Barbour オイルドジャケット
アニキ:これはバブアーのオイルドジャケットで、たぶん1982年から87年くらいのものです。元々は、魚の油を染み込ませて防水にしていたという労働着なので、デニムのヒゲみたいに色落ちさせる感覚で、雨に打たれたりしてオイルが抜けていく過程も楽しめる服ですね。
FASHIONSNAP.COM(以下、F):オイルが入っているので少しベトベトしていますね。
アニキ:軽くて柔らかくてサラサラしてるものが求められる今の時代に、ベトベトしている服ってあり得ないなと思ったんです。今のバブアーももちろん良いんですけど、時代に逆行している感じが格好良いなと。
F:オイルドジャケットは何枚持っているんですか?
アニキ:15年くらい前に一度買いました。当時はオイルがいっぱい入っているのが嫌で、良い感じに落ちないかなとシャワーをかけたんです。そしたら抜け過ぎて、すごい格好悪いことになってしまって。オイルを塗り直して久しぶりに着ようかなと思っていた時に、これと出会いました。
F:ベタつきは大丈夫ですか?
アニキ:冬の乾燥肌も潤うのでニベアだと思っています(笑)。オイルの香りも男っぽい感じがして良いんですよ。難点は、スマホの画面が少しベトベトになることですかね。
F:仕事的に電話は必需品かと思うので大変そうです。
アニキ:逆にスマホがあるから休めないこともあるじゃないですか。油で曇ってよく見えないのをいいことに、休み気分を満喫しているんです。
Vintage チノパン
アニキ:これは、浅草の「スリーラバーズ(THE THREE ROBBERS)」というお店で見つけた1950年代のフランス軍のチノパンです。軍モノといえばアメリカのものが数も多くてポピュラーなんですけど、ヨーロッパの軍モノを着てみるのもいいなと思って、デッドストックで状態も良かったので試着せずに買いました。
F:「アニ散歩」をYouTubeで見てます!色々試着して迷って結局買わないというイメージもあったんですが、試着しないで買うこともあるんですね。
アニキ:実はあるんです(笑)。「この人結局何も買わないな」みたいなコメントも多いんですけどね。
F:ヨーロッパの軍モノの良さは?
アニキ:ヨーロッパは洋服の歴史があるからか、タックの入れ方だったり、生地やボタンなどに違いを感じますね。ポケットのフラップも直線ではなく少しデザインが加えられていてグッときます。トレンチコートはイギリス軍の服だし、ヨーロッパのミリタリーから派生した服も面白い。現代の服はこういうのを元ネタに作っているのかなとか。もちろん戦争は良いことではないですが、機能服としては本当に優れていると思いますね。
THE THREE ROBBERS セットアップ
F:スリーラバーズはオリジナルアイテムも展開しているんですね。
アニキ:そうなんですよ。昔のニュアンスとかエスプリを感じさせるんですがただのコピーとかではなくて、独自で作っている面白いお店です。
F:これ素材は何ですか?
アニキ:TCと言われるポリエステルとコットンの混紡です。シワになりにくいので、クライアントへの挨拶やレセプションパーティーとかで、気分じゃないけど綺麗目な格好をしないといけない日に、気軽に鞄に入れておけるというのも気に入っています。
F:裏地は地図のプリントなんですね。
アニキ:イギリス軍が敵地に行くときに使っていたエスケープマップをイメージしていると。レーヨン製でカサカサと音がしないから敵に見つかりにくいというもので、それを裏地に使う遊び心も好きですね。
F:面白いですね。そういったディテールに惹かれて購入したんですか?
アニキ:はい。あとミリタリーっぽいオリーブグリーンの色も気に入っています。実はこれオーナーさんの拘りで1色のみの展開だそうで、この色を気に入って買うか買わないか。アニ散歩でも買うか買わないかをいつも悩むので親和性を感じました。
F:アニ散歩といえば、服を見たあとに飲むお酒も楽しみの一つです。
アニキ:浅草に行った時は基本的にホッピーを飲んでますね。高円寺とかだと古着屋を回って、商店街をブラブラして飲むみたいな。表参道や神宮前よりも、そういう街の方がリラックスできて疲れないんですよ。あと昼間に堂々と買い物ができて、お酒を飲めるのが最高です。
Brooks Brothers ボタンダウンシャツ
アニキ:これは「ブルックス ブラザーズのボタンダウンシャツ」この一言で魅力が伝わるアイテムだと思っています。やっぱりこういうベーシックは根底にあって。トレンドや時代の流れもありますが、自分の中でずっと着ていられるアイテムの一つがボタンダウンシャツなんです。
F:これは今年発売されたものですか?
