cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_43f08422c6c8_揺さぶるイスに匂い装置も、VR体験をよりリアルにする技術の数々 43f08422c6c8

揺さぶるイスに匂い装置も、VR体験をよりリアルにする技術の数々

 広島市立大学の脇田航助教らは、VR(仮想現実)コンテンツ用に搭乗者を揺さぶる駆動いすを開発した。球面と受け皿でいすを支える構造をもち、球面を滑らせることで前後左右に回転する。ジェットコースターやトロッコなどの座席が動く乗り物系VRコンテンツに提案していく。

 半球と受け皿でいすを支え、2本のシリンダーでいすをつり上げるように駆動する。搭乗者といすの重心が低いため、起き上がり小法師のように搭乗者を揺さぶる。身体全体を持ち上げて揺するよりも小さな力で済む。

 いすの回転角度は前後左右いずれも25度で、振れ幅は50度。搭乗者が揺らされると身体がしなるため、頭部の振れ幅は90度近くなる。新たにいすとシリンダーの接続部に回転継ぎ手を採用して、動きの表現を広げた。

 現在は半球を切削加工で製作しているが、金型を用意すれば製造コストを抑えられるという。50万円程度での製品化を目指す。VRアミューズメント施設などに提案。耐久性試験を経て2月を目標に同大発ベンチャーのランバス(広島市中区)で受注生産を始める。
日刊工業新聞2019年1月23日

歩行できる装置も開発
 広島市立大学の脇田航助教は、仮想現実(VR)ゲーム用の360度方向の歩行入力装置を開発した。腰を囲むドーナツ状のクッションの中に荷重センサーを配置し、移動方向を検出する。歩くように脚を上げた動きを計測して歩行や走行としてVRゲームに入力する。直径1メートル程度の装置の中で無限に歩き続けるようなVR体験ができる。

 VRゲームでは全身の動きを狭いスペースで計測し、コンテンツに反映させることが課題になっている。本当に歩いたり走ったりすると広いスペースが必要になり、ヘッドマウントディスプレー(HMD)などの配線の取り扱いが問題になってくる。

 そのため乗馬やサーフィンのような乗り物に乗せて下半身の動きを制限するコンテンツがアミューズメント施設では主流だった。

 今回、脇田助教は、クッションで腰を囲い、脚を動かしても実際には移動しない計測装置を開発した。クッション内部には腰の高さに荷重センサーが配置され、装置に体重をかけるとその力を検出する。さらに膝の上げ下げを、膝の付け根の高さのセンサーで計測する。膝の角度の計測分解能は5―15度程度。膝を上げ下げする速度を移動速度に反映できる。

 検出システムの部品原価2万円で構成できる。研究用試作ではドーナツ状のクッションや架台が高価になっているが、構造自体はシンプルなため量産機ではコストを抑えられると見込んでいる。

 ベンチャーを立ち上げて事業化する計画。まずは施設用のVRアトラクションに提案する。将来は家庭用の歩行入力システムに展開したい考えだ。

日刊工業新聞2019年12月26日
東工大は香りで演出
 東京工業大学の加藤真悟大学院生と中本高道教授らは、消臭機能付き嗅覚提示ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)を開発した。部屋ににおいが充満しにくく、匂い情報を切り替えやすい。VR(仮想現実)コンテンツに香りを加えてよりリアルな体験を演出できる。

 HMDに後付けする形で、芳香部と消臭部を鼻を挟むように配置した。芳香部では香料を吐出すると弾性表面波素子に液滴がのり、高周波振動で霧状になって漂う。消臭部では霧を吸い込み、活性炭で吸着する。4種の香料をセットできる。

 1度に吐出する液滴は3ナノ―10ナノリットル(ナノは10億分の1)。においの強さは滴下量で調整する。香料1ミリリットルで10万回滴下できる。香料を混ぜることで幅広い香りを表現できる。

