cat_oa-businessinsider_issue_d78583987b89 oa-businessinsider_0_d78583987b89_中国の都市への警告か、放置されたシェア自転車の山々 d78583987b89

中国の都市への警告か、放置されたシェア自転車の山々

2018年4月19日 05:45 Getty Images

修理場に積み重ねられた、壊れたofoのシェア自転車。北京、2017年3月29日。
Getty Images

ここ数年、中国ではシェア自転車のスタートアップがいくつも生まれた。スタートアップは「自転車版ウーバー」と呼ばれ、ユーザーはGPSを搭載した自転車のロックをスマートフォンで解錠し、乗り終わったら好きな場所に乗り捨てることができる。

だがスタートアップの数は多すぎ、需要は不足した。英ガーディアンは、2017年11月に第3位の規模のBluegogoが破綻した直後に、中国の都市でシェア自転車が山積みに放置されている様子を伝えた。無数の自転車の山の中には、大手のモバイク、ofo、そして破綻したBleugogoの自転車もあった。

その様子はまるで自転車の墓場。シェア自転車に多額の投資をしようとする中国の都市への警告のようだ。

ここ数年、中国の都市ではシェア自転車が急拡大した。

都市近郊に集められた各社のシェア自転車。浙江省杭州市、2017年9月7日。
Reuters


料金は30分あたり数円、他の国々の同様のサービスに比べると非常に安価。例えば、ニューヨークでは30分あたり3ドル(約320円)。

空き地に集められた自転車のロープをほどく作業員。福建省廈門市、2017年12月13日。
Reuters


いつでも利用できるよう、各社は都市に何千台もの自転車を配置した。

シェア自転車の山の前をシェア自転車に乗って通り過ぎる男性。福建省廈門市、2017年12月13日。
Reuters


だが、主に需要不足により、複数のスタートアップが破綻した。

放置された各社のシェア自転車。上海、2017年11月21日。
Reuters

Bluegogoは破綻後に声明を発表、同社CEOは拡大を急ぎすぎたことを謝罪し、「傲慢だった」と認めた。


放置された自転車が山積みに。中国のシェア自転車ブームと破綻の犠牲者たち。

空き地に山積みにされたシェア自転車。湖北省武漢市、2018年4月7日。
Reuters


業界の失速は、中国のシェア自転車の未来に疑問を投げかけた。

ラッシュアワーにシェア自転車で通勤する人々。北京、2017年3月27日。
Getty Images


最近まで、自転車は中国の一般的な移動手段だった。

文化大革命の頃の広東省、建物の壁一面に壁新聞が貼られている。1966年頃。
Getty Images


1990年代中頃には、中国の自転車保有者は5億2300万人に達した。特に北京では人気が高く、保有率は100人あたり72台となった。

交通渋滞がひどい上海では、自転車は効率的な移動手段だった。1993年10月。
Getty Images

出典:CityLab


だが21世紀を迎えると車がステータスシンボルとなり、反自転車政策が始まった。広州市では自転車レーンが車用に変更され、大連市は「自転車ゼロ都市」を宣言した。

空き地に山積みにされたofoのシェア自転車。福建省廈門市、2017年12月13日。
Reuters


自転車は急激に減った。個人使用の車が増え、二酸化炭素の排出量も増えた。

放置された各社のシェア自転車。2017年11月21日。
Reuters


自転車人気を取り戻そうと、ここ数年で約30社のシェア自転車スタートアップが生まれた。成功の程度には差がある。

ラッシュアワーに新しいシェア自転車をトラックから降ろすofoの作業員。北京、2017年3月28日。
Getty Images


シェア自転車はどこでも乗り捨てできるため、ユーザーは時に住宅地、公園、店舗など便利な場所に乗り捨てる。ショッピングモールの前には乗り捨てられた自転車が約3メートルの山になっている。

ショッピングモールの前の自転車の山。
Getty Images


2017年3月、中国政府はシェア自転車200台に1人のメンテナンス要員を雇うよう義務づけた。つまり、業界全体で1万5000人を新たに雇わなければならない。収益の圧迫につながる。

各社のシェア自転車。上海、2017年11月21日。
Reuters


自転車の山は、急速に成長し、衰退した業界の思い出……。

修理のために路上に並べられた自転車を動かすofoの作業員。北京。2017年3月29日。
Getty Images


[原文:These photos of dockless bike graveyards should serve as omens for Chinese cities]

(翻訳:山口玲子、編集:増田隆幸)

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cat_oa-businessinsider_issue_d78583987b89 oa-businessinsider_0_75b473a51947_「コスパは正義」第7世代iPadを2週間使って気づいた「道具としての完成度」 75b473a51947

「コスパは正義」第7世代iPadを2週間使って気づいた「道具としての完成度」

撮影:伊藤有

iPad 第7世代モデルを、発売日の10月4日から使っている。

いまやiPadは「Pro」や「mini」を含めれば5種類ものモデルを展開する、アップル製品のなかでもAppleWatchの次に製品ラインナップが多いシリーズだ。

タブレット製品からの実質撤退が相次ぐAndroid勢とは、隔世の感がある。

個人的に、半年ほど前まで2017年発売の「iPad Pro 10.5(LTE版)」を仕事でバリバリ使っていたこともあり、旧iPad Proユーザー目線で、第7世代iPadがアリなのかを実生活で使いながら考えた。

iPad Proを一度は手放した理由

第7世代iPadのパッケージ。最初の開封は何度やってもワクワクしますね。
撮影:伊藤有

第7世代iPadは、「最安のiPad」として注目された第6世代(2018年3月発売)から、実はそれほど大きくは変わっていない。心臓部のSoCは同じA10Fusionだし、カメラ性能も少なくとも解像度の変化はない(※)。大きく変わったのは2点、「SmartKeyboardへの対応」と、「OSがiPadOSになったこと」だ。

(※動画撮影について、従来は240fpsのスローモーション対応だったものが、120fpsになったなどの違いはあるが、ここでは割愛)

1つ前の第6世代は、アップルからすれば「3万円台でペン対応にした、コスパで頑張ったモデル」だった。けれども、個人的には興味を惹かれなかった。

iPad Pro 10.5のSmartKeyboardの「無線接続ではないので充電不要、電波状況も関係なく使える」という利便性がとても気に入っていたからだ。

一方でその後、旧iPad Proは手放してしまった。理由の1つは、iOS12の安定性が(配信当初は)イマイチだったこともあるが、僕の用途で問題があったことが大きかった。

具体的には、(職業的に結構致命的なのですが)Business Insider Japanの記事入稿システム(Webサービス)がうまく動かなかった。一応表示も入力もできるのだが、異常に動作が遅くなる。いわゆる、ブラウザーの互換性問題だ。

それまでは原稿をiPadで書いて、別PCでアップロードするなどしていたが、取材先からiPadで原稿を書くようなケースも増えてきて、この問題が無視できなくなってきた。結果、互換性問題に関してはパーフェクトなLTE対応のWindowsノート(2in1)に乗り換えたというわけだ。

iPadOSとSmartKeyboard対応で「化けた」

ふだんiPhoneを使っていれば、開封直後にiPhoneを近くに置くだけで環境移行が始まる。この一気通貫的な楽チンさはアップル製品のよいところだ。
撮影:伊藤有

Wi-Fiをはじめとする基本的な設定とアプリのダウンロードはあっという間に完了。電源オンから30分以内に実戦投入が可能に。
撮影:伊藤有

そして2週間前に手元にやってきた第7世代iPad。

トータルの印象を10文字で言うと「いや、これ、良いです」。

冒頭書いた通り、アップデートとしては、形が大きく変わったわけでもなく、処理速度が高速化したわけでもない。地味なアップデートだが、旧iPad Proを手放した理由が解消されているうえに、なんといってもかなりコスパが良い。

