イーロン・マスク、重大な決断の前に自分に問う6つの質問

イーロン・マスク氏はアイデアを出すとき、問題を解決するとき、事業を始めるか否かを決めるときに必ず6つの質問をする。

・イーロン・マスク氏は大きな決断の前には、必ず自分に6つの質問をする。
・このやり方を、自己流の科学的な方法として活用している。
発明家でエンジニアであるマスク氏は、4つの10億ドル規模の会社の立ち上げに成功している。ペイパル、ソーラーシティ、スペースX、テスラだ。その際、そして複雑な問題に取り組む際、マスク氏はいつも同じアプローチをとるとローリング・ストーンで語った。

「科学的な方法だ」とマスク氏。「分かりにくいことを理解するために極めて有効な方法だ」

マスク氏が語った方法とは以下のようなものだ。

・「(自分に)質問する」
・「可能な限りの証拠を集める」
・「証拠に基づいて原理を打ち立て、その原理が正しいかどうかを検証する」
・「決断のために、説得力のある結論を導き出す。そのために、原理が正しいか、適切か、結論は必然的なものか、確率はどのくらいかを検証する」
・「結論に反論する。結論を論破するために、誰かの反論を探す」
・「結論を論破できる人が1人も見つからなかった場合、結論は正しい可能性が高い。だが必ずしも正しいとは限らない」
マスク氏は、アイデアを出すとき、問題を解決するとき、事業を始めるか否かを決めるときに必ず、この6つの質問を使う。同氏はこうした証拠に基づいた決断方法を重視し、事実と考えを区別できない人を批判している。

多くの人は「これは正しい、なぜなら私がこれが正しいと言ったから」という方法を取っているとマスク氏。

「極めて非科学的だ」

アマゾンのCEOジェフ・ベゾス氏も、決断の際には常に同じ方法を使っている。2016年の株主宛ての文書で、ベゾス氏はタイプ1とタイプ2の決断を区別していると述べた。

タイプ1の決断とは、「帰結的、不可逆的のなもの。つまり、一方通行のドアのようなもの。このタイプの決断は入念でなければならない」とベゾス氏。

タイプ2の決断とは、「変更可能、元に戻すことが可能なもの。つまり、行き来自由なドアのようなもの。このタイプの決断は権限のある人、あるいは少人数のグループが素早く行うべき」。

[原文:Elon Musk asks himself 6 questions before every major decision at Tesla and SpaceX]

(翻訳:まいるす・ゑびす)

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22日開幕! 世界のリーダーや王室関係者が集結するダボス会議、その顔ぶれとは

ロシアのプーチン大統領は?
Reuters

・1月22日からスイスのダボスで開かれる世界経済フォーラムの年次会合には、世界中のリーダーが集結する。
・2019年のテーマは、よりインクルーシブな社会と脆弱なコミュニティーに対するより良い保護を促進する「グローバリゼーション 4.0」だ。
・国内の対立を生んでいる問題に対応するため、多くの主要国のリーダーが会議を欠席することは、皮肉と言えよう。
政界、ビジネス界の大物が今週、世界経済フォーラムの年次会合に出席するため、スイスのダボスに終結する。

現地は大雪で混乱しているかもしれないが、会合は「グローバリゼーション 4.0」というテーマの下、冷静な連帯というメッセージを発信しようとしている。

シンプルに言えば、よりインクルーシブな(全てを受け入れるような)社会づくりと脆弱なコミュニティーに対するより良い保護について検討する予定だ。

しかし、アメリカのトランプ大統領やフランスのマクロン大統領が国内の対立を生んでいる問題に対応するため、ダボス行きをキャンセル。会合のメッセージはすでにリスクにさらされているのかもしれない。

トランプ大統領はメキシコとの国境沿いの壁をめぐる政府機関の閉鎖問題に、マクロン大統領はいわゆる「黄色いベスト運動」に対応中だ。

しかし、その一方で多くの世界のリーダーや王室関係者がダボス会議に出席する。出席者の顔ぶれを紹介しよう。


Kai Pfaffenbach/Reuters


日本の安倍晋三首相

Kim Hong-Ji-Pool/ Getty Images


中国の王岐山国家副主席

Reuters

サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、王国家副主席がダボス会議の中国代表団を率いるという。つまり、習近平国家主席は出席しないということだ。


イギリスのウィリアム王子

REUTERS/Peter Nicholls


ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領

Adriano Machado/Reuters

ボルソナロ大統領は2018年10月に当選したばかり。つまりダボス会議が初めての国際舞台となる。「全ての国と貿易をし、経済の自由、二国間合意、財政バランスを尊重するという我々の願いをわたしは示す。こうした柱とともに、ブラジルは完全雇用と繁栄に向かう」と、大統領は言う。


イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相

REUTERS/Ronen Zvulun


ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相

Hannah Peters/Getty


イタリアのジュゼッペ・コンテ首相

Reuters/Remo Casilli


オーストリアのセバスティアン・クルツ首相

Thomas Kronsteiner/Getty Images


アイルランドのレオ・バラッカー首相

Sean Gallup/Getty Images


スペインのペドロ・サンチェス首相

Reuters


南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領

Reuters


オランダのマルク・ルッテ首相

Jack Taylor / Getty


イラクのバルハム・サレハ大統領

Reuters


アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領

REUTERS/Mohammad Ismail


ノルウェーのエルナ・ソルベルグ首相

NTB Scanpix/Vegard Wivestad Groett/ via REUTERS


ジンバブエのエマーソン・ムナンガグワ大統領

Dan Kitwood/Getty


コロンビアのイバン・ドゥケ大統領

REUTERS/Luisa Gonzalez


ベルギーのシャルル・ミシェル首相

Piroschka Van De Wouw/Reuters


オランダのマキシマ王妃(開発のための包括的金融に関する国連事務総長特別提唱者でもある)

Reuters


アメリカのトランプ大統領は、欠席者の1人だ

AP

トランプ大統領は最近まで出席する予定だったが、政府機関の閉鎖に対応するため、1月11日(現地時間)に欠席するとツイートした。


フランスのマクロン大統領も出席しない

Yves Herman/Reuters

いわゆる黄色いベスト運動への対応など、国内問題の対応で忙しいマクロン大統領はダボス会議を欠席する。


イギリスのテリーザ・メイ首相も、国内対応で忙しい

Getty

メイ首相もダボス会議には出席しない。3月29日のEU離脱までに、イギリスの首相にはやらなければならないことがたくさんある。


ロシアのプーチン大統領は?

