この次世代通信規格は、新型スマートフォンやさらなる高速通信、IoT革命などをもたらすことでしょう。
「5Gの時代が来る」という話は、2018年から少しずつ聞かれるようになりました。ですが、ついにその動きが本格化しています。ちなみに「5G」の「G」とは、「Generation(世代)」の頭文字。移動通信における速度の規格が進化するたびに、世代をひとつづつ進めています。
第5世代の速度となったネットワークは、人々のやりとりや様々な端末間のコミュニケーションのあり方を劇的に変えようとしているようです。少なくとも、あらゆる通信キャリアやネットワーク事業者は、そのように声高に叫んでいます。しかしながら、実際のところはもう少し複雑なようなのです。
そもそも我々はどのようなプロセスを経て、「5G」に到達したのでしょうか?
もちろん数字のうえでの話です。最初にあったのは「2G」で、これは1991年に導入されたものになります。初代iPhoneがモバイル業界に登場したときには「3G」通信が一般的になっており、電話やテキストメッセージ以外に初めて動画の再生も可能になりました。当時は、「これ以上は必要ない」とも言われたものです。
しかし10年ほど前に、通信キャリア各社は「4G(あるいはLTE)」へのアップグレードを実施します。これによって、複数のアプリによる通信や動画のストリーミングなど様々なことが可能となりました。こうして人々は、またしても「『4G』で充分、これ以上は必要ない…」と考えたものでした。
現在、我々はますます多くの端末をネットワークに接続するようになっており、最終的にはあらゆるものをネット接続しようとしています。IoT(Internet of Things、モノのインターネット )技術は玄関のベルからベッドサイドテーブル、自動運転機能、調理器具までと、あらゆるモノに対して導入されようとしています。
現在でも、世界は「4G」では対応できないほど「スマート」になっており、再びネットワークのアップグレードが必要な時期にさしかかっているというわけです。デジタルツールの進化は、とどまるところを知りません。
今回、これから予想される「5G」への転換に対して備えるため、ソフトウェアネットワーキング企業のビッグ・スイッチ・ネットワークスのCEOで、20年以上にわたってネットワークのエコシステムに携わってきたダグ・マレー氏に話を聞きました。
以下、「5G」について知っておくべき重要事項を解説しましょう。
5Gのメリットは何なのか? 「5G」は、圧倒的な高速通信を可能にするでしょう。この通信方式がもたらす帯域幅に関しては、現在使用されている「4G」ネットワークのおよそ20倍のピーク速度を持つことになると見積もられています。「4G」も遅いものではないので、この「5G」の通信速度は明らかなメリットとなるでしょう。
「ミレニアル世代の若者など、固定回線を引いたこともない方も増えています。そんな中、非常にパワフルな『5G』の登場によって、『インターネット用として固定回線を引いたほうが速いか⁉』などとな悩む必要はなくなるかもしれません」と、マレー氏は話します。
また、「『Hulu』やその他いろいろなアプリを稼働させるような場合にも、使っているモバイル端末で直接やればいいのです」と、マレー氏は続けてコメントしました。
(米国での)5Gの導入スケジュールは?
大都市に住んでいる方の場合は、すでに「5G」導入の土台は整いつつあるかもしれません…。マップでは現在、「5G」サービスが提供されているエリアや今後提供予定のエリアを見ることができます。また「5G」の導入では、通信キャリア各社が競い合っており、キャリアによっても以下のようにスケジュールが異なっているのが現状です。
-ベライゾンは、2018年から一部の都市で家庭向けの「5G」ホットスポットサービスの展開を開始しており、今年中に携帯電話向けの「5G」サービスを提供開始する予定です。
-AT&Tは、2018年に12都市で「5G」を導入しており、さらなる展開を進めています。
-スプリントは、2019年5月までに9都市で「5G」サービスを提供することを目指しています。
-T-モバイルは、「2019年中に30都市で5Gサービスを提供する」としていますが、本格的な「5G」サービス提供は2020年以降になりそうです。
米国は常にテクノロジーの最先端を行く国ですので、当然ながら「5G」への切り替えにおいても世界をリードする立場となるでしょう。
現在も「3G」ネットワークを使用している海外を旅行したとき、その速度の違いに驚いたこともあったのではないでしょうか。ただし米国内でも、いまだに「4G」が導入されていない地域も一部あることも確かですが…。
2019年、5Gは一般消費者にとっても重要なものとなるのか? 簡潔に言えば、答えは「ノー」です。
「5G」はまもなく導入されますが、今年中に本格的に入ってくるわけではありません。マレー氏は大部分の携帯電話やモバイル端末が「5G」ネットワークに対応する時期について、2020〜2021年になると見込んでいます。
また、調査会社トレンドフォースからは、5Gインフラが完全に整う時期が2022年になると予測されています。
続々発表される、5Gスマートフォンに価格に見合う価値はあるのか? 2019年は、「5G」スマートフォン元年となるでしょう。
サムスンは2019年2月20日、サンフランシスコで行ったイベントで初の「5G」スマートフォン「Galaxy S10 5G 」を発表しています。が、これはおそらく1000ドル(約11万円)以上になると予測されています。
また、ファーウェイの「Mate X」も、「5G」ネットワークに対応予定です。この未来的な折りたたみスマートフォンの価格は、2600ドル(約29万円)からになっています…。
