cat_oa-businessinsider_issue_39ab8c76c5fc oa-businessinsider_0_39ab8c76c5fc_ドラマでも描かれる鎮痛剤オピオイド中毒、米社会の経済損失55.4兆円で非常事態宣言 39ab8c76c5fc 39ab8c76c5fc ドラマでも描かれる鎮痛剤オピオイド中毒、米社会の経済損失55.4兆円で非常事態宣言 oa-businessinsider

ドラマでも描かれる鎮痛剤オピオイド中毒、米社会の経済損失55.4兆円で非常事態宣言

レディー・ガガが2017年9月、全身に痛みを感じる「繊維筋痛」を理由に欧州ツアーを延期した際、多くのファンが、彼女の健康を本気で心配した。治療に使われる可能性がある鎮痛剤を過剰に摂取して、マイケル・ジャクソンやプリンスなど「早逝したセレブ」に仲間入りしてしまうのではないか、と考えたからだ。

アメリカではそれほど鎮痛剤、特に中毒になりやすいモルヒネやヘロインなどオピオイド系鎮痛剤の蔓延が、深刻な社会問題だ。オピオイド中毒では、毎日140人が亡くなっているという。

公園には、ヘロインなどのオピオイドを打つために使われた針が捨てられている。アメリカでは、オピオイドに限らず「薬物中毒」の蔓延が、一部の業界や市民の間では、日常的で当たり前と思われている。
REUTERS/Charles Mostoller

トランプ大統領は2017年10月、オピオイド乱用や中毒が公衆衛生の非常事態だとする異例の宣言を出した。トランプ氏は、

「1日でみると、薬物の過剰摂取で死ぬ人数の方が、銃による殺人と自動車事故の被害者の合計よりも多い」

と指摘。この宣言によって、州政府レベルの予算ではなく、国家予算が対策費に使われることを可能にしたが、予算不足も懸念されている。ただ、非常事態宣言を出したことで、オピオイド中毒対策に弾みがつくと評価されている。

15年間で死亡件数4倍に
ロイター通信が11月19日に報じた報告書によると、米経済諮問委員会(CEA)は2015 年に鎮痛剤オピオイドの乱用によって生じた経済コストが最大5040億ドル(約55兆4400億円)に上ったとした。同年の国内総生産(GDP)の2.8%に相当するという。

内訳はオピオイド中毒で死亡した人の経済損失が、2210億〜4310億ドル。治療している人の医療費や刑事司法関連の費用、中毒患者による経済生産低下、家族への負担などが、720億ドルと推計した。

対策として最も有効なのは、24時間監視体制がある施設で、中毒症状から抜け出す治療を受けることとされている。

米政府の薬物中毒・オピオイド危機対策委員会によると、オピオイド系鎮痛剤が関係する米国内の死亡件数は1999年以来、4倍に増加。2015年には3万3000人が死亡したという。

なぜ、アメリカでこれだけオピオイド中毒が広がってしまったのか。

アメリカでは、オピオイドに限らず「薬物中毒」の蔓延が日常的だと思われている。自分の親族や知り合いの中に誰か薬物中毒で死亡している人がいるという人は珍しくない。トランプ氏が大統領選で獲得した中西部などレッドステイト(共和党支持者が多い州)での失業者や、都市部のホームレスなど貧困層が、現金を手にした途端に違法麻薬を入手する傾向があることも、よく報道されている。

ハードワークをこなすために
薬物依存を隠している人物が登場する人気テレビドラマさえある。

米国版ブラックジャックとも言われる「ハウス」(FOX、8シーズン)は、最も人気がある医療ドラマの一つだが、主人公の医師グレゴリー・ハウスは不自由な片足の痛みを抑えるため、オピオイド系鎮痛剤に依存し、幻覚を見ることもある。同僚にも患者にも同情心のかけらもなく、友人もガールフレンドもいない。しかし、天才的な勘を生かした診断で、難病患者を救っていく。

人気ドラマ「E.R」でも、主演で若い医師カーター(右端)は麻酔薬と鎮痛剤の中毒に陥る役だった。
REUTERS

「ナース・ジャッキー」(ドラマ専門ケーブル局Showtime )は、緊急病棟で長時間勤務を強いられる看護士ジャッキーが、オピオイド系鎮痛剤や精神安定剤をくすねてゴクリと飲み込みながら、ハードワークをこなしていく医療コメディで、7シーズンも続いた。日本でも大人気だった「E.R.」の主演で若い医師カーターも、麻酔薬と鎮痛剤の中毒に陥る役だった。

また、最終シーズンにかけて、バーが空になるほどヒットした「ブレーキングバッド」(ドラマ専門ケーブル局AMC)は、鎮痛剤ではないが、覚せい剤のメタンフェタミンを違法に製造する高校の化学教師の「不条理もの」ドラマだった。肺がんを診断され、家族に生活費を残すために覚せい剤を製造し始めるが、徐々に犯罪の世界から抜けられなくなる。南西部の社会に違法薬物が根付いていることを強く印象付けた。

英BBCによると、米政府はオピオイド中毒対策として、以下の施策を計画している。

1、違法麻薬に手を出さないように、 患者が医師の直接診断を受けなくても処方箋を入手できる「テレ診療」の機会拡大
2、 薬物中毒で就労困難な患者に対する助成拡大
3、特に農村部の薬物中毒危機対策のスタッフを増員する
(文・津山恵子)

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cat_oa-businessinsider_issue_39ab8c76c5fc oa-businessinsider_0_122bbf1d2a4f_「#9月入学本当に今ですか」署名が4000人超。大学教授やNPOから続々反対の現状 122bbf1d2a4f 122bbf1d2a4f 「#9月入学本当に今ですか」署名が4000人超。大学教授やNPOから続々反対の現状 oa-businessinsider

「#9月入学本当に今ですか」署名が4000人超。大学教授やNPOから続々反対の現状

記者会見にはNPO代表ら5人のほか、オンラインでも大学教授らが参加した。
撮影:横山耕太郎

「9月入学」について拙速な導入に反対する署名活動を行っている「#9月入学本当に今ですか?プロジェクトチーム」が5月26日、都内で会見を開いた。

同プロジェクトでは5月19日から署名活動を開始し、これまでに4123人分を集めた(5月26日現在)。署名は総理大臣宛てに提出するという。

記者会見には大学教授やNPO法人の代表者らが集まり、それぞれの視点から「9月入学」導入の問題点について指摘した。

「丁寧な発信と合意形成を」

日本大学教授の末冨芳氏。
撮影:横山耕太郎

日本大学教授の末冨芳氏は、「9月入学の議論自体は重要ですが、この混乱状況では拙速な議論を進めるべきではありません。火事場の議論で政策目的が見失われている」と指摘する。

