用を見込む。今後は折り曲げ可能なフレキシブル性能の付与を目指す。

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さりげなくプリンセスを身に付ける腕時計、「アナ雪2」とコラボ

 シチズン時計は女性向け腕時計ブランド「シチズン エル」からディズニーアニメと協業した5機種を11月下旬に発売する。22日公開の「アナと雪の女王2」の登場人物をイメージした2機種(写真)と3人のプリンセスをイメージした3機種を大人の女性向けに展開。価格は5万2000―8万8000円(消費税抜き)。

 キャラクターを前面に出さないシンプルなデザインが特徴。文字板とバンドの色でキャラクターを表現する。ダイヤモンドを使用し、意匠性を高めた。裏ぶたにはキャラクターのイメージを表す言葉を刻印した。

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導入広がる「信用スコア」、期待と軽視できない懸念

 「信用スコア」の導入を決めたり検討したりする企業が増えつつある。契約を確実に守るか、道徳的に正しいとされる行いをするかなどの“信用力”を点数化し、高得点の人に特典を与えるような展開が想定されている。従来は金融分野での活用がみられたが、飲食やITといった領域でも利用が広がる可能性が高まってきた。一方でスコア算出方法の妥当性確保や、消費者の理解促進など、課題は多い。各事業者には丁寧な対応が求められる。(斎藤弘和)

 「顧客(消費者)とお店の関係性をフェアにしていく」―。飲食店のインターネット予約サービスを手がけるテーブルチェック(東京都中央区)の谷口優社長は、2020年に参入を目指す信用スコア事業の意図についてこう説明する。

 近年、消費者が飲食店のコース料理を予約した後に無断キャンセルをする事例が問題視されている。谷口社長は店側が信用スコアを活用し、点数の低い人には予約時にクレジットカード情報の登録を必須としたり、来店予定日が近づいたら電話確認をしたりすることでリスクが低減できるとみる。逆に高得点の人へは優待を提供することなどでマナーを守る動機づけを図る。

 信用スコアに関する議論は国も進めてきた。総務省と経済産業省は「情報信託機能の認定スキームの在り方に関する検討会」を17年11月から開催。19年3月の第10回検討会では、海外における信用スコアの状況を示している。大量の決済データと人工知能(AI)を組み合わせて与信コストを下げ、従来は融資が困難と判断されてきた個人や中小企業への資金供給を行う例があるという。

 日本では、みずほ銀行とソフトバンクが出資するジェイスコア(東京都港区)が17年9月から「AIスコア」を提供。点数が高い人は好条件での借り入れができる。従来の融資では年収や勤務先が重視されがちだが「我々は性格とか、お金に対する価値観なども聞く。若い人ほど将来の可能性に期待をしてスコアを上げる仕組みも入れている」(大森隆一郎社長)。19年にはLINEやNTTドコモも信用スコア関連事業を始めた。

 ただ、信用スコアがもたらす懸念は軽視できない。総務省と経産省の検討会の資料では「就職や結婚などに信用スコアが使われると人間そのものの選別につながる恐れがある」と指摘された。そこまで行かずとも、不当にスコアが低いと判断されてしまった人が不利益を被るような事態は避ける必要がある。

 慶応義塾大学法学部の大屋雄裕教授は「例えば個人の自発的な行動に基づいて競争をして、格差が生じることは正当だ。だが一度スコアが下がったら社会的に排除されてしまうような“悪い格差”を避けるには、やり直しの機会が求められる。下がったスコアを上げる方法みたいなものが重要だ」と分析する。信用スコアに関わる企業には、消費者の理解や同意をどう得るかという点も含めた入念な取り組みが問われる。

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cat_oa-newswitch_issue_aaf0625f77e7 oa-newswitch_0_6a70af729123_オンワードがオーダーメイドのパンプスを自宅へ直送! 6a70af729123

オンワードがオーダーメイドのパンプスを自宅へ直送!