アニキ:そうです。新しいものは胸ポケットがないんですよ。
F:シャツの胸ポケットは好き嫌いが分かれるポイントだと思いますが、どっち派ですか?
アニキ:最初はすごく嫌でした。でもシャツの起源を辿ると、元は付いていなかったらしく。顧客からの要望でポケット付きが作られるようになったとか。そんなウンチクを知ると、起源のポケット無しも良いんじゃないかな?と思えてきたんですよね。ポケットが無いけど表前立て、というバランス感も悪くないなと。
F:ブルックス ブラザーズのシャツはかなりお気に入りなんですね。
アニキ:ボタンダウンだけで7枚くらい持っています。昔はタイトに着るためにネックがきつめのものを選んでいたんですけど、今は大きめに着るのがトレンドだったりするので、これは少し大きめのサイズを選びました。第一ボタンまで閉めてノーネクタイで着るというのが新鮮で、第一ボタンが閉まるこのサイズを買い足した感じです。
F:結構持っているんですね。ちなみに初めて購入したのは?
アニキ:高校生の時。でも、結局は全然着こなせなくて。アイビールックとかトラッドに興味があって買ったんですけど、DCブランドブームが来た時にそっちに移っちゃったんですよね。
F:興味がまた戻ってきたんですね。
アニキ:30代半ばくらいかな。クローゼットを見返すと、トレンド的な意味で何年か経つと着れなくなってしまう服があって、それが嫌だったんです。擦り切れるまで着たいし、一つのものを長く着るのが自分のスタイルだっていうのを考え始めたんでしょうね。ボタンダウンシャツは、今となっては定食に無くてはならないご飯のような存在ですよ。デニムにもスラックスにも合う。ご飯は米や炊き方がよくないと美味しくないですけど、ブルックス ブラザーズは間違いなく上手いから。
F:よく考えて服選びをしている理由がわかりました。
アニキ:「この人結局何も買わないな」には理由があるんですよ。
Vintage グルカショーツ
アニキ:これはイギリス軍に関係するグルカ兵が履いていたグルカショーツです。丈が長くてキュロットみたいに裾が広がっていて、股上の深さとか野暮ったさが気に入りました。
F:ベルトの仕様が独特ですね。
アニキ:なんでこんな面倒くさい作りにしたんでしょうね。着脱している間に襲撃されたりしたら大変ですよ。当時はジャストウエストで絞って履いていたようなんですが、今の時代にそのまま履くのは少し違うので、腰履きができるようにベルトの幅をずらしています。その痕跡が残るのも味わいだなと思いますね。どれだけ良いヴィンテージのアイテムを着ても、サイズ感とか似合っていなかったら本末転倒なので、いかに自分のスタイルに取り入れられるかを意識しています。
F:これはどこで購入したんですか?
アニキ:知り合いとグルカのアイテムが気になるという話をしていたときに、偶然ですが祐天寺の「ReCollect」で見つけて。その日はやっぱり悩んで買わなかったんですけど、気になって眠れなくなっちゃったんですよ。それでプライベートで購入したアイテムです。
F:プライベートではもっと買っているんですか?
アニキ:今の仕事とプライベートでは5分5分ぐらいですかね。でもプライベートで買い物に行っても、動画や記事のことを意識してしまうんです。お酒を飲むにしてもサッポロビールさんの連載もやらせてもらっているので、服を見ててもお酒を飲んでても、色々と考えてしまって.......。
次のページは、バーバリーの一枚袖ステンカラーコートや、赤羽で飲むときに履く靴といえば?