末冨氏は、待機児童の増加や保育士・教職員の不足や義務教育の遅れなど9月入学導入には問題点が山積しているとし、「日本教育学会の試算では9月入学への移行で、最低でも6兆〜7兆円かかるとされています。経済的、社会的に負の影響が大きい」とした。

その上で、末冨氏はエビデンスに基づいた柔軟なソリューションが必要だと訴えた。

「子どもや保護者、自治体、教職員の意見を尊重し、専門家の意見も踏まえた意思決定が必要です。総理や大臣からの丁寧な発信と合意形成がなされるべきです」
「貧困家庭を助けて」

NPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長。
撮影:横山耕太郎

子どもの貧困支援を行っているNPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長は、「休校により給食がなくなり、十分に食事ができていない子どももいる」と指摘した。

キッズドアでは5月、ゴールドマンサックスからの寄付を利用し、貧困家庭の子供に文房具とクオカードを届ける活動を行った。

応援パックが届いた保護者からは、「収入が激減してしまったので、早く給付金が欲しい」、「食べたいものも買ってあげられず子どもの栄養状態が心配」などの声が寄せられたという。

「困窮家庭は非常に厳しい状況にある。9月入学への移行でかかるお金を、命をつなぐことに使うべきです。この苦しい時期に議論することなのでしょうか」
学生の立場はそれぞれ「一律の移行は乱暴」

日本若者協議会の室橋祐貴代表理事。
撮影:横山耕太郎

学生など若者の声を政治に届ける活動をしている日本若者協議会の室橋祐貴代表理事は、学生らに行ったアンケート調査の結果を紹介。アンケートは5月1日~5月10 日、学生や未就学児の保護者らを対象に実施され718人が回答した。

アンケートの結果、小・中学生は「反対」が約8割だったが、高校生は「賛成」と「反対」がともに4割。大学生・大学院生では「反対」が5割、「賛成」が3割だった。

9月入学に賛成の意見としては「勉強も行事も終わっていない。ちゃんとやり直したい」(小学6年生)、「必要なカリキュラムを受けてから受験に臨みたい」(高校3年生)などがあったという。

反対意見としては、「3月卒業を目指して必死に勉強してきた。これ以上振り回さないでほしい」、「私立高校に通わせてもらっているが、9月入学になれば半年分の学費が出せるのか心配」(いずれも高校3年生)などがあったという。

室橋氏は、「それぞれの学生が置かれている状況は違っている。一律での9月入学移行は乱暴ではないか」と話した。

「オンライン教育に投資を」

Crimson Global Academyの松田悠介・日本代表。
撮影:横山耕太郎

留学支援などをおこなうCrimson Global Academyの松田悠介・日本代表は、9月入学のメリットとされるグローバル化について「留学生を増やすことにはつながらない」と説明した。

「留学に関するアンケート調査では、『留学を決断する時の阻害要因』として、『費用が高く負担が大きかった』が約7割で、『英語力の不足』も4割と多かった。留学する生徒を増やすには、奨学金や英語教育の抜本改革が必要と言える」
また留学生の誘致に関しては、大学の国際競争力を高める方が先決だと指摘する。

「世界大学ランキング(2019年)では東京大学が36位。欧米諸国から見れば、日本の大学で学ぶ一般的な魅力があるようには考えにくい。まずは『教育の質』を高める必要がある」
また松田氏はオンライン教育への遅れを指摘し、「現在のオンライン教育は、コンテンツの質が低い。9月入学の前に、コンテンツ開発に投資を行うべきだ」と訴えた。

「まずは急を要する対応を」

Demo代表で教育ファシリテーターの武田緑氏。
撮影:横山耕太郎

教育関係者向けの研修などを行うDemo代表で教育ファシリテーターの武田緑氏は、「教育現場の声を聞いてほしい」と話した。

武田氏が5月24日と5月25日に行った、小中高校の教職員向けのアンケートには1276件の回答があった。

アンケートの結果、反対が53%で最多で、賛成が24%、どちらともいえないが23%だった。

「急きょ実施したアンケートだったが、1200人以上からの回答がありました。現場の声を伝えたいという気持ちの現れだと思います。
アンケートの結果は割れているが、共通しているのは、『学びの遅れと広がった教育格差をどうにかしたい』、『現場は混乱しており、落ち着いて仕事にあたれる見通しを持ちたい』などの思いです」
武田氏は、履修内容の精選や、入試の制度変更、教職員の増員など、子どもたちが安心できる環境整備に取り組む必要があると指摘する。

「急を要する対応が、9月入学の議論によって進んでいないのが問題です。一刻も早く見切りをつけて、現実的な背策の検討に集中してほしいと思います」
(文・横山耕太郎)

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cat_oa-businessinsider_issue_39ab8c76c5fc oa-businessinsider_0_9111601749ae_下北沢「B&B」経営者に聞く「アマゾンで買えない価値」の正体…本屋を救え!に3700万円集まる 9111601749ae 9111601749ae 下北沢「B&B」経営者に聞く「アマゾンで買えない価値」の正体…本屋を救え!に3700万円集まる oa-businessinsider

下北沢「B&B」経営者に聞く「アマゾンで買えない価値」の正体…本屋を救え!に3700万円集まる

緊急事態宣言下で、なぜか無性に本屋に行きたくなりませんでしたか?
画像:取材者提供

緊急事態宣言を受けた休業で、多くの書店が打撃を受けた。日本出版販売の調査によると、2020年4月の店頭売り上げは、コミックを除き前年同月の売り上げを10%超下回った。

営業の継続が難しい状況に陥った書店を救うべく、有志の作家や編集者などが立ち上げたクラウドファンディング「ブックストア・エイド基金」には、5月26日時点で3200人を超える応援者から約3700万円もの寄付が集まっている。

街の書店は今後どうなるのか。ブックストア・エイド基金の立ち上げメンバーの一人であり、自らも『本屋B&B』を経営する内沼晋太郎さんに話を聞いた。

コロナ前からずっと厳しい書店業界

内沼晋太郎さん:1980年生まれ、一橋大学商学部卒。ブック・コーディネーター、クリエイティブディレクター。numabooks代表、「本屋B&B」共同経営者。ほか、青森県八戸市の公共施設「八戸ブックセンター」ディレクター、読書用品ブランド「BIBLIOPHILIC」プロデューサーなどをつとめる。著書に『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』など。
画像:取材者提供

—— ブックストア・エイド基金に、3200人超から約3600万円(5月26日時点)という金額が集まっています。この金額をどのように受け止めていますか?