 HMD上で芳香・消臭することで部屋全体ににおいがこもりにくくなる。残り香が混ざらず、VRコンテンツ中のシーンの切り替えがしやすくなる。

 VR映画館のように同時に複数の人がVRコンテンツを鑑賞する場合でも、鑑賞者全員でのにおいの時刻同期が要らない。HMDなどの装着から鑑賞終了まで一人ひとり運用できるため、セットアップの人員を抑えられる。鼻の周辺にだけ香料が漂うため、空間全体に香りをまく例に比べて香料を減らせると期待される。HMDのVRコンテンツでは第一人称視点の作品が多く、鑑賞者が目を向けないと状況が伝わらないことがあった。においで視覚を補完することができる。

日刊工業新聞2019年1月16日

【ファシリテーターのコメント】
東映が映画館で公開したVR映画を以前、体験したのですが、音の迫力によって没入感がこんなにも違うのかと感じました。上記紹介した技術によって没入感がどの程度変わるのか、ぜひ体験してみたいです。
葭本 隆太

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_dd73e017e3bd_日産・ルノー・ダイムラー、「協業」凍結状態に dd73e017e3bd

日産・ルノー・ダイムラー、「協業」凍結状態に

 日産自動車が、仏ルノー、独ダイムラーと取り組む1トンピックアップトラックをめぐる協業が凍結状態にあることが分かった。3社ブランドの車両をアルゼンチン工場で手がける計画だったが、日産車のみの生産にとどまる。また次期モデルの開発の協議は進んでおらず、共同事業は現行モデルで終息する可能性がある。日産は筆頭株主のルノーとの関係が不安定化しており、今後のダイムラーとの協業にも響きかねない。提携戦略の総合的見直しが急務となっている。

 日産はルノーとともに2015年にダイムラーと1トンピックアップトラックでの協業を発表した。日産の「ナバラ」をベースにルノーは「アラスカン」、ダイムラーは「Xクラス」を開発し17年までに発売した。

 現在、これら3モデルは日産のスペイン・バルセロナ工場で生産する。さらにルノーのアルゼンチン工場に6億ドル(約650億円)を投じてラインを整備し、日産の運営で3ブランドの車両を20年末までに生産する計画だったが、ダイムラーがキャンセル、ルノーの計画も進んでいない。

 ルノーとダイムラーはそれぞれ1トンピックアップを欧州や北米、中南米で拡販する計画だったが、同車種の市場が小さい欧州では特に苦戦している。また欧州では環境規制が厳しくなり、開発費負担が重荷になる。日産はナバラの次期モデル開発に着手したが、ルノーとダイムラーは関与していない。日産幹部は「先方の判断次第」と消極的で今後の展望はみえない。

 日産・ルノーはダイムラーと10年に提携した。協業は複数にわたり、エンジン共同生産など順調な取り組みもある。日産の提携戦略ではルノーとの関係再構築に加え、ダイムラーとの共同事業の選択と集中を進められるかも課題となる。

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_7aabf547256c_次世代家電は“名もなき家事”を解消するか 7aabf547256c

次世代家電は“名もなき家事”を解消するか

 大型の展示会は、その時点での業界動向だけでなく、近い将来の技術や産業像まであぶりだす。先週閉幕した国内最大の電機・情報技術・IoT(モノのインターネット)の総合展示会「CEATEC(シーテック)2019」で各社はどんな姿を見せたか―。

スマートライフ
 家電見本市としての存在感は薄れたシーテックだが、スマートライフの加速に家電製品の進化は欠かせない。他社製品・サービスとの連携強化や「名もなき家事」への注目、異業種の参入など、家電製品を取り巻く環境変化を映し出した。

 大手各社は、他社も含めた製品・生活サービスとの連携強化で利便性の向上を図る姿勢をシーテックで強調した。シャープは、子会社を立ち上げて独自のプラットフォーム(基盤)の外販や異業種との連携を進めている。その一つであるAIoTクラウド(東京都江東区)の赤羽良介社長は「プラットフォームへの接続機器の多さがスマートライフ拡大の原動力」と語る。高付加価値製品の競争では、単独で乗り切る難しさが強く意識されている。