ALPHA INDUSTRIES M65フィールドジャケット
アニキ:これは実際にアメリカ軍で使われていたミリタリージャケットをベースに作られたもので、1990年代ぐらいに一般的に販売されていたものです。ただ、今のアルファ インダストリーズは東南アジアで作っているんですが、これはアメリカ製なんですよ。
F:どのあたりが魅力ですか?
アニキ:デッドストックで買ったんですが、軍モノじゃないけどアメリカ製、というところですかね。あとこの色。
F:ミリタリーといえばオリーブグリーン系のイメージが強いですが、なぜベージュを?
アニキ:昔は「MA-1の本物はグリーンで裏地がオレンジだろ」みたいに思っていたけど、これはこれで魅力を感じ始めて。今50歳なんですけど、もう少し年を取ってジジイになった時に、こういうベージュ系のジャケットを野暮ったく着るのも格好良いかなと。枯れた中年感も味だなと思っているので。
F:なんとなく将来像が見えてきました。
アニキ:ガシガシ洗濯して、絶賛味出し中です。
BURBERRY ステンカラーコート
F:年季の入ったアイテムですね。年代のものですか?
アニキ:かなり古いとしかわからないです。コットン100%でシンプルですけど、この玉虫色が良いんですよね。ブルックス ブラザーズのシャツもそうですが、こういうスタンダードなものはオーラがあるというか、服の力を感じるんです。
F:中のバーバリーチェックは現行のものとは少し違うようです。
アニキ:今のチェックが使われる前だったのかも。昔のバーバリーのステンカラーコートは、品質表記がブランドタグの下にあるんです。だから古着屋でここを確認している人を見たら、同業者かな?って意識しちゃいますね。
F:どこが気に入っていますか?
アニキ:1枚袖というところかな。バーバリーのステンカラーコートって、袖が2枚の生地で作られているものが多いんですよ。でも昔のもので1枚で作られているのもあって、着た時の肩のラインとか落ち方が綺麗なんですよね。1枚袖のバーバリーは数が少ないんですけど、こういう企画や自分の連載とかで紹介するとまた減っていく......自分で自分の首を絞めているんですかね(笑)。
PARABOOT シャンボード
アニキ:パラブーツのシャンボードは昔ずっと履いていたんですけど、しばらくは気分じゃなかったので靴箱で眠っていたんですよ。でも震災後に、歩きやすいスニーカーとかラバーソールのマーケットが広がったじゃないですか。改めて靴箱を見返すと、フォルムの普遍性とか外羽根とかに惹かれて、また履きたいという気分になりました。
F:すでにシャンボードを持っていて買い足したんですね。
アニキ:これはデカタグと呼ばれるもので、タグが普通のものより大きいんです。あと、この濃い茶色のものは履いていくうちにシミができたり、エイジングしていく過程を楽しめるので好きなんですよね。
F:マメにケアをしていそうですね。
アニキ:いや基本的にあまりしないんです。傷がついても良いし、できるだけ自然な状態が良いので。たまに色があまり付いていないクリームを塗るくらいで、あとはもう自然のまま楽しむ感じです。
F:久しぶりにパラブーツのシャンボードを履いた感想は?
アニキ:やっぱり歩きやすい。もともと登山靴を作っていたので、ゴツくて重そうな見た目ですけど、履いてみるとすごく快適です。今年はアメリカの軍モノとかリーバイスのデニムなどを履いているときに、足元だけフランスブランドという感じでよく履きましたね。若い頃は、一時期フレンチブームというか、フランスかぶれ時代というのがありましたが。
F:それはいつ頃?
アニキ:80年代後半とか90年代頭くらいで、20代かな。「セントジェームス(SAINT JAMES)」とか全身フランスブランドを着て、フレンチがイケてるゼみたいな、ちょっと勘違いしがちな時代もあったんです。でもその当時に買ったものが年月を経てもやっぱり良いなと思えたり。こういうスタンダードなものって長い付き合いができるんですよね。
RED WING ミルワン ブルーチャー・オックスフォード
アニキ:アメリカ海軍のサービス シューズを元に作ったレッド ウィングのミルワンです。レッドウィングって、作業靴とかアウトドアシューズだったりタフなイメージですよね。これはセミドレスでドレスシューズのような雰囲気もありながら、シワの入り方とかステッチでちょっと無骨な一面もあるところがグッとくるんです。
F:よく馴染んだ感じがしますね。
アニキ:これは新品で買ったんですけど、結構履きました。赤羽でよく飲むんですけど、直訳するとレッドウィングじゃないですか。レッドウィングを履いて赤羽で飲むという動画を何回か上げています(笑)。
F:履き心地はどうですか?