まずは本当に嬉しく思っています。「どの本屋もなくしたくない」という僕らの気持ちに共感してくれる人がこんなにたくさんいると気づけたことは、非常によかったです。

ただ目標は6000万円ですし、同じ思いを持っている方はもっといるはずだとも思っています。日数は残りわずかですが、最後まで支援を呼びかけていきたいです。

—— どの書店も、経営的にはかなり厳しい状況なのでしょうか。

そうですね。もともと儲かっている本屋なんてないんです。

外出自粛に伴って本の巣篭もり需要が高まったという報道もありましたが、業界としてはコロナ前からずっと厳しい状況が続いています。本の売り上げだけが収益源の場合、10%でも売り上げが落ちたらやっていけない店舗も多いです。この緊急事態宣言で、営業しても休業しても、ほとんどの本屋は厳しい状況にあると思います。

ただ、それぞれの本屋が何に困っていて、どんな支援を必要としているかはケースバイケースです。

例えば、賃貸の物件を借りていて、本を売ることだけで成り立っている本屋というのは、みなさんが想像するよりたぶんずっと少ないと思います。雑貨など他のものも売っていたり、カフェを併設していたり、街のイベント運営など何か別の仕事を受託していたり、複合的な売り上げで成り立っているお店も多い。「本屋には今こんな苦しみがある」と一概に言うことはできません。そもそも新刊書店と古書店ではビジネスモデルもまるで違います。

そのため、本屋業界全体で一枚岩になりにくい部分は正直あります。

でも、本屋は多様であるからこそ面白い。今回のブックストア・エイド基金でも、店舗間に線を引くようなことはしたくありませんでした。「実店舗がある」ことだけを唯一の参加条件にしているのは、多様な存在としての本屋が街の中にある風景を、丸ごと守りたいという思いがあるからです。

「本屋にいけないストレス」の正体

内沼さんが運営する、東京・下北沢の「本屋B&B」の店内。
画像:取材者提供

—— 近所の書店にアクセスできなくなったことによって「書店に行けないストレス」を感じました。本はネットで買えるにも関わらず、なぜそうした感情が生まれるのでしょうか?

本屋に行けないストレスを感じている人は、必ずしも本屋に何か特定の本を探しに行けないことを苦しんでいるわけじゃないのだと思います。

そこに行くと自分の知らないことを知れたり、こういう世界があるんだと気付けたり。持ち帰る本の話だけではなく、そういう場所を歩き回る楽しさが奪われていることへのストレスだと思います。

ブックストアエイド基金の立ち上げメンバーの一人である、「本の読める店 fuzkue」店主の阿久津隆さんは、本屋の本棚のことを「限りなく自然物に近い」と言っていました。

風に揺れる木々のかたちが変わるみたいに、本屋に行くとちょっとずつ棚の配置が変わっている。その中で、自分が欲しいと思うものを見つけたり、ある日初めてその本の存在に気付いたり。行けば行くほど、毎回気がつくものが違う。山に入って行く楽しさみたいなものが本屋にはあります。

僕は本屋に行くことを自著の中で「一番身近な世界一周旅行」と書きました。世界のあらゆることについて書かれた本に、本屋を一周するだけで触れられる。しかも街の中で、その扉はずっと開かれている。

そういう場所が日常の中にあるのは、すごく豊かなことです。その豊かな世界は、大小問わずどんな本屋にもある。だから僕たちは、どんな本屋さんも失くしたくないんです。

—— アマゾンには代えられない価値が、街の書店にはあるということですね。

はい。もしアマゾンしかない世界だったら、自分から欲しい本や気になるテーマを検索できる人や、本の情報がSNSのタイムラインにどんどん流れてくる人しか、本に辿り着けなくなってしまいます。一冊の本を手にして読むところから先は同じでも、そこまでのプロセスは、ネットで購入するのと本屋に行くのとでは全然違う体験だと思います。

並んでいる本は他の本屋でも売っているものだったとしても、そこにある本が何十冊、何百冊といった限られた冊数だったとしても、人と空間が介在して本が買える場所があるということが、その周りに住んでいる人たちに与える価値は非常に大きい。

今回のことをきっかけに、自分が大切にしたい本屋で本を買うことを習慣にする人が一人でも増えたらと思います。

B&Bの入り口。イベントも多数運営している。
画像:取材者提供

—— 内沼さんから見て、消費者の感情に変化はあったと思いますか?

僕らは家にこもったことによって、都市を出歩かなくなりましたよね。そのことで、お金の使い方が変わってきた気がしています。

成熟した都市は、歩くだけで物が欲しくなるようにできています。喉が乾いたらすぐそこに自動販売機があるし、この街をもっと自信をもって歩きたいからと高い洋服を買いたくなる。都市によって消費のスイッチを押され、欲しくなったものを買わされるのが、ごく一般的なお金の使い方でした。

けれど、その「欲望を喚起する場所」を歩けない日々が続きました。受動的にお金を使う機会が少なくなったことで、相対的にみんなのお金の使い方が少し能動的になったように思います。「どうせ買うならこの人から買おう」とか、「この人を助けるためにお金を使おう」とか、考える人が増えたのではないでしょうか。

その流れで、ただ「便利だから」という理由でアマゾンで本を買うような行動は、もしかしたら変わってくるかもしれません。同じ1500円の本を買うなら、「グローバル企業を大きくするよりも、あの本屋さんが生き延びる社会を選ぼう」というように。

自分のお金の使い方が世の中を変えることに、気づきやすい時期だった気がします。ただそれだけで、全ての本屋が一気に復活するということは、もちろんないですけどね。

徒歩圏内とインターネットの向こう側

ブックストア・エイド基金。すでに3700万円以上の募金が集まった。
画像:ブックストア・エイド基金クラウドファンディングページ

—— 先が見えない状況の中、書店はこれからどんな取り組みをしていくべきでしょうか?

抱えている問題は本屋によってそれぞれですが、コロナを体験した全世界のリアル店舗が共通して取り組むべき課題はあると思います。

一つには、徒歩圏内のお客様との関係性を深めること。もう一つは、インターネットの先にいるたくさんの人たちに何ができるかを考えることです。

とくに本はどの店で買っても中身が一緒ですし、新品だと値段も決められているので、本屋は商品の「中身」でも「値段」でも勝負できません。だからこそ、「この本屋さんで買いたい」と思ってもらえる関係性を作ることが大事です。

—— インターネットでできることとは、具体的にはなんですか?