 オンワードパーソナルスタイル(東京都港区、関口猛社長、03・5476・6131)は、女性用オーダーメードシューズ事業に参入し、ウィメンズ表参道店(東京都渋谷区)と同大阪本町店(大阪市中央区)で受注販売を始めた。パンプスのサイズや素材、デザインのパターン合計約30万通りの中から選ぶ。国内の契約工場で製造し、最短1週間で届く。価格は消費税抜き9900円から。

 店舗には長さ21・5センチ―26センチメートル、幅がS―Lまでのパンプス見本がある。試着して、自分に合ったサイズとともに、ヒールの高さを選択する。「右足と左足の大きさが異なる人は、それぞれ選ぶことが可能」(同社)。素材はスエードや本革など44種類。今後、2足目以降はウェブサイトから申し込みできるようにする。

 契約する国内の専用工場が製造する。店舗から顧客データが届くと、工場のCAD、CAMを使って生地を自動裁断し、完成させる。工場から直接、顧客に届けることでコスト削減と納期短縮を実現した。

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cat_oa-newswitch_issue_aaf0625f77e7 oa-newswitch_0_5f374da3c435_引き合い「殺到」のロボットSI、夢はヒューマノイド 5f374da3c435

引き合い「殺到」のロボットSI、夢はヒューマノイド

 工場や店舗などで使うロボット関連システム構築のHCI。こうした業態は「ロボットシステムインテグレータ(SIer)と呼ばれ、同社は、関節ロボットなどを活用した組み電線(ワイヤハーネス)製造装置やスーパーマーケット向けの飲料陳列装置など、顧客の求めに応じたさまざまなシステムを構築する技術力、ノウハウを持つ。国内の人手不足を背景に、自動化や省力化ニーズは高まる一方で、引き合いは「殺到している」(奥山剛旭社長)状態だ。

機械設計、製造のノウハウ生かして
 同社は機械メーカーの技術者だった奥山剛旭社長が、2002年に起業。ワイヤやケーブル、チューブやシートなどの製造装置を手がけてきた。中でも、撚線機(よりせんき)など電線メーカー向けの機械は現在も続く主力製品だ。

 これまで、髪の毛の3分の1以下の極細電線6本を高速で撚る極細線用チューブラー型撚線機や、世界で初めて磁気軸受を使った無振動撚線機などを開発。携帯電話用ワイヤハーネスなどのエレクトロニクス分野から、自動車、医療、エネルギー、食品、物流など幅広い分野に納入実績を持つ。

 「元々、ロボットに関心があった」という奥山社長は機械設計製造のノウハウを生かし、08年からロボットを使った自動化システム事業を始めた。得意とする電線メーカー向けをはじめ、さまざまな業種の工場に検査、部品搬送、金型脱着、梱包、ピッキングなどのロボットシステムを納入している。

 現在、売上高の7割をワイヤ・ケーブルなどの製造装置が占める。ロボット事業は3割程度にとどまるが、旺盛な需要を背景に、2020年5月期には全体の4割以上に伸長する見通しだ。

最新技術を追究
 ロボットシステムインテグレータとしてさらなる成長を目指し、自社で人工知能(AI)開発にも挑む。画像認識AIは自社の製造装置に搭載しているほか大手企業の工場にも納入実績がある。深層学習のライブラリを使い、ばら積みになったケーブルを効率よく取り出すようなロボット用AIも開発した。

 経営資源が限られる中小規模のシステムインテグレータが自前のAI開発を進めるケースはそう多くない。日々進化する技術動向をキャッチアップするため「泉大津AI研究会」と称するAI技術のビジネス適用を研究する団体も運営。技術革新の動向にアンテナを張る。

 AIを自社開発する狙いについて奥山社長はこう語る。「AIは複数動作をまとめてこなすような部品ロボット組み立て工程など、需要が高まる複雑なロボットシステムに欠かせない要素となりつつあります。自社開発すれば、ロボットと組み合わせやすいといったメリットが発揮できます」。

