cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_43f08422c6c8_揺さぶるイスに匂い装置も、VR体験をよりリアルにする技術の数々 43f08422c6c8

揺さぶるイスに匂い装置も、VR体験をよりリアルにする技術の数々

 広島市立大学の脇田航助教らは、VR(仮想現実)コンテンツ用に搭乗者を揺さぶる駆動いすを開発した。球面と受け皿でいすを支える構造をもち、球面を滑らせることで前後左右に回転する。ジェットコースターやトロッコなどの座席が動く乗り物系VRコンテンツに提案していく。

 半球と受け皿でいすを支え、2本のシリンダーでいすをつり上げるように駆動する。搭乗者といすの重心が低いため、起き上がり小法師のように搭乗者を揺さぶる。身体全体を持ち上げて揺するよりも小さな力で済む。

 いすの回転角度は前後左右いずれも25度で、振れ幅は50度。搭乗者が揺らされると身体がしなるため、頭部の振れ幅は90度近くなる。新たにいすとシリンダーの接続部に回転継ぎ手を採用して、動きの表現を広げた。

 現在は半球を切削加工で製作しているが、金型を用意すれば製造コストを抑えられるという。50万円程度での製品化を目指す。VRアミューズメント施設などに提案。耐久性試験を経て2月を目標に同大発ベンチャーのランバス(広島市中区)で受注生産を始める。
日刊工業新聞2019年1月23日

歩行できる装置も開発
 広島市立大学の脇田航助教は、仮想現実(VR)ゲーム用の360度方向の歩行入力装置を開発した。腰を囲むドーナツ状のクッションの中に荷重センサーを配置し、移動方向を検出する。歩くように脚を上げた動きを計測して歩行や走行としてVRゲームに入力する。直径1メートル程度の装置の中で無限に歩き続けるようなVR体験ができる。

 VRゲームでは全身の動きを狭いスペースで計測し、コンテンツに反映させることが課題になっている。本当に歩いたり走ったりすると広いスペースが必要になり、ヘッドマウントディスプレー(HMD)などの配線の取り扱いが問題になってくる。

 そのため乗馬やサーフィンのような乗り物に乗せて下半身の動きを制限するコンテンツがアミューズメント施設では主流だった。

 今回、脇田助教は、クッションで腰を囲い、脚を動かしても実際には移動しない計測装置を開発した。クッション内部には腰の高さに荷重センサーが配置され、装置に体重をかけるとその力を検出する。さらに膝の上げ下げを、膝の付け根の高さのセンサーで計測する。膝の角度の計測分解能は5―15度程度。膝を上げ下げする速度を移動速度に反映できる。

 検出システムの部品原価2万円で構成できる。研究用試作ではドーナツ状のクッションや架台が高価になっているが、構造自体はシンプルなため量産機ではコストを抑えられると見込んでいる。

 ベンチャーを立ち上げて事業化する計画。まずは施設用のVRアトラクションに提案する。将来は家庭用の歩行入力システムに展開したい考えだ。

日刊工業新聞2019年12月26日
東工大は香りで演出
 東京工業大学の加藤真悟大学院生と中本高道教授らは、消臭機能付き嗅覚提示ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)を開発した。部屋ににおいが充満しにくく、匂い情報を切り替えやすい。VR(仮想現実)コンテンツに香りを加えてよりリアルな体験を演出できる。

 HMDに後付けする形で、芳香部と消臭部を鼻を挟むように配置した。芳香部では香料を吐出すると弾性表面波素子に液滴がのり、高周波振動で霧状になって漂う。消臭部では霧を吸い込み、活性炭で吸着する。4種の香料をセットできる。

 1度に吐出する液滴は3ナノ―10ナノリットル(ナノは10億分の1)。においの強さは滴下量で調整する。香料1ミリリットルで10万回滴下できる。香料を混ぜることで幅広い香りを表現できる。