それは難しい質問です。先ほども言った通り本屋は多様で、誰がやっているかによって、100人いれば100通りの本屋があります。そしてそれぞれの本屋がつくるリアルな空間にこそ、その価値が凝縮されているものだと思っています。

なので少なくとも、ただ本を売るECをやればいいということではないはずです。その本屋のもつ本質的な価値を、単にリアルの劣化版としてではなく、いかにオンラインならではの形で遠くに届けるか。それぞれの本屋が、自分の得意なことや詳しいこと、あるいはすでに築けているお客さんとの関係を生かして、オンラインでできることを見つけられると、また次にこのような事態が訪れたときにも慌てずに対応できるようになります。

本屋が多様だということは、全ての本屋に有効なノウハウはあり得ないということです。簡単ではないですけど、みなゼロから考えていくのだと思います。

(文・一本麻衣、編集・西山里緒)

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cat_oa-businessinsider_issue_39ab8c76c5fc oa-businessinsider_0_44e943cefe34_コロナでバイト消え貯金尽きた留学生、給付金で救われ「日本に感謝」 44e943cefe34 44e943cefe34 コロナでバイト消え貯金尽きた留学生、給付金で救われ「日本に感謝」 oa-businessinsider

コロナでバイト消え貯金尽きた留学生、給付金で救われ「日本に感謝」

5月25日に緊急事態宣言が解除され、「経済と感染症防の両立」が課題になっている。
. REUTERS/Issei Kato

「オンライン申請していた政府の給付金10万円が5月20日に振り込まれました。これでもう少し頑張れます」
西日本の大学院で学ぶ中国人留学生、韓勇さん(仮名、25)は明るい声で話した。これまで学費以外の生活費は自分で稼いできたが、新型コロナウイルスの影響でアルバイトが激減し、貯金も尽きた。

中国の年金暮らしの両親に5万円を仕送りしてもらい、ぎりぎりの生活で踏ん張っていた5月、特別定額給付金の申請が始まっただけでなく、自治体の給付金申請事務のアルバイトにも採用され、希望が湧いてきた。

コロナ禍で就職活動も苦戦が予想されるが、オンライン化で上京の必要がなくなり「悪いことばかりではない」とも感じている。

弁当工場のバイト、3月からシフト入れず

感染症対策のための休業要請で、バイトを失い困窮する大学生が続出した(3月撮影、写真はイメージです)。
REUTERS/Kim Kyung-Hoon

韓さんは国立大学大学院の修士課程2年生。4月の緊急事態宣言を受け、キャンパスにも入れなくなり、自宅で過ごす時間が増えた。とはいえ、周囲に店舗や娯楽施設が少なく、コロナ前から遊びに出ることは少なかったため、外出できないストレスは感じなかったという。

一方で、収入問題は深刻だった。深刻、という言葉では形容できないくらい追い詰められた。

「ゼミの先生は、学生のアルバイトを好まないのです。だけど僕の両親は60代後半で年金暮らしのため、仕送りを受けていません。だから派遣会社を通じ、人目に付かなくて時給がいい弁当工場で働いていました」
工場では直接雇用されたパート労働者と、派遣会社経由の労働者は同じ作業をしていたが、雑談などから派遣社員はパートに比べ数百円時給が高いことが分かった。

「会社に確認したわけではないけど、パートさんが足りないときに、派遣の僕たちが呼ばれているんだと思います」(韓さん)
韓さんは週2回、8時間働いて月約6~7万円を稼ぎ、家賃や生活費に充てていた。新型コロナが日本経済に影を落とすようになってからも、「外食を控えて弁当を買う人が増えるだろうから、自分の仕事は大丈夫」と心配していなかったが、その見立ては完全に外れた。

3月になると工場からの呼び出しがパタッとなくなった。1回もシフトに入れない月もあり、弁当工場での収入はほぼ途絶えた。3~5月は1円も稼げない月もあり、シフトに入れても月に1~2万円分しか働けなかった。

「推測ですが、派遣の僕はパートが足りないときだけ呼ばれていたので、コロナで雇用が減る中で、(時給の安い)パート従業員が増えたか、シフトを多く入れるようになったのだと思います」
韓さんは工場の仕事のほかに、大学の研究助手としての収入が毎月2万ほど収入があった。けれど家賃と生活費には全く足りず、春先に実家の両親に事情を話し、5万円を仕送りしてもらった。それまでは家賃以外の生活費が3、4万円かかっていたが、服やお菓子の購入をやめ、「食費2万円、食費以外はほぼゼロ円」に抑えている。家賃の安いところへ引っ越しも考えたが、敷金と礼金がかかるので断念した。

その後、通っている大学院が困窮学生の授業料を半減する措置を取ったので、すぐに申請した。アルバイトも探してみたが、人手不足だった数カ月前とは状況が一変しており、求人を出していたお店は営業すらしていなかった。

市の給付金事務バイト、朝一に電話し応募

節約とダイエットのため晩御飯は鶏肉だけで済ませ、3カ月で12キロ痩せた。
韓さん提供

ゴールデン・ウイーク(GW)が明けた5月7日、大学のサイトで「(近隣の)A市が給付金事務作業のアルバイト募集」という情報を見つけた。

韓さんはすぐに市にメールしたが、既に定員に達し、募集を締め切ったとの返事だった。ただ、職員は「また募集があるときは連絡しますから」と言ってくれた。

しばらくして、市の職員から韓さんに電話がかかってきた。

「夜電話があって『また募集しますよ』って。本当に連絡をくれたんです。先着順と聞いたので、スケジュールを確認して翌朝一番に電話しました」
5月中旬、韓さんは給付金申請書の確認など事務作業のアルバイトに採用された。1カ月の短期バイトだが、7万円ほどの収入になるという。オンラインで申請していた10万円の給付金も20日に振り込まれた。

さらに政府は、新型コロナの影響で経済的に困窮する学生に最大20万円を給付することを決めた。外国人留学生だけ「成績優秀者」との要件がついていることが物議を醸しているが、韓さんは、

「実は私は入試の成績もトップで、1年次もトップクラスにいるので、対象となるようです。頑張ってきてよかった。日本政府や市役所、大学には本当に感謝しています」
と話した。

地方学生の就活「悪いことばかりではない」

夏の状況は全く分からないが、今はサマーエントリーに応募しているという。
韓さん提供

来春大学院を修了する韓さんは、就職活動の真っ最中でもある。

「もちろんコロナ不況で売り手市場は終わるでしょうが、地方の学生にとってはチャンスが広がったと考えています。就活に関しては、コロナは悪いことばかりではない」
対面での説明会や面接ができなくなり、オンライン化が進んだので、東京や関西の企業を受けるための旅費が不要になった。

「収入が激減する中で就活コストが下がり、心理的にかなり救われました」
オンライン就活では周囲の学生の様子、進ちょく状況が分からないが、何もしないよりはましだと思い、夏休みのインターンへのエントリーを始めている。

