cat_oa-newswitch_issue_09ccb3918cc7 oa-newswitch_0_09ccb3918cc7_ソニー不動産の挑戦が示したこと、住宅業界に“メルカリ”は生まれないのか 09ccb3918cc7 09ccb3918cc7 ソニー不動産の挑戦が示したこと、住宅業界に“メルカリ”は生まれないのか oa-newswitch

ソニー不動産の挑戦が示したこと、住宅業界に“メルカリ”は生まれないのか

 「不動産テック」という言葉が一躍注目された“事件”がある。2015年11月にソニー不動産(東京都中央区)とヤフーが「おうちダイレクト(現おうちダイレクト・セルフ売却プラン)」を始めたことだ。おうちダイレクトは、個人が仲介会社を介さずにインターネット上で自由にマンションを売り出せる。人工知能(AI)が算出した価格を参考に自ら値付けができ、成約時は仲介手数料がかからない。ソニーとヤフーという強力なタッグが始めた情報通信技術(ICT)サービスで、しかも仲介会社の仕事が不要になるような仕組みは、業界に衝撃を与えるには十分だった。

 ただ、それから2年半。おうちダイレクトについて、不動産業界内では「存在感を示せていない」という声が相次ぐ。ソニー不動産によれば、「おうちダイレクトを通じた成約は毎月出ている。件数は増加傾向にある」という。ただ、具体的な件数は非公表。その上で「あくまで売却手段の一つ」と説明する。「マンション流通革命、はじまる。」というスローガンを掲げて始めたソニー不動産とヤフーの挑戦は、何を示したのか-。

米国流CツーC市場を作りたかった
 「米国の不動産取引には、売り主自らが売り出すCツーC(消費者間)市場が10-15%程度あった。仲介会社は仲介業務を行わず、あくまで事務手続きや契約などのサポートに徹するため、売り主は支払う手数料が安くすむ。それを日本で展開しようと考えた」。ソニー不動産の元役員は、おうちダイレクトを始めた当時をそう述懐する。「不動産市場で新たな挑戦がしたかった」。それが、不動産業者が仲介する既存市場とは別のCツーC市場の開拓だったという。

 既存の不動産業界はこのCツーC市場構想に衝撃を受けた。ネット上で売り主と買い主を直接結び付ける仕組みは、仲介会社の仕事を奪うと捉えたからだ。実際に売買仲介大手の中堅幹部は「(おうちダイレクトの登場で)“CツーC市場脅威論”が社内で巻き起こった」と振り返る。ただ、この中堅幹部は「現時点で居住用物件のCツーC市場は難しい」と断言する。そしてこれは現時点において業界の一般的な認識にもなっている。

 フリマアプリ「メルカリ」が浸透し、個人同士が多様なモノを売り買いする時代だ。その中で不動産を自ら売り出すCツーC取り引きはなぜ難しいのか。この問いを仲介会社やアナリストに投げかけると多様な答えが返ってくる。「ほとんどの売り主は過去に不動産を売却した経験がなく、しかも高額な商品のため仲介会社に依頼して売りに出した方が安心感がある」「売り主には『1カ月で売りたい』や『半年かかっても高く売りたい』など個別の事情がある。それをくみ取って売り出し価格の妥当性を判断し、成約に結び付けるには仲介会社の力が必要」「売り主は仲介会社に依頼するのが当然と思っており、そもそも自らが売り出す発想がない」-など。

 さらに、注目すべき事実がある。おうちダイレクトが参考にした米国のCツーC市場が縮小傾向にあることだ。全米リアルター協会(NAR)によると、17年に売り主自ら売り出していた物件の割合は流通市場全体の8%で過去最低の水準という。この背景について米国の不動産市場に詳しい三井住友トラスト基礎研究所(東京都港区)の北見卓也主任研究員は「仲介手数料を負担しても(仲介会社を通じて)多くの人に紹介してもらった方が、より高くより安全に売れる事例が多いためだろう」と推察する。

 おうちダイレクトは仲介手数料がかからないことが最大のメリットだ。ただ、米国の現状に照らせば、それ自体もあえておうちダイレクトを選ぶ動機にならない可能性がある。

投資用物件に活路あり
 一方、CツーC市場のすべてを否定する声もまた少ない。特に投資用物件についてCツーC市場の可能性を指摘する声は多く、市場開拓を見据える事業者もいる。その背景として、投資用物件は購入したり売却したりする際の判断材料の中で物件価格や利回りの比重が圧倒的に大きく、居住用物件に比べると購入や売却を判断しやすい点が挙げられる。野村総合研究所の谷山智彦上級研究員は、「投資用物件はお金を投じてお金が返ってくるという単純な物件のため(株式など)他の投資商品と同じように捉えることもできる」と指摘する。