名もなき家事
 こうした中、家電と生活サービスとの連携が拡大することで、一般的に家事と認識されづらい作業を指す「名もなき家事」の解消が新たな競争軸になりそうだ。日立グローバルライフソリューションズ(東京都港区)は、新作のドラム式洗濯乾燥機で米アマゾン・ドット・コムのサービスとの連携を発表。洗剤や柔軟剤の消費量に応じて自動注文する機能を予定している。

 新製品開発でも、名もなき家事の解消は注目テーマの一つ。ベンチャー企業のアスティナ(東京都千代田区)は、洗濯物を自動で折り畳んで収納するたんす「インダン」を開発中。「家庭はベンチャー企業も取り組みやすいテーマ」(儀間匠代表)だけに、新たなコンセプトの製品の登場に期待がかかる。

デザインで攻勢
 空間の除菌・脱臭に注目した製品も相次いだ。カルテック(大阪市中央区)は、壁掛けタイプの空間除菌・脱臭機や、除菌・脱臭ができる発光ダイオード(LED)照明など、一般的な空気清浄機とは一線を画すデザインや設置方法で攻勢をかけている。

 異業種からは、日機装が11月に発売予定の空間除菌消臭装置を出展。深紫外線LEDの技術を活用して、8畳ほどの空間の清潔を保つという。クリエイティブテクノロジー(川崎市高津区)は、半導体部品の製造技術を応用して携帯型の空気清浄機を開発。20年春までの投入を目指している。従来型の空気清浄機でも、大手各社を中心にウイルス・花粉対策や生活臭の解消といった機能向上が進む。快適な空間へのニーズは根強く、大手もベンチャーも商機を見いだしている。

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_beb0d4a857ae_コンビニコーヒーのふた、香りも楽しむ一工夫 beb0d4a857ae

コンビニコーヒーのふた、香りも楽しむ一工夫

 ローソンは22日から店頭のマシンでいれる「マチカフェ」のホットコーヒーで、飲み口のフタを起こすと鼻の位置に穴が開き、直接香りを楽しめるようにする(写真)。ホットコーヒーのSサイズから提供を始めて、順次大きなサイズに展開する。

 従来の最初からフタに穴が開いているタイプは持ち歩きの際にこぼれ、購入後に切り取って穴を開けるタイプは取った部分がゴミになる課題があった。このため一回の作業で自動的に穴が開くフタを開発した。

 フタやカップのメーカーなど4社で特許を出願中。

 フタの開発と同時に、約1万3600店舗にあるマチカフェのブレンドコーヒーは、使用する豆の焙煎(ばいせん)方法を見直し、商品をリニューアルした。価格は従来のままで、Sサイズが消費税込み100円、Mサイズが150円。

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_d572ad1b22b7_ようやく深夜休業のセブン―イレブン、「最後はオーナーの判断」という意味深 d572ad1b22b7

ようやく深夜休業のセブン―イレブン、「最後はオーナーの判断」という意味深

 セブン―イレブン・ジャパンは21日、加盟店に対する「深夜休業ガイドライン」を11月1日に発布し、同日から8店舗が深夜休業を実施すると発表した。4月から深夜休業の実験をしてきた約230店舗(9月末現在)のうち、6カ月の実験を終えた8店舗が深夜休業を開始する予定で、“時短”営業を容認した格好だ。都内で会見した永松文彦社長は「時短の選択は、最終的にはオーナーの判断で決めていただく」と強調した。

 セブン―イレブン・ジャパンでは深夜営業について、事前のテスト実施を推奨している。7月の加盟店向けアンケートでは、深夜休業テストの実施について、約15%に当たる約2200店が実施中または実施を検討していると回答。これらを踏まえて深夜休業をする前の確認事項、労務対応、深夜配送実施の準備や締結する契約などをガイドラインに盛り込んだ。「お客さまのニーズ、深夜の商圏、人手不足、加盟店収益を本部とオーナー様で話し合い、最終はオーナー様の判断」という。