地元企業の導入支援も
 足元の旺盛なシステム需要やAI開発などに対応する一方、システムインテグレータとしての持続的な成長へ向けて欠かせないのが人材だ。ただ、日本人の理系人材は大手との争奪戦が激しいこともあることから同社では外国人材を積極的に採用している。

 近年はベトナム、インド、ミャンマー、ブータンなどから広く技術系の人材を受け入れてきた。工学系の高い技術を持つ外国人材に日本人と同じ条件で働いてもらっており、それぞれが営業や機械・電気設計やSE(システムエンジニア)の業務で活躍する。奥山社長は「各国のトップクラスの大学を卒業した人材で非常に優秀。日常会話ができれば十分に働いてもらえる」と信頼を寄せる。

 人材不足はシステムインテグレータ業界だけでなく、中堅・中小企業に広く共通する構造的な問題である。18年に近畿経済産業局と連携し、地元の泉大津商工会議所内にロボットシステムのショールームとセミナールームを有する「HCI ROBOT CENTER」を開設。同拠点でセミナーなどを開いて、地域企業の人手不足対策としてのロボット導入を支援するほか、ロボット産業に関わる企業や学生の育成にも取り組んでいる。

 所属するロボットシステムインテグレータの全国組織「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」では、全国の会員企業と連携し、学生向けの人材育成事業を展開。高校生などから新しい産業用ロボットのアイデアを提案してもらい、その創造性や市場性を評価する「ロボットアイデア甲子園」を企画、運営している。

今後の有望市場
 今後の成長市場として有望視するのは食品加工業界。「人手による作業が中心で、他の産業分野に比べてロボット導入が遅れている」(奥山社長)からだ。人手不足の問題もあり、今後、食品加工工場のさまざまな工程でロボットシステムの採用が進むとにらむ。

 例えばコンビニ向けのおにぎりを複数同時につかんでコンテナに詰めるシステムや、生肉などの食材の形を崩さずにつかめて、全体を丸洗いできる人協働ロボット。すでに開発済みのこれら製品は、労働力不足に直面する製造現場における生産性向上の一助なるだろう。

 機械製造で培った確かな技術と、中長期的な視点に立った人材戦略で地歩を着実に固めつつあるHCI。「いつの日か工場で人と協働できるヒューマノイドを作りたい」(奥山社長)との夢を抱きつつ、未来の生産現場を具現化しつつある。



【ファシリテーターのコメント】
【企業情報】
 ▽所在地=大阪府泉大津市式内町6の30▽社長=奥山剛旭氏▽設立=2002年6月▽売上高=6億5600万円(2019年5月期)
日刊工業新聞 記者

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cat_oa-newswitch_issue_aaf0625f77e7 oa-newswitch_0_697aef6c4fc4_KDDIが服装規定も喫煙室を廃止 697aef6c4fc4

KDDIが服装規定も喫煙室を廃止

 KDDIは、全社一律のドレスコード(服装規定)を廃止した。男性社員はスーツとジャケットを着てネクタイを締める規定があったが、10月から社員が仕事内容に応じた柔軟な服装を選択できるようにした。社員の服装をめぐっては、NECや富士通も、社員の働き方に合わせたカジュアルな服装での出社や勤務を解禁している。

 KDDIは、10月からジーンズやスニーカーを着用して出社・勤務できるようにした。社員が新しい発想や価値観で業務を遂行できる風土作りにつなげる。

 また健康経営の一環として、10月以降オフィスの喫煙室を順次廃止し全面禁煙にしていく。2021年3月までに社員の喫煙率を18%以下(現在は約26%)に引き下げる。

 すでにソフトバンクは就業時間中の喫煙を段階的に禁止しており、20年4月には就業時間中を全面的に禁煙する意向を示している。情報通信各社で社員が健康的に働ける環境作りが広がりつつある。

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