cat_oa-businessinsider_issue_fb9760e8ddcb oa-businessinsider_0_fb9760e8ddcb_グーグル、次のCEOも“バーニングマン”で探す? fb9760e8ddcb

グーグル、次のCEOも“バーニングマン”で探す?

Reuters

・グーグルの2人の創業者セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジは20年ほど前、エリック・シュミットと一緒にバーニングマンに行った。CEOとしての資質を確かめるためだ。
・シュミットは羽目を外せることも証明して見せ、CEOに就任した。
・アルファベットは12月21日(現地時間)、シュミットがグーグルの親会社アルファベットの会長を退任すると発表した。
テック業界の大御所たちがバーニングマンを好んでいることは周知の事実。このカウンターカルチャーイベントは、未来は自分の手で創り出すものという共通認識のもと、億万長者とヒッピーを引きつけている。

「Stealing Fire」の著者であり、パフォーマンスエキスパートのスティーヴン・コトラー(Steven Kotler)は、グーグルの共同創業者セルゲイ・ブリン(Sergey Brin)とラリー・ペイジ(Larry Page)が、どうやってバーニングマンでグーグルのCEOとなる人物を見つけたのかを記している。

初期からバーニングマンに参加していたペイジとブリン
「極めて初期の頃から、ペイジとブリンはバーニングマンの熱狂的な参加者だった。グーグル本社の吹き抜けには長い間、バーニングマンに参加した2人の写真が飾られていた」とコトラーはBusiness Insiderに語った。

2人を夢中にさせたものは、バーニングマンのコアとなるコミュニティー意識だった。

「バーニングマンで起きることは、オックスフォード大学の最近の研究でも明らかなことだが、参加者の意識をある特別な方向に向け、人々を“グループフロー”の状態に導くことだ」とコトラー。

「フローとはパフォーマンスがピークに達している状態のこと。個人のパフォーマンスが最も発揮されている状態だ。グループフローはシンプルに言うと、チームが最高のパフォーマンスを発揮している状態のこと。誰もが似たような経験をしたことがあるはずだ。例えば、すごいブレインストーミングに参加し、アイデアが次々と生まれ、本当に素晴らしい結論が導き出された時や、アメリカンフットボールの最終クオーターでの逆転劇などだ。これらがグループフローの実例だ」

セルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ。グーグル本社の外にて。カリフォルニア州マウンテン・ビュー、2000年。
AP

コトラーによると、グーグルは従業員たちに最高の仕事をしてもらうために、グループフローを作り出すという方法を取っている。

1999年、ペイジとブリンは、シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル、クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ(Kleiner Perkins Caufield & Byers)から1250万ドル(約14億円)の出資を受けた。その際、2人はペイジの代わりにCEOを社外から雇用することを求められた。若い創業者に「監視役の大人」を付けるというよくあるやり方だ。

2人は次のCEOに、同社のグループフローに加わってもらえることを望んでいた。だが、どうやって見極めれば良いのか全く分からなかった。そんな時に、2人はソフトウェア会社、ノベル(Novell)のCEOを務めていたシュミットと会った。

シュミットは他の候補者とは違った

出典: Instagram

「ペイジとブリンはシリコンバレーで活躍するCEO、50人あまりと会ったが、満足のいく結果は得られなかった。そんな時、2人はエリック・シュミットがバーニングマンに参加したことがあるという情報を手に入れた。そこで2人はシュミットを候補者リストのトップに移し、一緒にバーニングマンに参加してシュミットがどのような行動を取るのかを見ることにした。2人が見極めたかったのは、シュミットが自分のエゴを捨ててチームと一体となれるのか、それとも自分のやり方を捨てないのかということだった」とコトラー。

「シュミットはこのテストにパスした。そしてこれは、現代における極めて重要なCEOの採用となった」

シュミットは2001年にグーグルのCEOとなった。この採用についてペイジは「素晴らしいことだった」と後に語っている。そして2011年、シュミットはCEOの会長に就任した。

2018年、シュミットは現職グーグルの親会社アルファベットの会長を退き、同社の技術顧問という新しい役職に就任する予定。アルファベットはシュミットの後任として、執行権のない会長をおく見込みだ。

(敬称略)

[原文:Here's why Google went to Burning Man to find its next CEO]

(翻訳:まいるす・ゑびす/編集:増田隆幸)

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cat_oa-businessinsider_issue_fb9760e8ddcb oa-businessinsider_0_45c67751c0e9_ドワンゴが「就活ハラスメントゼロ」宣言。セカンドレイプ起きない相談サイトと連携した取り組み始まる 45c67751c0e9

ドワンゴが「就活ハラスメントゼロ」宣言。セカンドレイプ起きない相談サイトと連携した取り組み始まる

あらゆるハラスメントを社会からなくすことを目的に活動する団体#WeTooJapanと、被害者などへのバッシングが起きない仕組みに力を入れる相談プラットフォーム「QCCCA(キュカ)」が共同で、就活ハラスメントの問題に取り組む。

企業に「就活ハラスメントゼロ宣言」への賛同を促し、QCCCAに集まった被害者の体験談をもとに企業や関係省庁に提言などを行っていくという。

ゼロ宣言に最初に手を挙げたのは、ドワンゴの夏野剛社長だ。

学生が声上げられるよう、企業がすべきことは

左から小島 慶子さん、白河桃子さん、禹ナリさん、キュカ・プロデューサーの片山玲文さん、夏野剛さん。
撮影:竹下郁子

2019年5月24日、厚生労働省で行われた会見には、#WeTooJapanの小島 慶子さん(エッセイスト・タレント)や企業のハラスメント対策に詳しい白河桃子さん(相模女子大学客員教授・ジャーナリスト)、そして就活ハラスメント宣言代表企業としてドワンゴの夏野社長らが参加した。

プロジェクトのきっかけは、大林組や住友商事の男性社員がOB訪問にきた女子大学生に対して、わいせつ行為や性的暴行をしたとして逮捕されたことなどを受け、「声を上げられる場所をつくった方がいい」と#WeTooJapanメンバーが思ったことだという。

同団体ではこれまでもハラスメントの実態調査や、職場におけるハラスメントをゼロにすることを企業や団体のトップが宣言する「ゼロハラ宣言」などを行ってきた。こちらについては現在、ドワンゴの夏野社長のほかサイボウズの青野慶久社長、ストライプインターナショナルの石川康晴社長など11人が賛同している。

#WeTooJapanの「就活ハラスメントゼロ宣言」。
出典:#WeTooJapanホームページ

新たに設けた「就活ハラスメントゼロ宣言」に初めに賛同したのが、ドワンゴの夏野社長だ。社外取締役としても多くの企業に関わっている。

「ハラスメントに対応するため多くの企業が社内にコンプライアンス窓口を設けていますが、その対応は企業によって異なります。取締役会でもどんな相談があったのか定期的に報告があがってきますが、従業員数に対して数が少ないときは『本当に?』と聞くようにしています。
ハラスメントをゼロにすることは難しいけれど、こうしてメッセージを打ち出すことが抑止効果につながるはずです」(夏野さん)
今後も企業はもちろん、大学にも宣言への賛同を募っていく予定だ。

無力感なくすため、データを元に提言を

深刻な実態が明らかになってきた就活でのハラスメント。次に声を上げるべきは企業だ(写真はイメージです)。
撮影:今村拓馬

プロジェクトを共同で行うハラスメントなどの悩みを投稿する相談サイト「QCCCA(キュカ)」は、新たに就活ハラスメント専用のハッシュタグを設けた。相談内容のほかに非公開で「ハラスメントがどの企業・団体で起きたのか」「被害者(投稿者)の在籍大学」、そして「どんな解決方法を望むか」なども記入できる欄をつくり、データを蓄積、分析していく予定だ。