 11月1日から8店舗が本格的に深夜休業を導入することで、今後深夜休業店舗が増える可能性については明言を避けた。8店舗による本部への収益減少の影響は少ないとした。

 セブン&アイ・ホールディングスは10日の決算発表時に井阪隆一社長が、2020年3月から加盟店が本部に納める加盟店料(ロイヤルティー)を引き下げることを発表。「売上高が低い店舗に傾斜をかける仕組み」(井阪社長)で、1店舗当たり平均年間約50万円の利益が改善する一方、本部の利益は約100億円減額となる。

 業界ではローソンが、すでに全国98店舗で時短営業中だ。ファミリーマートは時短実験中の店舗数は明らかにしていないが、個店の事情で時短営業の店舗があるという。業界第4位のミニストップは、21年度から従来までの加盟店料を見直し、本部と加盟店がコストを応分に負担して利益を分配するモデルにすると公表している。
日刊工業新聞2019年10月22日


「オーナーと『すべて共有』が強さ」
 2月に大阪のセブン―イレブンのフランチャイズ加盟店オーナーが夜間の人手不足から時短営業を強行したのを機に、人手不足に苦しむコンビニの24時間営業が社会問題化した。コンビニ各社は時短営業の実証実験を始め、「24時間営業=コンビニ」というビジネスモデルの再検討を迫られている。永松文彦セブン―イレブン・ジャパン社長に聞く。

 ―課題山積のタイミングで社長に就任されました。何から取り組みますか。
 「まずコミュニケーションをよくしたい。創業時から経営トップが、加盟店の経営相談を担うオペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC)に、考え方などを直接話して、それを理解したOFCが加盟店オーナーに伝える『ダイレクトコミュニケーション』を大事にしてきた。『すべて共有』がセブンの強さだった。しかし規模が大きくなり、それぞれに伝わりにくくなっている。もう一度密にするためOFCに理解を浸透させることから始める」
 
 ―全役員が加盟店に出向き、オーナーとの対話を始めました。気づいたことは。
 「例えば加盟店が本部に納めるロイヤルティー。加盟店にとって率が低い方が良い。しかし我々は集まったお金を店舗のレイアウト変更、商品やシステム開発などに投じていると説明している。19年度は設備投資1450億円のうち8割を既存店向けに使う。投資の中身を具体的に伝えるとオーナーは理解を示してくれる」

 ―競合含め店舗数が5万店超となり、一定地域に集中出店するドミナント戦略には批判も多いです。
 「以前は若い人が夜に利用することが多かったが、今は50代くらいの女性らが日常のものを買う傾向にある。商圏が狭くなり、新たなニーズが顕在化している。ドミナントで一時的に売り上げは落ちるが、競合が出店しづらくなれば、結果としてセブンの店舗を守ることになる」

 ―改めて24時間営業については。
 「商圏内のお客さまにとって24時間が必要かどうかだ。24時間のニーズがなければやる必要はない。ニーズがあって人手不足で運営できないなら、本部によるオーナー・ヘルプ制度を活用してもらい、従業員派遣制度も充実させる」

【記者の目】
 コンビニは便利だから利用されてきた。だが人手不足により長時間労働を余儀なくされている加盟店もあると知って以降、コンビニで働く従業員の姿に、複雑な思いを抱くこともある。加盟店と本部の間の溝は大きいが、時間がかかっても「コンビニトップのセブンだからできた」という解決策を見てみたい。
(文=丸山美和)
日刊工業新聞2019年7月2日

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_f881b6025d10_最大輝度3000カンデラ、京セラ試作「マイクロLEDディスプレー」がスゴい f881b6025d10

最大輝度3000カンデラ、京セラ試作「マイクロLEDディスプレー」がスゴい

 京セラは、1・8型で最大輝度が1平方メートル当たり3000カンデラのマイクロ発光ダイオード(LED)ディスプレーの試作品を開発した。高い耐久性が求められる車載向けセンターインフォメーションディスプレーや高輝度・広色域が求められるデジタルサイネージ(電子看板)製品向けなどを想定する。今後、協業も視野にパートナー企業との連携を検討し、量産技術を確立していく。