新型コロナの影響では、フリーランスや非正規労働者、中小企業の苦境が浮き彫りになり、大手企業や公務員志向が高まると予想されるが、韓さんはどうなのか。

「僕は大学院に進学したので、学生時代の友人の多くは既に働いています。彼らを見ていて、やっぱり安定した企業がいいなと思っていたんです。けれど、大手企業からベンチャー企業までオンライン説明会を多く見ているうちに、考えが変わってきました」
「これから40年働くことを考えると、良いときも悪いときもあるはずで、会社が安定していても、自分自身が興味を持って続けられる仕事じゃないと、結局続かないのではないかと。コロナの直接の影響というよりは、コロナで地方から説明会や面接にたくさん参加できるようになり、新しい見方ができるようになったと思います」
家に引きこもる生活で、食費節約も兼ねてダイエットを始めた。晩御飯は鶏肉だけの生活を3カ月続け、体重が12キロ減った。何年も前からやりたかったプログラミングの勉強も独学で始めた。

韓さんはこう話す。

「先のことは予想がつかない。不安だけど、考えると不安が募るだけだから、やれることをするしかない」
そして、

「日本には本当に感謝している。だけど僕の住んでいる地域は感染者が少ないせいか、緊張感が薄く、マスクをつけていない人も増えてきた。あと少し、もう少しみんな頑張る必要があると思います」
とも訴えた。

(文・浦上早苗)

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ワクチンの誕生は1796年…意外なほど長い歴史を持つ13のテクノロジー

2020年5月26日 15:30 Wikimedia Commons

20世紀初頭、初期のカーラジオの受信試験の様子。
Wikimedia Commons


天然痘は根絶が宣言され、現在はワクチン接種は実施されていない。
U.S. Navy photo by Photographer's Mate 2nd Class Felix Garza Jr.

イギリスの医師、エドワード・ジェンナー(Edward Jenner)が世界で初めてワクチン接種を行ったのは、19世紀に入る直前のことだった。初期のワクチンは、牛痘のウイルスを人に接種して天然痘の発症を防ぐというもの。

サラ・ネルメスという名の乳搾りの女性が、手に牛痘による発疹が出たとして、ジェンナーのところにやってきた。ジェンナーはこの発疹から膿を取り、最初の被験者となった8歳の少年の腕に傷をつけて、この膿を接種した。

この少年は接種後、発熱を訴えたものの、具合はすぐに良くなった。その後、ジェンナーは少年に天然痘ウイルスを接種したが、免疫ができていたため発症しなかった。


電池:1800年

Wikimedia Commons

2020年3月20日で、ボルタ電池は世に知られてから220周年を迎えた。これはイタリアの物理学者、アレッサンドロ・ボルタ(Alessandro Volta)が発明したものだ。

ボルタは当初、この装置を「人工電気組織(artificial electric organ)」と呼んでいた。これは、当時主流だった、電気を伝導させるためには動物の細胞が不可欠であるとの説を踏まえた呼び名だった。

ボルタは、動物の組織の代わりに、金属の円盤と、塩水に浸したぼろ布を用いた。この2つを積み重ねると電流が流れ、世界初の電池が誕生した。


マイクロフォン:1876年

Wikimedia Commons

スコットランドからアメリカに移住したアレクサンダー・グラハム・ベル(Alexander Graham Bell)が1876年、発明したばかりの電話を世に送ってからまもなく、ドイツ出身の技師、エミール・ベルリナー(Emile Berliner)が、ベルによる電話のトランスミッタ(送話器)の機能が貧弱なことに気がついた。

そこでベルリナーは、電気について初歩的な知識しかなかったものの、トランスミッタの改良に乗り出した。これは、ベルが発明した既存の電話機から発する音を増幅するものだった。

ベルが経営していたベル電話会社は、ベルリナーの発明を高く評価し、同社の研究室に助手として雇い入れた。


食器洗い機:1886年

US Patent Office

1886年のクリスマスから数日後、ジョセフィン・ガリス・コクラン(Josephine Garis Cochran)は、アメリカ特許庁からある特許を取得した。

コクランの発明品は、皿やコップのサイズで細かく仕切られたワイヤー製のかごが歯車に取り付けられた、食器洗い機の機構だった。モーターでこの歯車を回すと洗剤を含んだお湯が、かごに入った食器に吹き付けられるという仕組みだ。

コクランはその後、自らが発明した食器洗い機を製造する会社を設立した。この企業はのちに、調理器具メーカーのキッチンエイド(Kitchenaid)となった。


コンタクトレンズ:1887年

Pinterest

眼鏡の奇妙な進化形として生まれた19世紀後半のコンタクトレンズは、完全にガラスでできていて、眼球の外から見える部分を全て覆う形状だった。

義眼製作者のF・A・ミューラー(F.A. Mueller)が発明した当初、コンタクトレンズは「スクリアラル・レンズ(scleral lenses)」と呼ばれていた。これは、眼球の白目の部分を構成する強膜(scleral)にちなんだ名称だ。

確かに、コンタクトレンズにしてはずいぶんかさばるが、これなら落としても簡単に見つけられるはずだ。


エスカレーター:1891年

Wikimedia Commons

機械仕掛けで動く階段の歴史は、20世紀に入る直前に始まった。最初に製作に着手したのは、ニューヨーク在住の発明家、ジェシー・レノ(Jesse Reno)だった。

レノが製作した第1号モデルは、ニューヨーク市の観光地コニーアイランドの「オールド・アイアン・ピア(Old Iron Pier)」にアトラクションとして設置された。その後、この新発明は、仕事場に行くために長い距離を歩く労力が省けるとして、産業革命期の炭鉱や工場で働く労働者に歓迎される設備となった。


カーラジオ:1919年

20世紀初頭、初期のカーラジオの受信試験の様子。
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上の写真で、張り巡らされている糸のようなものは、ラジオ受信用のアンテナ線だ。

これは、ニューヨーク出身のラジオ製造業者、A・H・グリービー(A. H. Grebe)が、初期のカーラジオを試験している様子だ。その後、1920年代に入ると、カーラジオは、生まれて間もない自動車文化を象徴する技術となった。

グリービーはこの試験で、車の後部座席に置かれた真空管のほか、真空管を駆動させる小さなモーター、さらにそれとは別にラジオの受信機自体に電源を供給するバッテリーを用いた。


人工心臓:1961年

US Patent Office

1961年、著名な医師のヘンリー・ハイムリック(Henry Heimlich)の助力を得て、世界初の人工心臓の特許を申請したのは、コメディアンで腹話術師のポール・ウィンチェル(Paul Winchell)だった。

この装置には、体の外に装着する小さなバッテリーパックが付属。これが、体内に取り付けられたポンプを制御して血液を循環させるという仕組みだった。

ウィンチェルの特許は、申請から2年後に認められたが、人体への埋め込み手術が成功したのは1982年になってからだ。この時使われたのは、ロバート・ジャーヴィック(Robert Jarvik)医師が発明した別のタイプの人工心臓だった。