QCCCAの特徴は「キュカッチ」と呼ばれる、企業や団体でハラスメント対策やダイバーシティ支援に携わっている人が複数在籍すること。悩み相談は本人ではなく担当するキュカッチが代理で投稿するため、誰が投稿したか全く分からない完全匿名になる。コメントもすべてキュカッチが目を通し、セカンドレイプなど2次被害につながりそうなものは理由を相手に説明した上で表示しない仕組みだ。

Business Inisder Japanによるアンケートでは、就活セクハラ被害にあったという回答者のうち、7割が誰にも相談できずにいると答えていた。相手との間で権力関係があることはもちろん、声をあげても何も変わらないという無力感を抱く人も多かった。

キュカ社長の禹ナリ(ウ・ナリ)さんは、自身が管理職だったときに後輩女性からセクハラ被害の相談を受けたものの、本人が納得のいく対応をできずに後悔したことがある。結局、会社を去ったのは被害にあった女性だったのだ。

「ハラスメント被害者が声をあげられない理由として、何も変わらないという状況を知ってしまっているという無力感は大きな問題だと思っています。だから、勇気を出して声をあげれば必ず変わると思ってもらいたい 。データが集まって傾向などが見えてきた段階で、厚生労働省や企業などに提言を行う予定です」(禹さん)
QCCCAの登録者数は現在約300人。就活中のハラスメントはセクハラだけではない。「オワハラ」や、性的指向や性自認による「就活SOGIハラ」など問題は多岐にわたる。禹さんは実態を把握してより良い提言につなげていくため、多くの人に利用して欲しいと訴えた。

(文・竹下郁子)

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ファーウェイ独自OS「鴻蒙」、すでに商標登録か

ファーウェイが2019年秋にも投入する独自OSの名前とされている「鴻蒙(HongMeng)」の商標が、すでに登録されていることが5月24日、明らかになった。

中国の知的財産権を管轄する「国家知識産権局」の公式サイトより

中国の知的財産権を管轄する「国家知識産権局」の公式サイトによると、ファーウェイは「華為鴻蒙」の商標とロゴを2018年8月24日に申請。9月8日に申請が受理され、審査を経て2019日5月14日に登録された。

商標の有効期間は同日から2029年5月13日まで。

ファーウェイの独自OS鴻蒙は2012年に開発が始まったとされる。グーグルがアンドロイドOSの提供を打ち切る可能性があると報道された直後の5月21日、ファーウェイの余承東(リチャード・ユー)コンシューマー事業部CEOが「我々はグーグルやマイクロソフトを使い続けたいが、どうしようもないときはやるしかない。早ければ2019年秋、遅くても2020年春に自社のOSを発表する」と語ったと報じられた。

余氏は独自OSについて「スマホ、パソコン、タブレット、テレビ、自動車、ウェアラブル端末を統合するシステムになり、アンドロイドやウェブの全てのアプリと互換性を持つ」と説明している。

これは、商標の利用目的に記載された説明文「スマートフォン、ノートパソコン、タブレット端末、OSなど20種類以上のソフトウエア・ハードウエア商品、サービスに利用する」と一致する。

鴻蒙は、中国語で「天地が分かれていない太古の、混とんとしたさま」を意味している。

(文・浦上早苗)

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cat_oa-businessinsider_issue_fb9760e8ddcb oa-businessinsider_0_6db470aff237_中国が極秘軍事衛星の打ち上げに失敗、SNS動画で判明 6db470aff237

中国が極秘軍事衛星の打ち上げに失敗、SNS動画で判明

中国のロケット、長征4号丙。2008年5月27日、山東省北部にある太原衛星発射センターにて。
Shen Hong/Xinhua via AP

・中国は5月23日(現地時間)、トップシークレットの軍事衛星の打ち上げを試みた。
・だが中国のソーシャルメディアに投稿された動画や写真によると、長征4号丙の打ち上げは失敗に終わった。
・国営メディアの新華社通信は15時間後に失敗を伝えた。原因はおそらくは最上部の3段目に問題が起きたため。
・中国のロケット打ち上げ失敗は2019年に入って2度目。1度目は同国のスタートアップ企業ワンスペースによるもの。
中国は5月23日朝、トップシークレットの軍事衛星の打ち上げたが、大量の残骸をばらまく結果となった。

長征4号丙(Long March 4C)ロケットと衛星の損失は、3月の航空宇宙スタートアップ企業ワンスペース(OneSpace)による中国初の商業打ち上げの失敗に続いて、2019年に入って2度目。

中国は打ち上げに先立ち、空域閉鎖や安全対策に関する通知を行った。だが、周知のことだが、ミッションを公式には発表しなかった。

ロケットは現地時間5月23日朝6時49分頃、山東省北部にある太原衛星発射センターから打ち上げられた。だが数分後に、中国のソーシャルメディアサイトに投稿された動画や写真によると、ロケットは急激に予想外の方向に向きを変えた。

2019年5月23日、中国のソーシャルメディアサイトに投稿された動画より。
Weibo; Business Insider

そしてジグザグの白煙が空に現れ、その後、微博(Weibo)に投稿された動画を見ると ── 拡大版を下に掲載 ── 小さな白い点が急速に落下する様子が映っている。

「中国のソーシャルメディアに投稿された動画と画像などのおかげで、この打ち上げを追跡し、断片情報をまとめることができた」とスペースニュース(SpaceNews)の寄稿者、アンドリュー・ジョーンズ(Andrew Jones)氏は23日、ツイートした。

新華社通信は打ち上げの約15時間後に失敗を伝えた。ウェブサイトへの投稿で新華社通信はロケットの1段目と2段目は順調に作動したが、衛星を軌道に送る最上部の3段目で問題が発生したと記した。

via Gfycat
またロケットの残骸が地上に落下する様子が観測されたと伝えた。

23日朝、ツイッターに投稿された未確認の写真には、炭素繊維複合材の破片や金属製パネルなど、ロケットの残骸と思われるものが写っていた。ソーシャルメディアへの投稿によると、打ち上げ失敗の直後に発射センターから離れた町や村に落ちてきた。

中国の長征4号丙は、中国の衛星や探査機などの打ち上げに約20回、成功している。スペースフライト・ナウ(Spaceflight Now)によると、直近の、そして今回以外で唯一の失敗は2016年8月。

今回の打ち上げは、遥感33号( Yaogan-33)を軌道に送るためのものだった。遥感衛星について、新華社通信などはしばしば資源調査と農作物の収量調査が目的と記述している。だが西側諸国の見方は異なる。

「外部のアナリストは、軍事偵察目的の光学・合成開口レーダー衛星と理解している」とジョーンズはスペースニュースに記した。

協力:Alex Ma

[原文:Video shows a top-secret Chinese space mission failing in mid-flight — China's second rocket loss of the year]

(翻訳、編集:増田隆幸)

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cat_oa-businessinsider_issue_fb9760e8ddcb oa-businessinsider_0_e30da56c7dcd_元「イスラム国メンバーで立命館大准教授」イラクで拘束。日本とテロ組織の関わりは e30da56c7dcd

元「イスラム国メンバーで立命館大准教授」イラクで拘束。日本とテロ組織の関わりは

レバノンのパレスチナ難民キャンプに掲げられたIS(イスラム国)の旗。
REUTERS/Ali Hashisho

IS(イスラム国)に参加していた疑いのある、バングラデシュ出身で日本に帰化した立命館大学の元准教授が、イラクで囚われているという。5月20日、バングラデシュのメディア各社が同国情報機関からの情報として報じた。

この人物はモハメド・サイフラ・オザキ容疑者。バングラデシュで生まれ育ったヒンズー教徒で、2002年に日本に留学。その後イスラム教徒に改宗した。さらに日本人女性と結婚して日本国籍を取得。立命館大学の准教授として生活していた。

ところが2015年、家族とともに蒸発同然で日本を出国。ブルガリアに渡った後は行方がわからなくなった。

それから数年を経た2019年3月、シリア東部に残っていたIS最後の拠点で、他のバングラデシュ人戦闘員とともに投降したとされ、その後、イラク北部のスレイマニヤに身柄を移送された。