 液晶ディスプレー開発・製造の旧京セラディスプレイ(滋賀県野洲市、2018年に京セラに吸収合併)が持っていた高速応答性のある低温ポリシリコン(LTPS)技術を活用し開発した。LTPS薄膜トランジスタ(TFT)基板上に、数十マイクロメートル(マイクロは100万分の1)角のマイクロLEDを約20万個実装し、カバーガラスやカバーフィルムで上部を封止する。厚みは0・7ミリメートル。

 画素数は256×256で、1インチ当たりの画像数を示すppiは200。コントラストは100万対1以上。視野角は178度以上で、駆動速度は240ヘルツ。マイクロLEDディスプレーを多数つなげて大画面にする“額縁レス”などの研究開発も進めている。

 矢野経済研究所(東京都中野区)が19年4月に公表したマイクロLEDディスプレーの世界搭載台数予測では、17年にソニーが「クレディス」を採用したディスプレーを発売したことで、マイクロLEDディスプレーの市場が形成。21年頃からは一部のスマートウオッチや拡張現実(AR)・仮想現実(VR)機器向けに採用が始まり、27年の世界搭載台数は1083万台と予測している。

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_a1f70405e3c8_翻訳者は「AI翻訳」に仕事を奪われるのか? a1f70405e3c8

翻訳者は「AI翻訳」に仕事を奪われるのか?

 人工知能(AI)関連のニュースを聞かない日がないくらい、AIの話題が世の中にあふれている。AI導入の広がりや性能の向上など、21世紀に入ってからのAIの社会への普及には驚くばかりだ。その一方で、AIの性能向上に伴って、「AIが人間の仕事を奪うのでは」という懸念も聞かれる。金融機関の融資担当や保険の審査担当、電話オペレーター、レジ係などのほか、翻訳業界もよく挙げられる。脳の神経回路を模したニューラルネットワークを基礎にした「ニューラル機械翻訳(NMT)」が登場したことで、機械翻訳を用いるAIサービスの精度が格段に向上しており、「人間の翻訳者の仕事が無くなるのでは」との懸念も聞かれる。

 しかし、現状ではある程度の質を求めるなら、機械翻訳後に人間の翻訳者が介在するのは不可欠になっている。当面はAIと人間との二人三脚が続くことになりそうだ。(取材・小川淳、狐塚真子)

翻訳業界を震撼させた「グーグル・ショック」
 翻訳業界で「グーグル・ショック」と呼ばれている出来事がある。2016年11月に米グーグルがオンラインのAI翻訳サービス「グーグル翻訳」の技術について、翻訳のルールを統計的に推定する「統計的機械翻訳」からNMTに変えたところ、文章間のぎこちなさが格段に減り、試してみた翻訳関係者が皆驚愕したという。実際、グーグルの検索サービスの一つ、「グーグル・トレンド」を見ると、16年11月に日本語での「ニューラル翻訳」の検索回数が大幅に増えており、そのインパクトの大きさがわかる。 以来、機械翻訳と言えばこのNMTが一つの基準になっている。膨大な対訳データを日々学習しており、その性能は着実に向上し続けている。

人間とAIとの「翻訳の質」とは?
 実務翻訳者の団体である日本翻訳連盟(JTF、東京都中央区)の東郁男会長は、「ある特定の分野の翻訳に限れば、機械翻訳はかなりの水準に到達している」と認めた上で、「機械翻訳の技術向上やそのスピードから目を背けることができなくなったのは確かだ」と指摘する。その一方で、「機械翻訳によって翻訳者の職が奪われるようなことは起きないだろう」と主張する。 なぜなら、人間と機械翻訳とでは「翻訳の質」の差が依然としてまだあり、すべてを機械翻訳に置き換えることは現実的ではないからだ。

 少し前には、大阪メトロの「堺筋線」を「Sakai Muscle(サカイマッスル)」と誤訳したまま、大阪メトロの外国語ページに掲載していたことが話題になったが、これは米マイクロソフト製の機械翻訳サービスによる誤訳をそのまま掲載したためとみられる。

