ザギトワか、メドベージェワか。平昌五輪フィギュアスケート女子のフリープログラムが2月23日午前10時からスタートする。
21日のショートプログラムでは、アリーナ・ザギトワ(OAR)がSPの世界最高得点となる82.92を出し首位。世界選手権2連覇中のエフゲーニャ・メドベージェワ(OAR)が81.61が2位につけている。
ロシア出身選手2人による、史上稀に見るハイレベルな戦い。金メダルの行方に注目が集まるが、五輪の女子フィギュアには「フリーで青色の衣装を着た選手が勝つ」とのジンクスがある。
そもそも、この話自体が本当なのか。歴代の五輪金メダリストを遡って調べた。
ある時期まではむしろ赤が優勢
衣装の色が確認できたので、最も古かったのは1960年スコバレー五輪のキャロル・ヘイス(アメリカ)で、衣装は赤だった。
続く1964年インスブルック五輪のショーケ・ディクストラ(オランダ)の衣装は確認できなかったが、1968年グルノーブル五輪のペギー・フレミング(アメリカ)は鮮やかな黄緑。
1972年、札幌五輪のベアトリクス・シューバ(オーストリア)で、初めて青の衣装が出てきた。
この大会ではジャネット・リン(右)が「札幌の恋人」と呼ばれ、アイドル的な人気を呼んだ
しかし1976年インスブルック五輪のドロシー・ハミル(アメリカ)の衣装はピンクと再び暖色系に。
以後、1980年レークプラシッド五輪のアネット・ペッチ(東ドイツ)はピンク、1984年サラエボ五輪のカタリナ・ヴィット(東ドイツ)は赤紫。
1988年カルガリー五輪でも再びカタリナ・ヴィットが頂点に立ったが、この時のロングプログラム(フリー)の衣装は赤と黒のツートン。ここまで暖色系ばかりで、青系の衣装はほぼない。
1988年・カルガリー五輪でのカタリナ・ヴィット
青い衣装での優勝は最近から?
暖色系の歴史は続く。
1992年アルベールビル五輪のクリスティー・ヤマグチ(アメリカ)の衣装は黒で、変則的に2年後の1994年に開催されたリレハンメル五輪の金メダリストであるオクサナ・バイウル(ウクライナ)はピンクの衣装だった。
少なくとも四半世紀は暖色系の時代が続いたが、流れが変わったのは1998年の長野五輪。金メダルに輝いたタラ・リピンスキー(アメリカ)がフリーで着たのは青の衣装だった。
2002年ソルトレイクシティ五輪の金メダリスト、サラ・ヒューズ(アメリカ)の衣装は薄紫で、青系。
そして2006年トリノ五輪で日本の荒川静香が金メダル。「トゥーランドット」が流れる中、まとっていたのは青と水色の衣装だった。
荒川は当時のコーチ、ニコライ・モロゾフ氏から長年、青い衣装の選手が金メダルを獲得していると聞き、だったらとゲンを担いで青の衣装にし、トリノ五輪で金に輝いた。
「青のジンクス」が広まった一つの理由には、この荒川のエピソードがありそうだ。
ジンクスは続き、2010年のバンクーバー五輪ではキム・ヨナが青い衣装で金メダルを獲得した。
そして前回2014年のソチ五輪、金メダルに輝いたアデリナ・ソトニコワの衣装は、少し青みがかかったグレーだ。
ソトニコワの衣装をグレーと考えればジンクスは途切れたが、ブルーグレーと考えればこれで5大会連続で青系の衣装が金メダルを取ったことになる。なんとも微妙だ。
ただ、長い歴史で振り返れば、青の衣装が常に強かったわけではない。
選手たちは衣装でのジンクスを気にしている?
BuzzFeed Newsはフィギュアスケートの衣装を手がけるチャコット株式会社に話を聞いた。
同社では織田信成さんや村主章枝さん、鈴木明子さん、さらに珍しいところではフィギュアスケートアニメ「ユーリ!!! on ICE」の衣装を手がけてきた。
選手たちは衣装でゲンを担ぐものか聞くと、広報担当は「ご本人の意見が強い方もいれば、コーチの意見が強い方、ご親族の意見が強い方と様々なので、一概には言えません。色にこだわりに強い方もいらっしゃれば、形や重さを気にする方もいます」と回答。人それぞれのようだ。
青い衣装については「荒川さんが金メダルを取ったころにその話はよく聞きました。その時期ですと一般の方からの注文も青が多かったですが、現在は減っています」と、過去のものとなっているようだ。
では注目の2人の衣装は何色?
ショートプログラムの結果を見ると、金メダルの有力候補はやはりザギトワとメドベージェワの2人だ。
SPでトップに立ったザギトワのフリーの衣装は赤。
一方、メドベージェワのフリーの衣装は黒。3位のケイトリン・オズモンド(カナダ)も衣装は暗い赤で、順当に行けば「青のジンクス」は完全に破られることになる。
しかし日本のファンにとっては、このジンクスが続いてほしいかもしれない。
ショートプログラムで4位につけた日本の宮原知子のフリーの衣装は青。「青のジンクス」が生きていれば、逆転の金となるかもしれない。
果たして結果はどうなるだろうか。