Windows機からiPadに「出戻り」すると、タブレットに最適化されたアプリの体験の良さ、実質バッテリー駆動時間が長いことの安心感が再確認できた。

特にバッテリー面で重要なのは、バッテリーの「蒸発」が少ないことだ。

iPadの公称バッテリー駆動時間は10時間で、Windows機ならこれより長い機種は珍しくない。ただ、スリープしている間に、「蒸発するかのようにバッテリーが減る」というのが、iPadでは最小限といっていいレベル。これが、仕事道具としての美点だ。

そのほか本機の良いところを、ざっと写真で説明していこう。

1. LTE対応モデルでも5万円を切る価格。SmartKeyboardも使える

出典:アップル

何と言っても、何不自由ない性能でこの価格、というのが大きい。ビジネス用途に欠かせないSmartKeyboard対応、どこでもつながるLTE(絶対外せない)、それでいて最安モデルならLTE版でも5万円を切る。ただし32GBですが。Apple Pencilも、第1世代モデルとはいえちゃんと使える(しかも、手書き時の遅延は、従来の20ミリ秒から9ミリ秒に改善したそうだ。ハードは同じでソフトウェア最適化のみとのこと)。


2. ブラウザーの互換性が本当にデスクトップ並みに

出典:アップル

個人的にはSmartKeyboard対応と並んで大評価したいのがこの点。iPadOSのベータ発表時点でブラウザーがPC水準になるとのアナウンスがあったが、確かに描画エンジンが大幅アップデートされている。

iOS12の問題点だった、互換性問題で一部のWebサービスが動かない問題がほぼ完全に解消していた。操作に対するレスポンスも正常だし、まさにPC水準の互換性といえる。


3.iPadOSの新機能が地味に良い仕事をしている

右側の小さな窓が「スライドオーバー」。これは以前のiOS12でもあったが、窓の下にある横棒部分を上に軽くスワイプすると……。
撮影:伊藤有

このようにタスク切り替えが可能に。以前のiOS12ではあまり使わなかったが、iPadOSになってから、個人的にもっとも多用する機能になった。
撮影:伊藤有

これはユーザーにならないとわからない部分だが、画面の端に小窓を出す「スライドオーバー」がタスク切り替えに対応したことで劇的に使いやすくなった。

こんなことでそんなに?と思うかもしれないが、従来はスライドオーバーするアプリの切り替えができなかったために、画面2分割(スプリットビュー)との違いが分かりづらかった。もっと正直に言えば、僕にはメリットが感じられなかった。

一方、iPadOSでは、Twitterを表示させたり、Onedriveなどのクラウドストレージを参照したり、プレゼン資料をつくりながらメモアプリを参照したりと、かなりヘビーにスライドオーバーを使うようになった。

ちょっとした作業のマルチタスク化が、1歩ならず5歩くらい進んだ感がある。

スクリーンショット機能が機能アップ。Safariを使うと、ブラウザーの全画面スクリーンショットも撮影可能に。Web制作の仕事や資料づくりにも役立ちそうな機能だ。

画面右下からペンをセンターにスワイプすると起動するスクリーンショット機能の高機能化(新機能)も、ホビー向けというよりは、ビジネス向けにかなり使える機能だ。

たとえばブラウザーだと表示領域外の「全画面スクリーンショット」が撮影できたり、複数ページのPDFなども、全ページのスクリーンショットを一発で撮れる。


4. アプリ間の連携は満足できる水準



「ファイル」アプリができて以降、アプリ間のファイルのやりとりは随分簡単になった。iOS12ではあまりその辺の使い込みはしていなかったが、iPadOSでは不自由を感じる点は今のところない。

メッセンジャーやメール添付でPowerPointやExcelが届いても、問題なく編集、別アプリへの受け渡しなどが可能。

Googleドライブなどクラウドストレージ上に保存したファイルの読み出しもできる。

多少注意が必要だったのは、Messenger経由などでのテキストファイルの受け渡し(保存時の文字コード設定をミスすると文字化けしてしまう)。ただし、ファイルを開く際にSafariで開くようにですると、ファイル自体のダウンロードができるので、別アプリで開くことで文字化けは回避できた。


5. ほんの少しベゼルが太いデザイン

撮影:伊藤有

こちらは発売当時にレビューした旧iPad Pro 10.5の写真。指摘している額縁の太さの違い、わかるでしょうか。
撮影:伊藤有

写真ではなかなか気づきにくい点として、画面周囲のベゼルの厚みがある。SmartKeyboardを装着した見た目は、ほぼ旧iPad Pro 10.5。でも、このiPadは「10.2」インチ。少し画面が小さいぶんの差は、特に両サイドのベゼルが太さに顕著に出ている。

10.5では縦表示で使うときにベゼルの薄さで「新しさ」を感じたが、10.2はその辺で少し野暮ったさがある。

それも「LTE版でも5万円で買える」ことの代償だと思えば、帳消しにできるレベルではありますが……。


3つのウィークポイント
ただ、本機は単に「旧世代のチップを使ってシンプルに低価格化に成功した」モデルというわけではない。エントリーモデルなりの割り切りがある。それは主に3つの点。

1つめは、「内蔵メモリー」と「処理性能」だ。iPad Proは4GB以上が標準だが、ベンチマークアプリ「Antutu」でチェックした所、内蔵メモリーは3GB。少し少ない。

第7世代iPadの内蔵メモリー。ベンチマークソフト「Antutu」によると、3GBという表示。

正直なところ「これは心もとないかも?」とは思ったものの、実際に2週間仕事やプライベートで使い倒してみて、メモリー不足に起因しそうな症状は経験していない。

アプリが途中で落ちたことはないし、動作が変に遅くなったりもしていない(iPadOSになったことでメモリー管理の改善などもあっても不思議はない。確認しようがないですが……)。

処理性能に関しては、通常のアプリ利用なら「遅い」と感じることはほぼない。アドビの写真現像アプリ「Lightroom」で複数枚の画像を処理して一挙に書き出し作業をしたときだけは、「ちょっと待つな」という印象はあった。10枚のデジカメ画像(4608x3456ドット)を同設定で補正して、「小 2048px」での書き出しで13秒。100枚の処理なら2分以上かかる計算だ。これが許容範囲かどうかは、一度に処理する枚数次第だろう。

2つめは液晶。これは明確に違う部分だ。iPad Proには、表面のガラスと液晶との距離を大幅に短くして視差を減らす「フルラミネーション」ディスプレイを採用。表示できる色域もP3という広色域対応だった。

気にならない人もいる、という指摘もあるが、ペン先と実際に描かれた線の微妙なズレは感じるといえば感じる。
撮影:伊藤有

第7世代はP3でもフルラミネーションでもない普通の液晶。ただし、色みに関しては、両製品を並べて見ない限りはP3非対応であることはまずわからない。表示品質は十分に高く、大半の人は「この液晶は綺麗だ」と思うレベルだ。視差についても、強くこだわりがある人以外は、ほぼ問題にならないと思う(自分は気にならなかった)。

3つめは、あえて言えばサウンド。iPad Proや、最新のiPhone 11 Proは、スピーカーの音響性能が極めて高くなっている。

iPadのスピーカーはこの部分。スペックシートによると、スリットの箇所がステレオスピーカーになっている。
撮影:伊藤有

公式スペック表より。ステレオスピーカーは本体下部にある。
出典:アップル

それを考えると、iPadのスピーカーは一般的なステレオスピーカーでしかないので、「迫力あるステレオサウンド」とまではいかない。Proシリーズの回り込んでくるような臨場感を期待していると、「ここは価格なりだな」と感じる部分。