 「Sakai Muscle」くらいなら笑い話で済むが、先日、東日本に大きな被害をもたらした台風19号が上陸した際にはこんなことも起きた。静岡県浜松市に住む日系ブラジル人向けに緊急メールが送られたが、その内容は誤って「川の周辺に避難してください」と逆に水位が上がって危険な川に人々を誘導しかねないようなものだったという。機械翻訳による翻訳ミスだったようで、日本語から英語、英語からポルトガル語へと翻訳する際、間違いが生じたようだ。当時はポルトガル語が分かる職員が不在で、確認できずにそのまま送ってしまった。

 こうした事例はニュースになるので、多くの人に伝わるものの、日々の翻訳の現場では大小様々な間違いは生じている。「機械翻訳は、一見流ちょうに訳すため、かえって誤訳や訳抜け、二重翻訳などのミスを発見しにくい」との声も聞かれるほどだ。

 また、使用する語彙が比較的少ない文章では、翻訳の精度はある程度保障されるものの、口語や小説といった文芸文書、固有名詞にはミスが生じる可能性が高い。試しに清少納言による随筆『枕草子』の、かの有名な一文を翻訳機にかけてみた。

 機械が理解できる単語は英語に変換されるが、「あけぼの」という単語の様に、理解できない単語は固有名詞として扱われ、不思議な文章になった。2文目以降は「徐々に白くなっていく山ぎわ(山に接する空)が少し明るくなって、ー」という意味であるが、「山が白く変わって」という意味になってしまっている。

 同様の部分をネイティブが翻訳すると、以下のような文章になる。その違いは一目瞭然だ。


“In spring, the dawn-when the slowly paling mountain rim is tinged with red . . .”

KYOTO JOURNAL,The Pillow Book: Translating a Classic

 「あけぼの」という単語はきちんと「dawn(夜明け)」として変換され、「ゆっくりと白くなる山の淵が赤く塗られていく」と、多少の表現の差はあるが、原文の意味を反映させた文章になっているのが分かる。

 ところで、機械翻訳によってできあがった文章を人の手によって修正する作業を「ポストエディット(Post Edit)」と呼ぶが、現状では機械翻訳にかけた後、より正確さや精度を求めるのならこうした作業が欠かせない。

 このため、実際には「確実に内容を伝えるため、費用や時間をかけても良いので、人に翻訳してもらいたい」という人もいれば、「多少翻訳のクオリティが低くても、読んで伝わる内容であれば良い」という理由で機械翻訳を選ぶ人もいる。例えば、海外の通販サイトやニュースサイトの情報は、「だいたいの内容を理解することが出来れば良い」という考えの人が多く、瞬時に翻訳することが出来る機械翻訳は重宝されやすい。こうした単に「読むための翻訳」のほか、ポストエディットの前の「下書き」のようなことなら、機械翻訳は現状でも十分活用できるといえる。

小説や広告の置き換えは困難!
 しかし、それでも機械翻訳が現状では決して人間にかなわない分野がある。それは小説や戯曲、詞や詩など、人の感情に訴える分野だ。消費者に訴求力が必要な企業の広告などもこうした範疇に入るだろう。

 文章自体は流ちょうに訳していても、その言葉に込められたニュアンス、もっといえば文化的な背景や歴史的な意味、シャレや深い余韻、曖昧な表現などなど。日々学習しているとはいえ、その結果が正しいとは限らず、人間の翻訳者の修正を必要とする。こうした分野でもAI技術の進歩によって人手を必要としなくなる日がいずれはくるのかもしれない。しかし、逆に「50年経っても難しい」と主張する人もいる。そう考えると、人間の文章表現はほぼ無限大といえるほど、広大だ。改めて人間の表現の芳醇さには驚くばかりだ。さらに、日本語特有の文法や言い回し、尊敬語・謙譲語など、非日本語言語と比べ、明らかに参入障壁がありそうだ。

翻訳需要は拡大 どう対応?