日本人の妻と子ども2人はすでに空爆で死亡しており、残された3人の子どもはすでに日本に送還されたとの情報もある。

オザキ容疑者は日本国籍を取得しているから、当然、日本人である。言ってみれば、ISに参加した初の日本人である可能性がある。

テロ人脈は日本ではなくあくまでバングラデシュ

ニューヨークのモスクで礼拝するイスラム教徒たち。
REUTERS/Kevin Coombs

オザキ容疑者の名前が大きく報じられたのは、2016年7月にバングラデシュの首都ダッカで発生したレストラン襲撃テロの後だった。日本人7人を含む22人が殺害された事件だが、バングラデシュ捜査当局の調べで、オザキが犯人グループの関係者の1人として浮上したのだ。

現地の報道によると、オザキはバングラデシュ人の若者をイスラム過激派に勧誘する役割を担っており、IS志願者をいったん日本に入国させ、それからトルコ経由でISに送り込む工作を行っていた疑いがあるという。ただし、バングラデシュのメディアには不確かな情報も多く、詳細はいまだ不明だ。

バングラデシュから日本経由でトルコに要員を送り込むという手口は、日本での滞在実績があったほうがトルコに入国しやすいということらしいが、それだけ渡航経費が余計にかかることになる。

仮にそれが事実だったとしても、バングラデシュからトルコに渡るにはもっと安価なルートがあり、しかも必ずしも不可能ではない。ISが日本経由という非効率的な工作ルートを、少なくとも大がかりに組織しようとしていたとは考えにくい。

それより、ISの従来の方針から考えれば、日本にオザキのようなIS賛同者がいるなら、彼の周囲の日本人を仲間に引き入れることのほうが価値が高い。日本旅券(パスポート)保持者だからである。ISでは、欧米でのテロ作戦に参加しやすい西側先進国の旅券保持者が優遇されていたのだ。

日本はイスラム過激派を組織するには難しい環境

ニューヨーク市警のテロ対策チーム。2018年10月、CNNに爆発物とみられる郵送物が届いた事件で出動。
REUTERS/Kevin Coombs

だとすれば、オザキ容疑者に日本国内でIS支援グループを作らせたほうが成果を得られるはずだ。ところが、彼は日本ではテロ支援のための人脈組織化を試みた形跡がない。オザキの日本での周辺人脈については、すでに日本の公安警察が徹底的に捜査しているにもかかわらず、捜査線上に浮上していないのだ。

結局、彼は出身国バングラデシュの過激派とのつながりで活動していた。ISはそれぞれ地元国での活動を奨励しているが、彼の視線は日本ではなく、あくまでバングラデシュだったのだ。もちろん日本でのテロを画策した形跡もない。

このことからわかるのは、日本国籍を取得し、大学准教授という社会的に権威ある肩書きを得た彼をもってしても、日本でイスラム過激派を組織するのは難しかったということだ。

欧米諸国と違って、日本はイスラム系移民社会がそれほど大きくない。オザキ容疑者のような特殊な例外はあるとしても、いわゆる「ホームグロウン・テロリスト」が組織されるような環境ではないということである。

バングラデシュのメディア各社の報道には裏づけが乏しい内容も多く、オザキ容疑者の足跡の詳細は今後の調査を待たなければならないが(イラクのクルド人部隊が拘束しているとのことなので、いずれ近いうちに日本のメディアが直接取材することが予想される)、日本にいながらいかに過激化していったのかなど、まだまだ不明なことは多い。

ケース(1)静岡県の建設機械メーカーで削岩機研修

日本人の記憶にも新しい、ISとみられる武装勢力に殺害されたジャーナリストの後藤健二さん。悲劇を報じるテレビニュース。
REUTERS/Yuya Shino

ところで、オザキ容疑者は日本人唯一のISメンバーの可能性があると前述したが、日本人のイスラム過激派としても初の事例である。過去にシリアでイスラム系の反体制派部隊に加わった日本人はいるが、テロを容認するような過激派は初めてだ。

では、これまでイスラム過激派が日本にいたことはまったくなかったのか?と言うと、そうではない。判明しているかぎりで過去に4人、正真正銘のイスラム・テロリストが日本に滞在していたことがある。

まず、1980年代後半に世界各地を飛び回っていたクウェート育ちのパキスタン人であるハリド・シェイク・ムハマドが、1987年に3カ月間、日本に滞在し、静岡県の建設機械メーカーで削岩機の技術研修を受けていた。

彼は1993年にニューヨークの貿易センタービルで爆弾テロ事件を起こし、その後、アルカイダに合流して2001年の9.11同時多発テロの首謀者となる大物テロリストだが、1987年当時すでにアフガニスタンでイスラム・ゲリラと接触していた。日本での研修もおそらくアフガニスタンでのゲリラ活動を前提にしてのことだったろう。

しかし、ムハマドは日本で仲間を作るような動きは、まったくしていない。日本での研修も、アメリカの大学を卒業したエンジニアとして、途上国支援NGOのプログラムの一環で受けていた。彼が考えていたのはあくまでアフガニスタンでの活動であり、日本での活動ではなかったのだ。

ケース(2)秋葉原で大量の無線機購入

イラク軍によるIS掃討作戦。
Photo by Martyn Aim/Getty Images

2人目は、やはりアルカイダの幹部だったムハマド・ハリド・サリムというスーダン人だ。彼は1995年に訪日し、秋葉原で大量の無線機を購入している。アルカイダの装備調達工作そのものだが、彼もまた、日本そのものにはまるで興味がなかったようで、日本国内での組織活動の形跡は一切ない。

ケース(3)新潟県で中古車販売
3人目は、リオネル・デュモン。元フランス軍兵士で、1990年代半ばにボスニアでイスラム武装勢力の外国人部隊に加わっていた人物だ。

その後、出身地であるフランス北部の町ルーベで、元ボスニア義勇兵の仲間たちとイスラム過激派組織「ルーベ団」を結成。逮捕されるが、1999年に脱走し、消息を絶つ。その後、数度にわたり日本を訪問。主に新潟県に住んで、中古車販売会社で仕事をしていた。

2003年9月に出国し、同年12月に滞在先のドイツでテロ計画に連座して逮捕される。そこで日本滞在歴が発覚し、やがて日本のメディアでも大きく報じられた。日本滞在中、日本の警察当局からは完全にノーマークだった。

のちに判明したところによると、デュモンは日本滞在中、身分を偽装して在日イスラム系移民社会に積極的に入り込み、人脈を広げていた。しかし、その人脈をテロ組織化するような動きはまったくなかった。日本へは逃亡先として来ており、その中で欧州でのテロのための資金稼ぎをしていたものと思われる。

ケース(4)麻布のモスクでイスラム教徒のオルグ活動

イラク軍によるIS掃討作戦。
Photo by Martyn Aim/Getty Images

最後の1人であるゾヘール・シューラは、フランスに長く住んでいたアルジェリア人で、おそらく前述のデュモンの日本入国を支援した人物だ。彼も元ボスニア義勇兵で、デュモンはその時の戦友仲間である。

彼は1990年代後半の一時期、マレーシアに滞在していた。同国は当時、ほとんどのイスラム圏の国籍者をビザなしで受け入れており、ノーチェックで滞在できたのだ。マレーシアから日本に渡ったのは、1999年だった。

シューラは2000年には出国し、翌2001年にボスニアで逮捕された。時期的にはデュモンより先に日本に滞在している。

彼の場合も日本警察はノーマークだったが、欧州での逮捕で日本滞在歴が発覚した後、公安警察がその日本での足跡を徹底的に洗い直している。その捜査内容は2010年10月、警視庁公安部外事3課の大量の内部資料がネットに流出したことで明らかになった。

同ファイルに記されたシューラの捜査記録によると、彼は日本滞在中、東京・麻布のモスクを拠点に、盛んにイスラム教徒たちのオルグを試みていたとのことだが、結果的に失敗している。やはり日本でのイスラム過激派ネットワークの組織化は難しかったようだ。