 HMD上で芳香・消臭することで部屋全体ににおいがこもりにくくなる。残り香が混ざらず、VRコンテンツ中のシーンの切り替えがしやすくなる。

 VR映画館のように同時に複数の人がVRコンテンツを鑑賞する場合でも、鑑賞者全員でのにおいの時刻同期が要らない。HMDなどの装着から鑑賞終了まで一人ひとり運用できるため、セットアップの人員を抑えられる。鼻の周辺にだけ香料が漂うため、空間全体に香りをまく例に比べて香料を減らせると期待される。HMDのVRコンテンツでは第一人称視点の作品が多く、鑑賞者が目を向けないと状況が伝わらないことがあった。においで視覚を補完することができる。

日刊工業新聞2019年1月16日

【ファシリテーターのコメント】
東映が映画館で公開したVR映画を以前、体験したのですが、音の迫力によって没入感がこんなにも違うのかと感じました。上記紹介した技術によって没入感がどの程度変わるのか、ぜひ体験してみたいです。
葭本 隆太

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_f319a800cdbd_電動車いすの会社じゃない!「WHILLが建築をやる可能性も」と語るワケ f319a800cdbd

電動車いすの会社じゃない!「WHILLが建築をやる可能性も」と語るワケ

 WHILL(ウィル、横浜市鶴見区)のパーソナルモビリティー「ウィル」は、デザイン性の高さと新しい運転感覚で、電動車いすを『乗りたい物』に変えた。最近では自動走行により、歩道領域のラストワンマイル移動の担い手として注目される。杉江理最高経営責任者(CEO)に移動の未来を聞いた。

移動の未来
 -街でウィルを見かけ、利用が広がってきたと感じます。
 「今、累計販売は世界で1万台に届かないくらい。乗る人が増え、社内のモチベーションも上がっている。プロダクト販売では地域や対象ユーザーを拡大し、販売を加速したい。歩道領域の自動運転システムによるMaaS(乗り物のサービス化)事業は、2020年のサービス開始に向け実証実験を重ねる。例えば、空港内で目的のゲートまで人を乗せて自動走行し、無人で元の場所に戻るような利用をイメージしている」

 -従来の電動車いすとのどんな違いが、『乗りたい』と思われるポイントになったのでしょうか。
 「普通は動かないイスが動くと違和感があるため、イスに見えないことにこだわった。バイクや車と同じように運転姿勢をとれる。一方、運転操作は右手のジョイスティックで、コンピューターのマウス操作の感覚でできる。前輪タイヤは、小さな24本のタイヤを輪っか状に連ねた特殊な構造。地面に接した一部のタイヤだけが横に回転して、横移動もできるため走破性がいい」

目標は“ツルツル”の地球
 -会社の将来像は。
 「電動車いすの会社と思われているが、そうではない。『全ての人の移動を楽しくスマートにする』が当社のミッション。あたかも進む先に何の障害もない、地球を全て“ツルツル”にしたような世界を目指す。段差を平たんにしたり、避けるルートを示したり、やり方はいろいろある。もしかしたら、建築やドアを手がけるかもしれない。可能性は無限大だ」

 -想定される事業領域は幅広いですね。
 「13年にツルツルの地球を絵にした際は、最初は『理解不能』と言われたが、多くの人が覚えてくれた。最近のMaaSなどはイメージに近づいている。ここへ向かう過程で、当社が勝てる方法を見つけ、実行する」

放浪から起業へ
 -ビジョンを実現するチームのカギは。
 「設立当初からミッション起点の組織ということが良かった。私はSNS(参加型交流サイト)もあまりやらず、個人としての情報発信力はない。ミッションやプロダクトに共感して人が集まってくれる。ベンチャーにとって資金調達は常に課題となるが、チームと市場性、時流に乗ったことで達成した。創業者は私を含め3人。製品を作れて、やめそうにないチームだ」

 -起業する前、仕事をしながら世界を放浪していたそうですね。
 「中国語を話せたらいいなと思い、最初は中国へ行った。『生きることは何だろう』と思って放浪していた。その答えは見つからなかったが、たまたま出会いがあって、ウィルというやることが見つかった」

