cat_oa-newswitch_issue_7b3e53579ed9 oa-newswitch_0_7b3e53579ed9_ドローン荷物輸送解禁でビジネスチャンスを掴め 7b3e53579ed9

ドローン荷物輸送解禁でビジネスチャンスを掴め

 ドローンネット(東京都千代田区)は、2018年度から、産業・ビジネス向けのドローン事業を本格化させる。17年度は格闘技試合の撮影など娯楽向けが中心だったが、離島・山間部のドローン荷物輸送が18年夏に解禁される見込みなど「規制緩和でドローン市場が急速に広がる」(野尻孝執行役員)と見て、産業向けに軸足を移す。ドローンサービス利用の「スカイビジネス」会員募集を開始、21年度に計3万件の登録を目指す。

 スカイビジネスは会員制で、月会費は7980円(消費税込み)。登録するとドローン空撮映像売買の「スカイストック」に参加できるほか、ドローン操縦士に業務を頼みたいときのマッチングシステム「スカイクラウド」が利用できる。遠距離現場に行かなくてもドローンを通じて現場映像が見られる「ドローンスコープ」サービスも予定する。

 ドローンスコープサービスではドローン業務の依頼者がわざわざ行かなくても、現場にいるドローン操縦士と同じ映像を見ながらコミュニケーションできるため、東京本社から九州の建築現場をリアルタイムで指揮監督したり、四国に住む祖父母へ東京にいる孫の運動会風景を生中継で送ったりするなど、さまざまな利用法が考えられる。

 スカイストックは旅行会社が国内旅行名所をビデオで紹介したり企業が自社の商品を売り込みたいときに海や鳥の映像をイメージビデオで流したりするといった利用を想定する。地方自治体や旅館が観光地のPR向けに、ドローン空撮映像を購入するような使い方も有効という。
日刊工業新聞2018年4年6日

【ファシリテーターのコメント】
ドローン市場は全世界で年間15兆円以上といわれ、規制緩和とアイデアビジネスで20年代は同数十兆円に膨らむとの予測もある。ただ、日本でのドローンの規制緩和は、外国の速度に比べると遅い。上空を飛ばすときに国土交通省の許可をいちいち取らなければならないほか、都市上空を飛ぶ場合に住民プライバシーや安全対策をどう確保するかなどの問題が山積している。規制緩和が進めば、ドローンネットの事業拡大にもつながる。
(日刊工業新聞編集委員・嶋田歩)
日刊工業新聞 記者

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_7b3e53579ed9 oa-newswitch_0_19c101d5326b_昭和最後の年に「EV世界一」宣言、日本はどこで間違った? 19c101d5326b

昭和最後の年に「EV世界一」宣言、日本はどこで間違った?

「最高で最先端の電気自動車(EV)を開発する」。1988年にEV開発に着手したホンダ技術陣が掲げた目標だ。当時は平成直前の昭和63年。開発目標は“EVシフト”が話題の現在と比較しても遜色ないレベルだった。ホンダの経営企画部長を務めた水戸部啓一氏(現国際環境経済研究所理事・主席研究員)は、88年の目標を「やるからには“世界一”か“世界初”を目指すホンダのDNAがあったから自然と出た」と振り返る。

危機感から始動
 そもそもEV開発は危機感から始まった。70年代の石油危機が引き起こした混乱の記憶から、自動車業界は枯渇の恐れがない燃料を探していた。一方で米カリフォルニア州が大気汚染物質をまったく排出しない規制を段階的に義務化すると公表するなど、排ガス規制への対応も急務だった。EVは規制対応の選択肢の一つだった。

 ホンダは少人数の開発陣だったが、“最高で最先端”を目指した。当時、ガソリン車に電池を搭載したEVはあった。ホンダは既存車体を転用せず、EVの専用車体づくりから始めた。モーターも導線の巻き線から研究した。開発陣から相談を受けていた水戸部氏は「コンセプトカーではなく、あくまで使えるもの、売れるものにしようとしていた」と技術者の熱意を代弁する。ホンダは97年、EVのリース販売を始めた。数百台の販売にとどまったが「ゼロから開発したおかげで、電動化技術を獲得できた」(水戸部氏)という。