いたずらにイスラムテロ組織の不安を煽るな
判明しているかぎりにおいて、以上が日本にイスラム過激派細胞が滞在していたすべてのケースだ。この他にも何度かイスラム過激派の活動の噂が報じられたことがあるが、それらはすべてガセ情報だったと筆者はみている。

上述のサリムやムハマドのように、日本には筋金入りのテロリストも滞在していた事実がある。しかし、いずれも日本でテロを計画したこともなければ、組織化に成功したこともない。

このご時勢だから、日本の警察当局も警視庁外事3課を中心に、国内に不穏な徴候がないか徹底的に捜査しているが、テロやそのための組織化が行われているという情報は皆無だ。繰り返しになるが、幸いなことにこれまでのところ、日本にはイスラム過激派組織の芽が育つ環境は生まれていない。

2020年には東京五輪が控えており、徹底した警戒体制は今後も必要だ。しかし、だからこそ今回のオザキ容疑者のケースのような場合には、(とりわけ本人の供述が出てもいない現段階で)不確かな情報をもとに「日本にもイスラムテロ組織との関わりが?」などといたずらに不安を煽ったりせず、冷静に事実を見極めなければならない。

黒井文太郎(くろい・ぶんたろう):福島県いわき市出身。横浜市立大学国際関係課程卒。『FRIDAY』編集者、フォトジャーナリスト、『軍事研究』特約記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て軍事ジャーナリスト。取材・執筆テーマは安全保障、国際紛争、情報戦、イスラム・テロ、中東情勢、北朝鮮情勢、ロシア問題、中南米問題など。NY、モスクワ、カイロを拠点に紛争地取材多数。

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cat_oa-businessinsider_issue_fb9760e8ddcb oa-businessinsider_0_fc39f35946be_日本でもスマートフォンが発売延期、ファーウェイについて今、知っておきたいこと fc39f35946be

日本でもスマートフォンが発売延期、ファーウェイについて今、知っておきたいこと

ファーウェイの創業者兼CEO、任正非氏。
Kyodo News via Getty Image

・中国の大手通信機器メーカー・ファーウェイ(華為技術)は、アメリカ商務省のブラックリストに追加された。つまり、アメリカ企業とビジネスを行う際、まずアメリカ政府の承認を得なければならない。
・アメリカ政府は以前から、ファーウェイのテクノロジーが中国政府によるスパイ行為に使われているという懸念を表明してきた。一方、同社は一貫して否定している。
トランプ大統領が「情報・通信技術と関連サービスへの脅威」に関する国家非常事態を5月15日(現地時間)に宣言したことは、ファーウェイにとって大きな打撃となった。

アメリカ政府は、同社が中国政府のためにスパイ行為を働いており、アメリカの安全保障を脅かしていると考え、2018年からファーウェイとの対立を深めている。

ファーウェイは、まずアメリカ政府の承認を得ない限り、アメリカ企業とビジネスを行うことを禁じられた。司法省は2019年はじめ、ファーウェイと同社の孟晩舟(Meng Wanzhou)副会長兼最高財務責任者(CFO)を銀行と通信に対する詐欺などの容疑で起訴した。また孟氏のアメリカへの引き渡しを引き続き求めている。

アメリカ人にとって、ファーウェイは馴染みのある名前ではないだろう。だが今では実際、アップルを抜き、サムスンに次ぐ世界第2位のスマートフォンメーカーとなった。

ファーウェイについて知っておきたいこと、および同社とアメリカ政府の間の争いを見てみよう。

ファーウェイは巨大テック企業、通信サービス、企業向けテクノロジー、スマートフォンなどのコンシューマー製品の製造・開発を手がけている。製品は70カ国以上で販売されている。

ファーウェイは2019年、アップルを抜いて世界第2位のスマートフォンメーカーとなった。
Shutterstock

出典 : Huawei


2018年の売上高は約1000億ドル(約11兆円)、マイクロソフトとほぼ同じ。世界最大の通信機器メーカーであり、サムスンに次いで、世界第2位のスマートフォンメーカー。

ファーウェイのMate 20。
Shona Ghosh/Business Insider

出典 : Business Insider, Forbes


ファーウェイは1987年、任正非(Ren Zhengfei )氏が設立、同氏は現在もCEOを務めている。ファーウェイ設立以前、任氏は人民解放軍でエンジニアとして働いていた。

ファーウェイの任正非CEO。2012年撮影。
AP Photo/Dmitry Lovetsky

同氏は社内では、ことわざや象徴的な言葉を好んで使う哲学的な起業家として知られている。

出典 : Huawei


任氏の哲学的な一面を表す例として、数羽の黒鳥(ブラックスワン)が飼われていることがある。

ファーウェイ本社で黒鳥に餌を与える施設管理者。
Kevin Frayer/Getty Images

黒鳥は「企業のカルチャーの中で満足してはいけない」という意味を表すと言われている。

出典 : CNBC


本社は広東省深セン市にある。同社の従業員は世界中に約18万人とされるが、本社メインキャンパスだけで6万人が働いている。

広東省深セン市のファーウェイ本社。
Herwin Thole / Business Insider

出典 : CNBC


報道によると、メインキャンパスにあるリサーチラボのニックネームは「ホワイトハウス」。訪問者が内部に入り、同社の最先端テクノロジーを垣間見ることは、ほとんど許されない。

ワシントンD.C.のホワイトハウス。
Gerald Herbert/AP

出典 : Business Insider


最近、中国南部の東莞市に新しいキャンパスを建設した。このオックスホーン(Ox Horn)キャンパスは12の「町」に分けられ、それぞれがヨーロッパの主要都市を模したデザインとなっている。

広東省東莞市の松山湖地区にあるファーウェイのオックスホーン・キャンパス。
Reuters/Tyrone Siu

出典 : CNBC


新キャンパスには湖があり、独自の電車もある。最大2万5000人が収容可能と伝えられた。

Reuters/Tyrone Siu

出典 : Business Insider


ファーウェイのスマートフォンは世界中で人気。安価、かつパワフルで、ときにはiPhoneの売り上げを上回ることもある。

Shona Ghosh/Business Insider

出典 : Business Insider


ファーウェイは、アメリカ市場への進出を試みた。だが、提携先と見られていたAT&Tとの関係は2018年1月に解消された。同社が未だに提携を望む別のキャリアを見つけられないのは、中国企業を信頼していないアメリカ政府からのプレッシャーが一因と見られている。このため、ファーウェイのアメリカでの実績は限られたものとなっている。

Reuters/Hannibal Hanschke

出典 : Business Insider


議会は以前から、中国政府との密接な関係からファーウェイをアメリカの安全保障上の脅威と見てきた。同社のスマートフォンや電子機器は、アメリカ政府関係者をスパイするために使われているという説を唱える者もいた。ファーウェイはそうした訴えを否定し続けている。

Sean Gallup/Getty Images

出典 : Business Insider


だが、ファーウェイに対するアメリカの懸念は、サイバーセキュリティに留まらない。報道によると、当局は同社がアメリカからイランに製品を輸出し、アメリカの対イラン制裁に違反したとして、2016年から捜査を続けている。

REUTERS/Bobby Yip

出典 : Reuters


アメリカと中国の間の貿易関係は、不安定な状態が長年続いている。両政府による貿易戦争は膠着状態、互いに主要輸入品に何十億ドル相当もの関税を課している。

トランプ大統領と習近平国家主席。
Oliver Contreras/Getty; Greg Baker/Getty; Shayanne Gal/Business Insider

出典 : Business Insider


しかし2018年12月、同社の孟CFOがアメリカの要請でカナダで逮捕されると、両国の関係はさらに悪化した。当局は、孟氏がアメリカの対イラン経済制裁に反して機器をイランに販売しようとした企業とファーウェイとの関係を隠ぺいしたとしている。アメリカは今も孟氏の引き渡しを求めている。