ドローン:1964年

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世界初の無人航空機は、「ロッキードD-21B」だった。上の写真で、大きな航空機の上に乗っている小さな機体がそれだ。

D-21Bは、1969年から1971年にかけて中国上空を飛行し、敵国空域の偵察任務に従事した。しかし、事故率が高かったうえ、ニクソン大統領の時代に高性能の偵察衛星が導入され、こちらが上空からの写真撮影を担ったため、D-21Bの生産は中止された。


インターネット:1969年

YouTube

1969年10月29日午後10時半、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の技術者が、スタンフォード研究所に向けて、「LOG」という文字列を1文字ずつ区切って送信した。この際使われたのが、構築されたばかりの「ARPANET」という名のネットワークだった。

当時はごく初歩的なシステムだったが、この仕組みは、現在のインターネットを生み出す基礎的な要素となった。


携帯電話:1973年

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携帯電話の第1号機は、モトローラ所属の研究者、マーティン・クーパー(Martin Cooper、上の写真の人物)が考案した。当時の試作機は、わずか30秒通話するのに10時間の充電を必要とした。

言うまでもないが、重さも2.5ポンド(1.1キロ)近くある重量級だった。


GPS:1978年

IEEE Xplore

GPS(Global Positioning System)用の人工衛星「ナブスター1(Navstar 1)」が最初に地球を周回する軌道に達したのは、1978年2月29日だった。この衛星はすでに役目を終え、周回軌道を離れているが、全世界が通信ネットワークでカバーされた新たな時代の到来を後押しする存在だった。

カーナビ・アプリの道案内が押し付けがましいとスマートフォンに文句が言えるのも、1978年に打ち上げられたこの人工衛星のおかげだ。


MP3プレーヤー:1979年

Kane Kramer

アップルが初代「iPod」を発表する20年以上前、ケイン・クレイマー(Kane Kramer)というイギリス人発明家が、「IXI」という名のデジタルオーディオプレーヤーの特許を申請した。

このデバイスはタバコの箱ほどの大きさで、4つのボタンで操作し、3分半ほどの音楽を保存できた。この時の申請書類には以下のような記述がある。

「ほんの一瞬の操作で、カーニギーホール(Carnigie Hall:原文ママ)での生演奏が録音され、世界中の店で手に入るようになるだろう」


[原文:13 things that were invented much earlier than you probably thought]

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

外部リンク

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1週間でオンライン授業立ち上げた教師たちの奮闘。ソフト、Wi-Fiは企業が無料で提供

オンライン授業への対応に追われているのは、日本だけではない。アメリカでも教師たちの試行錯誤は続く(写真はイメージです)。
写真:REUTERS

アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、多くの州で3月中旬から自宅待機が続いた。今徐々に外出は解禁されたが、多くの州では学校閉鎖は6月下旬に始まる夏休みまで延長された。

すでに2カ月以上続いてきたオンライン授業がさらに続き、9月の新学期まで学校は再開しないことになる。

オンライン授業がスムーズに始まり、定着しているかに見えたアメリカだが、全面的なオンラインへの移行はスムーズだった訳ではない。教師や学校現場ごとに急遽話し合い、試行錯誤しながら手探りでやってきたのだ。「学びを止めない」という一心で。

以下は、その仕組みを立ち上げた教師たちのレポートだ。

足りないiPadやパソコンは「寄付」で
「オンライン授業が始まって2週間は、ほとんど眠れなかった。アートの教師になって20年間、そんなことやったことなくて」

と話すのはジェイニー・シェクさん。ニューヨーク市のチャイナタウンにある公立校(保育園、幼稚園、小中学校)で、中学2、3年生を教える。

3月7日にニューヨーク州で緊急事態宣言、3月11日から学校閉鎖と聞いて、校長から教師まで何をすべきか分からずショックを受けた。ニューヨーク市からは、「授業と給食の提供は続けること」という通知だけ。生徒の父母は「パニックになって、eメールが殺到した」(シェクさん)。

校長が音頭を取り、ITに詳しい教師中心で3日間、教師が集まってYouTubeでオンライン授業について学んだ。ITに詳しければ友人の友人まで頼りノウハウを集めると同時に、生徒に配るiPadやパソコンを校内や寄付で集めた。

写真はイメージです。
Shutterstock

シェクさんがオンラインでアートを教えるには、いくつもハードルがあった。

各家庭に画材があるわけではない。鉛筆とノート・用紙だけを使うことにした。マスクを作る授業をしたが、裁縫ができる父母や生徒ばかりではない。ホチキスを使ってみたが、ホチキスがない家庭もあった。

さらに教師たちは自宅から授業をするため、1人暮らしのシェクさんの場合、自分がデッサンする手元をビデオで撮影してくれる人がいなかった。なかなかうまくいかず、今でも何時間もかかる。

Google Meetを使い、自分で作ったビデオを見せて課題を与える。チャットで来る質問に対応すると同時に、課題を送ってきた生徒にはすぐにアドバイスや採点を与えなければならない。 

学校では画材などが揃っていたため、1日のうち異なる学年を教えることも難しくなかったが、限られた道具では一人ひとりへの気配りや監視が必要になる。他の先生と調整し、同じ学年の授業を1日に集めるなどの工夫もした。

チャイナタウンにある学校のため、英語が得意ではない父母のためのガイドや指示を中国語に訳すのにも時間がかかった。

「自分の声を録音したり、顔をビデオで撮影したりする経験も初めて。ビデオ編集も独学した」

YouTube上にすでにアップされているアートの授業を見せることもしてみたが、その後に与えた課題の結果を見ると、YouTubeでは生徒の集中力が、落ちたことが分かった。

やはり、知っている教師とのコミュニケーションが必要だと痛感し、自撮りビデオに戻った。

顔が見えない中、生徒の精神状態を知るために、シェクさんは生徒たちに日記をつけさせて、提出してもらっている。新型コロナに感染した家族がいる生徒を把握し、これまでのようにeメールで個別に父母と連絡を取り合うためだ。

「今大切なことは、吸収力がある若い脳をいろいろな学びや経験で満たし続けること。父母も在宅勤務となり、ロックダウンでストレスを感じているのを、子どもははたから見て感じるわけで、そういう時に何かやらせることを与えるのは、家族全体のストレスも減らせる」(シェクさん)

4日間でオンライン授業のハブを構築
シェクさんが経験したオンライン授業への急速な移行は、自宅待機令を発令した全米の州で起きた。だが、学校や学区、自治体によって取り組みはさまざまだ。