 ところで、足下の翻訳者の需要はどうなのだろうか。データをみると、翻訳需要は着実に伸びている。米調査会社Nimdziによると、「世界全体の翻訳需要は確実に伸びており、市場成長率は6~7%の高水準」にあるという。グローバル化の進展で企業活動は世界に広がり、訪日外国人客(インバウンド)も政府が目標に掲げる年間4000万人達成に向け、着実に数字を伸ばしている。さらに、「日本企業に採用される外国人材や社内英語化の流れもあります」とJTFの東会長は指摘する。「2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、さまざまな業界で翻訳・通訳などの需要が伸びている」(東会長)ことも追い風といえる。

 着実に伸び続ける翻訳需要に対応するためにも、機械翻訳を使いこなすことは翻訳者にとって不可欠なスキルになりつつある。決して「人間 VS AI」のような単純な話にはならず、それぞれの長所短所を把握しつつ、当面は「作業分担」をしていくことになるのかもしれない。

  ■関連サイト 第29回JTF翻訳祭2019公式サイト
          https://www.jtf.jp/29thfestival


【ファシリテーターのコメント】
 グーグル翻訳、みんな使ってますよね。便利ですし。ちょっとしたウェブサイトの閲覧くらいなら、十分ですし、以前までの翻訳ソフトと性能の違い、ものすごい感じます。ではAI翻訳が普及すれば人間の翻訳者はいなくなるのでしょうか。程度の問題かと思いますが、信用やお金の絡む分野ですと、最終的に人間のチェックが入らないと、現実的には100%の置き換えは不可能なのかもしれません。

 小説などの翻訳では人間の代替は不可能と本文中では書きましたが、実際にどこまでAIが近づけるのか興味は大変あります。人間の心を揺さぶるような翻訳小説が果たして登場することはあるのでしょうか。

 ところで、本文中にも登場していただいたJTF主催の翻訳・通訳業界最大のイベント「第29回JTF翻訳祭2019」が10月24日に横浜市西区のパシフィコ横浜で開かれます。話題のAI翻訳の最前線のセミナーなどが聞けるそうです。


小川 淳

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_2b6e06c7a515_若手の早期離職防止なるか?「社外同期」交流とは 2b6e06c7a515

若手の早期離職防止なるか?「社外同期」交流とは

 同じ時期に入社する社外の人脈を「社外同期」と名付け、交流する動きが広がっている。人材大手のアデコ(東京都千代田区)は、同社の紹介で異なる企業に入社予定の学生同士の交流活動を実施。またオールアバウトや副業支援のYOUTRUST(ユートラスト、同品川区)は合同の新入社員研修や入社式を開く。若手社員の早期離職防止に加え、孤立しがちな新入社員の人脈づくりを後押しする狙いがある。

 アデコは、同社の新卒者向け就職支援サービスを通じて内定を得た学生同士の交流活動を展開。活動名は「キャンパスリング」で、内定者200―300人が参加し、業界動向の勉強会や飲み会などのイベントを開催している。

 活動の背景にあるのは、若手社員の早期離職問題。同社の就職支援先である顧客企業は「中小企業や大手企業でもグループ会社が大半で、年に2、3人しか新卒者を採用しない」(Spring事業本部キャンパスエージェント部の川島香生課長)。そうした新卒者を社外同期として束ねることで、仲間意識を醸成し、早期離職抑止につなげたい考えだ。

 一方、オールアバウトは他のIT企業などと合同で、毎年度、春に1カ月間、新卒の社員を対象としたマナー研修やプログラミング研修を行っている。2019年度の参加者は12社86人と、12年度の開始当初の5社20人から約4倍に増えた。参加企業は、毎年異なるが、参加者数は増加しているという。オールアバウト人事総務部の岡部能直ジェネラルマネージャーは「(社外同期のつながりを通じて)業界内での横のつながりをつくっていってほしい」と話す。