「本気で作らないならやめろ」
 -車いすユーザーの『100メートル先のコンビニに行くのも諦める』という言葉から、ウィルを開発したエピソードが印象的です。
 「週末に一緒にモノづくり仲間同士で制作し、11年の東京モーターショーに出展したコンセプトモデルは世界中から好評を得た。だが、ある一人の車いすユーザーから『買えないものを見せるのは残酷だ。本気で作らないならやめろ』と怒られた。本当に言われた通りで、大企業の新事業開発なども世に出ないものが多い。『そういうのはやめよう』とメンバーと話し、量産して皆が買えるようにするため、会社を立ち上げた」

 -起業を決意することに、心理的なハードルはありませんでしたか。
「当時の私は“ニート”みたいなものだったので、特に迷わなかった。起業で生活が変わるわけではない。それまでの延長線の感覚で起業した。その後、他の2人の創業者も会社を辞めて、ウィルに加わった」

やれる場所を見つけて
 -量産までには、どんな苦労がありましたか。
 「最初にプロダクトを購入してくれる人を5人探し、その人たち向けのプロダクトを作りながら仕様を固めていった。この段階が大変だった。使ってもらえばもらうほど、他の課題が見えてくる。日本での50台の組み立て、台湾での500台の量産も、それぞれ違う難しさがあった」

 -起業家志望の人に伝えたいことは。
 「やりたいことがあれば、柔軟な思考回路で、それをやれる場所を見つけてやるといい。日本に限らない。当社は投資家がいたから、米シリコンバレーに行った。始めると、予想してなかったことがいろいろある」
 「ウィルを出て起業した人もいる。最初から起業しようと思っていたかはわからないが、今の段階はウィルで学べることが多い。そういう人が出てくるのはいいことだと思う」

連載「ポスト平成の経営者」
激動の平成を支えたベテラン経営者と、今後を担う若手経営者に「ポスト平成」への提言・挑戦を聞くインタビューシリーズ
(1)キッコーマン取締役名誉会長・茂木友三郎氏「世界の情勢に乗るな。自ら需要を創り出せ」
(2)キヤノン会長兼CEO・御手洗冨士夫氏「米国流に頼るな。グローバル経営に国民性を」
(3)テラドローン社長・徳重徹氏「『世界で勝つ』は設立趣意。不確実でも踏み込め」
(4)ユーグレナ社長・出雲充氏「追い風に頼るな。ミドリムシで世界を席巻」
(5)プリファードネットワークス社長・西川徹氏「誰もが自在にロボット動かす世界をつくる」
(6)元ソニー社長・出井伸之氏「これが平成の失敗から学ぶことの全てだ」
(7)日本生命保険名誉顧問・宇野郁夫氏「経営に『徳目』取り戻せ。これが危機退ける」
(8)オリックスシニア・チェアマン・宮内義彦氏「変化を面白がれば、先頭を走っている」
(9)東京電力ホールディングス会長・川村隆氏「日本のぬるま湯に甘えるな。今、変革せよ」
(10)JXTGホールディングス会長・渡文明氏、10兆円企業の礎を築いた合併・統治の極意
(11)ダイキン工業会長・井上礼之氏「二流の戦略と一流の実行力。やっぱり人は大事にせなあかん」
(12)昭和電工最高顧問・大橋光夫氏、初の抜本的な構造改革、個人の意識改革が最も重要だった
(13)パナソニック特別顧問・中村邦夫氏、次の100年へ。中興の祖が語る「改革」と守るべきもの
(14)住友商事名誉顧問・岡素之氏、終わりなき法令遵守の決意。トップは社員と対話を
(15)セブン&アイHD名誉顧問・鈴木敏文氏、流通王が語るリーダーに必須の力

日刊工業新聞2019年4月17日掲載より加筆

【ファシリテーターのコメント】
ウィルに乗ってみると、初めてでも思い通りに動けました。植木鉢の周りもくるっと回ってキュッと止まれるので、自分の体の延長のように感じて、どこにでも行けそうな気になります。ただ、実際は屋内も屋外も段差やドアがたくさんあり、モビリティーだけでは自由には動けません。“ツルツルの地球”はインパクトのあるビジョンなので、いろいろな企業や人が共有して、実現に向けて協力できればいいと思います。余談ですが、某マンガに出てくる、超一流のおじいさんパイロットが乗っていた“バギー”みたいだと思いました。