その点で、第7世代iPadはある程度はわりきりつつ道具として完成度を考えた、バランスの良い製品というのが2週間使っての感想だ。

注:この記事のリンクを経由してアマゾンで製品を購入すると、編集部とアマゾンとのアフィリエイト契約により、編集部が一定割合の利益を得ます。

(文、写真・伊藤有)

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cat_oa-businessinsider_issue_d78583987b89 oa-businessinsider_0_4499c865b8ad_編集者が身構えるぐらいのデザインを。人気ブックデザイナーが考える 「いい装丁」 4499c865b8ad

編集者が身構えるぐらいのデザインを。人気ブックデザイナーが考える 「いい装丁」

本好きなら、気になっている人も多いはず。装丁家という仕事。

装丁に込められた思いを知りたくて、人気ブックデザイナー佐藤亜沙美さんのもとを訪れた。

佐藤さんは2006年から8年間、デザイナー祖父江慎(そぶえ・しん)さんが代表を務める「コズフィッシュ」に在籍。2014年に独立し「サトウサンカイ」を設立した。

2016年からは『Quick Japan(太田出版)』のアートディレクターになり、その後も『静かに、ねぇ、静かに(講談社)』、『生理ちゃん(KADOKAWA)』などの人気タイトルを数多く手がけてきた。

なかでも「韓国フェミニズム・日本」を特集した『文藝』2019年秋季号は、創刊以来86年ぶりの3刷を記録し話題になった。

いいなと思うものって、どこか攻撃的な踏み込み方をしている



——『文藝」の86年ぶり3刷は大きなニュースでした。佐藤さんがアートディレクションを手がけたんですね。

2019年4月発売号から携わらせていただいています。編集長の坂上陽子さんが、リニューアルにあたりデザインもガラッと変えたいと相談してくださいました。

主に純文学が掲載されている5誌(文學界、新潮、すばる、群像、文藝)が文芸誌と呼ばれているのですが、『文藝』は長い歴史を誇っていることもあり、これまで中高年の読者を中心に親しまれてきました。

ただ、これまでの読者にむけてデザインを構築していくべきかは悩みました。20年ぶりのリニューアルなので、文芸誌をあまり読まないと言われている若い層にも手にとってもらえるよう、イメージを一新したいという編集長の考えに呼応して考えていきました。

坂上さんとは以前からお仕事をご一緒していたのですが、ご依頼いただくのが「ポップなデザインを」という意向の作品が多かったので、そのやりとりの流れでお声かけいただいたのかなと思います。

——思い切ったデザインですよね。イラストに文字をかぶせたり、文字に文字を重ねたり。題字もこれまでの文芸誌にないインパクトです。このデザインは、編集者としては勇気が要ります。

収録されている作品がとても刺激的なので、視覚的にも刺激的でありたいと考えていました。私自身が手に取るものもそうですが、いいなと思うものは、どこか攻撃的な表現をしているものが多い。

なにかに遠慮して作られたものは、受け取り手も遠慮していることが分かってしまう。お互いに配慮しあっていたら、デザインとしてはパワーが弱まってしまうので、そこをあえて踏み込むようにしています。

1990年代〜2000年代に主流になったシンプルでスマートなデザインに、私自身があまりワクワクしなくなってしまったこともあって。

『サードウェイ (ハフポストブックス)』もシンプルですけれど、白い面に大きな余白をとって、タイトルは小さい文字で配しました。シンプルでも余白の取り方などで攻撃的に見せています。

——既成概念を打ち砕いていますね。

打ち砕いているという意識はないです。もしそう見えているとしたら、作品がそういう要素を内包しているということだと思います。本のカバーは“作品から滲み出したもの”と思っています。

デザイナーとしては可能なかぎり匿名性を重んじているところがあります。自分らしさはどうでもよくて、その作品でしかできないなにかをいつも探しています。そこが一番エネルギーを使う。

実際、作品ごとにタイトルの配置もバラバラです。文字要素が多いと言われることもありますが、文字は“読者とコミュニケーションを取るツール”と考えています。この作品のことを全く知らない人にも、どこか気に留めてもらえるような文字の配置を意識しています。

装丁だけではない。ブックデザイナーの仕事



——ブックデザイナーの役割は、どこからどこまでなんでしょう?

私の場合は、装丁だけではなく本文もデザインすることが多いです。まずはノンブル(ページ番号)の書体や位置といった小さなところから決めていって、そこからじわじわ外に広げていって、カバーデザインに手を付けるときにはもう方向性が決まっているイメージです。

以前いた事務所が、「カバーだけという依頼はあまり受けない」という方針だったことが大きいかもしれません。パッケージとしてよく見せても、骨格である本文がよくなければ成立しないという考えのもと、本文組も徹底的に鍛えられました。

——ご自身を「ブックデザイナー」と言っているのは、装丁だけではないからなんですね。

装丁家と言われると嬉しい半面、自分ではちょっと偉そうかなとか思ってしまうのもあります(笑)。ブックデザイナーだと、本づくりそのものに関わっている感じがしていいな、と思って。実際、まだ企画段階のときから関わることもありますし、スペース次第では帯文を変更してもらえるか相談することもあります。

デザインのラフをつくるとき、タイトルや帯文が確定していないこともあるので、デザインのテンションをつかむために帯文を仮に設定することもあります。それがそのままタイトルや帯文の決定づけになることもあります。

——デザインする前に、本の中身をすべて読むのですか?

スケジュールによってはすべての作品をじっくり読めるわけではないのですが、可能なかぎり読ませてもらうようにしています。打ち合わせの前に、ゲラを送っていただいて、読んでから手書きでラフを描きます。



ラフといっても、思考マップのようなものです。ゲラを読んで、感想文や考えたことを書き出して整理していきます。自分が何を考えているのかが顕在化してくるんです。そこから帯文の文末は「。」なのか「!」なのか、推薦文はどんなテンションがいいとか、どんなイラストレーターが合いそうかとか作品の視覚的な世界観が見えてきます。

思考マップを書きながらデザインのアイデアが浮かぶこともある。マップのおかげで最後までピントがブレずに仕上げられるので、必ず書くようになりました。

日常の違和感からアイデアが生まれる
——これまでに、どんなアイデアが生まれましたか?

本谷有希子さんの『静かに、ねぇ、静かに』というSNSを題材にした純文学の作品では、SNSに関連づけた案がラフを書いているうちに出てきました。小説の装丁を考えるときは、あまり直接的な表現をしないようにしています。イラスト案をいくつか出すこともあります。この作品のときはタイトルの題字が反転しているプランをイラスト案の端に含ませました

以前、大森靖子さんの本を担当したときにご本人が著書を持った写真をSNS上で見たのですが、カバーや帯の文字が反転していたんです。これってどういうことなのかな?と不思議に思ったんです。

そこで「SNS 文字 反転」でネットで検索したんです。それで、自撮り写真が、鏡に映る「いつもの自分」と同じでいてほしいから、あえて反転させて映るカメラアプリがあることがわかりました。それからは意識してみているのですが、お若い方を中心にこういう反転写真、よく見かけます。



文字が反転しているという圧倒的な違和感よりも、いつもの可愛い自分でありたいという自意識の方が勝っている。すごく興味深く思いました。

それをヒントにプランに盛り込んだら、本谷さんが「このプランが気になる」と言ってくださったので、採用になりました。本を自撮りで反転するカメラアプリを使って撮影することでタイトルが正しくなる。SNS時代に照らしたデザインがラフから派生して仕上がった幸福な例です。

——そんな遊び心が込められていたんですね。

反転していると読みづらいとか、書店さんが困るんじゃないかとか、出版社の中でもかなり懸念されたようです。そこで、反転していないタイトルを帯や背表紙に入れることで了承していただき、無事に印刷までこぎつくことができました。

——ドラマがありますね。

たくさんの人が関わっていて、それぞれの役割の中で読者にとって最善のものをと考えて動きます。デザイナーとしては、こうして“日々の違和感”がアイデアに繋がり、かたちにできることは嬉しいです。

編集者が「え!?」と身構えるくらいが、面白くなる



——佐藤さんにとっての「いい装丁」とは何ですか?