自治体の教育長や教育者がメンバーで、低所得層やマイノリティの生徒を支援する非営利団体(NPO)、チーフス・フォー・チェンジのまとめによると、各地で以下のような取り組みがある。

・学習に必要なペーパーなどを給食をピックアップする時に同時に配る(オハイオ州)
・学習に必要なペーパーや本をリュックサックに入れて配布(複数の州)
・地元放送局と提携し、授業を毎日一定時間、英語とスペイン語で放送する(テネシー州)
・オンライン授業の科目ごとカリキュラム・採点方法をデジタル化し、教師がウェブサイトでチェックできるサイトを構築(カリフォルニア州)

学校だけでなく、さまざまな企業がオンライン授業を支援(写真はイメージです)。
写真:shutterstock

教育熱心で知られるカンザス州のローラ・ケリー知事は3月16日から、「教育システム全体の安全のため」として、公立・私立学校の校舎への立ち入りを全米で初めて禁止した。給食は、校舎の外に設置したバンやテントで提供している。

「その直後、州内の教育者や教育機関幹部が40人オンラインで集まり、4日間で、オンライン上に授業方法、学習素材などを提供するハブを作った。生徒、父母、教師が安心できる環境を作りたかった」(同知事、ニュースサイトAxiosのオンラインイベントでの発言)

コロラド州、オハイオ州など全米5州も同様のハブを立ち上げた。

全米で1万校が登録した学習ソフト「Classkick」

ClassKickは作文の添削をタブレット上にすぐに書き込めるので、黒板を使っているような感じで対応できるという。

企業の中にも、通信会社や教育関連ソフト会社などオンライン授業を支援する動きがある。

オンライン授業ソフトウエアのクラスキック(Classkick)最高経営責任者(CEO)、アンドリュー・ローランド氏は、3月に各地で学校が閉鎖されて以降の反響に驚いている。

もともと病気など事情があって登校できない生徒のためにオンライン授業ソフト「Classkick」を全米の約1万校に提供していた。しかし、ロックダウンが始まって3月30日までの2週間に全米7000校が同社システムに登録した。

急遽、有料版「プロ」(1499ドル、生徒2000人に対応)を無料にしたところ、さらに3000校から申し込みがあった。生徒数にして計数百万人に上る。同社の社員は、「プロ」が各校に行き渡るように2日以内にサーバーを増強した。

Classkickでは教師側がタブレット端末を使い、生徒に課題や宿題を送る。生徒はパソコンやタブレット上で、計算や作文などの課題を提出するが、教師はそれを一覧し、個別にアドバイスやヒントをタブレット上に指で書き込んで即時に答えることができる。音声入力のチャットや「がんばって!」といったスティッカー送信、ビデオ、音声にも対応している。

現在、全米で最も使われているオンライン学習用のソフト「グーグル・クラスルーム(Google Classroom)」は、時間割と課題や宿題のリストを生徒に送信し、生徒は他の文書ソフトなどを使ってキーボードで答えを書いたのち、グーグル・クラスルームを介してファイルを先生に提出する。しかし、Classkickではこのやり取りが全部一つのソフトの中で完結するという。

「まるで、黒板を使ったり、先生が生徒を見回ったり、教室内で起きていることのコピー機みたいにオンライン上で動くので、教師も生徒も直感的に使うことができる」(ローランド氏)
Classkickを使う教師アンソニー・ロンバルド氏(オハイオ州、小4の算数担当)はこう語る。

「僕ら教師はこれまで、子ども達の生活の中心で頼りにされる存在だった。それが急に自宅待機になり、僕らがいなくなる。子ども達はそんなことに慣れていない。だから、彼らのために授業は続けなくてはならない」(ロンバルド氏)
業者が無料でWi-Fiを提供

オンライン授業の難しいところは、生徒とのコミュニケーションをiPadに書いたり、チャットしたりなど、教室にいる時よりもコミュニケーションに時間がかかることだ(写真はイメージです)。
写真:REUTERS

ロンバルド氏が勤める小学校は、3月14日に閉鎖、18日からオンライン授業を始めた。

「短い時間で、オンライン授業をやれと言われ、15日から学校に教師が缶詰になってやり方を教え合った。慣れるのに時間がかかるし、すごく大変だった」(ロンバルド氏)

生徒がインターネット接続環境を持つことも重要だ。

「学校閉鎖が発表された際、教育委員会や学校からケーブルテレビ(CATV)事業者にメールして、生徒の家に無料でWi-Fiサービスをインストールするように要請した。それでも、僕の生徒の1人が3週間も授業に参加しなかったので、校長が自宅を訪ねてWi-Fiの手配をした」(同)

ミシガン州にあるハドソンビル高校の化学教師のダグ・レイガン氏たちも、まずはWi-Fiの提供に動いた。教育委員会から生徒の家庭にWi-Fiの申し込み書式が送られ、インターネット接続業者が無料提供したという。

それでも心配は尽きない。

「高校は大学受験もある。学校が閉鎖されても、生徒の学力は向上させなくてはならない。学校が再開したら、何カ月も前にやっていたところに戻る訳にもいかない。

オンライン授業では、生徒とのコミュニケーションが教室にいる時よりも時間がかかることだ。教室では、手を挙げさせたり質問させたりすることで、生徒の顔色や調子も分かるが、それも不可能だ」

日本の補習校では大混乱
日本の多くの公立校ではオンライン授業への移行が進んでいないことが問題視されているが、アメリカでもこのコロナ禍で急遽立ち上げたところが多いのだ。だが、日本との大きな違いがある。

アメリカの場合、公立校の教師や職員には教育委員会のドメインのメールアドレスが与えられ、父母との連絡はホームページやメールを通じて行われている。教育委員会からの連絡も、教師を通して、父母に一斉送信で素早く届くようになっている。

同じアメリカでも、都市部の日本語補習校では4月、春休みが空けて最初のオンライン授業で大混乱が起きた。補習校は、日本人家族の子どものために土曜日に日本語で授業を受けるために設置されている。

コロナ禍が収束しても、オンライン授業は定着していくのだろうか(写真はイメージです)。
写真:REUTERS

ニューヨークにある日本人補習校の生徒を持つ父母からはこんな声を聞いた。

「以前から父母への連絡がメールや(アメリカではほとんど使われていない)LINEなどとバラバラで、先生ごとに送り方も違うので、Zoom授業についてのお知らせが送られてない家庭もあった。うちは送られてきたものの、何の科目をするのか朝になってもわからず。当日Zoomで接続したら、先生も慣れていなくて、全員がつながるまで1時間もかかった。もう大パニック!」
「『これを見てください』とiPadで黒板を見せるけど、左右が逆になっていて何が書いてあるのかもわからない、という状態」
ニューヨーク市は9月の新学期から学校を再開するとしている。まだ先のことだが、課題は多い。ニューヨーク市のビル・デブラジオ市長が記者会見で指摘しているのは以下の点だ。