ファーウェイの孟晩舟(Meng Wanzhou)CFO。
REUTERS/Alexander Bibik

出典 : Business Insider


孟氏は1993年にファーウェイに入社、現在は同社のCFO(最高財務責任者)兼副会長。また、創業者兼CEOである任正非氏の娘でもある。

Reuters

出典 : Huawei


孟氏の逮捕でアメリカと中国の緊張が一気に高まった。これは、両国の指導者が何らかの合意に達するように思われた直後のことだった。専門家はこれを、中国との貿易関係に対するトランプ政権の強硬路線を象徴するものと受け止めている。

Associated Press/Andy Wong

出典 : Business Insider


孟氏の逮捕に対する中国の対応は早かった。中国はアメリカとカナダに、孟氏をすぐに釈放しなければ、「深刻な事態」を招くと警告した。その後、警告通りに2人のカナダ人を逮捕し、もう1人には死刑判決を言い渡した。

Reuters/Pool

出典 : Business Insider, Business Insider


危機的状況が深まる中、2019年1月、公にほとんど姿を現すことがない任氏が、2015年以来初めて記者会見を行った。同氏はトランプ大統領を「偉大な大統領」と呼び、アメリカに対して「成功を分かち合い、協力し合う」関係の構築を訴えた。

The Asahi Shimbun/The Asahi Shimbun via Getty Images

出典 : Business Insider


しかしカナダ政府は3月、アメリカでの裁判に向けて孟氏をアメリカに引き渡すことに合意。アメリカに送られるまでの間、孟氏はバンクーバーの自宅に軟禁される。

Darryl Dyck/The Canadian Press via AP

出典 : Business Insider


ファーウェイが直面している課題は、依然として山積み。検察当局は、同社がアメリカ企業から企業秘密を盗んだとしている。スマートフォンの品質検査に用いるTモバイル(T-Mobile)のロボット技術などだ。

T-モバイルのジョン・レジャーCEOとファーウェイの任正非CEO。
Reuters

出典 : Wall Street Journal


2019年1月、司法省は正式にファーウェイと同社CFOの孟晩舟氏を銀行および通信詐欺などの容疑で起訴。訴状の中で同省は、ファーウェイは企業秘密を盗んだ従業員にボーナスを与えたと述べた。

2019年1月、ファーウェイの起訴を発表するマシュー・ウィテカー司法長官代理。
REUTERS/Joshua Roberts

出典 : Business Insider


だがファーウェイも反撃に出た。2019年3月、トランプ政権が制定した政府機関によるファーウェイ製品の購入あるいは使用を禁止する法律について、アメリカ政府を提訴。ファーウェイは、法律は憲法違反であり、アメリカ政府は同社がアメリカの安全保障を脅かしているという主張を裏付ける「いかなる証拠も提出できなかった」と述べた。

AP/Evan Vucci/Vincent Yu/Business Insider composite

出典 : Business Insider


アメリカとその多くの同盟国は、ファーウェイは中国政府の支援を受けてスパイ行為を行っているのではないかと、今も恐れている。こうしたセキュリティ上の懸念が高まっていることから、多くの国々が ── アメリカに促されて ── ファーウェイとの関係を断ち、次世代通信規格5Gネットワークの構築への同社の参加を拒否する方向で動いている。

AP Photo/Vincent Yu

ファーウェイとの関係を断つことを検討しているのは、オーストラリア、イギリス、カナダ、日本、ポーランド、ニュージーランド、そしてEU。


2019年5月、トランプ大統領は「情報・通信技術と関連サービスへの脅威」に関する国家非常事態を宣言し、ファーウェイへの圧力を一段と強めた。アメリカ商務省は、ファーウェイを「エンティティリスト」に追加。これにより、同社がアメリカ企業とビジネスをする際、まずはアメリカ政府の承認を得なくてはならない。

Alex Wong / Getty Images

出典 : Business Insider


これに対してファーウェイは、企業の権利を脅かす「過剰な規制」と非難し、将来の5Gネットワークへの取り組みにおいて、アメリカが打撃を受けるだけと主張した。中国市民は、国家非常事態宣言のおかげでファーウェイは「無料で宣伝してもらえた」とトランプ大統領をインターネット上で笑った。

Reuters

出典 : Business Insider, Business Insider


アメリカの規制にも関わらず、ファーウェイは成功を収めている。2018年、同社の売上高は約1000億ドル(約11兆円)を超え、前年比19.5%増となった。

AP Photo/Vincent Yu

出典 : Business Insider


[原文:Everything you need to know about Huawei, the Chinese tech giant accused of spying that the US just banned from doing business in America]

(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)

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cat_oa-businessinsider_issue_fb9760e8ddcb oa-businessinsider_0_c69d0fc2d15e_目指すは"チョコレート界のスタバ"? ゴディバがオープンした、カフェ1号店に行ってみた c69d0fc2d15e

目指すは"チョコレート界のスタバ"? ゴディバがオープンした、カフェ1号店に行ってみた

Irene Jiang / Business Insider

ゴディバ(Godiva)には"贈り物用のチョコレート・ショップ"にとどまらない大きな計画がある。

ベルギーのチョコレートメーカー「ゴディバ」は4月、美味しいコーヒーやペストリー、菓子が楽しめるカフェを世界中にオープンすると発表した。一部、既存の店舗を改装するところもあるが、独立した店舗として出すという。カフェでは、通常の店舗と同じようにチョコレートのギフトボックスも販売するが、ベルギーワッフルや、クロワッサンとワッフルのハイブリッド「クロワッフル」といった新たなメニューが中心になる。

その1号店が4月、ニューヨークのマンハッタンにオープンした。ゴディバは今後6年で2000店のカフェをオープンする計画だ。スターバックスの元幹部の指揮の下、この野心的な計画がうまくいくかどうかは、カフェの商品次第だ。Business Insiderは5月、マンハッタンのカフェに行ってみた。


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座席エリアは明るく、心地よい。電源コンセントも豊富。客がカフェでのんびり過ごせるよう、デザインされている。クラシックなゴディバのギフト用チョコレートボックスも、壁際に数多く並ぶ。


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カウンターはスターバックスのショコラティエ・バージョンのよう。


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ドリンクメニューには、シグネチャー・アイテムがすでに2つあった。そして、ラテ、アメリカーノ、カプチーノ。トルコ企業傘下のベルギーのブランドが提供するイタリア風のドリンク……なんだかよく分からなくなってきた。「ドッピオ」って何? 筆者はとりあえず、シグネチャー・ゴディバ・モカを頼んだ。

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多くの客と同じように、わたしもクロワッフルを楽しみにしていた。このワッフルとクロワッサンのハイブリッドは、約6ドル(約660円)。ダークチョコレートを注文した。


Irene Jiang / Business Insider


オープンから約1カ月。カフェは空いていた。客の大半は「お持ち帰り」を選んでいた。


Irene Jiang / Business Insider


ここはカフェだが、チョコレートを買うこともできる。チョコレートを使ったドリンクやペストリーだけではチョコレートが足りないという人も、心配はいらない。


Irene Jiang / Business Insider


ここはカフェなのか、チョコレートショップなのか…… 両方じゃダメ?