個人的な意見ですが、いいなと感じるデザインは、デザインに入るまえにいかに考えられているか、その考えの量が多くて、シャープであることだと今は考えています。その考えが浅いと私の場合はよくなっていくことはないです。考えを詰めていくとより強調したほうがよいと思うことが出てきます。

どのデザインにも「強み」「弱み」が両方ある。そのなかで、どこをシャープにするか、どうすると届けたい人にまっすぐ届くのか、と考え詰めてからデザインに入ります。

わたしの場合は、多くの人に好まれるようにと思考していくとあまりうまくいかないことが多いです。編集者が、一瞬「え!?」と身構えるくらいのデザインが、あとあと面白くなることも多いです。賛否があるものをつくりたいと思っています。少し引かれるくらいの(笑)。

——ブックデザイナーがそこまで思考を巡らせているとは思いませんでした。

それは、祖父江さんの影響です。祖父江さんの編集力とポイントをつかむ瞬発力は、本当に真似ができない。

——ポイントを掴む瞬発力というのは?

その作品がなにを言いたいのか、という企画の本質をつかむ力ですね。打ち合わせの段階だとそこがまだぼんやりしていることが多いんです。作品としては素晴らしいけれど、これを誰にどう届けるのか、編集者自身もまだフワっとしている状態。祖父江さんはそこを引っ張り上げて、アウトラインをシャープにしていく技術にすごく長けていると思います。

作品を読まずに「この作品のおすすめポイントを教えて」と編集者に尋ねることもありました。編集者がそこを曖昧に答えたり、お茶を濁したりすると、引き戻す。

なんとなく見えてきているんだけれども、まだぼんやりしている状態ってありますよね。そこを磨いて明確にするところから始める。打ち合わせをしながら、まだ見えない言葉を探していく作業を徹底しているんです。

そんなふうに祖父江さんのもとで8年間、学ばせていただきました。

絶対に裏切りたくない



——では、逆に「悪い」装丁も聞いていいですか?

私が良し悪しを述べるのはおこがましいのですが……。「盛ってるな」と思うデザインはとても苦手です。見栄えよくても、中開けたら全然違うじゃん、みたいな。装丁と本文があまりに違うとガッカリします。

デザイナーとしては、そういうところで読者を裏切りたくないですね。

「ダサいものは、よりダサく」。これ、師匠の格言なんです。ダサいものはよりダサくすることでかっこよくなる。ダサいものをごまかすとよりかっこ悪くなる。



やっぱり、デザインだけで盛るということはできないんですよね。この装丁は、なぜこうなった?と言われると、作品がそうだからとしか言えないです。

理想は、あまり抗わずノイズを加えず、よく考えてできるだけ高い精度で出す。お寿司屋さんみたいにポンっと。

(取材・文:川崎絵美 写真:西田香織 編集:錦光山雅子)

"Torus (トーラス)by ABEJAから転載"(2019年10月8日)

Torus by ABEJAとは:AIの社会実装を手がけるスタートアップABEJAのオウンドメディア。「テクノロジー化する時代に、あえて人を見る」をコンセプトに、さまざまな人の物語を紡いでいきます。

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cat_oa-businessinsider_issue_d78583987b89 oa-businessinsider_0_b9e6dfd332e5_Facebook、「がんと自閉症に効く」無認可薬物販売の非公開グループを閉鎖。密室性を悪用か b9e6dfd332e5

Facebook、「がんと自閉症に効く」無認可薬物販売の非公開グループを閉鎖。密室性を悪用か

2019年10月21日 16:55 Justin Sullivan/Getty Images

「非公開グループ」悪用問題が明らかになったFacebook。
Justin Sullivan/Getty Images

Facebookは、当局の認可を受けていない、人体に悪影響をもたらす可能性のある薬品を広告・販売していた14の非公開グループを削除したことを明らかにした。

削除の対象となったのはいずれも、米Business Insiderが10月18日(現地時間)公開の記事を通じてその危険性を指摘したグループ。削除前には7000人以上のメンバーを抱えていた。

同記事によると、イギリス人女性のアマンダ・ジュエル氏は、自ら管理する非公開グループ内で、癌と自閉症の治療薬と称して「GcMAF(ジーシーマフ)」と呼ばれる物質を販売。同時に、同氏は中米ベリーズに開設したクリニックで施術も行っていた。料金は、薬品と施術を合わせて2万5000ドル(約270万円)とされる。

非公開グループの管理者で、無認可薬品を販売していたアマンダ・ジュエル。
Healing Oracle, YouTube

GcMAFは、タンパク質由来のマクロファージ(白血球の一種)活性化因子とされ、Business Insiderの取材によると、アメリカとイギリスでは臨床試験や認可は行われていない。

Facebookの広報担当は以下のようにコメントしている。

「当社のサービスでは、認可無認可にかかわらず医薬品の販売を認めていません。したがって、Business Insiderが10月18日の記事で警告したすべてのページとユーザーアカウント、グループは削除いたしました」
取材に応じた複数の専門家たちは、「こうした無認可無試験の薬物の宣伝や販売は、十分なチェックの行き届かない非公開グループを悪用した手口だ」と指摘している。

[原文:Facebook removed more than a dozen closed groups promoting unlicensed medicines after a Business Insider investigation]

(翻訳・編集:川村力)

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cat_oa-businessinsider_issue_d78583987b89 oa-businessinsider_0_9d515fb23fd5_カンニングの防止? インドの学校、化学の試験で学生に段ボール箱をかぶらせ謝罪 9d515fb23fd5

カンニングの防止? インドの学校、化学の試験で学生に段ボール箱をかぶらせ謝罪

2019年10月21日 15:30 ANI/Twitter

ANI/Twitter

・学生が段ボール箱をかぶって試験を受ける様子を捉えた写真に注目が集まり、インドの中西部カルナータカ州ハベリにある私立の「バガット・プリユニバーシティカレッジ(Bhagat Pre-University College)」は謝罪した。
・学校側は、化学の試験で学生に段ボール箱をかぶるよう指示していた。試験中の学生同士のおしゃべりを止めさせるためだったという。
・地元メディアの報道によると、学校側がソーシャルメディアに投稿した写真をきっかけに、州の教育当局が調査を開始したという。
・学校側はその後、謝罪したが、学生の同意は得ていたとしている。
カンニングを防ぐため、学生に頭から段ボール箱をかぶるよう指示したインドの学校が謝罪した。

地元紙「The Hindu」によると、カルナータカ州ハベリにある私立の「バガット・プリユニバーシティカレッジ」では、10月16日(現地時間)に行われた化学の試験で、学生に段ボール箱をかぶるよう指示した。

段ボール箱の前方には四角い穴が開けられていて、学生は外を見ることができた。学生同士のおしゃべりを止めさせるためだったという。


カルナータカ州:ハベイのバガット・プリユニバーシティカレッジでは、学生が試験中、段ボール箱をかぶらされていた。カンニングを防ぐためだという(2019年10月16日)
報道によると、このアイデアを思い付いたのは学校を運営するM・B・サティシュ(M.B. Satish)氏だった。段ボール箱をかぶった学生の写真はソーシャルメディアで拡散し始め、それが州のプリユニバーシティ教育の責任者S・C・ピアゼイド(S.C. Peerzade)氏の目に留まり、学校にストップをかけたという。