 90年代、温暖化問題に関心が集まると自動車各社がエコカー開発に経営資源を投入する。トヨタ自動車は97年に世界初のハイブリッド車(HV)「プリウス」を発売し、ホンダも99年にHV「インサイト」の量産を始めた。日産自動車や三菱自動車はEVを発売し、トヨタ、ホンダは燃料電池車(FCV)も製品化した。

強みを生かす
 水戸部氏は「日本メーカーはエコカー技術で世界をリードした。しかし、ビジネス戦略は別だった」と指摘する。米ベンチャー企業のテスラは富裕層をターゲットに高級EVを量産し、後発ながら市場をリードした。大衆車を狙う日本メーカーとは異なる戦略だ。

 EVやFCVの普及が本格化しようとしている。日本メーカーにとっては、平成の30年間を費やして開発した技術を開花させるビジネス戦略が問われる。研究において他社との提携が当たり前の時代となったが水戸部氏は「日本メーカーは強みを生かせる分野を見極めるべきだ」と訴える。
(文=松木喬)

連載「平成の環境産業史」(全7回)
 1989年から始まった平成時代、気候変動、フロンや有害化学物質規制など、企業は次々と押し寄せる環境問題への対応に追われました。一方で太陽電池、エコカー、省エネルギー家電といった技術が育ち、「環境経営」という言葉も定着しました。企業活動に影響を与えた平成の環境産業史を振り返り、新時代の道しるべを探ります。

【01】平成の気候変動対策は不十分だった…環境政策に携わった男の悔恨(2019年4月9日配信)
【02】日本の電機業界が環境対策で世界の先頭に立った日(2019年4月9日配信)
【03】太陽電池メーカーの栄枯盛衰が示す政策依存の現実(2019年4月16日配信)
【04】EV開発で“世界初”を目指したホンダの危機感(2019年4月23日配信)
【05】家電の技術革新を誘発した環境規制の威力(2019年4月30日配信)

<日刊工業新聞電子版では【05】を先行公開しています>
関連連載:「脱炭素経営 パリ協定時代の成長戦略」
日刊工業新聞2019年4月10日

【ファシリテーターのコメント】
冒頭で開発目標を紹介したのは、30年前の目標と言われても正直、ピントこなかったからです。今の目標と言った方が通用しそうな。それだけEVは開発期間が長く、そして課題(電池の航続距離・コスト、充電時間)が解決されていないのです。テスラは電池コストが下がらないのを逆手にとって高級ゾーン狙い。したたかです。
  
松木 喬

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_7b3e53579ed9 oa-newswitch_0_7a11e19812ff_CCCが新設「月額制で稼ぐ」家電店舗の勝算 7a11e19812ff

CCCが新設「月額制で稼ぐ」家電店舗の勝算

 来店客に家電商品の説明を尽くしても、最後はより安価なネット通販で買ってしまう。自分の価値は一体どこにあるのか―。蔦屋家電エンタープライズ(東京都世田谷区)商品企画部に所属する木崎大佑蔦屋家電+プロデューサーは、家電量販店の販売員だった10年ほど前、強い焦燥感を抱いていた。メーカーから製品を仕入れて販売する量販店のビジネスモデルに限界を感じ、危機感を募らせた。一方、それは接客の価値を最大化する新たなビジネスモデルを模索する出発点でもあった。

 蔦屋家電エンタープライズは4月上旬、東京・二子玉川の家電店「二子玉川・蔦屋家電」の一角に次世代ショールーム型店舗と銘打った「蔦屋家電+(プラス)」を開設した。商品化前を含む最新の製品を展示して来店客のマーケティングデータをメーカに提供し、その対価をもらい受ける。製品は仕入れず、データ取得が可能なスペースを月額制で貸すイメージだ。家電店の「サブスクリプション」といえるこのビジネスモデルは、木崎プロデューサーが販売員時代に抱いた危機感を解消するための答えだ。