Irene Jiang / Business Insider


実際、このトリュフはすごくおいしそうだった。でも、ダークチョコレートのクロワッフルを頼んだばかりのわたしには、これ以上の糖分は必要なさそうだ。

Irene Jiang / Business Insider


会計でチップのオプションがないことには驚かされた。店員にどうやってチップを渡したらいいのか尋ねると、会社からチップを受け取ることは禁じられているという。

Irene Jiang / Business Insider


この紅茶のセットを見て、わたしのドリンクもいい感じのカップで出てくるのではないかと、期待が膨らんだ。


Irene Jiang / Business Insider


だが、砂糖やストローが置かれたこのパッとしないコーナーが、これから出てくるものを予兆していた。

Irene Jiang / Business Insider


注文した6ドルのクロワッフルが、紙製のコーンに埋もれた状態で出てきたときはびっくりし、同時にがっかりした。店はガラガラなのに出てくるまでに10分以上待たされた上、こちらから店員に声をかけなければならなかった。そして、肝心のクロワッフルは、プラ製の袋から取り出したものをトースターで温めて完成。高級チョコレートのカフェというより、ブルックリンの出店で買う菓子のようだ。


Irene Jiang / Business Insider


モカも紙製のカップで出てきた。普通に美味しいけれど、それ以上ではない。ニューヨークとはいえ、これで12ドル(約1300円)とは信じられない。ドリンク、フード自体は悪くはないが、パッケージがチープで、値段の割に期待外れだった。

Irene Jiang / Business Insider


クロワッフルは、チョコレートたっぷりの平たいパン・オ・ショコラみたいだった。甘くて、ちょっとサクサクする。表面はカリっと、中は柔らかいワッフルと、軽くてサクサクなクロワッサン…… かけ合わせる必要があったのかどうか。


Irene Jiang / Business Insider


モカもちゃんとしたカップで出してもらいたかった(店員には、店内で飲むと伝えたのだから)。少なくとも、ドリンク自体は甘すぎず、美味しかった。


Irene Jiang / Business Insider


電源コンセントはたくさん用意されていたが、ゴディバのカフェは、スターバックスをコーヒーショップの代表格にした確かな品質、価値、居心地の良さを提供できていない。一般的なコーヒーショップとしては価格が高すぎるし、高級路線で行くには商品が伴っていない。


Irene Jiang / Business Insider

ゴディバは方向性 —— 客がスターバックスの代わりに選びたくなるような手頃でカジュアルなカフェ、もしくは、そのブランドや価格が示す高級感を提供するカフェ —— をどちらかに決めるべきだ。


[原文:Godiva plans to open 2,000 cafés in a quest to become the Starbucks of chocolate — here's what it's like to visit]

(翻訳、編集:山口佳美)

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cat_oa-businessinsider_issue_fb9760e8ddcb oa-businessinsider_0_e8ea347d2a96_2019年がサブスク動画「激震の年」になる理由 ── ディズニーのHulu子会社化、「AppleTV+」の思惑 e8ea347d2a96

2019年がサブスク動画「激震の年」になる理由 ── ディズニーのHulu子会社化、「AppleTV+」の思惑

Shutterstock

5月14日(アメリカ時間)、ウォルト・ディズニー・カンパニーは、アメリカの通信会社・コムキャストから、映像配信サービス「Hulu」の営業を継承する契約を締結したと発表した。

アメリカでは現在、映像配信事業者の再編が加速している。圧倒的なシェアを持つネットフリックスに対抗するアマゾンなどの既存事業者に加え、アップルやディズニーが2019年秋より、オリジナルコンテンツを軸にしたサービスを展開する、としているからだ。

再編の主役であるディズニーが、アメリカの配信大手の一つであるHuluを手中に収めることには、いったいどのような意図が込められているのだろうか? 各社の思惑を分析した。

大手の寄り合い所帯からディズニー子会社へ

Huluの子会社化を伝えるウォルトディズニー・カンパニーのリリース文。

アメリカには、映画からドラマまであらゆるコンテンツを配信し、自分達でオリジナル作品も作る「総合型」の映像配信がいくつかある。最大手のネットフリックス、アマゾンなどはその代表格だが、Huluもそのひとつだ。

Huluは元々、NBC・ABC・FOXといったアメリカの大手メディア企業が合弁で立ち上げたサービスで、サービス開始は2008年と古い。当時の対抗は「YouTube」だった……というところからも時代がしのばれる。

Huluは順風満帆に生き残ってきた企業とは言い難い。

同時期に配信事業をスタートさせたネットフリックスやアマゾンに抜かれ、海外展開もうまくいかなかった。

世界初の海外展開事業として、2011年に日本に進出したものの行き詰まり、2014年に日本テレビ放送網に事業を売却している。その関係もあり、本記事で出てくるHuluは、日本で日本テレビが運営するHuluとは、まったく別のビジネスであることをご留意いただきたい。

hulu.comのトップページ。

とはいえ、ここ数年でHuluも落ち着いてきた。各社の寄り合い所帯であったところから独自性が強まり、オリジナル作品の「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」が2017年にエミー賞で作品賞を受賞するなど、コンテンツへの評価も高まってきた。

そこに、ディスニーの戦略がかみ合った。

ディズニーはコンテンツ力強化を進めている。その中で浮上したのが「Huluの取得」だった。

2019年3月に21世紀FOXを買収して同社の持つHulu株を取得、4月にはAT&Tが持つ株式をHuluが買い戻す形で取得して同社の過半数の株式を取得。さらに、残る大株主であるNBCユニバーサルが持つ株式を、NBCユニバーサルの親会社であるコムキャストから、2024年以降にすべて取得する、と合意した。

結果、Huluはディズニーの完全子会社となる。コムキャストとディズニーの乗り合い、という状況がなくなることで、Huluの経営方針はより安定していくはずだ。

Huluを手に入れて「専門局」から「全方位戦略」へ

Disney+のプレビュー版サイト。いまはまだメールアドレスを登録して最新情報を受け取る機能しかない。

ディズニーがHuluを欲したのは、コンテンツ力の強化だけが目的ではないだろう。「総合サービス」としての看板を求めた、という可能性が高い。

ディズニーは2017年以降、配信事業の強化を積極的に進めている。もともとは、アメリカのケーブルテレビ市場でドル箱だったスポーツ局「ESPN」の配信事業を強化しててこ入れするところからスタートしたが、2019年11月から「Disney+」をスタートし、映画・アニメ・ドラマなどの配信を行う。

ESPNもディスニーも、それぞれに強力なファン層と強いコンテンツを持つ。だが、どちらも「専門局」的で総合性はない。EPSNやディズニーの中で「他のコンテンツ」を配信することもできるだろうが、それではわかりにくいし、ブランド力も活かしづらい。

総合力のあるHuluを取得することで、ディズニーは配信において全方位戦略を採ることが可能になる。ここで重要なのは、映像配信の場合、消費者が使うサービスが「1つに集約される」ことは少ない、ということだ。

Shutterstock

アメリカでは、ネットフリックスが6割のシェアをもっている。だとすれば、他はビジネスにならない……と思いがちだ。しかし実際には、他の事業者も十分ビジネスになっている。理由は、複数のサービスに加入する人がほとんどだからだ。

1社ですべてのコンテンツをカバーするのは難しい。一方で、映像配信は月に10ドル程度の出費だ。アメリカの場合、ケーブルテレビ事業者に毎月100ドルを支払っている人も少なくないため、その出費を減らしたり、カットしたりすることを思えば、10ドルを3社契約しても、まだ安くつく。

ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEOは「他の配信事業者はライバルではない」と、ことあるごとに発言している。その真意は「他社と契約したとしても、弊社との契約を止めないならそれでいい。だから戦う相手ではない」(ヘイスティングスCEO)ということだ。

複数のサービスが補完的に家庭で使われる、というのが今の映像配信のあり方だ。だとすれば、「その複数の中でいかに自社の支配率を高めるか」が重要になる。強い専門サービスは選ばれる可能性が高いし、総合サービスもまたしかり。「ネットフリックスとDisney+」という選択をする顧客に、「HuluとDisney+」という選択をしてもらえるようになれば……という狙いではないだろうか?