Thomas Kronsteiner / Getty Images

クレムリンは、プーチン大統領がダボスへ行く可能性を示していた。ロシア・トゥデイ(RT)によると、世界経済フォーラムの会合にプーチン大統領は出席するのかと尋ねられたペスコフ大統領報道官は、その可能性を排除しなかった。


[原文:Here are the major world leaders and royals going to Davos next week — and those staying at home]

(翻訳、編集:山口佳美)

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「日本一画数の多い漢字」を使う店はラーメン屋 ── アドビが東アジア共通フォントを開発する理由

アドビとグーグルの共同開発で生まれたフォント「源ノ角ゴシック」に収録された、日本最大級に画数の多い漢字「ビャン」(写真上)、「タイト(オトド)」(写真下)。
出典:アドビ

「日本一画数が多い漢字は?」

この質問にスムーズに答えられる人は多くないだろう。さまざまなクリエティブツールの中で、フォントライブラリーも提供するアドビによると「タイト(雲を3つの下に龍を3つ書いたような字)」が84画で日本最多画数の漢字とのこと。

Adobe Fontsは、同社のCreative Cloud製品を契約していれば、1万5000種類を超えるフォントが追加料金なしで利用できる。
出典:アドビ

アドビは2018年11月、オリジナルフォント「源ノ角ゴシック」(Source Han Sans)のバージョン2にこの「タイト」と、57画の「ビャン」を追加している。

では、日本最多画数の漢字は一体どこで活用されているのか。どちらの漢字も、現状ではOS標準のIMEでは読み仮名からの変換はできず、特殊な方法を使って入力する必要があるなど、かなり“敷居の高い漢字”となっている。

しかし、源ノ角ゴシック登場前から日本でこれらの漢字を使っている店舗があるという。そこで、アドビによる紹介のもと、実際の漢字を使っている2店舗に行ってみた。共通項目はなんと「ラーメン」だった。

「ビャン」唯一の利用例は、西安発祥のビャンビャン麺

東京都中央区にある「西安麺荘 秦唐記」。

「ビャン」という文字はそもそも日本の常用漢字ではない。もっと言えば、中国でさえ全く常用されていない。アドビによると、確認できる限り、唯一使われているものは、西安(シーアン)で広く食べられている麺の一種「ビャンビャン麺」とのこと。

そこで、最初に向かったのは2018年9月にオープンしたばかりで、東京都中央区にあるビャンビャン麺専門店「西安麺荘 秦唐記」だ。

店のメニューにも「ビャン」の文字。

店頭には「ビャン」の読み方や書き方が掲示されている。

こちらが店イチオシの「全盛り麺」(1050円)。メニューにあるヨウポー麺、トマト麺、ジャージャー麺の要素をすべて入れたもの。

ランチを除き、各メニューではビャンビャン麺の太さが選べる。今回食べたのは店で最も太い「ベルト麺」。

秦唐記の社長・小川克実氏は中国出身だが、自身も「ビャン」という字もビャンビャン麺も、現在も店で一緒に働く料理人から聞くまで知らなかったという。小川氏によると、「ビャン」の文字の由来は諸説あるそうだが、「ビャンという文字自体に意味はなく、あくまでビャンビャン麺のための文字で、麺を伸ばす際に発せられる音から来ているのではないかと思う」と話している。

秦唐記では、注文を受けてから麺を延ばす。調理場はガラス張りとなっており、料理人が延ばしている様子を見ることができる。

秦唐記には、日本人向けにカスタマイズした味と、西安で食べられている味そのままのメニューの両方が用意されている。フォントマニアだけでなく、中華麺好きであればぜひ行って見たい料理店と言える。

「タイト」は餃子で人気のおとど食堂で発見

千葉県市川市にある「餃子楼 おとど餃子食堂 本八幡店」。

続いて向かったのは、千葉県市川市にある「餃子楼 おとど餃子食堂 本八幡店」。実は、日本最多画数の漢字「タイト」は「オトド」とも読む。おとど餃子食堂には店名を使った餃子や麺料理が存在する。

こちらが人気メニューの「肉汁おとど餃子」。

肉汁おとど餃子は、にんにくは青森産、しょうがは高知産、キャベツは群馬産のものを使うなど、こだわりの食材でできており、非常に優しい味のする餃子だった。

こちらが「夜鳴きそば」。海苔には「タイト(オトド)」の文字が印字されている。本八幡店では、通常この海苔は付属しないそうだが、今後提供を予定しているという。

肉玉そば おとどグループ店主の越智雄一氏は、ラーメンのノウハウを教わった自身の師匠から「オトド」の字も受け継いだと語る。店名にした理由は、字体のデザインから「雲をかきわけて天に昇る龍のような、日本一のラーメンなどを提供できる店」(越智氏)を目指しているという。

「タイト(オトド)」の文字には、強い思い入れがあった。

夜鳴きそばの海苔や店頭に使われている「オトド」の文字は、創業当時は入力できなかったため、既存のフォントで「雲」と「龍」を打ち、同社のデザイナーが幅や字間を調節してつくりあげた。越智氏は、源ノ角ゴシックでの「おとど」対応により、店頭で使っているロゴの差し替えを「検討したい」と語っている。

なお、肉玉そば おとどのロゴはゴシック体ではなく、セリフやウロコ(字体の払いや止めのようなデザイン)のある明朝体を使っている。取材に同席していたAdobe Fontsのチームは、越智氏の話を聞き、源ノ角ゴシックと同じくアドビとグーグルが開発した源ノ明朝(Source Han Serif)でも「タイト(オトド)」と「ビャン」の文字を収録予定であることを明らかにした。

源ノ角ゴシックや源ノ明朝、その利用シーンは?