『とがった』製品を並べる
 蔦屋家電+では現在、料理を彩る映像を表面に映し出せるお皿や1枚焼きのブレッドオーブンなど約30点の商品が並ぶ。国内電機メーカー大手や海外メーカー、ベンチャーの最新製品などを展示する。発売前やクラウドファンディングを実施中の製品もある。木崎プロデューサーは「面白い技術など『とがった』特徴を持つ製品を揃えた」と説明する。展示した製品の購入希望者に対しては販売の手続きをとるが、それ自体は収益機会ではないため、大きな売り上げを見込みにくいニッチな市場を狙った個性的な製品も並べられる。蔦屋家電では「美術・博物・万博」を品揃えのコンセプトにこれまでも個性的な製品を扱ってきたが、蔦屋家電+ではその特徴をより際立たせられるというわけだ。

 収益源となるマーケティングデータは、接客と人工知能(AI)を活用した画像認識システムで取得する。製品ごとに関心を持った来店者の属性や関心度合いなどのデータを蓄積する。具体的には店内に設置したカメラの画像を即座に性別や年代など属性の推定データに置き換え、滞在時間も取得する。カメラ画像は即座に削除し、個人情報にならない形で蓄積する。接客による会話で得たデータもスタッフが随時更新。出店企業はインターネット上の管理画面でこれらのデータをいつでも確認できる。

本当の勝負はこれから
 こうした店舗作りが動き出したのは2018年春。木崎プロデューサーがカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に転職し、二子玉川・蔦屋家電の立ち上げに携わってから約3年が経過していた。蔦屋家電エンタープライズの社員同士が企画を持ち寄る定期合宿で、既に構想を固めていたビジネスモデルを提案した。

 この提案には賛同者が多く、実現までは早かった。企画の実現に向けて社内調整に奔走した篠崎友一取締役は「(ネット通販に顧客を奪われている家電小売業界の苦境などを踏まえて)絶対に必要な取り組みだと確信した」と当時を振り返る。メーカーに出店を提案した際も反応は良く、4月の出店枠はオープンの1ヶ月以上前にすべて埋まった。すでに5―6月の出店枠も半分以上が埋まっているという。

 ただ、本当の勝負はこれからだ。出店企業に対し、価値あるデータを提供しなくてはならない。逆にそれを達成すれば、出店企業の需要増加につながる。今はまだ蔦屋家電全体の1%に満たない蔦屋家電+のスペース拡大も見込める。

 木崎プロデューサーは「実際の製品に触れられること、そしてその時の消費者の声を取得することはネットでは決してできない。リアル店舗には大きな価値がある」と信じている。その価値をマーケティングデータの取得という形で顕在化できるかが新型店舗の成否を分ける。
(文=葭本隆太)

連載・店舗進化論を始めます
 ネット通販で何でも買える時代になりました。価格競争では劣勢になりやすいリアル店舗は、今の時代を生き抜くために新たな価値が求められています。本連載では4つの事例について新しい店舗の形と、その進化の道を選んだ背景を探ります。

【01】CCCが新設「月額制で稼ぐ」家電店の勝算(2019年4月23日配信)
【02】創業40年のデザイン会社が提案“世界最強つぼ効率”店舗の実力(2019年4月24日配信)
【03】定額制コーヒー飲み放題、赤字でも続ける店舗の裏舞台(2019年4月25日配信)
【04】この道しかなかった、事業再建を果たしたメガネ店舗の選択(2019年4月26日配信)
ニュースイッチオリジナル

【ファシリテーターのコメント】
CCCとしては久しぶりの新型店舗の開設だそうです。ロゴもユニフォームも作る力の入れよう。「大きなものを背負っている」と話す木崎プロデューサーがどのような成果を出すか注目されます。
葭本 隆太

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_7b3e53579ed9 oa-newswitch_0_90615aad8c62_オーロラ発生の仕組み解明へ一歩前進? 90615aad8c62

オーロラ発生の仕組み解明へ一歩前進?