 仲介大手の野村不動産アーバンネット(東京都新宿区)は、「(投資用物件のCツーC市場に)関心はある」と断言する。同社は投資用物件専門の情報サイトを運営しており、その拡充策の中でCツーC取り引きの可能性を模索していくようだ。また、不動産情報ポータルサイト「ライフルホームズ」を運営するライフルも投資用物件をインターネット上で取り引きするプラットフォームの将来構想をもつ。

 おうちダイレクトでも16年8月に投資用物件の取り扱いを始めており、「居住用物件に比べて(売り出し数における)成約に至る割合が高い。投資用物件は賃料収入を得ながら、希望の売却価格で成約できるまで(おうちダイレクトに)掲載し続けられるため、投資家にとって使いやすい」(ソニー不動産)と相性の良さを実感している。

 おうちダイレクトの挑戦について、不動産業界は居住用物件のCツーC市場の難しさを示す事例と捉えた。一方でおうちダイレクトは、投資用物件のCツーC市場の開拓を狙う他の企業にとって先駆者になっているとも言える。

興亡・不動産 -テックの衝動
【01】お金だけじゃない動機も…若年層が注目する新たな不動産投資のかたち
【02】開拓者に聞く クラウドファンディングだから実現できる本当の不動産投資市場
【03】ソニー不動産の挑戦が示したこと 業界に“メルカリ”は生まれないのか
【04】売り上げがたたない…不動産業界でテック企業が生き残るための必須条件
【05】ブロックチェーンが賃貸住宅をホテルに変える?
【06】“不動産テック1.0”の立役者が描く未来【井上高志ライフル社長インタビュー】
【07】不動産仲介大手が火花散らす、“ICT競争時代”に入った
【08】「ソサエティ5.0」実現へ、国土交通省は不動産業の情報化を加速する
ニュースイッチオリジナル

【ファシリテーターのコメント】
「おうちダイレクト」が始まったときの不動産業界の反発はとても強かったと記憶しています。ただ、改めて当時に受けた印象を不動産業界の方々に伺うと、冷静にCツーC市場の可能性などを分析、研究したとおっしゃる方などもいて興味深かったです。今後は投資用物件のCツーC市場がスケールするのかを注目して見ていきたいところです。
葭本 隆太

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cat_oa-newswitch_issue_09ccb3918cc7 oa-newswitch_0_cbc3899599cd_隈研吾さんと長年のコラボが結実、国立競技場の緑化基盤に採用された繊維メーカーの挑戦 cbc3899599cd cbc3899599cd 隈研吾さんと長年のコラボが結実、国立競技場の緑化基盤に採用された繊維メーカーの挑戦 oa-newswitch

隈研吾さんと長年のコラボが結実、国立競技場の緑化基盤に採用された繊維メーカーの挑戦

小松マテーレは20日、東京大学で同大学建築学部の隈研吾研究室と共同で「未来につながる快適・安全な都市環境のアイディア」をテーマとした展示会・シンポジウムを開いた(写真)。両者は2013年に研究拠点「サスティナブル・プロトタイピング・ラボ」を開設して以来、展示会を開いている。6回目の今回は隈氏の東大教授退官に伴い、集大成として小松マテーレが開発してきた新素材の活用事例を紹介した。


隈氏は自身が設計を手がけた国立競技場(東京都新宿区)に小松マテーレの素材を採用したことを明らかにした上で「企業と大学のコラボレーションで環境の時代にあった成果を上げることができた」と達成感を語った。


隈氏は退官後、特別教授などとして東大に残り、小松マテーレとの協業も「何らかの形で継続していきたい」とした。



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発泡セラミックス「グリーンビズ」


日刊工業新聞2020年2月21日

小松マテーレ会長兼社長・中山賢一氏インタビュー

―2020年の見通しは。

「20年3月期は見込み通り着地できる。ただ、世界的な暖冬の影響が今後も出てくる。事業計画は常識的な季節の変化を見越して組み立てている。通常の冬ならスキーウエアが売れ、バスツアーが盛況になればシート用資材が動く。前提条件が変わればサプライチェーン全体へ波及する。新型コロナウイルスについても、調達への影響を想定し対処方法を精査している」