写真左からアドビ システムズの日本語タイポグラフィ シニアマネージャーである山本太郎氏、同チーフ タイプデザイナーの西塚涼子氏、同シニア フォントデベロッパーの服部正貴氏、そして肉玉そば おとどグループ店主の越智雄一氏。

「ビャン」や「タイト」は正直極端な例ではあるが、同社は長年、クリエイティブツールの開発だけではなく、日本語フォントの開発にも力を入れている。

源ノ角ゴシックや源ノ明朝ファミリーは、前述のようにグーグルと共同開発したオープンソースの書体であり、東アジア地域(日本、中国、香港、台湾、韓国)での利用を想定したフォントだ。

では何故、東アジア地域に共通したフォントが必要なのか。同社の日本語タイポグラフィ・シニア マネージャーの山本太郎氏は、グローバルでのデザイン作業にメリットがあると語る。

「例えば、自動車のパンフレットなどで各国の言葉を併記する必要があるとき、昔はそれぞれの言語に応じたフォントを選ぶ必要があった。ただ、そうすると書体のデザインがそれぞれ異なるため、太さが合わないなどのデザインの統一性がなくなっていた。
その点、源ノ角ゴシックや源ノ明朝を使うと、各国の言語で入力してもフォントのデザインポリシーは統一されているため、(中国の)繁体字だろうが、簡体字だろうが、日本語だろうが一貫性を保つことができる」(山本太郎氏)
日本一画数の多い漢字の収録でSNS上などで注目を浴びた源ノ角ゴシックや源ノ明朝だったが、シリーズやグローバルビジネスには欠かせないフォントの1つであることがわかった。

(文・撮影・小林優多郎、取材協力・アドビ システムズ)

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日産・ルノー問題で始まった仏政府の波状攻撃——仲介役ゴーン氏を見切り

フランス政府が日本政府関係者に対し、共同持ち株会社方式を軸にルノーと日産自動車を経営統合する意向を伝えたことが報道などで明らかとなった。

「ゴーン容疑者が起訴され、有罪になるか、もしくは無罪になるかわからない。しかし時間がかかることは間違いない。仏政府はそんな人物に経営統合を委ねている暇はないということなのだろう」(関係者)(写真は2019年1月、フランス北東部サン・タヴォルで撮影された両社の看板)
REUTERS/Christian Hartmann

筆者は昨年、カルロス・ゴーン容疑者がルノー最高経営責任者(CEO)を続投することになった際、「これは単なるトップ人事ではなく、仏政府がルノーと日産の一体化を進めるという意思表示だ」と書いたが、いよいよフランス政府が前面に立つことになった。

関連記事:ゴーン逮捕はなぜ今なのか——ルノー・日産の経営統合との関係は

仲介役のゴーン氏に見切り
そもそも仏政府は2015年頃からルノーと日産の経営統合を求めてきた。それがはっきりとした形で表面化しなかったのは、ゴーン容疑者が仏政府の意向に猛反発していたためだ。

ところがゴーン容疑者はルノーCEO続投と引き換えに、仏政府の意向に従うことにした。それがゴーン続投の真相であると指摘したのである。

しかし、仏政府の当初のシナリオは崩れた。ゴーン容疑者が逮捕されたからだ。事実上のエージェントを失った仏政府は混乱、一時は思考停止に陥った形跡がある。逮捕を契機に日産と三菱自動車がゴーン容疑者を解任したのに対し、ルノーの筆頭株主である仏政府はゴーン容疑者のCEO続投を容認した。

しかし、立て直しは早かったというべきだろう。報道によると、仏政府はゴーン容疑者のルノーCEO解任に舵を切ったという。これと前後して経営統合の意向を日本政府関係者に伝えた。

国家間問題に格上げしたい仏政府

2018年11月、パリで開かれた会合に出席するブリュノ・ルメール仏財務大臣と世耕弘成・経済産業大臣。
REUTERS/Charles Platiau

つまりゴーン容疑者を仲介役にしてきたこれまでの戦略には見切りを付け、仏政府が経営統合を進めるという新たな戦略に出たわけだ。

「ゴーン容疑者が起訴され、有罪になるか、もしくは無罪になるかわからない。しかし時間がかかることは間違いない。仏政府はそんな人物に経営統合を委ねている暇はないということなのだろう」

と関係者は言う。

注目しなければならないのは、前面に出てきた仏政府のスタンスだ。単にルノーの筆頭株主という立場なら、今後の交渉相手はあくまで日産。しかしそうではあるまい。仏政府は国家間の問題に引き上げようとしている。傍証はいくつかある。

一つはフランス司法当局の動きである。仏司法当局は1月11日、2020年の東京五輪・パラリンピックの招致活動を巡り、招致委員会の理事長だった竹田恒和日本オリンピック委員会(JOC)会長が汚職に関与した疑いがあるとして、本格捜査に乗り出した。

各メディアは確証がないから「仏政府によるゴーン容疑者逮捕の報復措置かもしれない」と可能性を指摘するにとどめているが、これが仏政府による「そっちがその気なら、こっちにも考えがある」という動きであることはほぼ間違いない。それはこんな話があるからだ。

2019年1月、フランス南部で開かれた会合で多くの市長たちを前に演説するマクロン大統領。
Ludovic Marin/Pool via REUTERS

仏司法当局が竹田JOC会長の本格捜査に乗り出すとした1月11日、仏西部のブレストで日仏の外相・防衛担当閣僚協議会(2プラス2)が開かれた。同会合に出席した河野太郎外相と岩屋毅防衛相はその後、仏大統領を表敬訪問している。

その場でのやり取りは公になっていないが、関係者によるとマクロン大統領は日産・ルノー問題に言及した。

「マクロン大統領は罪を犯したのかはっきりしないのに長期間勾留するというのは如何なものか。日本は『推定有罪の国』なのかと言った。河野外相も岩屋防衛相は黙って聞いているしかなかった」(前出の関係者)

日本政府は「国の介入はあり得ない」
話を整理しよう。マクロン大統領がゴーン容疑者の長期勾留を非難したその日に、司法当局はオリ・パラ招致疑惑で本格捜査に乗り出すことを明らかにした。その1週間後に日産とルノーの経営統合を持ちかけている。

日産とルノーの経営統合問題がくすぶっている最中にゴーン容疑者は逮捕された。国策捜査ではないのかという批判に、日本政府は「民間企業の経営問題に国が介入することはあり得ない」と主張、経営統合問題と逮捕は無関係だという立場を取り続けている。