梶原 洵子

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_a82fe6a9908b_教学と分離へ、国立大に問われる“経営センス” a82fe6a9908b

教学と分離へ、国立大に問われる“経営センス”

 名古屋大学と岐阜大学の統合を可能にする国立大学法人法の改正案が、国会で審議中だ。実はこれは私立大学と同様の“経営と教学の分離”を、全国立大で導入可能にするものだ。企業経営者など学外理事も増強となる。これにより、教員と異なる経営センスを国立大に求める流れは、さらに強まりそうだ。

 改正の柱の一つは私立大と似た仕組みの導入だ。私立大では経営を見る学校法人トップの「理事長」と、大学の教学(教育・研究)に責任を持つ「学長」がいる。

 これに対して法人化後の国立大は理事長を置かず、学長が法人の長と大学の長を兼ね、数人の理事を束ねてきた。

 86国立大は現行のままでもよいが法人の長「理事長」と、大学の長「大学総括理事」つまり大学を総括する筆頭理事を置く形が可能になる。理事長には寄付集めや施設整備など経営で手腕を発揮してもらう。文部科学省は「強化のため切り離すべきだと考える大学に向けて、選択肢を多くした」(高等教育局国立大学法人支援課)と説明する。

 名大などの1法人複数大学制(アンブレラ方式)の場合、法人の長の理事長1人に、大学それぞれの大学総括理事を置く。法人の長を1大学の大学総括理事が兼ねることもできる。もっとも「東海国立大学機構」といった仮称も出ており、日常的には厳密でなく「機構長」や「学長」などが呼称として使われる見込みだ。

 改正のもう一つは外部理事の複数化だ。国立大は規模によって理事(学長は含まない)数が3―8人と定められ、うち1人は外部人材だ。これを理事4人以上の規模の大学で「学外理事を2人以上」とする。ただし「非常勤の学外理事なら枠を追加可」とする。

 これは現役の経営者などを非常勤理事で迎えるなら、学内理事枠を減らさないでよいという意味だ。トップの体制も理事枠も、横並びを求めるものではない。各大学の特徴を生かした独自判断に任されることになる。
(文=山本佳世子)


<関連記事>
国立大が生き残っていくための「卓越」という選択
日刊工業新聞2019年4月18日

【ファシリテーターのコメント】
実は先進例が指定国立大である。京大、東北大、名大、東工大などが独自に設置した「プロボスト」(筆頭理事)だ。学長が経営に目配りをし、学外からの寄付金集めなどに力を入れる一方、プロボストが教学のトップとして学内教職員をまとめ上げる仕組みだ。現状で可能な形として導入されているが、これに法律による裏づけをすることになる。一方、経営と教学の分離は、私立大学でしばしば起こり、「理事長と学長の対立」と週刊誌を賑わせている。この心配があるため、国立大の基本路線は一人で両トップを兼ねる形だと、文科省はいっている。ツートップ体制は統合や、企業からの資金獲得に注力する大規模大学に限った形となるようだ。

山本 佳世子

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_bb58eb450c1d_【上海モーターショー】現地取材で記者が聞き出した各社の言葉 bb58eb450c1d

【上海モーターショー】現地取材で記者が聞き出した各社の言葉

 【上海=渡辺光太】日系自動車メーカーが中国市場の攻略に向けて電気自動車(EV)など新エネルギー車(NEV)を拡充する。16日に開幕した上海モーターショーでは、NEVの初披露が相次いだ。中国市場は政府が環境規制などを強化しており、2020年以降にNEV市場が拡大期を迎える見通し。規制動向を見据えながら各社がNEVに本腰を入れ始めている。

 トヨタ自動車は、小型スポーツ多目的車(SUV)「C―HR」の電気自動車(EV)を初披露した。同時公開した兄弟車「イゾア」のEVとともに、20年に発売する。トヨタが中国で自社ブランドのEVを展開するのは初めて。その理由について、吉田守孝トヨタ副社長は「中国における新エネ車は高いニーズがある。電動車をずっとやってきた当社の実績が受け入れられるはずだ」と述べた。