―不安定要素が生産を難しくします。

「頻発している以上異常気象とはいっても異常と捉えず備えなければならない。繊維業界はこれまで『作って売る』ビジネスだったが、需要に柔軟に対応できる環境に配慮した技術を活用し『売って作る』サイクルを回していく必要がある」


―新工場建設のため、19年5月に設立した中国子会社を解散します。

「現状の事業環境では蘇州工場の稼働率を高めれば十分だと判断した。ただし、大切な市場であることは確かであり、基盤を固めた上で再チャレンジしたい」


―19年10月に社長を兼務して以降、組織変更を実施しています。

「営業・生産・技術開発・管理からなる4本部制に加え、2月に独立した組織としてグローバル展開やM&A(合併・買収)戦略などを立案する経営企画室を設置した。現在、その経営企画室を中心に『将来ビジョン』を策定し、我々が社会に対し何をするために存在しているのかを示す」


―新規事業は。

「19年11月に『耐震補強用より線』として日本産業規格(JIS)の認定を受けた熱可塑性炭素繊維複合材料『カボコーマ・ストランドロッド』を重要文化財などへ活用するが、まだこれからだ。09年に開発した緑化基盤材『グリーンビズ』は当時より性能や質感が向上している。炭素繊維でもシート材を開発し、用途を拡大する」



中山会長兼社長


【記者の目】

組織変更や中国事業の見直しなどを素早く決断。策定中の将来ビジョンでは短期的な戦術や売上高目標にとらわれない長期的な方向付けを打ち出す。過剰生産への危機感、天然由来の素材開発など、大きなテーマは「環境」。カボコーマの展開でもJIS化は事業化に向けて弾みにしつつ、視線はすでに先を向いている。

(金沢支局長・本荘昌宏)
日刊工業新聞2020年2月24日

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cat_oa-newswitch_issue_09ccb3918cc7 oa-newswitch_0_7294c335a06b_企業体質を見直す機会となった19年、ユニチカは世界でフィルム事業を強化する 7294c335a06b 7294c335a06b 企業体質を見直す機会となった19年、ユニチカは世界でフィルム事業を強化する oa-newswitch

企業体質を見直す機会となった19年、ユニチカは世界でフィルム事業を強化する

―2019年度が最終年度の中期経営計画をどう評価しますか。

「19年1月に発生したナイロン重合設備の火災影響が年間で20億円弱あり、利益面での圧縮要因となっている。設備は2−3割復旧しており、20年度内に完全復旧を見込む」


「現中計で営業利益134億円を掲げたが、65億円程度で着地する見通し。アジア地域全体で商品の競合関係が変化した影響で、タイのスパンボンド設備が思うように軌道に乗っていないのが大きな未達理由。施策全体の進行具合は6割ほどにとどまる」


―次期中計の方向性は。

「グローバル化をより一層進めていく。食品包装用途の高ガスバリアー性ナイロンフィルム『エンブレムHG』などの高付加価値フィルムや半導体関連に使われる離型フィルムなど、好調なフィルム事業はさらに強化する。年産1万トンのナイロンフィルム工場が今年稼働予定だ」


「一方で繊維事業は現中計を立てた3年前の想定より考えられないほど厳しい。足元では暖冬の影響で衣料関連が伸び悩んでいる。ただ、ユニホームや特殊繊維でアパレル企業から評判の良い製品もある。当社の何が強みでどこが弱いのか、構造をもう一度見直す」


―環境に優しい製品開発として廃プラスチックを化学的に分解し原料に戻し、再重合するケミカルリサイクルに取り組んでいます。

「環境対応は次期中計で注力する。直近では食品包装用ナイロンフィルム『エンブレムCE』を開発し、4月から生産を始める。当社は低分子から高分子を作る技術があるので、逆に高分子から低分子に分解する技術を磨く。技術のポテンシャルはあるのでしっかり対応していく」


【記者の目】

昨年発覚した一部の繊維製品に対する検査データ改ざんについて上埜修司社長は「ガバナンスに対して宿題が残った」と猛省する。再発防止策を講じ、少しずつ機能し始めているという。信頼回復が最優先課題ではあるが、企業体質を見直す機会となった19年を糧として次期中計を始動できるか、上埜社長の手腕に注目したい。