Apple TVアプリ刷新で「入り口」を押さえるアップル

最新のiOS 12.3で追加された「Apple TVアプリケーション」。

アップルの動きも見逃せない。

アップルは5月14日、iPhone・iPad向けのOSである「iOS」を「12.3」にアップデートした。iOS 12.3には「Apple TVアプリケーション」という新しい機能が盛り込まれている。

これは、アップルがこれまで提供してきた動画配信機能を再整理・統合したものだ。

日本では映画配信のみが利用できるが、アメリカの場合には、各種映像配信サービスと連動し、このアプリを通して各サービスが利用できる。日本でも、ネットフリックスやAmazon Prime Videoとは連携しており、それらの登録されているコンテンツが、すべてではないものの、検索すると出てくる。

Apple TVアプリケーションでネットフリックスのコンテンツを検索したところ。「ほかのAppで開く」をタップすると、ネットフリックスアプリに誘導される。Apple TVアプリが「入り口」を押さえようとしている、というのはこういう意味だ。

3月のスペシャルイベントでAppleTV+を発表するアップルのティム・クックCEO。
撮影:西田宗千佳

普段はApple TVアプリを「配信の窓口」として使うと、複数のアプリを使い分ける必要性が減る……。そんな風にアップルは考えているのだろう。

同じ機能は今後、Macやスマートテレビ用アプリにも提供されていくので、「フロントエンド」を狙っているのは明白だ。

いまは単なるまとめアプリ的な存在だが、秋にアップル独自の映像配信サービス「Apple TV+」がスタートすると、また位置付けが違って見えて来る。Apple TV+は、Apple TVアプリから使える「サービスのひとつ」になるからだ。

2019年秋……となると、特に明言されているわけではないが当然、新型iPhoneの発売タイミングに合わせた開始になることを感じさせる。

先ほど述べたように、映像配信は「複数を契約して使い分ける」のが一般的。だとすれば、使い分けがしやすい窓口を作り、その一等地に自社のサービスを置くことは、非常に大きな意味を持ってくる。

そして、アップルとディズニーの関係は元々良好である。現状は連携の話は出ていないが、なんらかの策が採られても驚かない。

アップルがここで映像配信アプリを整備したのは、そうした競争に向けた「準備」の意味合いが強そうだ。

(文・西田宗千佳、写真・伊藤有)

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cat_oa-businessinsider_issue_fb9760e8ddcb oa-businessinsider_0_479f4ddd8c17_メルカリがスマートグラス向け「メルカリレンズ」β版公開へ【最速インプレ】 479f4ddd8c17

メルカリがスマートグラス向け「メルカリレンズ」β版公開へ【最速インプレ】

開発中の最新版「mercari lens(メルカリレンズ)」を使っているところ。

メルカリは5月24日にも、スマートグラス向けアプリのベータ版「mercari lens」(メルカリレンズ)の一般配信を開始することがわかった。

アメリカのカリフォルニア州で現地時間5月29日から開催される世界トップクラスのAR+VR展示会「AWE USA 2019」出展に合わせて公開するもので、米スマートグラスメーカー・Vuzixの最新機種「Blade」で動作するアプリだ。

現段階ではあくまでベータ版だが、メルカリが考えるスマートグラス×フリマアプリの世界観を一足先に体験できるものになる。

今回、Business Insider Japanの独自取材で最新アプリを先行体験してきた。

「メルカリレンズ」は研究組織「R4D」が手がける



メルカリは2017年末に発足した「R4D」という研究開発組織をもっている。同組織では、社内外の専門家らが協力し、量子コンピューター活用など複数の技術研究を通して、先進技術の社会実装を目指すことを掲げている。

メルカリレンズは、2019年1月にラスベガスで行われた世界最大級のテクノロジー展示会「CES2019」のVuzixブースで展示された。地味ながら世界初披露で、当時は画像認識をベースに、アイテムに紐付いたデータをスマートグラス内に表示するという、デモ版的動作だった。

最新版では機能を強化して、基礎的な物体認識に加えて、3月にiOS版のメルカリが対応した「写真検索API」と連携。ネットワーク経由でメルカリのデータベースを参照することで、「見たモノに近い出品商品を探し出して、視界に表示する」機能を目指した。

左から、R4DのXRリサーチエンジニアの栁澤慧さん、開発を主導しているxRリサーチエンジニアでマネージャーの諸星一行さん、xRエンジニアの中地功貴さん。

最初に断っておくと、「ベータ版」ということからわかるように、アプリの動作は基本的にまだかなり荒削りな部分が多い。バージョン表示もVer.0.xxxという「1.0未満」の状態だ。

また、Vuzix「Blade」自体も、スマホでいえばiPhoneやAndroidの初期のようなイメージで、まだ不安定さを抱えたハードでもあるようだ(例:発熱で不安定になる場合があるなど)。

とはいえ、Bladeは日本の公式ストアでも約13万円で誰でも買える一般向け製品だから、「プロトタイプの特別なハードで動かしています」といったレベルとは、まったく異なる、前向きな意味がある。

世界最速で「メルカリレンズ」使ってみた

Vuzix「Blade」の外観。ちょうど。左目部分の右端に、内蔵カメラのレンズが見える。Wi-Fi機能内蔵、もちろん国内で電波を出すための「技適」も取得済み。

Bladeは1月のCES2019でも体験済みだが、当時、実機とメルカリを含むデモアプリを体験して非常に驚かされた。

Bladeは右目のレンズにカラー映像を投影できるスマートグラスで、右側のテンプル(つる)部分にタッチパッド、鼻当て付近にマイク、左目のテンプルの根元付近にカメラを搭載。独自のアプリストアも持っている。

つまり、ARスマートグラスのプラットフォームとして、必要十分なセンサーと機能一式を搭載している。

Vuzix公式サイトにあるBladeの機能解説図。
Vuzix

Bladeの映像投影部分は右目にある。テンプル内側の凸部分から照射した映像は、レンズ中央左に投影される(うっすら四角い枠が見えているのがその部分)。装着者は、視界の中央付近に外の風景と重ねる形で映像を見ることができる。

こうした機能を「かなり普通のメガネに近い見た目」の中に集積しているのが、他社の似た製品とは違うすばらしいところだ。このパッケージングを(スマホほど大量生産はしていないであろう)Vuzixのようなメーカーが、「999.99ドル(アメリカ人の物価感覚的には10万円)で普通に販売できるのか……」。1月に触ったときには、この点にAR技術の低廉化と可能性を強烈に感じた。



アプリ「mercari lens」を体験したメルカリ社内には、今回のAWE USA 2019の出展にブランドとして協力しているニューバランスのスニーカーが置いてあった。

スニーカーに顔を近づけて、「スニーカーのすぐ脇で右人差し指を立てる(指差す)」ジェスチャーをする。これがいわば「シャッター」で、直後に物体認識がはじまり、数秒でメルカリ上に出品されている「近しい商品」の写真と価格が回答されてくる。

動作はかなり荒削り、しかし「メルカリの世界観」は感じる

Bladeから見た映像を再現したところ。写真、出品名、価格の3つが表示される。漫画「ドラゴンボール」のスカウター的に類似商品がわかる、というイメージ。

ベータ版のため、正直なところ認識精度はまだまだだ。30分ほどの試行錯誤の中で、スニーカーを見て、ちゃんとスニーカーが推薦されてきたのは数回のみ。それ以外は、模様が似た商品やサジェストした理由がわからない商品が出てくることもあった。

それでも、メルカリが思い描く「ARグラスを使った購買体験」の雰囲気は伝わる。

自分が見たものに「なんとなく近いもの」がスッと右目に表示される体験は、何か不思議な楽しさと気持ち良さがある。文字入力を伴う「検索」という行為なしで、自然なジェスチャーの中で情報のサジェストが行われるからかもしれない。端的に「これは面白いぞ」と思った。

技術面はグーグルの「テンソルライト」と「物体検出」を活用して実装

CES2019のVuzixブースに設置されたバナー。「mercari R4D」のロゴが掲示されている。ちなみに開発当初、Vuzix側はメルカリの名前を聞いたこともなかったそう。国内きっての知名度でも、世界に出れば無名。だから展示会にチャレンジする意味もある。

メルカリレンズの開発は2018年10月、栁澤慧さん(XRリサーチエンジニア)と中地功貴さん(xRエンジニア)が入社したことで始まった。2019年1月のCES2019のデモ展示は、実質1カ月強のスピード開発だったという。