 一方、ホンダは現地合弁会社の東風ホンダと開発したEVを19年後半にも販売する。広汽ホンダが発売する中国専用EV「理念VE―1」に続く、「EVシリーズの第2弾」(水野泰秀本田技研工業中国投資総経理)と位置付ける。これにより合弁相手の中国の2社と投入する主力EVが出そろった格好だ。20年にはプラグインハイブリッド車(PHV)も導入し、電動車を拡充する。

 EVで先行する日産自動車は、現地ブランド「ヴェヌーシア」のSUV「T60EV」など3車種を年内に投入する。三菱自動車は、クロスオーバー型SUV「e―Yi CONCEPT」のPHVを初公開した。EV走行モードでは時速70キロメートル以上で、700キロメートルを超える走行距離を実現する。

 満を持して、中国攻略に向けた電動車を打ち出した各社。NEVの分野では現地のEVメーカーや欧州勢が先行しており、日系メーカーは追撃する。

トヨタはNEV協業加速、有望技術獲得狙う
 【上海=渡辺光太】トヨタ自動車の吉田守孝副社長は16日、日刊工業新聞社などの取材に応じ「環境規制のクリアに向けて現地電気自動車(EV)メーカーとの協業を増やす」と述べ、EVなど新エネルギー車(NEV)の分野で提携や協業を加速する方針を示した。中国で2019年に始まったEVなどの生産を義務付ける「NEV規制」に対応する。NEVを手がける企業からクレジットを安定的に購入するほか、NEV分野での有望な技術を獲得する狙いだ。

 第1弾としてEVメーカーの奇点汽車と協業する。同社はトヨタが外販する電動車の設計・生産に関わる技術を利用して、自社のEVの性能向上やコスト削減を進める。トヨタは奇点汽車が生産したEVなどを基に、余剰クレジットを得る。

 トヨタは合弁先や自社ブランドのNEVを生産販売することに加え、他社からクレジットを購入することでNEV規制をクリアする戦略だ。

 NEV規制で定められるクレジットは19年が10%だが、20年は12%と厳格化していく。規制をクリアできないと、エンジン車などの生産が制限される。足元で中国市場が好調なトヨタは規制クリアに向けて確度を高め、販売や生産への影響を払拭(ふっしょく)する。

 また中国で合弁事業は2社までとする外資規制が緩和されておりNEV分野では3社目が可能なほか出資比率に制限がない。そのため、トヨタはNEVを手がける現地新興企業への出資や共同事業なども視野に入れる。

新車販売、28年ぶり前年割れで「質」へシフト
 【上海=渡辺光太】28年ぶりに新車販売台数が前年割れとなった中国の自動車市場。拡大基調に急ブレーキかかった格好だが、中長期的に拡大するのは大勢の見方だ。現地メーカーを含めて量だけでなく質の成長に向けて動き出しており、世界最大市場である中国との向き合い方を再考している。

 中国汽車工業協会によると2018年の中国の新車販売台数は、前年比2・8%減の2808万600台と28年ぶりに前年比でマイナス。米中貿易摩擦が購入意欲の減退を招いている。「特に民族系が打撃を受けている」(日本メーカー幹部)ほか、貿易摩擦の影響を受けやすい米国メーカーのダメージが大きい状況だ。販売量に変調が起きる中、自動車の技術や品質など質の変化も起きている。

 現地メーカーはすでに単純な販売量の追求から、技術やブランド力の向上にシフトしている。王伝福比亜迪(BYD)会長は「市場は回復する。今は技術やブランドを高めることが重要だ」と長期的な戦略を見据える。

 開催中の上海モーターショーで、BYDは15分の充電で走行距離100キロメートルを実現した電気自動車(EV)を公開。奇点汽車は電池を限界まで小型化した小型EV「iC3」を発表するなど新興EVメーカーも技術を駆使しブランドを訴求する展示が目立った。

 一方日系でトップシェアの日産自動車。内田誠専務執行役員は「(量ばかり議論してきたことに)反省している。競争に勝つ強い企業が結局、販売台数を得る。ブランド力や競争力のあるコアモデルを伸ばすことが重要だ」と指摘。今後は人気車種に狙いを定めて拡充する方針だ。トヨタ自動車の吉田守孝副社長も「中国の中でも需要と競争力がある領域でやっていく。台数うんぬんではなく、質にこだわる」と気を引き締める。