(大阪・新庄悠)


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cat_oa-newswitch_issue_09ccb3918cc7 oa-newswitch_0_0749d35e3926_CESから見えてきた新たな主役企業、今年のシーテックは誰が?何が?驚きを与えるだろうか 0749d35e3926 0749d35e3926 CESから見えてきた新たな主役企業、今年のシーテックは誰が?何が?驚きを与えるだろうか oa-newswitch

CESから見えてきた新たな主役企業、今年のシーテックは誰が?何が?驚きを与えるだろうか

2020年1月に、米ラスベガスで開催された世界最大の技術イベント「CES 2020」は、全世界から4400を超える企業が出展。2万件を超える未来の技術に、全世界から訪れた17万人が魅了された展示会となった。


世界中のすべての主要産業に影響を与える

人工知能(AI)や第5世代通信(5G)、ロボティクスといった新たなテクノロジーがあらゆるシーンで見られほか、IT・エレクトロニクスだけに留まらず、自動車、航空、ヘルスケアといったさまざまな業種の企業が参加。主催者である全米民生技術協会(Consumer Technology Association=CTA)のゲーリー・シャピロ社長兼最高経営責任者(CEO)は、「世界中のすべての主要産業に影響を与え、それらを結び付けたのがCES 2020。ここで発表されたイノベーションは、産業を再構築し、雇用を創出し、世界経済を活性化し、また、世界の生活を向上させる」と語る。


また年々注目度が高まっている全世界のスタートアップ企業が出展するEureka Park(ユーリカパーク)には、46カ国から1200社を超える企業が集結。ユニークなアイデアを、テクノロジーで形にする事例が相次ぎ、多くの来場者の関心を引いた。


日本企業が存在感

そして、日本企業の発表が注目を集めたイベントでもあった。ソニーは、テレビの新製品などを展示する一方で、電気自動車(EV)のコンセプトカー「VISION-S」を公開。ソニーの車載向けCMOSイメージセンサーや対象物との距離を算出する「タイム・オブ・フライト(ToF)」センサーなど、数種類のセンサーを33個搭載。車内外の人や物体を検知、認識して、高度な運転支援を実現するという。


同社によると、「ソニーがクルマメーカーになるわけではない。モビリティにおける安心、安全、快適さやエンタテインメントなども追求し、クルマの進化に対する貢献を目的にしている」という位置付け。ソニーの吉田憲一郎社長兼CEOは、「過去10年は、スマホをはじめとするモバイルが、私たちの生活を根本から変えたが、次のメガトレンドはモビリティーだと信じている」と話す。



コンセプトカー「VISION-S」を披露するソニーの吉田社長(撮影・大河原克行)


また、トヨタ自動車は、閉鎖予定の東富士工場の跡地にコネクティッドシティ(スマートシティ)を設置、2021年初頭に着工することを明らかにした。トヨタの豊田章男社長は、「バーチャルとリアルの世界の両方で、AIなどの将来技術を実証する。街に住む人々、建物、車などモノとサービスが情報でつながり、ポテンシャルを最大化できる」と、新たな取り組みの成果に期待する。


CES 2020は、ここ数年、自動車メーカーの展示が相次ぎ、今年も日米欧の自動車メーカー9社が出展。150を超える自動車関連テクノロジー企業が、最新のコネクテッドカーや自動運転車、未来のコンセプトを披露した。また、BtoB(企業間)展示の存在感が高まり、「Health&Wellness」の異業種カテゴリーでは135社以上が出展、前年比25%近く増加したほか、スマートシティの展示エリアは25%拡大。デルタ航空が航空会社として、初めてCESの基調講演に登壇したことも話題になった。


日本からも積水ハウスが出展。前年のCESで発表したプラットフォームハウス構想に基づいた第1弾サービス「在宅時急性疾患早期対応ネットワークHED-Net」を発表した。こうした異業種の出展の増加や、スタートアップ企業への広がりは、CESを見本市の役割から、「共創を模索する場」に変わることを意味している。


パナソニックの津賀一宏社長は、「CESの場を家電見本市としてではなく、当社が持つテクノロジーを使い、BtoBを通じてどう貢献できるのかという、ポテンシャルを示す場に変えてきた。今回のブース展示も、かなりの部分で協業を前提としたものになっている」と語る。