The Hinduの取材に対し、ピアゼイド氏は「この学校を訪問したとき、学生の大半が頭の上に箱を乗せていたため、わたしは学校側の説明を求めた」と語った。同氏は、学校側が別の学校で行われていた同様の手法に着想を得たようだと、付け加えた。

学校側はその後、謝罪した。

サティシュ氏は19日、学生の同意は得ていたとBBCに語った。同氏は「一切、無理強いはしていない」とし、「写真を見れば分かるように、一部の学生は箱をかぶっていない。箱をかぶっていた学生も、15分後に脱いだ学生もいたし、20分後に脱いだ学生もいた。1時間後には、こちらから脱ぐよう指示した」

[原文:An Indian college apologized for asking students to wear cardboard boxes over their heads]

(翻訳、編集:山口佳美)

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cat_oa-businessinsider_issue_d78583987b89 oa-businessinsider_0_9f35d7099354_アマゾン受け取り近所のお店でを常識に、宅配のLCC目指す次世代型物流とは? 9f35d7099354

アマゾン受け取り近所のお店でを常識に、宅配のLCC目指す次世代型物流とは?

「モノと人をつなげることでハッピーにしたい」と語る工藤社長。
撮影:横山耕太郎

お店の空きスペースを利用して観光客らの荷物を預かるシェアリグサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」を運営するecbo (エクボ)が、アマゾンと業務提携し、アマゾンの商品を指定したお店で受け取れるサービスが注目を集めている。エクボの工藤慎一社長は、「荷物を受け取ることで人と人がつながるサービスにしたい」と話している。

エクボは2017年1月に「エクボクローク」を立ち上げた。2019年9月からは、同サービスで荷物を預けられる店舗で、宅配物も受け取れるサービス「エクボピックアップ」を開始。今回はアマゾンと業務連携し、アマゾンで注文した商品を、エクボピックアップ加盟店の一部で受け取ることができるようになった。

まずは渋谷エリアからはじめ、今年中には100店舗以上で受け取れるようになるという。

ダイレクトな宅配は「非効率」

宅配便の個数は年々増加している。
出典:国土交通省「平成30年度宅配便等取扱個数の調査」

なぜ、宅配物の受け取りに目をつけたのか?

「宅配物は今後も増え続け、ドライバーも高齢化していく。現在のように一軒一軒に荷物を配るダイレクトな宅配は非効率です。炎天下で一つひとつ荷物を配るのは、物流の負担が大きすぎる」

国土交通省の集計「宅配便等取扱個数の調査」によると、トラックでの宅配便の取り扱い個数は2014年度には35億7000万個だったが、2018年度には約7億個増加し、42億6100万個になり増加傾向が続いている。

「モノと人とのタッチポイントを作ることで、人を幸せにしたい」という工藤さんは、3年前の創業時から、荷物を「預ける」ことだけでなく「受け取ること」も視野に入れていた。

荷物を預けるエクボクローク事業が、47都道府県の1000店舗以上でサービスを展開するまでに成長したこのタイミングで、アマゾンとの業務提携を決めた。

時代は「LCC宅配」?

宅配便の量は増え続け、宅配業者への負担の増加が問題視されている。
GettyImages/ Rouzes

「持続可能な『LCC(格安航空)的な宅配』が必要になっている。ダイレクトな宅配は過剰サービスで、航空機で言えば『ビジネスクラス』のサービスになっていく」と、工藤さんは分析する。

現状の物流のままでは、増え続ける宅配物に対応するのが難しい。そこで、近くの店舗まで荷物を受け取りに行くような、低コストの物流が効率的だと指摘。将来的には、コンビニ以上の店舗数で荷物を受け取れるよう、サービスを拡大するのが一つの目標だという。

人と人との接点を大切に

工藤社長は「新しいコミュニケーションが生まれることに期待している」と話す。
GettyImages/ RUNSTUDIO

荷物受け取りサービスでは、これまで行ったことのない店舗と、人とをつなげられる点にも可能性を感じている。

「例えば近くの飲食店を受け取り場所に選べば、これまで全く接点のなかった人がお店に行くことになる。荷物を受け取れば、その店のカクテルが1杯無料になるサービスとかも面白いですね」

「経済合理性だけを考えれば、無人の宅配ロッカーを置くべきかもしれないけど、人はコミュニケーションの動物。人と人の接点を大切に考えていきたい」

自分宛ての荷物を受け取りに、近所にあるお店に初めて行ってみる。新しい受け取りの形を想像すると、ちょっとわくわくする。

(文・横山耕太郎)

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cat_oa-businessinsider_issue_d78583987b89 oa-businessinsider_0_da92944a79fe_大地震前の1877年にサンフランシスコを写したパノラマ写真が競売に…現在と比べてみよう da92944a79fe

大地震前の1877年にサンフランシスコを写したパノラマ写真が競売に…現在と比べてみよう

エドワード・マイブリッジが撮影したパノラマ写真は、19世紀には広く販売されていたが、今日では珍しいと思われる。
Library of Congress

・1877年のサンフランシスコを写したパノラマ写真がオークションで約1万4000ドル(約152万円)で落札された。
・この写真は、1906年の地震で街の大部分が破壊される前の様子を、垣間見ることができる。
・テレグラフ・ヒルのようないくつかの地域は現在と似ているように見えるが、華やかな邸宅や石畳の通りの多くはなくなっている。
1906年の地震前のサンフランシスコはわずかしか残っていない。マグニチュード7.9の地震とそれに続く火事は、市の80%を破壊し、3000人以上を死亡させ、カリフォルニア史上最悪の災害となった。

そのため、この街の珍しい1877年のパノラマ写真が今月初めに競売にかけられたときは、約1万4000ドル(約152万円)の値が付いた。

この写真は、動物の連続写真で知られる写真家、エドワード・マイブリッジ氏が撮影した11枚の写真で構成されている。映画の父と評されることもあるが、マイブリッジ氏はサンフランシスコの歴史的建造物の多くをカメラに収めた功績もある。彼のパノラマ写真が公開された時点では、アコーディオン状に折り畳んだものは約10ドルで売られていたが現在は約2400ドルだ。

彼の一連の写真は、サンフランシスコが急速に発展していた時代を捉えている。テレグラフ・ヒルのように現代もそのままの地域もあれば、すっかり様変わりした地域もある。

ここではマイブリッジの写真と現代のサンフランシスコと比較している。

写真はノブヒルにある邸宅から撮影された。

Wikimedia Commons

その邸宅はセントラル・パシフィック鉄道の創設者の一人であるマーク・ホプキンス(Mark Hopkins)のものだった。その塔はサンフランシスコで最も高い地点であった。家は1906年の地震を生き延びたが、その後の火災で焼失した。