 三菱自動車は電動化技術や走破性など強みを再度、車に取り入れる考え。益子修最高経営責任者は「これまでは成長の勢いとスピードに合わせて事業を行ってきた。今後は中身や質に注力する必要がある」と中国市場の節目を意識する。

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_e08b48fbca80_日本IBMの新社長、生え抜き日本人が7年ぶり就任の理由 e08b48fbca80

日本IBMの新社長、生え抜き日本人が7年ぶり就任の理由

 日本IBMは17日、5月1日付でエリー・キーナン社長(54)が取締役会長に就き、山口明夫取締役専務執行役員(54)が社長に昇格する人事を発表した。生え抜きの日本人社長の就任は、橋本孝之氏(64、名誉相談役)以来7年ぶり。山口氏は稼ぎ頭のグローバル・ビジネス・サービス事業本部長として采配を振るってきた。この実績を生かし、5月からは日本企業へのデジタル変革(DX)の支援を加速する。

 日本IBMのトップは12年からマーティン・イェッター取締役会長(59=5月1日付で最高顧問)、ポール与那嶺氏(61=退任済み)、キーナン社長と、3代続いて外国籍が続いた。一連の人事は米IBMによるグローバル戦略に沿ったもので、同時に日本IBMの経営改革を進める狙いがあった。

 この間、経営改革は大きく進んだが、役員職も外国籍が増える中で、実力を持つ日本人幹部らの人材流出が相次いでいた。久々に日本人社長が登板することにより、社内では求心力の高まり、社外ではトップセールスなど客先との関係強化が見込まれる。

【略歴】山口明夫氏 87年(昭62)大阪工業大工卒、同年日本IBM入社。09年執行役員、14年常務執行役員、16年専務執行役員、17年取締役専務執行役員。和歌山県出身。
【素顔】社内外から「人望」厚く
 ソフトウエア技術本部の技術者を出発点として、システム構築(SE)やサービス事業で実力を磨き、米IBMの役員補佐や経営企画も歴任した。次世代金融システムをはじめ大型プロジェクトを数多く手掛け、対外的にはプロジェクトマネージメント(PM)学会のアドバイザリーボードでも活動してきた。

 社内外からの人望が厚い。グローバルでは2017年からIBM経営執行メンバーとなり、各国の実務者幹部との交流を深め、顔が利く。顧客先ではアウトソーシング(外部委託)からクラウドサービスまで幅広いニーズに対応。基幹システムのデジタル革新の提案も精力的にこなす。

 社内向けでは、子どもを招く家族イベント「ファミリー・デー」の新企画として、社員の両親を招くイベントも開催。新入社員の両親から喜ばれたという。趣味はゴルフとテニス。社内ではテニス部の部長を務めた。

(編集委員・斉藤実)

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_40bc2a45bbb1_直流給電式のトンネルLED照明でコスト・工程を大幅に減らす! 40bc2a45bbb1

直流給電式のトンネルLED照明でコスト・工程を大幅に減らす!

 【京都】星和電機は業界で初めて、直流給電方式のトンネル向けの発光ダイオード(LED)照明システムを開発した。既存システムは交流給電方式で、照明器具内の電源装置により交流を直流に変換して点灯する。新システムはトンネル外の装置で直流に変換するため、器具の大きさや重さを半分以下に、トンネル内の配線も小径にできる。施工の手間が省け、電力ロスも低減。既存方式に比べトータルコストで2割超、工事工程で3割超をそれぞれ低減できる見通しだ。

 中国地方の国道でこのほど開通したトンネルに初採用されたのを皮切りに、提案活動を本格化していく。

 LEDは水銀や蛍光ランプなどの従来光源に比べ省エネルギーで、政府も普及に力を入れる。トンネルでの採用も広がっている。LEDは直流点灯だが、従来光源の経緯から交流給電方式となっていた。家庭用と異なり、照明が大量に使われるトンネルでは直流給電のメリットが得やすい。