ソニーのコンセプトカーやトヨタのスマートシティも、技術や方向性を見せることで、共創パートナーを獲得する狙いがある。全世界から多くの企業が集まるCES 2020は、共創の場としての役割がますます重要になっている。



全世界から17万人が来場した今年のCES(撮影・大河原克行)


一足早くBtoBシフトしたシーテック

CES 2020が盛況のうちに幕を閉じてから、約3週間後、日本では、2020年10月20日~23日に、千葉県千葉市の幕張メッセで開催される「CEATEC 2020(CPS/IoT Exhibition)」の概要が発表された。


CEATEC(シーテック)は、2016年に家電見本市から脱却。「CPS/IoTによる新たな産業を創出するためのテクノロジーを活用した社会や暮らしを提案する展示会として、共創のきっかけをつくる場、キーパーソンが集結する場、次世代を担う層が集う場になっている」(CEATEC運営事務局の菊嶋隆史事務局長)。


主催者が掲げる開催テーマは、「つながる社会、共創する未来」。MaaS(乗り物のサービス化)やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)といった「次世代モビリティ」、食品やアパレルといった産業を含めた「次世代ライフスタイル」、あらゆる産業の枠を超えて、超スマート社会を実現する「Society 5.0を支える5GやAI」を注力テーマに掲げ、テクノロジーで未来の社会や暮らしをデザインする場として、「視て」、「聴いて」、「感じて」、「考える」といったCEATEC体験を提供するという。


CEATECは、CESに先駆ける形でBtoBシフトを進め、共創のための展示会であることを明確に打ち出してきた。IT・エレクトロニクス業界だけでなく、自動車、航空、建設、住宅、金融、流通などの幅広い業種の展示が相次ぎ、実ビジネスとワクワク感が同居している。



昨年のSociety 5.0 TOWNには建設会社なども多く出展した


また、出展者数は増加傾向にあり、昨年は787社/団体が出展。海外からも24カ国/地域から250社/団体、スタートアップ/大学研究機関も170社/団体が出展した。新規出展者は304社/団体となり、4割近くを占めている。


昨年の出展者を対象にしたアンケートでは、CEATECがCPS/IoTを提案するのはふさわしい場所と回答は85.0%に達し、新しいビジネスルート開拓に役立つ場との回答が77.9%に達しており、BtoBの展示の場として、そして共創の場としての成果が生まれていることがわかる。


また、昨年の来場者は14万4491人で滞在時間は前年よりも長くなっており、一日中という回答が18.7%を占め、前年より3.6ポイント増加。62%以上が半日以上をかけて見学している。主催者であるCEATEC実施協議会では、「体験型の展示やカンファレンスに参加する人の増加が影響している」と分析している。


幅広い業種や産業からの来場者があるのもCEATECの特徴で、製造・機械・精密機器では2万1000人以上、情報通信機器・電子部品・電子デバイスでは2万1000人以上が訪れたほか、住宅・建設・不動産からは4500人以上、自動車・輸送機器では4000人以上、官公庁・自治体では3500人以上、医療用機器・健康用機器では1000人以上が来場したという。また、学生の来場も7500人以上と増加傾向にあり、未来の人材に対する訴求も、CEATECの重要な新たな柱になろうとしている。


今年は4つの観点から共創を促す

CEATEC 2020では、【政策】、【産業】、【次世代】、【海外】の4つの観点から共創を促す展示会を目指すという。【政策】では、省庁や団体と連携したコンファレンスを開催して、Society 5.0に関する経過や成果などの最新情報を発信。【産業】では、業界の枠を超えて連携を実現するSociety 5.0 TOWNにより、「SDGs達成を見据えた2030年のまちづくり」を発信する。また、【次世代】では、大学教授や有識者などで構成するアドバイザリーボードを新設。学生にフォーカスした活動を強化する予定だ。そして、【海外】では、スタートアップ企業などが出展するCo-Creation PARKやGlobal Pavilionの規模を拡大し、世界中の超スマート社会に向けた施策を集結させるという。


CEATEC 2020の出展募集は、2月12日午前10時から始まった。「CPS/IoT」と「共創」のための展示会として、あらゆる産業や業種が参加するCEATEC 2020は、どんなイベントに進化するのだろうか。

(取材=フリージャーナリスト・大河原克行)


昨年のシーテックではテック系ベンチャーが多く参加(ダフトクラフトのVRシステム)




「CEATEC 2020」公式WEBサイトはこちら

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垂直統合から協業へ舵を切るローム、「5年もすればSiCはコモディティー化する」