そんな日本政府=経済産業省に仏政府は波状攻撃を仕掛け、リングに上げようとしている。経産省はいつまでも「知らぬ顔の半兵衛」を決め込んではいられまい。

悠木亮平(ゆうき・りょうへい):ジャーナリスト。新聞社や出版社で政官財の広範囲にまたがって長く経済分野を取材している。

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テスラは自動車業界に影響を与えている? 大きな誤解だ。

2019年1月21日 10:45 Matthew DeBord/BI

テスラ モデル3。
Matthew DeBord/BI



・テスラはずっと、伝統的な自動車業界に影響を与えていると考えられてきた。
・テスラはある種の影響を及ぼしてきた。だがそれは業界の大きな動きの中では、比較的小さなこと。
・自動車メーカーのエグゼクティブは、さまざまな問題に忙しく取り組んでおり、テスラに頭を悩ませる暇などない ── もし、テスラが本当に影響力を発揮してきたなら、既存の自動車メーカーは即座に大量のEVを作り、販売するだろう。
もしあなたがテスラと、テスラのニュース、噂、憶測、そしてツイッターでの発言にまつわる絶え間ない騒ぎを追っているなら、昨年、25万台をようやく販売できた、比較的小さな生まれたばかりのカリフォルニアの会社を自動車業界すべてが必死になって追いかけているように思うかもしれない。

これはまさにテスラの「現実歪曲空間」。とはいえ、CEOイーロン・マスク氏だけのせいではない。テスラ・ファンは集団として、ドラマチックなほどに大げさだ。

私はデトロイトモーターショーに行ってきた。現地で自動車メーカーの多くのエグゼクティブと話をしたが、「テスラ」の名前は一度も出てこなかった。テスラはデトロイトモーターショーに出展していない。これまでもモーターショーに出展したことはない。なぜか?

テスラは3車種しか販売していない。ショーに展示できる車種の約半数 ── 新しいロードスター、トラック、ピックアップはまだ生産前、もしくはコンセプト段階だ。

テスラのことを心配している暇などない

キャデラックのEVプラットフォーム。
Cadillac

全体的に見て、自動車業界はテスラのことを心配しなくても、うまくやっているし、取り組むべき大きな問題が数多くある。

アメリカの自動車販売台数は2018年、再び、記録的なレベルとなった。ユーザーに最も人気の車 ── SUVとピックアップトラックはまた、最も利益率の良い車でもある。

だがGMは事業の積極的な拡大に務め、採算の悪い工場を閉鎖し、自動運転車とEVへの投資を拡大している。フォードは思い切ったリストラクチャリングを進め、フィアット・クライスラー・オートモービルズは昨年、CEOのセルジオ・マルキオンネ氏が突然死去したことを受け、新たな指導体制の構築に取り組んでいる。そして日産の元会長、カルロス・ゴーン氏は東京拘置所に勾留されたまま。

テスラの影響についての過大な予測は、実際、自動車業界にとって、まだ深刻な痛みにはなっていない。だが、その誇張された影響力はより大きくなり、ある時点では深刻なものになる可能性がある。

真実は、テスラは自動車業界が必要としたり、真似したくなるようなことはほとんど行っていないということ。

現時点では、テスラが及ぼしたと思われる大きな変化は、GMとフォードが販売データを月次ではなく、四半期ごとに発表するようになったこと。本質的に会計の問題だ。

EVは実は簡単

GMは2016年、シボレー・ボルトを発表、約1年で市場に送り出した。
Bill Pugliano/Getty Images

EVはエンジニアリングの観点から見れば、さほど難しいものではない。GMが、長い航続距離を誇るマスマーケット向けEV、シボレー・ボルトを約1年で開発、製造、販売できたことが何よりの証拠。ボルトは2016年後半から発売されている。EVのポイントはバッテリーとモーター、その2つだけと言っていいだろう。

テスラのソフトウエアとインフォテイメントシステムは注目を集めている。だが自動車のコア要素ではない。テスラは2018年、明らかにそのことを学んだ。同社は自動車の大量生産の基盤づくりに悪戦苦闘した。既存メーカーが1980年代には完成させたことだ。

デトロイト(アメリカの自動車業界)はEVに関して素晴らしい発表を行った。

デトロイトモーターショーから届いた2つのビッグニュースは、GMがキャデラックを同社のEV化を先導するブランドとすると決定したこと、フォードがベストセラーのピックアップトラック、F-150のEVバージョンの開発を発表したことだ。

テスラ・ファンが見逃しがちなことは、EV化(電動化)は大手自動車メーカーにとって明らかに簡単なことだということ。

だがテスラにとっては難しかった。なぜなら、テスラは15年の歴史しかなく、車を相応のボリュームで生産した期間はたった3年のみ。毎年、数百万台におよぶ、さまざまなタイプの新車を消費者に提供するには、長い経験と実績の蓄積が欠かせない。

テスラの強みはアップルと同じように、既存のアイデアを改良することにある。

10年前、テスラはバッテリーを改良した。車のソフトウエアを初めて通信でアップデートし、ラグジュアリーEVのデザインと性能を確立した。そして急速充電ステーションのネットワークを拡充することが、十分なEVのセールスにつながることを証明した。

誤解しないで欲しい、テスラは偉大な企業

テスラCEO、イーロン・マスク。
Patrick Fallon / Reuters

もちろん、既存の自動車業界はEVに注目している。だがその一方で、テスラは自動車メーカーのエグゼクティブたちが眠れなくなるようなことは何もしていない。

自動車業界には、ガソリン価格、与信状態、為替レート、予期せぬ地政学的リスクなど、自分たちではコントロールできないことが存在する。そしてさらに、トランプ大統領もいる。

もしテスラが実際に、メーカーのエグゼクティブたちがぐっすり眠れなくなる状況を生み出したなら、その時、エグゼクティブたちが行うことはシンプルなこと ── EVをたくさん作ることだ。自動車メーカーができること、1世紀もの間やり続けてきたことは、自動車を作ること以外ない。

既存の自動車メーカーはテスラとの競争にはまだ積極的ではない。競争にはコストがかかる。

フォードとGMはピックアップトラックで競争している。だが両社は同時に、毎年、利益率の高いピックアップトラックを相当な量、販売している。そして、今後長い間、それを続けたいと考えている。彼らはゲームの本質を良く理解している。

一方、利益率が低く、あまり販売量が見込めないEVに力を入れすぎることは、お金を無駄にすることにつながる。

環境面から見れば、既存の自動車メーカーが自社の車をすべてハイブリッド化することはとても良いことだろう。しかし残念ながら、テスラが大きな影響力を発揮すれば、拡大したハイブリッド市場は弱体化し、ユーザーはより高価なEVを購入しなければならなくなる。