 YOUTRUSTはIT系スタートアップなどと組んで、4月に合同入社式を開催。20年4月も開催を検討している。同社の岩崎由夏社長は「私自身、新卒で入社した会社の同期に助けられてきた。当社の新入社員にも(社外を含めた)同期の良さを知ってほしい」と述べる。

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_bb784331bac9_自動化の限界へ、高級「G-SHOCK」を生み出す山形カシオの挑戦 bb784331bac9

自動化の限界へ、高級「G-SHOCK」を生み出す山形カシオの挑戦

新棟稼働1年
 山形カシオ(山形県東根市)は、敷地内にある時計専用の工場が稼働を始めて1年以上が経過した。新棟には部品の製造やアナログムーブメント(駆動装置)を自動で組み立てるラインの他に、高価格モデルの「G―SHOCK」や高機能メタルウオッチ「オシアナス」などを扱う専用ライン「プレミアムプロダクションライン(PPL)」を備えている。

 PPLで扱う製品の中でも、メタル素材を用いたG―SHOCKは特に人気の製品。「期待値以上に順調」(カシオ計算機の増田裕一専務執行役員)という、19年のG―SHOCKブランドを支える新たな“顔”。メタルやカーボンを用いる「MT―G」シリーズも人気が高まっている製品だ。

 ラインでは職人による手作業での組み立てをセンサーやロボットでサポートしている。PPLに携われるのは22人の熟練技能者のみ。完全な自動化が難しい工程だが、人とロボットの協業で生産を支えている。

 普及価格帯のデジタルウオッチでは組み立てを完全自動化した実績を持ち、山形カシオの福士卓社長は「他の製品やラインにも適用を目指す」と意気込む。コストを抑えながら月に数万単位の生産を可能にしたノウハウを生かす。

自動生産拡大

 アナログムーブメントは、機械による自動生産の適用範囲を拡大している。将来的にはIoT(モノのインターネット)を活用した故障予兆診断も見据える。現時点では自動生産のための設備導入を優先しているが、予兆診断機の開発にも取り組んでいるという。

感性デジタル化
 カシオ計算機のマザー工場として、同社の生産本部と連携して生産工程の開発も進めている。普及価格帯の腕時計や楽器を生産する中国や台湾の拠点では、人件費の高騰や人手不足が起きており、国内同様に機械化の重要性が増している。安定した品質での生産を続けるため、同社では感性のデジタル化といった新たな技術の開発も進めている。

連載・メードインジャパン 腕時計工場の最前線(全3回)
【1】盛岡セイコー工業(10月21日公開)
【2】シチズン時計マニュファクチャリング・飯田殿岡工場(10月22日公開)
【3】山形カシオ(10月23日公開)
日刊工業新聞2019年10月18日

【ファシリテーターのコメント】
生産の仕組みを海外工場に導入する際は、文化の違いが大きな壁になることも。製造方法の改革だけなく、現地で獲得した人材の育成でも試行錯誤を続けています。連載は今回が最終回です。お付き合いいただきありがとうございました。
国広 伽奈子

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_c27a169c8866_定着阻止!政府、ヒアリの対応強化 c27a169c8866

定着阻止!政府、ヒアリの対応強化

 毒性の強い特定外来生物「ヒアリ」が東京港青海埠頭(ふとう)から拡散した恐れがあることを受け、政府は21日、首相官邸で関係閣僚会議を開いた。菅義偉官房長官(写真左端)は「これまでの事例とは次元の異なる事態の発生が確認された。わが国への定着を阻止するため、政府一丸となって取り組む」と述べた。

 会議では、周辺に飛び立った女王アリが巣を作って定着するのを防ぐため、埠頭内全域に殺虫餌を設置するほか、周囲2キロメートル圏外の公園なども含め、ヒアリの有無を調べる方針を確認。全国の65港湾で調査状況を点検し、追加対応が必要な場合は11月までに講じることも決めた。

 ヒアリは2017年6月に国内で初めて見つかって以降、全国で45事例が確認されている。ただ、今月東京港で見つかったケースでは繁殖可能な女王アリが50匹以上と多く、一部が周辺に飛び立った可能性が高い。

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