 国立極地研究所は南極大気を精密観測し、高度50キロ―80キロメートルの中間圏でカルシウムイオン層の検出に成功したと22日発表した。中間圏にカルシウムイオンの存在を確認したのは南半球では初めて。同時に南極域で初めてとなる中間圏のカリウム層の存在も確認した。これらの層はオーロラの発生にも関わっている可能性があり、オーロラ発生の仕組みの解明が期待される。

 さらに人工衛星の運用に関わるような地球近傍宇宙の電磁環境を示す「宇宙天気」を予報するための知見となる可能性もある。

 大型大気レーダー国際協同観測「ICSOM―4」で、2018年12月―19年1月に発生した高度11キロ―50キロメートルの北極成層圏の突然昇温に対し、昭和基地から良好な中間圏の観測データを取得。さらに18年7月には大型大気レーダー「PANSYレーダー」と、風速や気温、湿度などの気象データを観測する「ラジオゾンデ」を使い、高度11キロメートルまでの対流圏の乱流の同時観測に成功した。両現象の同時観測は世界的にもまれだという。

 これらの観測結果から、全地球大気の環境変動を把握し原因を明らかにすることで、大気の将来予測の精度向上が期待される。研究成果は17年10月―19年3月に実施した第59―60次南極地域観測隊の観測で取得した。

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_7b3e53579ed9 oa-newswitch_0_fa0efe361939_凸版の低コストIoT、ニシキゴイの中国輸出を助ける fa0efe361939

凸版の低コストIoT、ニシキゴイの中国輸出を助ける

 凸版印刷は、省電力広域無線ネットワーク(LPWA)の規格「ZETA(ゼタ)」を用いたサービスを秋から提供する。既存施設や電波が届きにくい山間部の農場、養殖場などに低コストでIoT(モノのインターネット)を導入して管理する。サービス開発に向け、新潟県内のニシキゴイ養殖のいけすで5月7日―10月31日に実証実験を実施する。

 ゼタは、英ZiFiSenseが開発した通信規格。アクセスポイントと複数の中継器でネットワークを構成する「メッシュ(マルチポップ)型」で、中継器を介して遠隔地のセンサーや機器でも通信できる。通信環境によっては最長60キロメートル前後までカバー可能。アクセスポイントの設置コストを抑制できる。

 実証実験では、大日養鯉場(新潟県小千谷市)の営業所と、同社が新潟県内の山間部に保有する複数の養殖場を結ぶ。営業所の近くにアクセスポイントを、養殖場のいけすには水位変動や水質を計測できるセンサーを複数設置。センサーが異常を感知した時やあらかじめ設定した時刻など、必要な時だけ中継器が起動するため、養殖場へ担当者が頻繁に赴かなくてもいけすの状態を確認できる。

 ニシキゴイの給餌の管理には、凸版が独自に開発を進めるセンサーも使う。精度や効果を検証し、給餌の自動化といった新たなサービスやIoT機器の開発に役立てる。ACCESS(東京都千代田区)と開発中のIoT機器も今後導入を検討する。ニシキゴイは近年は中国など海外の富裕層に人気があり、需要の高まりを前に管理を高度化する必要に迫られている。

 凸版は、ゼタ関連事業で2022年までに10億円の目標を掲げる。業務効率化の他にも、属人化しているノウハウの見える化やデータの蓄積もでき、ゼタのビジネス拡大に力を注ぐ。

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_7b3e53579ed9 oa-newswitch_0_639c7934f0b2_ドローンや自動運転の“乗っ取り”防ぐ、日本のモノづくり力に好機 639c7934f0b2

ドローンや自動運転の“乗っ取り”防ぐ、日本のモノづくり力に好機

 サイバーセキュリティーが現実世界(フィジカル空間)に広がろうとしている。自動運転や飛行ロボット(ドローン)などのセンサーをだまして制御を失わせる攻撃への懸念が高まっている。サイバーとフィジカルの両方を組み合わせた複合攻撃は、対策が確立されていない未知の領域だ。センサーやデバイスなどのフィジカル技術は日本にも分がある。サイバーセキュリティー市場は海外勢が優位だが、サイバーフィジカルセキュリティーは日本が巻き返せる市場になるかもしれない。