誤解しないで欲しい、テスラは素晴らしい企業だ。素晴らしい車を作り、人気のあるEVブランドを作り上げ、自動車業界の誰もが可能とは思わなかったことを成し遂げた。

だが自動車業界に根本的な影響を与えているだろうか? まだだ。

[原文:Everyone who's telling you that Tesla is influencing the rest of the auto industry is completely wrong]

(翻訳、編集:増田隆幸)

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金融政策を楽しく学ぼう! ジャマイカの中央銀行が採用した、ちょっと変わったPR動画が話題に

2019年1月21日 10:30 The Bank of Jamaica

The Bank of Jamaica

・ジャマイカの中央銀行は、インフレや金融政策に関する複数の動画をツイッターに投稿している。
・ジャマイカは近年、多額の債務に取り組んできた。
・これらのキャンペーン動画は、教育的だが一風変わった、楽しいものとなっている。
「経済にとっての低くて安定的なインフレは、レゲエ音楽にとってのベースライン」

「インフレはコントロールすれば敵じゃない。高くなり過ぎると人々が泣く」

これはジャマイカの中央銀行がここ数週間、インフレや金融政策、経済に関する理解を深めてもらおうと、ツイッターに投稿している動画の歌詞の一部だ。

動画は、インフレがいかにさまざまな面で経済に影響を及ぼすか、中央銀行がインフレ抑制のためにどのような取り組みをしているか、なぜジャマイカ国民が知っておくべきなのかといったテーマで作られている。ジャマイカ銀行は2018年12月、指標金利を0.25%低い1.75%に引き下げ、その月の金融政策評価でインフレターゲットは2019年後半から2020年前半にかけて、下限の4~6%を下回る可能性があると述べた。

キャンペーン動画はジャマイカ銀行の広報責任者、トニー・モリソン(Tony Morrison)氏が手掛けたとQuartzが報じている。

ジャマイカは近年、多額の債務に取り組んできた。AP通信によると、ジャマイカの公的債務の多くは、不良債権と「1990年代半ばに複数の銀行が破たんした際、危機を乗り切ろうと」政府が躍起になったことからきていると、アナリストたちは指摘している。

しかし、2018年には世界経済フォーラムの調べで、ジャマイカは世界で最も安全な金融制度を持っている国の1つと広く見なされていることが分かった。

ジャマイカ銀行が作った動画の一部を紹介しよう。






[原文:Jamaica's central bank is using reggae-inspired music videos to teach people about monetary policy]

(翻訳、編集:山口佳美)

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ネットフリックス、値上げはユーザー離れを招くか?

2019年1月21日 05:45 Business Insider Intelligence

この記事は、Business Insiderのプレミアム・リサーチ・サービス「Business Insider Intelligence」の調査レポートをもとにしています。



Business Insider Intelligence

新料金は、アメリカ国内の有料会員5846万人に今後3カ月以内に適用される。新規会員には新料金が即座いに適用される。

また値上げは、料金の支払いがドルで行われているラテンアメリカの一部会員も対象となる。

ネットフリックスのアメリカでの直近の値上げは2017年10月だった。

アメリカ国内の新料金は以下の通り。

・ベーシック:1台のみ、SD画質、月額9ドル(月額8ドルから12.5%アップ)
・スタンダード:2台まで、HD画質(ネットフリックスで最も人気のプラン)、月額13ドル(月額11ドルから18%アップ)
・プレミアム:4台まで、超高画質、月額16ドル(月額14ドルから14.3%アップ)
ネットフリックスにとって大きなリスクは、契約者が値上げに二の足を踏み、サービスを解約すること。特に同社は今、老舗メディアによるコンテンツ・ライセンスの買い戻しに見舞われている。

同社にとって契約者を増やすことはますます重要なことになっている。唯一の収入源であることはもちろん、同社は莫大な金額をコンテンツや有名タレントとの契約に費やしているから(ゴールドマン・サックスの試算によると、2018年には130億ドルを費やし、85%がオリジナル・コンテンツに投入された)。さらに莫大な負債も抱えている。

ネットフリックスは120億ドル(約1兆3000億円)近くの長期負債を抱えていたが、さらに2018年10月、20億ドル(約2200億円)を債権を発行した。

さらにディズニー、ワーナーメディア、NBCユニバーサルといった老舗メディアが同社からコンテンツを引き上げ始めており、Ampere Analysisによると、ネットフリックスは20%相当のコンテンツを失いかねない。

負債が積み上がり、コンテンツの引き上げがあるかもしれないが、同社にはリスクや今後の競争を乗り切る力があると、我々は依然、以下のような強気な見解を持っている。

・ネットフリックスの契約者は、値上げに影響されない。2017年10月の値上げの後の四半期で、アメリカ国内の契約者は196万人増加した。マーケットが飽和しつつあるにも関わらず、同社は四半期ごとの契約者数を増やし続けている。
・料金値上げのタイミングは、ネットフリックスの自信を示している。2019年、ディズニー、ワーナーメディア、アップルなどが競合サービスを開始すると見られているが、その年の初めに値上げを実施したことは、同社の絶大な自信の表れに他ならない。同社は明らかに、高い料金でも契約者を惹きつけることができ、さらに新たな参入者を打ち負かすことができると考えている。
・複数の調査によると、ネットフリックスはアメリカの家庭に必要不可欠なものになってきている。ネットフリックスはアメリカで最も普及しているSVOD(定額制動画配信)サービスであり、Parks Associatesによると、ブロードバンドを使っている家庭のうちの半数以上に浸透していると推定される。さらに、アメリカの全テレビ視聴者の中で、最も人気のサービスでもある。Cowen surveyによると、有料テレビや地上波を上回り、アメリカの成人の27.2%が動画コンテンツの視聴にネットフリックスを最も良く使っていると答えた。ケーブルテレビ(有料テレビ)は20.4%、地上波は18.1%だった。仮にネットフリックスが多くの家庭において、まだ有料テレビに取って代わるものではないとしても、ネットフリックスは間違いなく魅力的なサービス。また同社は、サービスが必要不可欠なものになり、オリジナルコンテンツが数々の賞を獲得し、さらにインターネット・カルチャーに影響を与えるものになるよう、カルチャー面での取り組みを強化している。例えば、オリジナル・コンテンツの「バード・ボックス」は、配信が始まると、インスタグラムなどのSNS上で真似をする人が続出した。ネットフリックスは、競合各社の中で、最も若い層に評価されるオリジナル・コンテンツを提供している。Business Insider Intelligenceの2018年SVOD調査によると、ミレニアル世代の68%が最も優れたコンテンツがあるサービスとしてネットフリックスをあげた。HBOは19%、アマゾン・プライム・ビデオはわずか4%だった。
[原文:Will the Netflix price hike harm subscriber growth?]