現在、ここには高級ホテル「インターコンチネンタル・マーク・ホプキンス」がある。

George Rose/Getty Images

この建物は、もはや市内で最も高い場所ではない。


パノラマの最初の写真には、セントラル・パシフィック鉄道のもう1人の創立者であるチャールズ・クロッカー(Charles Crocker)氏の邸宅が写っている。

Eadweard Muybridge/Bonhams

クロッカー氏は1906年の地震の前に亡くなっている。


ここには現在、アメリカ最大の聖公会教会の1つであるグレース大聖堂がある。

Bobak Ha'Eri/Wikimedia Commons

地震の後、クロッカー家はその土地を聖公会に寄付した。


写真は、当時、軍事刑務所だったアルカトラズ島をかすかにとらえている。

Eadweard Muybridge/Bonhams

1906年の地震の後、民間人の囚人たちはアルカトラズ島に移された。


刑務所は1963年に閉鎖され、現在は観光地となっている。

Kevin Lamarque/Reuters

アルカトラズ島は1973年に一般公開され、最初の年には5万人以上が訪れた。現在、年間100万人以上が訪れている。


東の方向には、かつて船が到着したことを知らせた建物にちなんで名付けられたテレグラフ・ヒル地域がある。

Eadweard Muybridge/Bonhams

当時、この地域には低い建物が並んでいた。


今日、高さ約63mのコイト・タワーは丘とともに目立つ存在だ。

Hoberman Collection/Universal Images Group/Getty Images

タワーは1933年に市の消防団の記念碑として建てられた。多くの人がその形状を消防ホースのノズルと比較しているが、その設計は意図的なものではなかった。


遠くには、1870年に陸軍基地となったイェルバ・ブエナ島が見える。

Eadweard Muybridge/Bonhams

サンフランシスコは1847年以前はイェルバ・ブエナ(Yerba Buena)と呼ばれていた。この名前は地元の植物の種に由来している。数年後、湾に浮かぶ小さな島にこの名前がつけられた。


現在、イェルバ・ブエナ島には2つの橋がかかっている。

Rhododendrites/Wikimedia Commons

サンフランシスコとオークランドを結ぶ橋の建設は、ゴールドラッシュ時代にすでに始まっていたが、1930年になってようやく実現した。


パノラマ写真には、1stストリートとハワード・ストリートの交差点も写っている。そこには、ライフル用の銃弾を製造していた3階建ての工場があった。

Eadweard Muybridge/Bonhams

1869年から1871年までサンフランシスコ市長を務めたトマス・ヘンリー・セルビー(Thomas Henry Selby)氏が創業した「セルビー・ショット・タワー」 は、周囲を石畳の道や馬車で囲まれていた。1906年の地震による火災では、地下にあった200トンの金属が溶けてしまったため、作業員は金属を切らなければならなかった。


その交差点は今、サンフランシスコのダウンタウンの一部だ。Slackと投資会社BlackRockのオフィスがある。

Google Earth

市で最も高い超高層ビルであるSalesforce Towerは、約1ブロック先にある。Business Insiderのサンフランシスコ・オフィスも近くにある。


開業2年目のパレス・ホテルが写っている。それは、1906年の地震で破壊された。

Eadweard Muybridge/Bonhams

このホテルは建設当時、ほぼ1ブロックにおよぶ広さと約36mの高さで、圧倒的な存在感を誇っていた。


新しいパレスホテルは1909年にオープンした。外観は少し控えだが、内部は豪華だ。

Sergio TB/Shutterstock

直近では2015年に改装されたこのホテルには、大理石の床、クリスタルのシャンデリア、金色の廊下がある。第29代大統領のウォーレン・ハーディング(Warren Harding)氏は1923年にここで亡くなったが、彼の泊まったスイートルームは今では1泊2900ドル(約31万5000円)だ。


市役所の建物も地震で壊れてしまった。完成して7年しか経っていなかった。

Eadweard Muybridge/Bonhams

壊れた建造物は1916年に2300ドル(約25万円)で競売にかけられた(現在の価値で約5万3000ドル=約576万円)。


現在の市役所の建物は1915年に完成したが、玄関口やドーム、大きな柱など、旧庁舎と同じ構造や要素を継承している。

City of San Francisco

マリリン・モンロー(Marilyn Monroe)とジョー・ディマジオ(Joe DiMaggio)の結婚やハービー・ミルク(Harvey Milk)の暗殺など、この建物は歴史的な出来事を数多く目撃してきた。

サンフランシスコの近代的な建造物の多くがそうであるように、その設計は地震で失われた建物に敬意を払っている。


[原文:A vintage panorama of San Francisco in 1877 gives a rare look at the city before it was destroyed by an earthquake. The photos sold for $14,000.]

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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cat_oa-businessinsider_issue_d78583987b89 oa-businessinsider_0_4331f9d75571_直径30cmは小さすぎる! 超巨大トイレットペーパーを開発したP&G、さらに大きな「XLサイズ」を投入 4331f9d75571

直径30cmは小さすぎる! 超巨大トイレットペーパーを開発したP&G、さらに大きな「XLサイズ」を投入

2019年10月21日 10:30 Charmin

かなり大きい……。
Charmin

・プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は数カ月前、ミレニアル世代向けに最大3カ月もつ巨大なトイレットペーパー「チャーミン・フォーエバー・ロール(Charmin Forever Roll)」を発売した。
・小さいサイズのフォーエバー・ロールはあまり売れず、むしろ重さ約2ポンド(約0.9キログラム)の大きいサイズが人気だと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
・そこでP&Gは、50%増量した重さ3ポンドの商品を売り出した。
P&Gの巨大トイレットペーパーは、さらに大きくなっている。

小さいサイズでも通常サイズの約2倍ある「チャーミン・フォーエバー・ロール」を発売したP&Gは、大きいサイズよりもさらに大きい重さ3ポンド(約1.4キログラム)の「XLサイズ」を追加発売した。

P&GがXLサイズの発売に踏み切ったのは、消費者の90%以上がフォーエバー・ロールの大きい方のサイズ(直径12インチ(約30センチメートル)、重さ2ポンド)のトイレットペーパーを選んでいることが分かったからだと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

ちなみに、通常サイズのトイレットペーパーの直径は約5インチ(約13センチメートル)だ。

P&G ファミリーケアのイノベーション・ダイレクター、ロブ・レイナーマン(Rob Reinerman)氏は、「大サイズのロールはゆっくりと徐々に売れるようになるだろうと考えていました。消費者は小さい方から慎重に使い始め、時間とともに大きいサイズを選ぶようになると思っていたのです」とウォール・ストリート・ジャーナルに語った。

「完全に逆でした」

P&Gはフォーエバー・ロールを作るにあたって、自宅の収納スペースが限られている"都会暮らしのミレニアル世代"と"年配の消費者"を念頭に置いたという。

発売当時の広告は、「今は最大1カ月でトイレットペーパーを交換しなければならないでしょう」「フォーエバー・ロールなら、面倒なく交換時期が長くなります。ものすごく便利で長持ちするので、あなたが考えなければならないことが1つ減ります! 」とうたっていた。

フォーエバー・ロールには専用のハードウェアもある。

公式サイトでは、フォーエバー・ロールの「スターター・キット」も取り扱っていて、ステンレス製の独立型もしくは壁掛け型のペーパーホルダーとトイレットペーパー3ロールがセットになって30ドル(約3300円)で販売されている。

[原文:Charmin made a massive toilet-paper roll for millennials that lasts up to 3 months, and it wasn't big enough for them]

(翻訳、編集:山口佳美)

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cat_oa-businessinsider_issue_d78583987b89 oa-businessinsider_0_e3a39daa2ca9_「中国のニコ動」でフォロワー57万人。28歳が語る「中国市場での“勝ち筋”」 e3a39daa2ca9

「中国のニコ動」でフォロワー57万人。28歳が語る「中国市場での“勝ち筋”」

中国のSNSで累計約100万人のフォロワーを持つ、松浦文哉さん。1990年、広島生まれ。
撮影:西山里緒

「中国版ニコニコ動画」としても知られる、中国最大の動画投稿サイト「bilibili動画(以下ビリビリ)」。2018年にはアメリカのNASDAQ市場に上場を果たし、月間アクティブユーザー数(MAU)は1億1000万人を突破した。

そのビリビリで日本人として3番目に多い、57万人ものフォロワーをもつのが「ソンプー」の愛称で親しまれる松浦文哉さん(28)だ。松浦さんはなぜ、中国で“勝てた”のか?

