ファンも実に多い、覆面グラフィティ・アーティストのBanksy(バンクシー)。彼の「正体がついに判明!」というニュースが流れました。
Photograph / Getty Images
もはや「生ける伝説」と化しているアーティスト、バンクシー…。
皆さん、ご存じですか? 彼のことを簡単に言えば、英国ロンドンを中心に活動する世界的に人気の覆面アーティストです。社会風刺を凝らしたグラフィティアート、ストリートアートを世界各地でゲリラ的に描く手法が彼の特長となっています。
そして覆面ゆえに、「彼はいったい誰なのか?」という探究心と出たがりでない人間性も後ろ盾となり、その人気に拍車がかかる一方…そんな折、2017年12月12日(現地時間)にとうとう驚きの一報(すでに噂にはなっていましたが…)が届けられたのでした。
なんと、作品を描き終えたばかりのバンクシーの姿が、バッチリと写真で捉えられたのです。そして、その直後から世界各国のメディアで報じられていました(日本のメディアはアートに疎いのでしょうか、あまり…)。それがこちらです!
ストリートアートを代名詞的な手書きタイポグラフィーが描かれた石造りの建物の入口、その前に一人の男が立っています。
帽子こそ深めに被っていますが、その顔立ちはくっきりと…。右手にはスプレー、左手にはステンシルの型紙らしき思えるシートが! 自分の背後に人の気配を感じ、さっと振り向いた瞬間のご様子。それを予想外の方向、彼の左斜め90度の位置から撮影した男がいたわけです…。
この表情は明らかにストリートアーティストの振る舞い、そう誰もが感じるはず。で、問題はその男性の背後にある扉に描かれた作品に注目してほしいのです!! そこに書かれている文字は…
「Peace on Earth Terms and conditions apply(地球に平和を 規約と条件付)」
これはなんと現在、バンクシーのオフィシャルサイトのTOPページに配置してある最新作だったのです(2017年12月14日~は、次の作品に変わっています。なおInstagram@banksyには掲載中)。現在の国際情勢を、アイロニカルに表現したものではないでしょうか…。
Bethlehem 2017. #peaceonearth
Banksyさん(@banksy)がシェアした投稿 - 2017 12月 6 3:50午前 PST
写真は、パレスチナのヨルダン川西岸地区ベツレヘムにあるカトリック礼拝堂「ミルク・グロット」、その周辺にあたります。撮影者は、たまたま現地を訪れていたイギリス人観光客であるジェイソン・ステリオスさんとのこと。
ジェイソンさんはそのとき、「単なるストリートアーティストの一人を撮影しただけ…」程度にしか思っていなかったようです…。
それが1週間後、たまたまバンクシーのオフィシャルサイトを閲覧してびっくり仰天! そこですぐに、名探偵コナンくんのひらめき効果音が聞こえたのでしょう、「ピピ~ンッ」と「あれは最新作を描き終えたばかりのバンクシーだったんだ!」と…。
そして「この写真はもしかする…」と考えたとか考えなかったとか…(想像による脚色も入っております)。
で、本題のバンクシーの正体について…ですが。
これまで、さまざまな推測がなられてきたました。その中でも一番「真実ではないか?」と噂されていたのが、英国・ブリストル出身の音楽ユニット「マッシヴ・アタック」、その中心人物であるロバート・デル・ナジャ(通称:3D)。
ある几帳面な方が調べたのでしょう…「『マッシヴ・アタック』の世界ツアーの足跡を辿るように、バンクシーの作品は出現する」という分析もあるのです。また、世界的人気の名DJであるゴールディーがポッドキャストの番組内で、バンクシーの話の際にうっかり、“ロバート”の名を漏らしたこともあったそう。
しかしながら当の3Dに聞けば、バンクシー説を完全否定しています。結局のところ、真相は藪の中…ということに。
で、ここに来て、決定的瞬間を捉えた写真が世界的に出回ったのでした…。
これも、100%肯定できる証拠とは言えないところもあります(記事担当スタッフの目には、はっきり3Dとは言いきれない面も…鼻のカタチ等)。単に、似ている人かもしれません。さらに、それが3Dだとしても…彼自身が描いている場面をとらえた画像ではないのです…。
また一方で、その男の顔の輪郭や口元の表情などなど、「これは3Dに間違えない!」と断言する人も少なくないのです。
やっぱり、バンクシーは3Dだったのでしょうか!? 真実に近づいたぞ…とばかりに、喜んでいるファンも多いかもしれません。これはバンクシーファンともども、「マッシヴ・アタック」ファン、3Dファンも同様のことでしょう。
…ということで、今回はこれまでにない決定的な証拠として語られることでしょう。ですが、これはまだまだ情況証拠の1点にしかすぎません。
「事実認定するには、もう少し別の情況証拠を集めないといけない」のではないでしょうか。ここで決定的な物的証拠、もしくは「もはや言い逃れないできない」と観念した3Dが自ら真実を語る…のであれば、決着はつくのでしょうが…。または、替え玉を立てて別ストーリーを創作するという手もあります(笑)。
いずれにせよ、今後の急展開も予想できますので、さらなる注目を!!