(翻訳:Makiko Sato、編集:増田隆幸)

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登録者数700%アップ! YouTuber「No.1争い」に見た、意地とトレンド変化

2019年1月21日 05:30 Chris Jackson/Getty

ピューディパイ(PewDiePie)こと、フィリックス・シェルバーグ(Felix Kjellberg)。
Chris Jackson/Getty

・ピューディパイ(PewDiePie)の新規チャンネル登録者数は、3カ月で700%以上増加した。世界一の人気Youtuberの座を守るために行ったさまざまなキャンペーンのおかげだ。
・ボリウッド系音楽チャンネル「Tシリーズ」がピューディパイをトップの座から引きずり下ろす勢いで迫っていた。だが、仲間のYouTuberとファンの応援によって、彼はNo.1の座を守っている。
・ピューディパイは2018年の後半4カ月で、2017年を上回る新規チャンネル登録者を獲得。
・ほとんどの有名YouTuberがチャンネル登録者の新規獲得に苦戦している中、今回の出来事は特筆に値する。
ピューディパイ(PewDiePie)が世界一の人気YouTuberの座を守るために行ったキャンペーンは成功した。

2018年10月頃から、ボリウッド系ミュージックビデオを投稿して多くのチャンネル登録者を集めているインド企業、Tシリーズ(T-Series)がピューディパイのチャンネル登録者数1位の座を脅かしてきた。

ピューディパイは、2018年10月に投稿したコミカルな動画の中で剣を掲げ、Tシリーズに戦いを挑んだ。

出典: YouTube

同じ10月、ソーシャル動画の分析を手がけるチューブラー・ラボ(Tublar Labs)は、Tシリーズのチャンネル登録者数が急速に増えて6600万人に達し、1週間以内にピューディパイの6700万人を超えるだろうと予想した。

しかし、そうはならなかった。ピューディパイの「チャンネル登録」キャンペーンのためだ。

キャンペーンを行った結果、チャンネル登録を呼びかけるポスターを街中に貼るファンが現れるなど、ピューディパイを応援する大きな動きが生まれた。おそらくより効果的だったことは、同じく人気YouTuberのローガン・ポール(Logan Paul)やミスター・ビースト(Mr. Beast)が閲覧者にピューディパイのチャンネル登録を呼びかける動画を投稿したことだろう。

グラフを見ると、ピューディパイのチャンネル登録者数が急劇に増加したことが分かる。

Business Insider/SocialBlade

ピューディパイが2018年の後半4カ月で増やしたチャンネル登録者数は、2017年の増加数を上回った。

統計サイトのソーシャルブレード(SocialBlade)を使って計算した結果、2018年9月から12月まででピューディパイのチャンネル登録者数は1300万人増加した。2017年の増加数は700万人だった。

12月だけで、662万人がピューディパイのチャンネルに登録した。これはTシリーズへの対抗キャンペーンを本格的に始める前の9月のチャンネル登録数85万5000人の8倍近い数字。

記事時点で、ピューディパイのチャンネル登録者数は8090万人。一方、背後に迫るTシリーズの登録者数は8050万人。

これは2017年に我々Business Insiderが、ピューディパイをはじめ、世界で最も人気のあるYouTuberたちのチャンネル登録者数の伸びが著しく鈍化していることを伝えたことを踏まえると特筆すべきことだ。

人気YouTuberたちは過去数年、チャンネル登録者数を大きく増やしてきたが、現在、閲覧者やチャンネル登録者の獲得には、かつてないほどの競争が存在する。ユーザーにとって、コンテンツやチャンネルの選択肢はますます増えている。だがもちろん、ユーザーの時間は限られている。

閲覧数やチャンネル登録者数の伸びの鈍化に伴い、YouTuberたちは試行錯誤して、収益を上げるさまざまな方法を編み出した。アルフィ・デイズ(Alfie Deyes)はスタートアップに投資し、KSIとローガン・ポールはボクシングの試合を行い、そのチケットを販売した。

ピューディパイこと、フィリックス・シェルバーグ(Felix Kjellberg)は、新規チャンネル登録者を獲得するために力を貸してくれた有名YouTuberたちに感謝すべきだろう。

1300万人のチャンネル登録者を抱えるミスター・ビーストは、ピューディパイを宣伝するためにラジオCMと屋外広告を行った。また12時間におよぶライブ配信を行い、その中で「ピューディパイ」の名前を10万回呼んだ。同じように、世間を何度も騒がせているローガン・ポールは自身のチャンネル登録者に、ピューディパイのチャンネルに登録してくれれば、慈善団体に寄付をすると述べた。

彼らがピューディパイを支持しているのは、ピューディパイは企業ではなく個人のクリエーターだから。そして、Youtubeの顔であり続けるべきだと考えているからだ。

[原文:PewDiePie's subscribers have gone up 700% thanks to his battle with T-Series, bucking a big YouTube trend]

(翻訳:Yuta Machida、編集:)

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元官僚が挑む“定額泊まり放題”ビジネス。家は1カ所に限らなくていい

「定額でいろんな場所に好きなタイミングで泊まれればいいのに」

そんな夢を叶えようとしている企業がある。浅草のホステル運営をはじめ、空き家問題の解決や地方創生などに取り組むLittle Japanだ。

Little Japanを立ち上げた柚木。これまで留学も含め海外40カ国以上を訪れている。

Little Japanを立ち上げ、現在代表を務める柚木理雄(みちお、35)は、元は農林水産省の官僚だった。官僚時代は国際交渉、経理、金融、農地、官民ファンドなどに関わってきた。

転機になったのは、東日本大震災だ。震災をきっかけに「戦略を書くよりも、現場で実際に事業をつくる人間が必要だ」と感じた柚木は、父の実家でも問題となっている“空き家問題”なら、自分ごと化して取り組めると考え、NPO法人・芸術家の村を立ち上げ、非営利で空き家問題の解決などに取り組んできた。