「未知の領域」対策探す 白地に“絵を描く”好機
 「サイバーセキュリティーで日本は海外勢に食いものにされてきた。この状況を覆したい」と、情報セキュリティ大学院大学の後藤厚宏学長は力を込める。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で「IoT社会に対応したサイバー・フィジカル・セキュリティ」のプログラムディレクターを務める。

 IoT(モノのインターネット)社会では無数の電子機器がサイバー攻撃のリスクにさらされる。2015年にはフィアット・クライスラー・オートモービルズの「ジープ・チェロキー」が実験的に遠隔操作されたことから、約140万台のリコール(無料の回収・修理)に追い込まれた。その後サイバー攻撃への対策は進んだが、センサーなどの電子部品がフィジカル攻撃の対象として新たに注目されている。

センサーなど 日本の強み生かす
 自動運転車などに使われる高機能センサー「LiDAR(ライダー)」をだまして前方車両を見えなくしたり、ドローンの超音波距離センサーや加速度センサーなどをだましてコントロールを失わせたりと、センサーの脆弱(ぜいじゃく)性が指摘されている。これまで産業用機械の多くはプロに管理され、攻撃者は敷地に侵入することも難しかった。だが自動運転車やドローンは日常生活で使われるようになる。そして人間に衝突させれば簡単に命を奪えてしまう。

 産業技術総合研究所サイバーフィジカルセキュリティ研究センターの松本勉研究センター長(横浜国立大学教授)は「サイバー攻撃とフィジカル攻撃を組み合わせた複合攻撃は、リスクの洗い出しさえ終わっていない」と指摘する。松本教授はドローンに強力な超音波を当ててセンサーをかく乱したり、飛行時間(TOF)式の距離画像カメラの計測結果を改ざんする脆弱性を見つけた。距離画像カメラの例では、目の前にある物体の計測面を手前にも奥にも動かすことに成功した。松本教授は「脆弱性を発表した当初は、実用化を妨げると煙たがられてきたが、最近は対策が必要な技術だと認知されるようになった」と振り返る。

 現状ではサイバー攻撃とフィジカル攻撃を組み合わせた複合領域は白地だ。後藤学長は「センサーや測定手法を守る“計測セキュリティー”という概念が研究者の間で生まれたばかり。複合領域はすべてこれから創る必要がある」と説明する。これはチャンスでもある。技術として信頼をどう作りこむか。計測器の校正制度のように、社会的にセキュリティーの評価保証制度をいかに運用するか。技術と社会の両面でほとんど何も決まっていない。松本教授は「いまなら白地に絵を描ける」と指摘する。

 そしてセキュリティー市場特有のマッチポンプ式ともいえるビジネスモデルが展開できる。先行者利益は大きいが、海外の競合に主導権をとられると産業へのインパクトが大きい。後藤学長は「セキュリティーにかかるコストを可能な限り抑える必要がある。フィジカル領域ではセンサーの作り込みなど日本のモノづくり力を生かせる」と期待する。

産業界で研究始動 判定・検出技術の開発進む
 産業界では基礎研究が始まっている。三菱電機は松本教授とドローンの攻撃判定技術を開発した。攻撃者は飛行中の機体に強力な超音波を照射し、加速度センサーにかかる力の方向をねじ曲げる。センサーが計測する加速度や力の向きが変化してしまうことは防げない。そこで計測値が重力などの物理法則から外れているかどうか識別してドローンが攻撃を受けたか判定する。攻撃判定のアルゴリズムは、センサーデバイスの信号処理回路に組み込めるため安価に導入できる。

 三菱電機情報技術総合研究所の梨本翔永研究員は「実験機のセンサーの正常時のノイズと攻撃時の値を比較して、本来の値から1・42倍ずれると攻撃と判定した」と説明する。普遍的な物理法則に信頼の基点とするため、幅広い加速度センサーに応用できる。ただセンサーごとにノイズの大きさが違うため、攻撃と判定する閾(いき)値をセンサーごとに決めることになる。これは優れたセンサーなら、攻撃の検出感度を上げられるともいえる。