 従来のトンネルLED照明器具は重さ15キログラムほどだが、新器具は器具内に電源装置が不要のため重量は半分以下。1人で設置でき、人手不足が深刻化する中、省人化が見込める。

 電源装置をトンネル外に集約することで、従来の高所作業より点検、交換も容易。照明器具の明るさ調整が系統ごとの電流調整で行え、調光制御用配線が要らず、トンネル内の配線を比較的細くできる。

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_df45549d768d_麻酔を自動制御する“ロボット”、臨床試験開始 df45549d768d

麻酔を自動制御する“ロボット”、臨床試験開始

 福井大学と日本光電は16日、患者の状態を観察しながら自動で麻酔薬を制御する「ロボット麻酔システム」の開発で、実際の患者に使用して調べる「臨床評価」を3月から始めたと発表した。外科手術中などの患者の状態を測定しながら、全身麻酔に使用する薬剤の全てを自動的に制御する。麻酔科医の労力軽減が期待され、質の高い医療の提供につながる。60人の患者を対象にした臨床研究を進め、2022年度の発売を目指す。

 患者の状態を測定して出力するモニターと制御用のコンピューター、薬剤を注入する注射ポンプから構成される。患者の脳波や血圧などを測定し、その状態や変化に応じ、鎮静薬や鎮痛薬、筋弛緩(しかん)薬といった麻酔薬の調整を自動で行う。麻酔科医の負担が軽減され、人的ミスの予防にもつながる。

 現在、婦人科や耳鼻科などの領域で21例実施しているという。同大医学部の重見研司教授は「自動血圧計のように、幅広く使ってもらえるシステムになると期待している」と話した。

【ファシリテーターのコメント】
          
日刊工業新聞 記者

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_b31b68498f51_課題山積、高揚感が“たこ焼きロボ”開発の支え b31b68498f51

課題山積、高揚感が“たこ焼きロボ”開発の支え

 Dobot(ドボット)という小型の教育用ロボットで試してみて始まった「たこ焼きロボット」のプロジェクト。思いがけない好評を受けて、起業イベントで優勝して仲間や人脈ができた。

 その勢いで「メーカーフェア東京」という展示会に出展できることになった。小型のロボットではさすがにできることが限られていたので、本格的な産業用ロボットを使うことにした。

 とはいっても、自動車の工場にあるような大型の産業用ロボットを使うとなると、あまりに大がかりになり、飲食店や家庭で使う姿はとうてい見えて来ない。そこで、比較的小型ですっきり見える、デンマークのユニバーサルロボットの協働ロボット「UR3」を使うことにした。

 購入すると価格が数百万円と高価なものだが、オリックス・レンテック(東京都品川区)からレンタルすることで、100万円以内のコストに抑えることができた。

 まず、UR3とロボットハンド、カメラの組み合わせだけで、家庭用ホットプレートを使ったたこ焼きシステムを作り上げた。ホットプレートの温度をロボットが手動で調節し、プレート上に油や液を注ぎ、まな板の上のタコを投入し、それを焼き具合に応じてひっくり返していくというシステムで、2カ月弱の準備期間で作った。

 急ごしらえのものだったが、メーカーフェアではたくさんの方に見に来てもらうことができ、それがキリンや日本IBMといった企業の事業共創プログラムに我々が採択されるきっかけになったと思う。

 一方で、調理をするということの難しさが身に染みた。食材の個体差、鉄板の熱のムラ、器具の位置ずれなどにロボットが柔軟に対応しなくてはいけないが、これがとても難しい。

 それまで私は工業品ばかりを相手にしてきたが、扱う対象や環境がこんなにも変化するということはまずありえない。実現するテクノロジーもさることながら、実際にビジネスにしていく上では、飲食業向けの高い生産性、安定性、省スペース性、そして、何はともあれ採算性などチャレンジングな課題が山積していることがわかった。

 とにかく2、3カ月はやってみようということではじめたが、メーカーフェア東京でこの挑戦が非常に価値があるということは、多くの人の反応が物語っていた。これを本気でビジネスとして日本そして世界に広められるのは自分しかいない、なかば勘違いにも似た高揚感をそれからずっと持ち続けている。