―力を入れている自動車市場が低迷しています。

「電動化の加速で車載向け半導体や電子部品は確実に増える。車は4―5年先を見てデザイン・インする。現在、足元の業績が厳しいのは4―5年前の当社に商品力がなかったためだ。2018年の社長就任以来、車や産機向け重視の開発体制に変え、パワーデバイス開発などへかなり人員を配置転換し、民生品向けの開発は絞った。意識改革の成果がようやく出始め、22―23年頃からの新規案件は着実に受注できている。逆に言えば、22年頃までは我慢だ」


―持続的成長に向けて全社のベクトルを合わせることが重要です。

「10年先を見据えた21年度開始の5カ年中期経営計画の策定を始めた。取締役がかんかんがくがくの議論を戦わせ、必死に考え、ポートフォリオの強化・見直し、M&A(合併・買収)施策の方向性を決め、数字に落とし込み、責任を明確にして実行する。共有したいのは危機感。次世代のSiC(炭化ケイ素)製品が脚光を浴びるが、5年もすればコモディティー化する。当社が弱いモジュールがビジネスには重要で、他社との協業が必要だ」


―第5世代通信(5G)への期待が随所で聞かれます。

「5G向け開発は乗り遅れており、今進めている。5Gスマートフォンで必要な多数の電源回路などで引き合いがあり、特定用途向け標準IC(ASSP)をそろえる。顧客に言われて作るカスタム品は国内企業が好調な時は大量に使ってくれたが、汎用品と違うので広がりがない。今までおざなりだった、時代を先読みした開発へと意識改革した」


―近年、500億円前後の積極的な設備投資を続けています。

「当社はこぢんまりとした前工程工場が多い。老朽化しており、中計では生産品目の再編・集約を考慮した建て替えなども考えていく。プリントヘッド生産は中国のみだが、事業継続計画(BCP)の観点で東南アジアなどの既存工場で生産することなども討議していく。外部機関を用いた人材育成への投資にも力を入れる方針。女性の幹部登用推進や、海外人材の役員登用も検討している」


【記者の目】

ほかの半導体メーカーが手がけない家電大手からの特注のカスタムICで、ロームはかつて営業利益率30%超の高収益企業だった。しかし、近年は15%以下。それでも高い数値だが、更なる成長にはこれまでの成功体験への依存の払拭(ふっしょく)が必要という。生産面では強みとしていた垂直統合一辺倒のモノづくりから脱却する方針。変化への対応力が求められている。

(京都編集委員・松中康雄)


ローム社長・藤原忠信氏


日刊工業新聞2020年2月20日

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「5G」向けデバイスで圧倒しそうなニッポンの世界企業

自前主義脱却の理由

ロームは垂直統合型のビジネスモデルを転換し、半導体受託製造(ファウンドリー)や半導体後工程請負業(OSAT)などへの外注比率を2021年めどに約30%(現状は8%程度)まで高める。市況や顧客からの受注量急増といった変化への対応力強化と固定費の抑制が目的。企業名などは明らかにしていないが、台湾や中国本土などのファウンドリー4社、OSAT11社とすでに協議を始めている。


ロームはウエハー製造からの垂直統合型生産体制による高品質と安定供給を強みとしてきた。今回のモノづくり改革は大きな方針転換となる。産業機器向けや、家電など民生機器向けの半導体パッケージ、モジュール製品などが外注の中心となる。受注数量、外注先の得意・不得意なども勘案しつつ比率を高め、自前主義一辺倒から脱却する。自動車向けは内製がベースとなりそうだ。


繁忙期のみといった形ではなく、一定割合を継続発注して外部と信頼関係を築く。他社の技術を学ぶ側面もある。顧客の製品のプラットフォーム共通化、部品の横展開などによる急な需要増に柔軟対応できるようにする。


同社は2021年度からの5カ年中期経営計画の策定にこのほど着手した。これまでの中期計画は「販売計画だった」(藤原忠信社長)とし、今回はグループ全体の10年先を見据えた上で5カ年計画を立て、そこから各分野に落とし込み、パワーデバイスやパッケージ、モジュールの強化、外部との協業などで具体策を打ち出す方針だ。


多数ある国内工場の生産品目再編や建て替え、海外事業拡大も重要課題。策定には海外子会社も参画し、同社初の本体役員への外国人登用も検討中。中計に先行し、できるものから改革を進める。