 パナソニックと森ビルは設備制御ネットワークへの攻撃を検出する技術を開発する。機械学習で制御コマンドの異常性を判定する。異常コマンドは攻撃の兆候として扱い監視者が対応する。過去に例のない未知の攻撃に対応できる。パナソニックの松島秀樹サイバーセキュリティ技術開発部長は「IoT家電などスマートホームのセキュリティーに展開したい」という。

 ただ、課題は山積している。例えば攻撃を受けたことの通知だ。パソコンや冷蔵庫なら通知は攻撃を防いだ実績になるが、自動運転車の走行中に攻撃を受けていると通知されると、それだけで搭乗者は不安になる。攻撃者はセキュリティーを完全に突破できなくても攻撃通知を高い頻度で出せれば、商品の価値を下げられる。自動車メーカーにとっては、通知しないで万が一の事態が発生すると説明責任をめぐって訴訟になる可能性がある。

 パナソニックの芳賀智之主幹技師は「攻撃がビジネスとして成立してしまうと危ない。技術に投資され、桁違いの攻撃を受ける」と指摘する。情報通信研究機構サイバーセキュリティ研究所の推計では18年はIPアドレス一つ当たり約79万パケットの攻撃があった。情通機構の久保正樹上席研究技術員は「インターネット空間はそのくらい汚れているという感覚が大切だ」という。技術だけで完璧なセキュリティーを求めると多大なコストがかかる。ユーザーをセキュリティーシステムに参加させて現実を知らしめ、システムへの期待値をコントロールする必要がある。後藤学長は「製品の安全と安心のように、ユーザーの納得を引き出す工夫が必要になる」と指摘する。
(文=小寺貴之)

日刊工業新聞2019年4月22日

【ファシリテーターのコメント】
 サイバーフィジカルセキュリティは日本が反転攻勢をかけるチャンスではあります。せめて搾取されないように市場を守るだけの技術力を身に付けないといけません。ただこの分野の国内専門家を煙たがっている状況では難しいかも知れません。そして米中貿易摩擦のように安全保障や覇権争いが絡むと、一企業ではどうにもならなくなります。競合を撤退に追い込むまで、国を挙げて脆弱性が探され突かれることも想定した方がいいと思います。いまは技術に基づいた議論ができ、技術的な指針が立てば制度の設計や運用も国際的に協調できるはずです。ジープのハッキングや官邸ドローンのような事後対応は高くつきます。技術的には一つの計測系がだまされても複数の計測系で保障するシステムが必要になります。これはセンサーフュージョンとして長く研究されてきました。現在は、計測系ごとにノイズやエラーがあってもうまく統合して正しく早く動作させる研究が中心で、ある程度完成したセンサーフュージョンシステムをだます脆弱性に対策する研究はこれからな部分があります。産業視点ではサイバーフィジカルな攻撃があることを前提とするなら、スペックに余裕をもたせてセンサーやデバイスを選ぶようになると思います。攻撃への対策がソフト更新で済めば損失は小さく、リコールなどのハードの交換は損失が大きいです。部品各社のモジュール化・パッケージ化戦略にサイバーフィジカルセキュリティがうまく載ればいいのですが。
小寺 貴之

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_7b3e53579ed9 oa-newswitch_0_119e91c04a0c_AIが日本語を教える?!ドコモが会話学習アプリを企業に提供 119e91c04a0c

AIが日本語を教える?!ドコモが会話学習アプリを企業に提供

 NTTドコモは、人工知能(AI)が日本語の発音や言い回しを判定する外国人向け日本語会話トレーニング支援基盤「ジャパニーズ・ラングエッジ・トレーニングAI」を企業に提供する実証実験を始めた。「カレーハウスCoCo壱番屋」を運営する壱番屋、技能実習生の管理を代行するUTグローバル(東京都品川区)などが利用する。企業や日本語学校の教材として年内の商用化を目指す。

 飲食、宿泊、介護などの業務や用途に特化した会話トレーニングアプリケーション(応用ソフト)を搭載したスマートフォンに日本語で話しかけると、「発音/表現判定AI」が日本語の適切な言い回しを判定する仕組み。