【それでは、ここで
バンクシーの作品を
振り返ってみましょう!】
Banksy graffiti art and street art pieces #01
タイトルは「Balloon Debate」
Banksy(バンクシー)がその名を世に轟かせたのは、2005年だと言っていいでしょう。この年、彼(彼女かもしれませんが…)は自作を世界各国の有名美術館の人気のない部屋に無断で展示し、しばらくの間誰にも気づかれないまま展示され続けたことで話題となりますた。当時はまだ、Banksy(バンクシー)というサインが入っていていも、誰もが通り過ぎる時代でした。それ以前の作品となれば…。こちらは2005年8月6日に撮影されたもの。つまり、この作品を書き上げたのはそれ以前となります。場所はイスラエルのラマラ。イスラエルとパレスティナを隔てる分離壁に描かれた作品です。この地区には9つの作品が残されているといいますが、そのうちのひとつがこれです。
Banksy graffiti art and street art pieces #02
タイトルは「Art Attack」
こちらも2005年8月6日に撮影されたもの。場所も同じくイスラエルのラマラ。イスラエルとパレスティナを隔てる分離壁に描かれた作品です。この地区には9つの作品のうちのひとつになります。
Banksy graffiti art and street art pieces #03
タイトルは「Escapism」
こちらも2005年8月6日に撮影されたもの。場所も同じくイスラエルのラマラ。イスラエルとパレスティナを隔てる分離壁に描かれた作品です。この地区には9つの作品のうちのひとつになります。「Escapism」の意味は「現実逃避」です。
Banksy graffiti art and street art pieces #04
こちらも2005年8月6日に撮影されたもの。場所も同じくイスラエルのラマラ。もう少し詳細に言えば、現在のパレスチナ国(パレスチナ自治区)の一部を形成するヨルダン川より西部の地域。欧米などでは「West Bank(ウエストバンク)」 、単に「西岸」の意味する言葉で表現されている地域にある、イスラエルとパレスティナを隔てる分離壁に描かれた作品になります。前述どおり、この地区には9つの作品があり、これもその中のひとつ。
Banksy graffiti art and street art pieces #05
2006年6月27日に撮影された作品。英国・ブリストルのとある家の壁に、浮気現場がばれそうになって必死に隠れようと、裸で窓からぶら下がる男の絵を描かれています。
Banksy graffiti art and street art pieces #06
2007年12月5日に撮影された作品。バンクシーの作品の中で、もっとも有名なもののひとつ「花を投げる人」です。イスラエルのヨルダン川西岸南部のベツレヘム、そのとある工場と思える建物の壁に描かれています。かなり大きく、花束を投げようとしている男の絵。本来は、爆弾を投げようとしているように思えますが、それをバンクシ—は花束にしています。「楽園」にするも「地獄」にするも、人間の手腕・選択にかかっているということでしょうか…。このアーティスティックな風刺がバンクシーの魅力ですね。
Banksy graffiti art and street art pieces #07
2008年3月4日に撮影された、英国・ロンドンのエセックスロードの壁に描かれた作品。子供たちはTesco(テスコ)の袋を旗に見立て、掲揚するシーンを描いています。
Banksy graffiti art and street art pieces #08
アメリカにも、バンクシーの作品はあります。こちらは大型ハリケーン「カトリーナ」襲来から3年を迎える前日、2008年8月28日に発見された作品のひとつ。冷蔵庫の形をしたたこを揚げる子どもが描かれています。
Banksy graffiti art and street art pieces #09