アニキ:最初は少し硬いんですけど、すぐ馴染んで今は快適。これから長い付き合いになる友人みたいな。良い靴です。
F:レッドウィングは他にもお持ちなんですか?
アニキ:この他だとポストマンというフラットソールの靴を持っていますが、それもかなり付き合いのいい友人ですよ。
JS Sloane ポマード
アニキ:昔は長髪だったんですけど、3年ほど前に古き良き昭和の七三分けみたいな髪型に憧れて、短くしたんです。最初はハードジェルで固めていて、でも頭を触りにくいんですよね。よくあるポマードだと油でギトギトになっちゃうし匂いも独特で嫌だなと思っていた時に、これを見つけたんです。
F:これもポマードですよね?
アニキ:水性のポマードなんです。触ってもそんなにベトベトはしないし、水で洗えばすぐにサラサラする。昭和のお父さんみたいないい香りがするし、ガラスじゃなくてプラスチックの容器なので割れる心配もない。
F:かなりお気に入りですね。
アニキ:一回気に入ったらずっと同じものを使うタイプで。これは水性ですけど、油って大事ですよ。50歳になったし、逆に脂っこくいようと。
F:脂っこく。
アニキ:オイルドジャケットもそうですけどね。爽やかでクリーンなものを求める若い子たちに、油を差すことで「油断するな」と謳っていこうかなと思っているんです。字のごとく、油断って油が断たれると起こってしまうんじゃないかなと。
F:なるほど。
アニキ:例えば今の時期だと、忘年会でお酒を飲んで取り乱してしまうとか。それは油断しているからでしょ。だから油を足していかないと。オイルドジャケットを着て、髪の毛にポマードを塗って、油断せずキチッとしようという思いを込めて。
今年のお買い物を振り返って
F:今年のお買い物を振り返ると、どんな1年でしたか?
アニキ:あまり1年間でどういうものを買ったか振り返ることがなかったので、すごく新鮮でした。今年は本当に良いものが買えたな〜と思いましたね。
F:20代のころにフレンチにかぶれたように、今ブームはありますか?
アニキ:そういうのはなくなりました。フレンチもイタリアも経て、でもせっかく日本に住んでいるんだし、日本人の感覚でイタリアもイギリスもアメリカも、良いと思ったものをミックスしたら良いんじゃないかと思ってきたんです。でも小ブームはありますけどね。ヨーロッパのミリタリーのことを考えて眠れなくなるとか。
F:では、最後に2019年に買いたいものはありますか?
アニキ:う〜ん、特にないですね。古着とか服って出会えるかどうかなので、偶然的な出会いで買いたいんです。でも来年の目標はありますよ。
F:何でしょう?
アニキ:「#油断するな」を流行らせる!です。
■片野英児1968年東京生まれ。総合広告代理店勤務を経て、フリーランスとして独立。講談社デジタルメディア「FORZA STYLE」のアニ散歩コンテンツの企画出演及び執筆の他に、フリーランスとしてテレビ、イベント出演などメディアの枠を超えて活躍中。2015年より「FORZA STYLE」で定番服と昭和グルメをクロスさせたコラム「アニ散歩」を連載開始し、人気コンテンツとなる。さらに2016年からサッポロビールのウェブサイト「赤星探偵団」にて赤星の飲める名店を紹介する「赤星アニ散歩」を連載し、イベントに出演。コラム連載の他に「アニ散歩動画」ではYouTubeにて40万回以上の再生回数を達成する。
■2018年買ったモノ
・小木"Poggy"基史が買ったモノ
・ONE MEDIA代表取締役 明石ガクトが買ったモノ
・アニキこと片野英児が買ったモノ
■買ったモノ連載ページ