 壱番屋では、接客マニュアルを基にした学習コンテンツを同アプリに収録し、外国人スタッフの教育に利用する。産学官連携による「ヨコハマ・カナガワ留学生就職促進プログラム」では、同アプリを留学生の面接練習に活用する。

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_7b3e53579ed9 oa-newswitch_0_45e93af1f93f_防汚機能塗料シートで汚れしらず!需要増により増産体制 45e93af1f93f

防汚機能塗料シートで汚れしらず!需要増により増産体制

 【名古屋】五合(愛知県春日井市、小川宏二社長、0568・35・2001)は、愛知県小牧市に防汚機能を持つ塗料シートの工場を新設し、2020年2月に稼働する。投資額は3億―4億円。19年3月に本社工場で生産を始めた無機塗料「ゼロ・クリア」のシートタイプが工場や飲食店など向けに需要が見込めるため、増産体制を整える。

 新工場は敷地面積2000平方メートル、2階建てで延べ床面積1000平方メートル。塗料を金属箔(はく)フィルムに塗布し、粘着テープと貼り合わせてシートを製造する設備を本社工場から移管する。当面は幅245ミリメートルのシートを製造するが、将来は同1600ミリメートルに対応する製造設備も導入し、さらに生産増強する方針。

 フィルムに塗布するのは、水を流すだけで油などの汚れが落ちる機能と高硬度特性を持つ塗料。従来は塗料のみで、塗料の塗布後に焼成するため対象物を搬送する必要があり、既存設備への対応が難しかった。材質も耐熱性のある金属やセラミックス、ガラスなどに限られていた。

 シートタイプは廃水処理の負担軽減によるコスト削減につながることなどが評価され、自動車部品メーカーなどに採用されたほか、塗料メーカーなどからの引き合いがある。価格はシートを貼る場所に適応した粘着テープの仕様によって異なり、1平方メートル当たり5000円(消費税抜き)程度。シートのみで20年度に5億―6億円の売上高を見込む。

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_7b3e53579ed9 oa-newswitch_0_6deffd17fc86_仕事の集中度を高めたい!ダイキンが注目する「空調と座席」の相関 6deffd17fc86

仕事の集中度を高めたい!ダイキンが注目する「空調と座席」の相関

 ダイキン工業は、脳波などから仕事への集中度合いを分析し、最も力を発揮できそうな温湿度環境にある座席に誘導するシステムを開発する。同じオフィス内でも仕事がはかどる環境は各自異なる。温湿度と作業効率の相関関係を割り出し、生産性向上に結びつける。今夏にも東京都内で実証を始める。得られた知見を次世代の空調開発に生かす。

 ダイキンは都内に事務所を借り、室内の温湿度環境に差をつけたフリーアドレス制オフィスを開設する。自社の社員を対象にウエアラブル端末などにより生体情報を取得。社員の歩行状況などから生産性を分析する。同時に仮眠が生産性に及ぼす影響も分析する。

 一般に夏場は28度Cと高めの温度で、湿度を下げることで蒸し暑さを解消する考えが主流だ。だがダイキンの先行試験では、温度を下げ、湿度は高い方が仕事に集中できる可能性がある。この仮説を検証できれば、これまでとは異なる温湿度設定で運転する空調の開発につながる。

 ダイキン工業は業務用空調で国内シェア首位。ただ、市場が成熟化し、省エネルギー性能だけでは差別化が難しくなった。生産性やヘルスケアと組み合わせた次世代空調を模索し、成熟市場での成長を目指す。オフィスでは温度を一律で設定する場合がほとんどだが、実証成果次第で細かい温湿度制御ができる多機能機種の需要が高まる期待もある。

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_7b3e53579ed9 oa-newswitch_0_6a41291f0ccb_空の移動革命に乗り遅れるな!動き出す自治体 6a41291f0ccb

空の移動革命に乗り遅れるな!動き出す自治体

 「さあ、空を走ろう」ー。経済産業省が制作した動画ではこんなキャッチコーピーとともに、未来社会のある日常が描き出される。過疎地に1人暮らしの祖父を訪ねた少年。滞在中に体調を崩すも、祖父は「空飛ぶクルマ」を難なく手配し、孫を都市部の病院へ無事搬送し事なきを得る。