こちらも大型ハリケーン「カトリーナ」襲来から3年を迎える前日、2008年8月28日に発見された作品のひとつです。ダウンタウンにある見捨てられた建物の壁に、ホームレスに見立てたアブラハム・リンカーンが描かれています。
Banksy graffiti art and street art pieces #10
2010年6月14日に、ロンドン北部のプリムローズヒルの一角で撮影された作品。バンクシーの作品であるか証明されたわけではありませんが、バンクシーの作品だと言われている作品になります。
Banksy graffiti art and street art pieces #11
2011年1月23日に撮影された作品。英国・ロンドン、ヴィクトリア駅の裏にある建物の横、火災警報器(スプリンクラー・アラーム)を卵子に見立て、そこを中心に囲む精子が描かれています。
Banksy graffiti art and street art pieces #12
2006年5月16日に英国・ロンドンのカムデンで撮影された作品。掃除中のメイドは、集めたゴミを壁を捲って隠そうとしている風刺に。さて、何を隠そうとしているのでしょう。
Banksy graffiti art and street art pieces #13
2012年5月17日に撮影された作品。保護するため、現在はプラスチックカバーで保護されています。ミシンでユニオンジャックの旗を縫製する貧しい子供がモチーフ。
Banksy graffiti art and street art pieces #14
2008年6月24日に撮影された作品。場所も同じくイスラエルのラマラ。もう少し詳細に言えば、現在のパレスチナ国(パレスチナ自治区)の一部を形成するヨルダン川より西部の地域。欧米などでは「West Bank(ウエストバンク)」 、単に「西岸」の意味する言葉で表現されている地域にて。この日、ベツレヘムでフランス大統領ニコラス・サルコジとファースト・レディ・カーラ・ブルニ・サルコジが到着するに際し、パレスチナ警察官が警備にあたっていたところを撮影。
Banksy graffiti art and street art pieces #15
2013年10月3日、アメリカ・ニューヨークで撮影された作品。
Banksy graffiti art and street art pieces #16
2013年10月7日に撮影された作品。こちらもアメリカ・ニューヨークにて。 絆創膏がいくつも貼られたハート型バルーンが痛々しくも浮き上がる様子。
Banksy graffiti art and street art pieces #17
2013年5月6日に撮影された作品。英国・ロンドンのカムデン・ストリートにあるガソリンスタンド跡地の壁に。ネズミがメッセージを残したという設定なのでしょう、ネズミの手が赤く染まってます。
Banksy graffiti art and street art pieces #18
2010年5月14日に撮影された作品。アメリカ・マサチューセッツ州ボストンのとある壁。「Follow your dreams」(夢を追え)に対して、「Cancelled」(中止しました)のシールが…。「夢を追いづづけろ!」と逆説的に訴えているのでしょうか? それとも、「いまの世には夢も希望もない!」とシニカルに訴えているのでしょうか?
Banksy graffiti art and street art pieces #19
2014年4月14日に、英国・グロスターシャー州のチェルトナムのストリートで撮影された作品。既存の電話ボックスを中心に、会話を聞いている3人の諜報部員らしき人物を描いています。ここから数マイル先に、偵察衛星や電子機器を用いた国内外の情報収集・暗号解読業務を担当する諜報機関「Government Communications Headquarters=GCHQ(政府通信本部)」があります。
参照:The Daily Mail
編集者 / 小川和繁