他にも、シャオミの新型「Mi Mix 3」やLGの「V50 ThinQ」なども5Gに対応する見込みであり、当然ながらアップルも5G端末の開発を進めていることでしょう。
ただし、数々の「5G」スマートフォンが発表されているとはいえ、スマートで予算意識の高い消費者たちがこういったスマートフォンに買い換える1年にはならないと予想されています。
世界的にも「5G」サービスはまだ始まったばかりですし、このネットワークは大規模な消費者向けにはほとんどテストもされていないという状況を鑑みての予想となっています。とは言え、世界各国で「5G」インフラの整備を進めている企業各社は、「インフラをつくってしまえば、消費者はついてくる」という意識を持っています。
彼らがシステムをつくれば、華やかな最新端末を開発するスマートフォンメーカーや大げさなデータパッケージプランを考案する通信キャリアが続くわけですから…。すぐとは言わずとも、ある程度近い将来には、スマートフォンのアップグレードが必要になる時期が必ず来ることでしょう。
メーカー各社が5Gスマートフォンのマーケティングを始めているのはなぜなのか? もちろん、それは消費者に新製品を買わせるためです。が、「5G」の普及を確実なものにする意図もあります。
「このエコシステムは、全体が連動する必要があります。我々のようなネットワーク企業が素晴らしいインフラを築いて「5G」サービスを届けられるようになっても、スマートフォンがこの規格に対応してメリットを得られなければ、何の意味もありませんから…」とマレー氏は説明しています。
革新的なスマートフォン以外で5Gがもたらすものとは? テックニュースでよく聞くような略語、あるいはイーロン・マスクがのめり込みそうなガジェットを挙げてみれば、そのどれもが「5G」の恩恵を受けることになるでしょう。
AR、VR、AI,IoT、自動運転車、スマートホームハブ、スマートコンセント、スマートスピーカーといったものがそれに当たります。これらは「5G」の導入により、すべてがシームレスかつスピーディーに、そして、人々の生活により統合されたカタチで稼働・連携するようになることでしょう。
「日常的に触れたり、使用するあらゆるものが、映画『アイアンマン』的なハイテクを極めたものになるようなものです。私にとっては、かなりエキサイティングなことですが」と、マレー氏は期待に胸を膨らませながら語ってくれました。
マレー氏はさらに、「5G」がもたらす次のようなシナリオを一例に挙げています。
「あなたがBMWを持っているとしましょう。このクルマは、多くの分析を行うデータセンターとやりとりをすることになっています。例えば、そのクルマは次のようなことをユーザーに伝えるようになるでしょう。『いま運転している高度や外気温、雪の量から統計的に判断すると、以前よりも早くタイヤ交換が必要になりそうです。ディーラーとのアポイントメントを検討してください』と。その後、事あるごとにクルマから警告が送られるようになるわけです」とのこと。
5Gのリスクは? より多くの人々や端末がネット接続されるということは、人とネットワークがますます密接につながるということであり、そこには当然リスクもあります。それは皆さんも予想がついてるのではないでしょうか?
それは特に、プライバシーに関して。これを重視し、オンラインの動向を監視されることなく日常を送りたいと思っている人にとっては、そのリスクは顕著に感じていることでしょう。そのような監視は、ますますエスカレートするに違いないわけですから…。
そして企業は、ますます消費者と密接に関わるようになり、街はよりスマートになっていきます。が、こうした中で我々のデータを取り扱うアマゾンやグーグルのような企業が時折直面する問題に関して、「5G」ネットワークだからと言って解決されることはないでしょう。むしろ、「さらに危険になる…」という可能性も否めません。
ファーウェイの問題とは? 中国企業のファーウェイについては、CIAやFBI、NSAが同社のスマートフォンを購入しないよう勧告しているニュースでご存じかもしれません。ファーウェイは実のところ、「5G」技術のグローバルリーダーでもあるのです。
すでに世界有数の通信企業である同社は、中国ではアップルを上回る数のスマートフォンを販売しています。加えて同社は、海外での「5G」ネットワーク構築に関する契約のおいても、高い競争力を持っています。米国政府がファーウェイに神経質になっているのは、ご存じのとおりです。
「この問題が技術的なものではなく、地政学的なものになってきたのは、とても興味深いことだと思います」とマレー氏は話します。
しかし事実として、ファーウェイは中国という大国で最大の通信機器メーカーであり、同社は世界中の「5G」インフラの構築に関してリードしているのです。なので、まずは名前だけでも知っておくべきでしょう。
5Gのどのくらいの期間活用されるのか? マレー氏は「5G」も「4G」同様に、10年ほどのライフサイクルになると予想しています。
5Gの後に来るのは? もちろん、「6G」です。
「5Gの次の通信規格についても、今の段階でいくつか議論が交わされています。くだらないかもしれませんが、彼らは構想しているのは単純に6Gと呼ばれるものです」と、マレー氏は話します。
とは言え、「4G」端末がまさに出始めていた段階で、「5G」を想像することがほぼ不可能だったように、2019年の現時点で「6G」がどんなことを実現するかを語るのは困難なことになります。
「5G」がもたらすテクノロジーは、私たちの生活をさらに便利にさせてくれることは間違いありません。この著しいデジタル技術の発展に対して、我々はこれからも目を離してはなりません。なぜなら便利になった分だけ、(セキュリティ問題など)リスクもはらんでいるのですから…。
From Esquire US
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。