出典: YouTube


「空を走る」時代に
 「eVTOL」と呼ばれる電動垂直離着陸機や小型無人機「ドローン」をはじめとするといった次世代モビリティーには自治体も大きな期待を寄せている。地域課題の解決や経済活性化、観光振興が見込めるからだ。例えば、都市部では交通渋滞を避けた通勤や通学への活用、離島や山間部では前述の動画が描き出すような身近で手軽な移動手段、このほか物流や災害時などの救急搬送など大きな役割を果たすと考えられている。

都市交通の未来切り拓く
 2019年度から「空飛ぶクルマ」の試験飛行が始まる見通しだが、多くの自治体がその誘致に向けて動いている。
 「新たな構想が都市交通の未来を切り拓くことを楽しみにしている」。2018年夏、東京都の小池百合子知事は米配車サービス大手、ウーバー・テクノロジーズが開催した「空飛ぶタクシー構想」の説明会でこう述べた。革新的な技術に対する感度が高く、グローバル経営者との交流も広い小池知事だが、次世代モビリティーに対する都の本気度は開発企業に対する支援規模からもうかがえる。
 国内初のeVTOLの開発を手がけるSkyDriveは、都から最大3年3カ月、5億円の補助を受けることが決まった。同社は東京五輪・パラリンピックが開催される2020年のデモフライトを目標とする有志団体CARTIVATOR(カーティベーター)のメンバーを中心に設立された企業。SkyDrive代表取締役でCARTIVATOR共同代表の福澤知浩さんは「多く外国人が訪れ、ますます人口も集中する東京都で災害時・観光・移動手段などのユースで活用されることを目指しています」とコメントしている。都政策企画局では「『空飛ぶクルマ』が社会実装されれば、高齢者の移動手段はもとより、都市部の移動時間の短縮にもつながる」と早期の実現に期待を寄せる。
 一方、大阪府では夢洲や舞洲などでの実証実験が予定されていることに加え、地元の中小企業が技術を持ち寄り、「空飛ぶクルマ」を開発するプロジェクトもこのほど始動した。開発するのは、6つのプロペラで飛行する1人乗りの機体で、1時間程度の連続飛行を想定。2025年の大阪万博でのデモ飛行を目指している。

 離島や山間部を結ぶ社会インフラとして期待を寄せるのは三重県。2019年度は国内のベンチャー企業や物流事業者などの民間事業者による実証実験を誘致するとともに、導入効果調査を実施する計画だ。こうした取り組みを通じて、離島や山間部を有する地域を中心とする交通の改善や観光振興、災害対策などにつなげる狙いだ。
 行政分野での「ドローン」利活用を進める兵庫県。これまでに約30機を所有し、操縦可能な職員が災害現場や工事実施後の調査などに用いてきた。2019年度からは神戸市とも連携し、全庁あげて積極利用し、多様な分野・業務の効率化や行政サービスの向上を目指す。

空の環境整備も
 ドローンをはじめとする、新たなモビリティーが空を頻繁に飛び交うー。そんな時代を見据えたインフラ整備も進む。
 今年2月末。「福島ロボットテストフィールド」(福島県)および周辺で行われた実証実験。900メートル×600メートルの空域に複数事業者のドローン10機を同時に飛ばし、衝突することなく安全に飛行するための運航管理が実施された。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)がNECやNTTデータ、日立製作所など8つの企業や団体と開発したもので、今後、プロジェクトに参画していない事業者も運航試験を同フィールドで実証できるようシステムのAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を公開する計画だ。

 社会の旺盛な需要に伴い、開発が急ピッチで進む「空飛ぶクルマ」。これまで航空機や空港に限定されていた「空」関連ビジネスが日常に広がることで、新たな需要を喚起し、産業創出につながる可能性を秘めている。安全基準や運航ルールづくりといった制度整備も技術革新や社会の変化に応じて進めていく必要がある。

【ファシリテーターのコメント】
METIジャーナル連載、次回は「航空機に押し寄せる電動化の波」です。      
神崎 明子

外部リンク