2017年に農水省を退官、Little Japanを設立し、企業として空き家問題の解決に着手した。

「起業の理由は2つ。1つは大学院生時代に京都でゲストハウスに住み込んで働いていたので、自分でもゲストハウスの運営をしたいと思っていたこと。
もう1つはいいサービスを作りたいと思った時、誰にとってもいいものを作ろうとすると、結果としてよくないものができるという現状を感じていたこと。少数のコアなターゲットに対して響くサービスがたくさんあればよくて、私もその担い手の1つになりたいと考えた」
クラウドファンディングでゲストハウス

「Hostel Life」という名前で2018年2月から本格的に月額定額サービスを開始した。

Little Japanは2017年4月、空き家を活用したゲストハウスの開業に向けてクラウドファンディングを実施。改修資金の一部として120万円超の支援を集めることに成功した。開業当時は月額定額サービス(当時は宿泊年間パス)をクラウドファンディングに協力してくれた人への返礼として用意していた。

2018年2月には「Hostel Life」という名前で本格的に月額定額サービスを開始。Little Japanのゲストハウスに宿泊が可能な「日曜日から木曜日のみ予約できるパス(月額1万5000円)」と「全曜日予約できるパス(月額2万5000円)」の2種類を用意した。もちろん一般の宿泊客も継続して受け入れている。

11月以降は北海道から沖縄までLittle Japanを含む合計15カ所の提携ゲストハウスが追加され、予約が空いていれば好きな場所に宿泊することが可能になった。

月額会員と一般の宿泊利用に差別はなく、空き状況を見て予約をする仕組み。1回の予約は2泊までで、宿泊が完了すれば次の予約ができる。

とはいえLittle Japanの総ベッド数は34。定額サービスに用いるドミトリーに限ればベッド数は16。繁忙期には定額パスを利用しても予約が取れない時期が続いたため、一時パスの販売をやめた時期もあった。

定額サービスの利用者の目的はそれぞれだ。

柚木が想定した定額サービスの利用者は2タイプある。

1つは都内周辺部から都心部へ通勤する会社員。都心に別の拠点を持つことで毎日1時間以上かけて通勤する時間・体力を有効活用できる。定期代を“ホステルパス”に回すことで金銭的にも大きな負担はかからない。もう1つが地方から東京へ通う人で、時たま利用する東京での拠点を確保するという目的だ。

実際にサービスを始めると、Little Japanに集まるコミュニティーに加わりたい近隣の住民や、宿泊する外国人との交流を持ちたい人なども集まってきた。複数のホテルでの利用が可能になってからは、特にフリーランスとして働く人々の利用が増加したという。

「都内周辺部から都心部へ通勤する会社員が利用すれば、わざわざ都心中心部に住む必要がなくなる。地方創生を目指す私としては、都内で働く人がもっと地方に住めばいいなとも思う」
意外となかった“定額泊まり放題”
月額サービスは旅行客向けではないので、旅行者には原則利用を禁止していた。そもそも一度の予約は2泊まで。長期旅行で訪れる観光客が1カ月の利用をするには無理がある。

「今はまだサービスの安定を目指す時期なので、定額サービスの利用者には全員会って面談をしている。多拠点生活者に向けたサービスで、家のない方や旅行目的での利用を断っていること、空きベッドを予約してもらうために定額ながらも宿泊保証はないことを丁寧に説明している。目的にそぐわない場合はこちらから利用をお断りすることもある」

増加する定額宿泊サービス。

宿泊業界では2019年に入ってLittle Japanを皮切りに、「旅するように暮らす」をコンセプトにした長崎のHafHや、LINEで全国のホステルが予約できるTOMARUN、最近では多拠点コリビング(co-living)サービスのための新会社アドレスなど、定額宿泊サービスが増加している。

しかし、宿泊事業における定額サービスはビジネスとして可能性を秘めているかといえば、実はそうではない。例えばフィットネスのようなサービスは、低価格のために登録しても利用しないユーザーは案外多いし、急増するコワーキングスペースもスペースの活用方法はさまざまあるために必ずしも座席だけで収益化を目指さなくてもいい。

一方のホテルは在庫(部屋)数に限界があり、回転率こそがビジネスにおける最大のポイント。定額制の客だけを頼れば結果的に費用が高くなるし、ユーザーを増やしすぎると今度は希望通り泊まれない人が増えてくる。このバランスが非常に難しいのだ。

家の数は1カ所に絞らなくてもいい
それでもLittle Japanが月額定額サービスに注力するのは、そこに“多拠点生活”という市場が醸成されることを願うからだ。



「東京周辺から都内に通勤通学する人だけでも相当いて、そのうちの1%が使うと考えても数万の潜在ユーザーがいる。また、今後は場所を選ばずに仕事ができるような職種も増えるはずで、彼らも同じように興味を示せば潜在ユーザーは増えるだろう。それに対応できるよう、今後も利用できるホステルの数を100カ所、1000カ所と拡大していきたい」
2019年はついに予約回数に制限のない月額4万5000〜7万5000円の新プランも用意。これで長期旅行者でも利用ができるようになる。

さらにシェアハウスに住むことができるホステルパスの販売も始める。住居を持たなくても提携5カ所のシェアハウスに住みながら、気の向く時に「Hostel Life」を利用して別の土地へ出かけるという夢のような定額サービスだ。そうなれば「Hostel Life」は宿泊サービスというより、住宅サービスに近いような気がしてくる。ホテルと自宅の境界はますます曖昧になりそうだ。

柚木はこう考えている。

「家の数は1カ所に絞らなくてもいいんじゃないか。帰りたい場所に家があるという世界を作りたい。」と柚木。

「家の数は1カ所に絞らなくてもいいんじゃないかと考えている。海のそばに家がほしいとか、大都会にも家がほしいとか、今日は1人でいたいから静かな場所に行きたいとか。同じ東京でも今日は新宿に帰りたい気分だとか、帰りたい場所に家があるという世界を作りたい。今後提携するホテルが増えることで、そんな生活も可能になるはずだ」
(敬称略)

編集部より:初出時、掲載していた料金表は最新のものではなかったため取り下げました。訂正致します。 2019年1月21日 10:45

(文・角田貴広、撮影・今井駿介 )

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判別AIも出てきた米国・フェイクニュース研究最前線 —— ただ「フェイク」と呼ぶ時代は終わる