你好と谢谢しか話せずに中国へ

「日中恋愛について」の動画には、自分の好きな芸能人を答える、という“お約束コメント”が。
出典:松浦文哉-SPWZ社長-(bilibili動画)

「大家好(皆さんこんにちは)!皆さんは日本人と恋愛したことがありますか?」
スクリーンの中から松浦さんが勢いよく語りかけると「有 菅田將暉(菅田将暉)」「有 石原里美(石原さとみ)」といったコメントが続々と流れていく。ふざけた表情をすれば「哈哈哈哈哈(ははははは)」の弾幕(同じコメント)が画面を埋め尽くす。

中国でKOL(キー・オピニオン・リーダー、日本でいうインフルエンサー)として知られる松浦さんは今、東京・浅草橋のオフィスから、数十万人の中国人ファンへ向けて動画を作っている。

これでのし上がろうとは全く考えていなかった ── そう語る松浦さんがKOLとなったきっかけは、数学教師を目指していた福岡の大学時代だった。訪日外国人が多く訪れるスポーツ施設でバイトした際に、中国に興味を持ちバックパッカーに。そこで「一度、冒険してみたい」と、中国で働こうと思い立つ。

日系メーカーやホテルなどを受けたが「面接に落ちまくりました。ニーハオとシェイシェイしか言えないんだから、当然ですよね」。3回ほど渡航を繰り返してようやく手にしたのが、日本語教師の仕事だった。

「帰国した日本人あるある」が大ヒット
転機はその数年後、2015年だ。日本語学校の生徒から、授業を撮影してネットに投稿してもいいか、とたずねられて知ったのが、当時まだ「違法アップロードされたコンテンツも多かった」ビリビリ動画。

投稿すると少しだがコメントや弾幕がついた。意味を生徒にたずねると「先生のことカッコいいって言ってるよ」。それを機に、日本文化について説明する動画を少しずつアップするようになった。

「中国に長くいすぎた日本人が日本に帰国したら」という動画。現在はシリーズ化している。
出典:松浦文哉-SPWZ社長-(bilibili動画)

当初は授業に来られない生徒に向けての目的が強かったため、企画も生徒の意見を参考にした。

「『なんで日本人の女の子は短いスカートを履くの?』と生徒から聞かれて。それを3人に聞かれたら、これは中国で一定の人が気になっているんだろうと」
もちろん、動画は本業の片手間だ。字幕は中国人の友人にごはんをおごる代わりに翻訳してもらった。次第に、のめり込んでいった。

なかでも数十万回再生のヒットを記録したのは、2018年2月に投稿された「中国生活に慣れすぎて帰国した日本人あるある」動画だ。アリペイが使えない、地下鉄が複雑すぎる、レストランで出てくる水が冷たすぎる、などをコント仕立てにすると、中国の視聴者に大ウケした。

気づけば小林製薬や全日空(ANA)など、中国に支社を持つ日本の大企業からも、スポンサード広告の依頼が舞い込むようになっていた。

帰国のワケは“工事の音”

kyoukan社長の石川淳さん(左)は、モデルとカメラマンをマッチングするサービスを運営していた。

現在、松浦さんのビリビリでのフォロワーは57万人。さらにweiboのフォロワーは22万人で、中国SNSでの累計フォロワー数は100万人を数える。

日々、KOLの勢力図が変化し続けている中国。

元AKB48の小嶋陽菜さんや乃木坂46の松村沙友理さんなど、ビリビリでチャンネルを開設する日本の芸能人はここ1年ほどで増え始めているが、いずれもフォロワーは数万人。中国ファンに受け入れられるのは容易ではないことがわかる。

日本人のインフルエンサーたちにもまだまだ可能性があると見て、現在松浦さんは自らの動画制作も行うかたわら、中国向けのKOLの育成・プロデュースも手がける。

2019年4月には、日本への帰国を決めた。きっかけは2018年末に参加したコスプレサミットだ。現在松浦さんが所属するプロダクション「KOL JAPAN」社長・石川淳さん(34)に声をかけられた。

石川さんは、インフルエンサーマーケティング企業を経営しており、自身が持つネットワークを中国に進出させる機会を探していた。

「僕のテーマは日中友好。日本人のKOLが増えれば日本に興味を持つ中国人も増えるはず。僕ひとりで発信するよりも、そのほうが効果的だと思いました」(松浦さん)
一方で帰国の理由には、中国ならではの事情もあったと松浦さんは明かす。

松浦さんが暮らしていたのは、日進月歩で開発が続く武漢。工事音がうるさ過ぎて、室内外問わず動画を撮影するのが難しくなっていたのだ。日本ならもっとクオリティの高い動画が撮れると、7年住んだ武漢を去ることを決めた。

日本人が中国進出するならビリビリがいい

8月には「山P」こと山下智久さんがweiboでアカウントを開設するなど、日本の芸能人の“中国進出”は加速している。
出典:山下智久_Yama-P(weiboより)

キムタクに山Pにと、中国のSNSアカウントを開設する芸能人はここ1年ほどで激増した。しかし松浦さんは「日本人が進出するなら、どのプラットフォームよりもビリビリから始めるのが良い」と断言する。

アニメや漫画も配信されているビリビリには、そもそも日本好きのユーザーが多いからだ。

松浦さんがプロデュースした中でヒットしたのは、日本でモデル・グラビアアイドルとして活動する熊江琉唯さん。9歳まで四川に住んでいた熊江さんは、堪能な中国語を活かして、松浦さんとの“コラボ動画”にも出演。約20万再生を記録している。


「中国人のKOLはツンケンしている人が多いけれど、熊江さんはスッピンを公開したり、自室を見せてしまったりと、ファンとの距離がすごく近い」。ここに日本人の勝ち筋があると、松浦さんはみている。

トレンドの移り変わり激しく、さらに広告の“ウソ”が見抜かれやすい時代に、日本発、中国で“勝てる”インフルエンサーは出てくるのか……。市場競争は、これからますます激化しそうだ。

(文・写真、西山里緒)


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cat_oa-businessinsider_issue_d78583987b89 oa-businessinsider_0_b54f78aa1d57_“国内300万加入”ネットフリックスが狙う「次期 日本戦略」……世界1.6億人加入目前も楽観は程遠い b54f78aa1d57

“国内300万加入”ネットフリックスが狙う「次期 日本戦略」……世界1.6億人加入目前も楽観は程遠い

撮影:西田宗千佳

10月16日(アメリカ現地時間)、ネットフリックスは、2019年第3四半期(7月~9月)の決算を発表した。

売り上げ・加入者とも過去最高を更新し、好調といえる内容だ。

売上高は52億ドル(5637億円)を突破して、前年同期比31%増。営業利益は10億ドル(1084億円)と、こちらも倍増している。有料加入者数は1億5800万人を超え、このペースでいけば、2019年度中に1億6000万人を超えることが確実な状況まできた。

とはいえ、同社が楽観できる状況にあるか、というとそうではない。

11月には、ディズニーやアップルが新しい動画配信サービスの立ち上げを計画しており、競合状況が変わるからだ。

競合が増える中、ネットフリックスはどうなるのか? そして、日本市場がどう変わるかを考えてみよう。

11月から競合増加で映像配信は「騒がしくなる」

ネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEO。書籍『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』の中でも、その特異な個性が言葉を重ねて語られている。2019年3月「Netflix Labs Day」にて撮影。
撮影:西田宗千佳