日刊工業新聞2020年2月5日

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犬のようなロボットが土木現場をトコトコ巡視

鹿島は20日、ソフトバンクロボティクス、ソフトバンクの協力で、土木工事現場に米ボストンダイナミクスの四足歩行ロボット「Spot(スポット)」を導入したと発表した。360度カメラを搭載したスポットを制御室から遠隔操作し、切羽(掘削面)の写真撮影、計器点検、自律歩行による坑内巡視ができることを確認。悪路でも不自由なく歩行できるよう改良し導入した。今後、坑内測量業務、安全確認向け巡視などを実証実験する。


スポットは竹中工務店、フジタが国内建築現場で実証実験をしているが、土木現場への適用は珍しい。


2018年11月に神奈川県のトンネル工事現場で実証実験を実施。課題を抽出し、ソフトバンクロボティクスと米ボストンダイナミクスが悪路歩行性能の確認、インターフェースプログラムの改良を行い、土木現場への適用可能性を高めた。


今後、鹿島は四足歩行の特性を生かして急傾斜地すべり地帯での調査・測量など危険作業に適用先の拡大を検討する。ロボット活用で建設業の課題である担い手確保や生産性向上、土木工事の安全性向上につなげ業務効率化を目指す。

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cat_oa-newswitch_issue_09ccb3918cc7 oa-newswitch_0_80c7953ad131_「巡回セールスマン問題」大きく前進?東工大などが高速LSI開発 80c7953ad131 80c7953ad131 「巡回セールスマン問題」大きく前進?東工大などが高速LSI開発 oa-newswitch

「巡回セールスマン問題」大きく前進?東工大などが高速LSI開発

東京工業大学科学技術創成研究院の本村真人教授らは、多くの変数の組み合わせから最適な解を選ぶ「組み合わせ最適化問題」を高速に解く大規模集積回路(LSI)を開発した。同問題の近似的計算技法「アニーリング処理」の一つで、応用範囲が広い「全結合型」の手法を高速化。処理性能を数倍、エネルギー効率を大幅に向上させた。製造や創薬などで重要問題として現れる同問題の計算技術の開発につながる可能性がある。


複数の都市を効率良く回る「巡回セールスマン問題」に代表される組み合わせ最適化問題は、交通や金融、製造、創薬などの重要な問題として現れる。だが変数の数が増えるにつれて、組み合わせが爆発的に増え、従来の計算機では効率的に解けなかった。


北海道大学や東京大学、日立製作所との共同研究。成果は米カリフォルニア州で開催された国際固体素子回路会議(ISSCC)で発表された。

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インド発のユニコーン企業、5Gで日本進出

インド発のユニコーン(時価総額10億ドル超)企業を目指すシーテーエス・コミュニケーションズ(ニューデリー)が、日本市場に本格進出する。4月をめどに都内に日本法人を設立し、第5世代通信(5G)やネットワークの仮想化などの先進技術を活用した通信インフラをオーダーメードで作り上げる。シーテーエスは、インド最大手のリライアンス財閥一族の直系であるプラモド・クマル・ヤダフ氏が創業したスタートアップ企業で、海外法人の設立は日本が第1号となる。


リライアンス財閥は、タタ財閥と並ぶ事業規模を持つ巨大コングロマリット(複合企業)。その一角を担うシーテーエスは、通信領域に特化したソリューション企業として2015年に創業。競争力の源泉となるIT人材はリライアンスから移籍した精鋭部隊を集める一方で、シーテーエスにはリライアンスの資本を入れずに、数年後に新規株式公開(IPO)して、ユニコーン企業を目指している。


日本法人を成長ドライバー(推進力)に位置付け、インドのITパワーを日本に投入する。楽天モバイル(東京都世田谷区)向けの開発プロジェクトを受注し、50拠点を超える国内データセンター(DC)に完全仮想化したクラウド環境の構築に着手した。


現在はインドから派遣した約30人のシステム技術者らを投入しているが、日本法人設立後は常駐を含め開発チームを増強し、本格的な事業体制を築く。通信事業者向け以外に大手企業の通信インフラの構築にも力を注ぐ。


日本法人は、2019年に連絡事務所として立ち上げたシーテーエス・コミュニケーションズ・ジャパン(東京都港区、渡部庄一代表、03・6809・6025)を格上げして設立する。資本金1億円を投じて都内に本社を新たに構え、日本―インド間の開発連携を強化する。売上高は20年度が100億円、21年度は200億円を見込む。通信事業者向け以外に、大手企業の通信インフラの構築にも力を注ぐ。