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パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナーの石角友愛です。今回紹介するのは、「アメリカのトップIT企業がどのようにフェイクニュース規制に取り組んでいるか」です。

2018年の沖縄県知事選挙で、フェイクニュースを見た学生がアンケート回答者全体の1割ほどいたというニュースが日本でも先日流れ、今年はより一層、日本でも「フェイクニュースとはなんなのか?どう私たちは向き合えばよいのか?」が問われる年になるのではないでしょうか。

フェイクニュースに関して話すときに一番難しいのが、何をもって「フェイク」とみなすのかの定義づけです。First Draft Newsという非営利プロジェクトの代表のクレア・ワードル博士によると、自分にとって都合の悪い情報を全て「フェイクニュース」と一括りにしてしまっている使用例も背景にあり、「フェイクニュース」という言葉は使わずに、以下の3つに分類されるべきだと言います。

・Mis-information(ミスインフォメーション。悪い意図がなく拡散する偽りの情報)
・Dis-Information (ディスインフォメーション。悪い意図があり意図的に拡散される偽りの情報)
・Mal-Information(マルインフォメーション。悪い意図があり意図的に拡散される真の情報)
例えば、フェイクニュースの拡散で批判の対象になっているFacebookでは「フェイクニュース」ではなく「フォルスニュース(False News、偽りのニュース)」という言葉を使い、あらゆるシグナルからフォルスニュースと判断されるニュースを拡散するサイトの広告を止めています。その検知にかなりの人的資源と機械学習の労力を投じているとのことです(担当チームを2倍に拡大したとのこと)。

Facebookでは以下のようなマトリックスを作り、それぞれの線引きが難しいものの、赤い箇所(False News)の摘出にまずは全力を注ぐ、と言っています。



月間アクティブユーザー数が20億人を超えるため、全ての情報1つずつをカテゴライズするのは不可能です。そのため機械学習アルゴリズムを開発し、パターン検知をしています。そして、何をもって偽りと判断するかの基準には、第三者専門機関のチェック、ユーザーからのフィードバックなども使い、複合的な判断をしています。それでもなお、次から次に出てくる「偽り」の検知にはなかなか追いつかない、いたちごっこのような状態になってしまうことも考えられます。

そこでFacebookとは違うアプローチを採っているのがウーバーです。ウーバーの最先端技術研究チームの研究員の一人であるマイク・タミアー博士はバークレー大学でデータサイエンスを教えている講師でもありますが、マイク氏は面白い視点でフェイクニュースを定義付けています。

マイク氏によると、「何が偽りかどうか」より、「感情を無駄に引き起こす言葉が入っているかどうか」で、ジャーナリズムとセンセーショナリズム(扇動主義)の線引きをした、ということです。心理学の研究で、「感情的になればなるほど、人は認知力が反比例して下がってしまう」というものがあり、そこから、無駄に読者の感情を駆り立てる記事は、ジャーナリズムではなくセンセーショナリズムだと定義づけをした、とあるセミナーでマイク氏が語っていました。

出典: YouTube

研究の一環としてマイク氏が率いるウーバーチームが開発したFakerFact.Orgというツールでは、自分がチェックしたいニュースのURLを貼り付けると数秒で「Walt」という名前のAIモデルが、ニュース記事を以下の分類に分けてくれます。

・ジャーナリズム(ファクトベースのニュース)
・オピニオン(著者の意見)
・Wiki
・センセーショナリズム(扇動的に読者の感情を必要以上に換気させるもの)
・アジェンダドリブン(何かしらの目的があって書かれた記事)
・風刺
試しに弊社の日本語のブログ記事のURLを入れてみたのですが、やはり日本語対応は全くしていませんでした。そこでCNNで1月7日に掲載されていた「女優のエマストーンがゴールデングローブ賞で“ごめんなさい”と言った」というニュースをWaltで分類分けしてみたところ、ファクトを伝えるよりも、何かの意図があり扇動することが目的の記事に分類されます、という結果が出ました。なぜかの理由も記載されており、例えば、「詳しく見る」が入っているから、「I’M SORRY!と大文字で記載されているから」などと説明しています。

CNNの「女優のエマストーンがゴールデングローブ賞で“ごめんなさい”と言った」というニュースを分類分けしてみたところ。

一方、ニューヨーカーの記者によるトランプ大統領のメキシコ国境についての記事で試したところ、「読者の関心を引くとは思うがオピニオンなので事実を知りたいだけなら他の記事の方がよい」とWaltが分類しました。

こちらは、「トランプ大統領のメキシコ国境についての記事」で試したもの。当然ながら、分析結果はまったく違う。

このFakerFactツール、誰がどんな使用用途で活用するかはユーザーが今後決めていくことだと思いますが、AI開発をしている立場からすると、とても面白いツールだと思います。

Kaggle(企業などから課題を募集し、解決することで能力を競うエンジニアコミュニティー)で公開されているオープンソースのデータセットを使い、分類器(入力されたデータを目的に合わせて分類するAIアルゴリズムのこと)を作っていたということで、具体的にどのようにAIモデルを作ったか興味がある方は、こちらのビデオが参考になります。

ちなみに自然言語処理の世界では、風刺や皮肉表現は言葉の一般的な意味と文脈上の意味が真逆になるため、非常に検知が難しいとされています。FakerFactでは風刺もちゃんと見抜いているようで、たくさんの風刺、皮肉記事を教師データとして使ったのだと考えられます。

アメリカのメディア業界は、広告収入からサブスクリプション収入にシフトしてきています。例えば米アトランティック誌によると、ニューヨークタイムズ社の収入は、過去何十年かで6割が広告収入と言う状況から、6割が読者からの購読料へと変わりました。そんな中で、広告主の立場を意識した中立的なファクトベースの記事から、読者が好む記者の視点重視の記事に今後移行するのではないか、と話題になっています。

だからといって事実を伝えることの意味がなくなるわけでは全くなくて、事実を伝えるジャーナリズムと視点重視のオピニオン、そしてセンセーショナリズムや風刺など、今後ニュースジャンルが細分化していき、読者がそれぞれのカテゴリーでの情報収集を意識的に、能動的に、必要であればお金を払って行なっていく、ということが予想されると言えます。

それゆえに、AIを活用したニュースの分類分けやフェイクニュースの検知が今後より重要になってくるのではないでしょうか。

(文・石角友愛)


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