 そのようにして私たちの最初の挑戦であるたこ焼きロボット「OctoChef(オクトシェフ)」の開発プロジェクトは始まり、進んでいった。(全8回、毎日掲載)

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_0f0d4a28939f_今年は麦茶が来る!?サントリーが濃縮タイプ缶入り 0f0d4a28939f

今年は麦茶が来る!?サントリーが濃縮タイプ缶入り

 サントリー食品インターナショナルは濃縮タイプの缶入り麦茶「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ=写真」を発売した。180グラム缶を水1―2リットルに混ぜて麦茶が完成する。持ち運びやストックするのに便利。価格は115円(消費税抜き)。

 麦茶を好む家庭では夏場に1日当たり3―4リットルを消費するという。2リットルペットボトルでは持ち運びやストックするのに困るというニーズに対応し、濃縮タイプを開発した。水出しタイプでもないため、水と混ぜて10秒ほどで完成する。水の量は好みの濃度に調整する。
日刊工業新聞2019年4月18日

今年の「清涼飲料」売れ筋は?
 富士経済(東京都中央区)は2019年の清涼飲料市場予測を17年比0・6%増の5兆1950億円と発表した。天候に左右されやすい市場だが、野菜系飲料やヨーグルト飲料、無糖飲料などの好調さを受け、増加を見込む。注目分野は1ミリリットル当たりの価格が0・9円以上と高価格な「プレミアム果汁飲料」と「スムージー」「無糖飲料」。

 19年のプレミアム果汁飲料は、同38・0%増の69億円を予想する。市場はまだ小規模ではあるが、美容や健康に感度の高い女性などから注目を集めている。さらに各社が既存ブランドの育成や拡販に取り組んでいる。

 スムージーは、同39・5%増の410億円。間食に飲用するユーザーが増えていることから安定した市場拡大が予想される。

 無糖飲料は、同4・4%増の1兆5150億円。健康意識の高まりから緑茶やほうじ茶、麦茶、無糖炭酸飲料などが市場拡大に貢献するとみる。
日刊工業新聞2019年3月19日

ポッカサッポロは新コンセプト
 ポッカサッポロフード&ビバレッジ(名古屋市中区、岩田義浩社長、052・249・5583)は4日、無糖茶シリーズを新コンセプト「TOCHIとCRAFT」として2月以降に展開すると発表した。「加賀棒ほうじ茶」「知覧にっぽん紅茶」などに、25日から「伊達おいしい麦茶」を加え、6品目のラインアップ。2019年のシリーズの販売で前年比20%増の430万ケースを目指す。

 伊達おいしい麦茶は宮城県産の六条大麦「シュンライ」を100%使用。熱風焙煎(ばいせん)により大麦のコクとうまみを引き出した。消費税抜きの価格は525ミリリットル入りペットボトルで124円。

日刊工業新聞2019年2月5日

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損保ジャパン、助言するAI開発で電話対応力アップを目指す

 損保ジャパン日本興亜は保険金支払いで顧客と電話対応する担当者の応対力向上を支援する人工知能(AI)開発に着手する。リアルタイムで顧客の感情を分析して、場面に応じた行動指針を提案する。顧客満足度の向上につなげるほか、新人教育など人材育成にも利用する。NTTコミュニケーションズと実施し、2022年度の運用開始を目指す。

 損保ジャパンは18年2月、全国の保険金サービス拠点に「音声認識システム」を導入。約1万人の担当者の音声データをテキスト化して蓄積している。第一ステップでは、会話の間や発話数など一般担当者と顧客評価が高い担当者の違いを抽出して可視化する。

 第2ステップは顧客が何に満足したのか推定するAI開発を実施。NTTグループのAI技術を使い、応対時に何が重要な要素となるかを把握する。第3ステップでは、リアルタイムで顧客の感情を分析して、担当者に助言するAI開発を目指す。満足していないと推定すれば、担当者に再度説明を促す。

 同社は、顧客評価が高い担当者をハイパフォーマーと呼び、現在は全体の約20%。AIの運用で、25年度までに80%まで引き上げる計画。心情に配慮した応対によって、安心感を与え満足度を高める。

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