シーテーエスはフィンランドのノキアや独ローゼンバーガー、中国のギガライト、米シスコなど、20社を超える大手ITベンダーとパートナー契約を結び、各社が提供するソフトやハードを組み合わせた一括請負型で、オーダーメードのシステム構築で差別化を図っている。


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子育て支援に教育を…学童保育でプログラミング

小1の壁―。子どもが就学しても家庭には新たな課題が立ちはだかる。放課後に安心して過ごせる環境を確保できるかは、乳幼児の親とは別の悩みとして存在する。


【共働きでも安心】
人工知能(AI)によるクラウド型サービス「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」を提供するグルーヴノーツ(福岡市中央区)は、学童保育「テックパーク」を展開している。主に5歳―小学校中学年が通い、プログラミングやデジタルアートなどをカリキュラムとしている。


親が共働きでも安全・安心を提供するため最長21時まで預かり、夕食の提供やシャワーの利用、タクシー送迎などきめ細かい体制を敷く。自社のエンジニア経験者を中心にスタッフを構成し、「子育て支援の中に教育を取り入れる」(佐々木久美子会長)ことを軸に展開してきた。


【国内外から視察】
取り組みには「自分たちのニーズを詰め込む」(同)という考えがあった。そのため自治体の補助を受けず事業として成り立つ前提で進めた。自身も親として小1の壁にぶつかった経験がある。事業との両立を探る中で核家族が多い社内状況も踏まえ、「自分のテリトリー(会社)で解決させる」(佐々木会長)狙いもあった。


テックパークの施設には3Dプリンターなどの機器もそろう。2016年の開設以降、ユニークな取り組みに国内外からの視察が相次ぐ。福岡以外の地域での開設を求める声も増えてきた。生活習慣の基礎づくりの場として子どもの興味や関心を見守りながら育む環境を提供していく。

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cat_oa-newswitch_issue_09ccb3918cc7 oa-newswitch_0_96c9feead8e6_鉄則は「お客さんの話を聞くこと」 シャープの家電売りの極意 96c9feead8e6 96c9feead8e6 鉄則は「お客さんの話を聞くこと」 シャープの家電売りの極意 oa-newswitch

鉄則は「お客さんの話を聞くこと」 シャープの家電売りの極意

インターネットとつながった「IoT(モノのインターネット)家電」。従来の家電は「画素数」などハードウエア的特徴を列挙する説明で良かった。しかしIoT家電は利用履歴に応じたサービスを提供する。「お客さんの話を聞く比重が高くなってきた」。シャープ・ココロ・ライフ(大阪府八尾市)ココロソリューション開発部課長の安田一則(41)はこう指摘する。

同社はIoT家電強化のためシャープが2019年10月に新設した子会社。安田はシャープがIoT家電事業を始めた時から商品企画に在籍し、一般消費者や協業企業などと接してきた。

鉄則は「(客の)一番困っていることを聞き出すこと」(安田)。家電とつながったクラウドには困り事を解決する“引き出し”がそろう。それを提示できれば限られた時間でIoT家電の良さを実感できる。「はじめの一歩をお客さまからもらう。特にIoT家電の説明では重要だ」(同)。

【視覚に訴える】


安田は今、人工知能(AI)とIoTを合わせた家電の社内セールス研修なども担当してる。全国主要10拠点約700人の営業部隊を相手に、説明資料にも工夫を凝らした。当初は「製品のIoT化による進化のステップ」と題し、業界動向や差別化戦略などを羅列した。だが製品自体の良さを訴求できず、営業マンから「分かりにくい」と一蹴された。

そこで身の回りにあるスマートフォンを例に取り、AIの役割をロボットになぞらえた模倣図を作成。視覚的に腹落ちできる資料に変えた。営業部隊も展示会などでIoT家電がどう生活を変えるか説明しやすくなった。

【対話型猛勉強】


説明技術で参考にした書籍は『伝え方が9割』(佐々木圭一著)。対話型IoT家電への話しかける方法を考えていた時に出会ったが「自分のしゃべり方も変わった」(同)。IoT家電の説明ではネット環境が必須だ。スマートフォンにはWi―Fiの混線状況が分かるアプリを入れて、常に通信状況を確認している。(敬称略)

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