開発を主導するR4DのxRリサーチエンジニアでマネージャーの諸星一行さんによると、搭載するセンサーや性能的には、マイクロソフトの「ホロレンズ」でも、23億ドル(約2500億円)以上資金調達した「Magic Leap One」でも可能だった。特にホロレンズは開発環境が整っているから素人目には良さそうだが、彼らが選んだのはBladeだった。

理由は、Blade以外はいずれも「普段の生活の中で使う」イメージがしづらいデバイスだったためだ。

ホロレンズ2(左)とMagic Leap One。メルカリレンズ開発時はホロレンズ2はまだ未発表だったが、コンセプトは初代機から変わっていない。日常生活向きじゃないという意味は、この写真をみればわかるだろう。

Vuzixのアプリストア。5月23日時点でBlade向けアプリは20種類あまりが公開されている。

Blade上で動き、メルカリの写真検索APIにつながるメルカリレンズの開発は、開発期間の短さだけではなく、ハードウェア特有の難しい部分もあったようだ。

特にBlade上で動くAndroidは、バージョンが5.1.1という、スマホでいえば5年前のOSのため、開発環境としても癖が強いと言う。既存のメルカリ本体のコード(プログラム)の移植が困難なため、基本的にフルスクラッチでつくっている。

Blade上で動く画像認識まわりの技術は、グーグルの組み込みデバイス向けの機械学習フレームワークの「TensorFlow Lite」と、それを使った「Object detection」(物体検出)を採用している。

現状、物体検出できる物体カテゴリーは「スニーカー」など2種類のみ。それ以外の物体は単純にカメラ映像を切り出して、画像検索する仕組みにしている。

認識できる物体カテゴリーが増えると、検索精度と検索スピードがより早くなる。カテゴリー数を増やすアプローチも、今後進めていきたいと諸星さんは言う。

アップルやグーグルの「スマートグラス」を意識

2017年末のメルカリR4D発足イベントの様子。落合陽一氏や、量子コンピューター研究者の大関真之准教授(東北大学大学院)、東大特任准教授のスプツニ子!氏ら業界で著名な若手研究者、日本のインターネットの父、村井純氏(慶應義塾大学環境情報学部教授)ら著名人が並ぶ。

何のためにメルカリはスマートグラス向けのアプリを開発しているのか? 諸星さんは「Bladeだけのためにつくってるアプリじゃない」と語る。

ここ数年、アップルがスマートグラスを開発しているという噂はずっと囁かれているし、グーグルも今週、5月20日にGoogle Glassの最新版「Google Glass Enterprise Edition 2」を突如発表したりもしている(諦めてなかったんだ、と驚いた人は多いはず)。

こうした各国テックジャイアントのトレンドの先にある出来事をイメージしながら、メルカリは動いている。

「(なぜ今、メルカリレンズをやるのかといえば)将来、アップルやグーグルから(一般向けの)スマートグラスが発売されたときに、すぐに対応できるように。ハードが世に出てから動き始めても遅いんです。
(スマートグラスのアプリ開発というと)“遊び”だと思われてしまう部分もあるかもしれませんが、我々はあくまで本気でやってます。
(AWEに出展するのは)小さく、狭く国内でやるより、世界を相手に(xRの最先端の世界で)戦った方が良いんじゃないか、ということです。メルカリの考え方として“Go Bold”ということもありますから」(諸星さん)
その意味では、Blade向けのアプリをずっとメンテナンスしてアップデートしていきたいというわけではない。

いまBladeに飛びついたような人は、国内外問わず、開発者寄りの人か、自ら進んで最先端を体験したい「アーリーアダプター」な人が大半だろう。そういう人に向けて、メルカリの技術と名前を発信し、最先端の動向を「手を動かして業界内部からキャッチアップしておく」ことは戦略として一定の意味がある。

諸星さんは、他に有望なプラットフォームが出てきたらそれ用のメルカリレンズを開発していくこともあり得ると語る。

なお、AWE USA 2019のメルカリブースでは、このメルカリレンズ以外に、裸眼立体視デバイス「Looking Glass(ルッキンググラス)」を使ってメルカリの出品物を3D表示するデモ体験や、MRゴーグル「Magic Leap One」を使って見ただけで服のサイズが推定できるシステムなどの参考展示も行う予定だ。

ルッキンググラスを使った参考展示。このシステム用の特別なメルカリアプリでスニーカーを検索すると、写真右下に見慣れないアイコンが表示。これを選ぶと、ルッキンググラス上に3Dモデリングされたスニーカーが出現する。「買う前に触る」ような3Dショッピング体験をイメージしている。

モーションセンサーと組み合わせることで、スニーカーを掴んで向きを変えたり、指先で弾いたりといった直感操作ができる。画面に写っているCGは手の指のモーションキャプチャーだ。

ともかく一つわかったのは、メルカリは、そう遠くない将来に実現するかもしれない「スマホの次」のスマートグラス時代も想定して、即対応できるような準備を進めているということだ。

Bladeをもっているような超アーリーアダプターの人は、ぜひ配信開始をお楽しみに。

(文、写真・伊藤有)

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cat_oa-businessinsider_issue_fb9760e8ddcb oa-businessinsider_0_40f94b8eff16_倉庫を楽しく? アマゾン、作業をゲーム化する試み 40f94b8eff16

倉庫を楽しく? アマゾン、作業をゲーム化する試み

アマゾンは倉庫での作業をより面白くしつつ、生産性を向上させる方法を模索している。
Helen H. Richardson/Getty

・アマゾンは、アメリカ国内の5つの倉庫で、従業員が作業のゲーム化を選択できるプログラムを試験的に行っている。
・ゲームは、レトロなグラフィックに、従業員の作業を記録するアマゾン倉庫のテクノロジーを組み合わせ、従業員同士で競争させる。
・高得点をあげた従業員は、アマゾンブランドの服や商品と交換できる「記念品」が与えられる。
・ゲーム化(ゲーミフィケーション)は、生産性を向上させ、退屈な作業を少し楽しいものに変える可能性がある。
アマゾンは、倉庫での作業の退屈さを少しだけ改善しようとしている。

現在、同社はアメリカ国内の5つの倉庫で、従業員が作業のゲーム化を選択できるプログラムを試験的に行っている。

従業員のワークステーションの小さなディスプレイには「ミッションレーサー(MissionRacer)」「ピックスインスペース(PicksInSpace)」「ドラゴン・デュエル(Dragon Duel)」「キャッスルクラフター(CastleCrafter)」といった名前のレトロなグラフィックのゲームが表示され、従業員の作業を記録する。このプログラムの存在については、ワシントン・ポストが先に伝え、Business Insiderは同社にその存在を確認した。

ゲームでは、個人あるいはグループで他の従業員と競争する。勝者にはアマゾンブランドの服や商品と交換できる「記念品」が与えられる。

このプログラムに参加するかどうかは、完全に従業員に任されている。バーチャルなバッジのようなインセンティブはあるが、給与や昇進には直接、結びついていない。

プログラムは2017年、ある倉庫で始まった。その後、現在の5カ所へと拡大した。

作業のゲーム化(ゲーミフィケーション)には2つの役割がある。1つ目は、スキルが不要な、単調な作業に携わる従業員を確保しやすくすること。2つ目は、生産性を高めるために、より自然に従業員がやる気になる方法を提供すること。

アマゾンは、プライム会員に対する2日以内の配送保証を1日以内に短縮した。そのため、アマゾン倉庫における生産性には、投資家、顧客、そしてあらゆる関係者が注視している。

アマゾンの倉庫では、すでに従業員の作業を記録している。何人かの従業員は今年はじめ、「残酷」な仕事の現実をBusiness Insiderに語った。一方、アマゾンは「素晴らしい職場環境、賃金、福利厚生、そしてキャリア形成の機会」を提供していることが誇りと述べた。

[原文:Amazon is trying to make working in its warehouses like playing a video game]

(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)

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