株主向けニュースレターの中で、同社は「競合の新サービスの立ち上げにより、市場は少々騒がしくなるだろう(will be noisy)」と書いている。

四半期決算の概要を説明する「Letter to Shareholders」の競合環境について語った一文。新たに開始する他社新サービスによって、少々騒がしくなるだろう、としている。
出典:ネットフリックス

アップルは11月1日から「Apple TV+」をスタートし、ディズニーは11月12日から「Disney+」をスタートする。両者とも武器は「安さ」だ。Apple TV+は4.99ドル(日本では600円)、Disney+は6.99ドル(こちらは日本でのサービス開始時期は未定)で、ネットフリックスが8.99ドルから(日本では800円から)と、若干安いのだ。

AppleTV+を発表した3月のスペシャルイベントでの一コマ。左のティム・クックCEOと抱擁しているのは、アメリカの有名人、オプラ・ウィンフリー氏。
撮影:西田宗千佳

11月になるとアメリカではサービス競争が加熱するだろう……との読みなのだが、ネットフリックスは、実はそこまで競合対策を強く押し出していない。だから「少し騒がしくなる」という表現に留めているのだ。

なぜなら、彼らは「ストリーミングはまだ伸びしろがある」と思っているからだ。

株主向けニュースレターの中で同社は、「全米のテレビ視聴時間のうち、ストリーミングが占める割合は10%以下。(スマートフォンなど)モバイル市場ではもっとずっと低い」と説明している。「映像を見る」という時間の中でストリーミング配信が占めるべき割合はもっと高く、成長できるのであれば、競合とのパイの取り合いは大きな問題ではない……という発想だ。

これは彼らが従来から主張していることで、大きな変化はない。また、ケーブルTVに比べ安価であるということ、1社ですべてのコンテンツ需要を満たせないという事情から、ストリーミング配信は「1社総取り」ではなく、1つの家庭が複数のサービスを利用する「複数社併存」になる。いままでも、ネットフリックスとAmazon、Huluは共存してきた。

「生き残るのか」ではなく「いかに外されないか」の戦い
ただしそろそろ、家庭内での椅子取り合戦は限界だ。すべてのサービスに加入する人はごく少数だ。ネットフリックスの言う「騒がしさ」とは、1社が選ばれる競争ではなく、家庭で契約される「2、3のサービスの中に残れるか」の争いなのだ。これはネットフリックスの言うほどたやすい戦いではない。

勝負のカギは当然コンテンツだ。だからこそ、ネットフリックスは株主向けニュースレターの中で、好調なオリジナル作品の名前を多数挙げ、積極的にアピールしている。その中には、日本で制作され、8月の公開後に話題となった「全裸監督」も含まれる。「全裸監督」は「日本で公開されたものとしては最大級のヒットとなり、特にアジアで大きな成功を収めている」とされている。

勝算あり。「国内300万加入」で衛星放送に並んだ

カリフォルニア州ロスガトスのネットフリックスのオフィス。
Shutterstock

ただ、当面混迷するのはあくまで「アメリカ市場」のこと。アメリカ市場はすでに頭打ちで、パイの奪い合いという状況だからだ。ネットフリックスの伸びは、すでに90%以上がアメリカ市場以外でもたらされている。

ネットフリックスが進出している国の中でも伸びが顕著とされているのはインドだ。インドではテレビ以上に、スマートフォンを中心としたモバイルでの視聴が伸びており、特に、第3四半期に低価格なモバイル視聴向け料金プラン導入したことがヒットにつながったという。

チーフ・プロダクトオフィサーのグレッグ・ピーターズ氏。今のポストにつく以前は日本法人の社長をつとめていた。2019年3月「Netflix Labs Day」にて撮影。
撮影:西田宗千佳

では日本はどうか? 今回の発表では特に大きく言及されていないが、9月6日に開催したプレス向けイベント「Netflix HOUSE:TOKYO 2019」にて、同社チーフ・プロダクトオフィサーのグレッグ・ピーターズ氏は、「日本での会員数がざっくりとした数字として、300万人を超えた」と公表している。

実は同社はこれまで、アメリカ以外の特定の国での加入者数をほとんど公表せずにきた。日本も同様で、2015年秋の日本市場参入以降、加入者数については「ノーコメント」を貫いてきた。

そのため、「鳴り物入りの参入だった割に、加入者は少ないのでは」ともささやかれていた。今回「300万」という数字を公開したのは、一定の数が得られたことをアピールすることで、そうした懸念を払拭する狙いがある。

300万という数字は、ネットフリックスの「1億5800万」というユーザー数から見れば非常に少ない数字に思える。だが、こと日本の映像ビジネスで考えると、この数字はかなりのものだ。

有料の衛星放送である「スカパー!」の加入者数が約327万件、「WOWOW」の加入者数が約289万件であることを思えば、その規模感がイメージしやすいと思う。日本は伝統的に「無料の地上波放送」が強く、次に「無料のBS放送」が強い。毎月映像を見るためにお金を払う、という市場はなかなか大きく育ってこなかった。その中での300万という数字は、映像配信市場の成長を実感できる、大きなものだ。

競合サービスも数字を示していないため、ネットフリックスのシェアは正確にはわからない。だが、各種市場調査やコンテンツ提供元からの情報を総合すると、「Amazon Prime Video」が500万から600万の利用者を抱えていてダントツの状況で、そこに日本テレビ系の「Hulu Japan」が続く、と見られている。

現状、ネットフリックスはHulu Japanを抜いて2位になっている可能性も高い。

好調の背景に「通信会社の提携」?今後の決め手は……

KDDIとの提携による、いわゆる「ネトフリプラン」は成功例としてグローバルで語られるようになってきた。
撮影:小林優多郎

では、日本での今後の市場動向はどうか?

ポイントは「いかにお得感と露出を増やすか」にある。おそらく日本は、アメリカほど多数の事業者が併存できる環境にはならない。

アメリカなら3つ、4つとサービスに加入してくれる可能性があるが、日本ではせいぜい1家庭で2つ、というところではないか。そうすると、「よりコンテンツがあって」「よりお得意」なサービスに収斂する可能性が高い。

Amazon Prime Videoが強いのは、通販をお得に使える年額会員サービスである「Amazon Prime」の一部であるからだ。映像配信だけに加入するよりも割安感があり、結果的に利用者が増えている。

KDDIは9月の新料金発表会のなかでもネットフリックスプランがあることを「ポイントの1つ」としてあげていた。手応えを感じていることのあらわれだろう。
撮影:伊藤有

ネットフリックスが加入を増やした背景には、2018年からKDDIと提携し、携帯電話サービスとバンドルしたプランを用意したことと無関係ではなさそうだ。

KDDI側も「解約率が低く満足度が高い」(同社髙橋誠社長)とコメントしており、ネットフリックスも株主向けニュースレターの中で、「通信事業者とのコラボレーションの成功例」として挙げているほどだ。携帯電話販売店で拡販できること、結果として割安感を演出できることなど、メリットは大きい。

国内ケーブルTV事業の大手であるジュピターテレコムもネットフリックスと提携し、今冬には連携したサービスメニューの提供を開始する。

これまで日本では、日本テレビ系のHulu Japanやフジテレビ系の「フジテレビオンデマンド」などの知名度が高かった。地上波という浸透度の高いメディアを使える上に、地上波のコンテンツを活用できたからだ。だが、特に若者を中心に、テレビの影響力は落ちている。スマホを起点にした「Abema TV」などの無料サービスとの競合もある。

そうすると、ここからの戦いのポイントは「お得さの周知」が重要であり、大手携帯電話事業者とケーブルTV事業者を押さえたのも、ネットフリックスがそうした部分を重視したからではないか……という分析が成り立つ。

(文・西田宗千佳)

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