・夏休みの間に、オンライン授業で落ちこぼれた生徒らの遅れを取り戻すプログラムを作成する
・学校再開の際、地下鉄を使って通う生徒と同伴する大人が感染するリスクをどうやって防ぐか対策を立てる
・2次・3次感染が起きた場合、速やかにオンライン授業に移行する仕組みを作る
前出のAxiosのイベントで、子どもの教材をオンラインで提供しているコモン・センス・メディアCEOのジム・ステイヤー氏は「9月の新学期に生徒が全員顔を会わせることができれば、教師も誰が新学期に準備ができていなくて、誰ができているか一度に分かるので、そこから対策を立てることができるのが、唯一の救いだ」という。

しかし、果たして9月に学校再開ができるのかがまだ不透明な中で、教師や自治体、そして父母の試行錯誤は続く。

(文・津山恵子)

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cat_oa-businessinsider_issue_39ab8c76c5fc oa-businessinsider_0_57e692d3548b_ロックダウンで二酸化炭素排出量が前年比マイナス17%に…「各国政府は環境に配慮した経済再建計画を」 57e692d3548b 57e692d3548b ロックダウンで二酸化炭素排出量が前年比マイナス17%に…「各国政府は環境に配慮した経済再建計画を」 oa-businessinsider

ロックダウンで二酸化炭素排出量が前年比マイナス17%に…「各国政府は環境に配慮した経済再建計画を」

イギリス、ロンドンの公園でベンチに座る女性。
Kirsty O'Connor/PA Images via Getty Images)

・パンデミックによるロックダウンは、環境に対して前例のない影響をもたらした。
・最新の調査によると、4月の1日あたりの世界の二酸化炭素排出量は、前年よりも17%少なくなった。
・そのうちの43%を、車、バス、トラックからの排出量の減少が占めている。
・6月中旬までにすべての国が経済活動を再開しても、2020年の総炭素排出量は昨年より4%少なくなる。
・経済を再構築する際に政府が二酸化炭素排出量削減を考慮しない場合、これらの環境への恩恵はすぐになくなってしまうと専門家は警告している。
コロナウイルスのパンデミックは、環境改善に光明をもたらした。多くの人が飛行機や車に乗るのをやめたため、二酸化炭素排出量が大幅に減少したのだ。

学術誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」で5月19日に発表された論文で、2020年4月の1日あたりの世界の二酸化炭素排出量が、2019年の1日あたりの排出量よりも17%減少していることが明らかになった。1日の平均排出量は昨年と比較して1870万トン減少したことになる。これは2006年の排出量と同水準だ。

「世界の炭素排出量が少なくとも4%、おそらく7%か8%減少するだろう」と、この研究の共著者であり、グローバル・カーボン・プロジェクトの代表であるロバート・ジャクソン(Robert Jackson)は、2020年全体について予測している。

「いずれにしても、第二次世界大戦以降最大、そしておそらく過去最大の減少になるはずだ」

最大の要因は地上輸送の減少

ビルの窓際に立つマスク姿の男性。東京、2020年5月14日。
Eugene Hoshiko/AP

研究論文の著者は、炭素排出量の減少を定量化するために、アメリカを含む69カ国以上と中国の30の省の排出データを調査した。このサンプルは、世界人口の85%、世界の二酸化炭素排出量の97%に相当する。

4月初旬、世界の排出量の89%を占める地域が何らかのロックダウン規制を受けていることがわかった。そこで研究者らは、ロックダウンを深刻度のレベルに基づいて3つのカテゴリーに分け、住民の通常の日常生活への影響(およびそれに伴う二酸化炭素排出量への影響)を推定した。

彼らが「必要不可欠な労働者を除く、すべての労働者が自宅にいることを義務づける全国的なロックダウン」と定義した最も厳しい自宅待機命令下の国では、地上輸送(車での通勤など)が50%減少し、航空輸送が75%減少したことがわかった。この2つ部門の排出量はそれぞれ36%と60%減少した。

地上輸送の排出量減少は、2019年と比較した排出量の減少全体の43%を占めている。これは、炭素排出量に飛行機による移動が占める割合が3%未満であるのに対し、地上輸送はその10倍近くあるためだ。

研究者らは、1月から4月中旬までの排出量を合計すると、昨年の12カ月間の平均と比較して10億4800万トンも減少したと推定している。そのうち約23%が中国、20%がアメリカ、9%がインドだった。

排出量は、ロックダウンがピークに達した国では平均26%減少した。

今年の排出量は少なくとも4%減少する
研究者らは、毎日の二酸化炭素排出量が17%減少することは「非常に大きい量で、おそらく以前には見られなかっただろう」と述べている。

それでも、2006年と同じレベルになるだけであり、過去14年間にどれだけ排出量が急増したかを示している。

中国の上海にある発電所の煙突から煙が出ている。
Reuters/Aly Song

この研究によると、パンデミックが発生する前、世界の二酸化炭素排出量は過去10年間、年率約1%の上昇を続けていた。

2020年は、世界がいつロックダウンを解除するかにかかわらず、その傾向に逆行することになるだろう。

6月中旬までにパンデミック前の状態が回復した場合、つまり、必要不可欠ではない事業も再開し、航空券や自動車による移動が通常のレベルになった場合でも、世界の年間二酸化炭素排出量は4%減少すると見られている。年末までロックダウンや旅行制限が続く場合は、その影響はさらに大きくなり、7%に近づく可能性がある。

ジャクソンによれば、この減少量は、地球温暖化を摂氏1.5度に抑えることを目指すパリ協定の目標を達成するために、全世界が毎年必要とする排出量の削減レベルだ。

しかし、ジャクソンはBusiness Insiderに「人々を家に閉じ込めることは、温室効果ガスを削減するための持続可能な方法ではない」と語った。

2020年3月17日、ニューヨークからサンフランシスコへ向かうデルタ航空の機内。
REUTERS/Shannon Stapleton

政府が経済の再開計画で二酸化炭素削減を考慮しないのなら、排出量減少は一時的なものに終わる
論文の主著者であるコリンヌ・ル・ケレ(Corinne Le Quéré)はプレスリリースで、「経済、輸送、エネルギーシステムの構造的変化によるものではないため、これらの極端な減少は一時的なものである可能性が高い」と警告している。

彼女と同僚は、世界の指導者たちは、経済再建のための努力に気候変動の目標を組み込む必要があると述べている。例えば、クリーンエネルギーへ投資するといったことだ。

2020年5月13日、バイザーを着用して自転車でパリの街をゆく女性。
Samuel Boivin/NurPhoto/Getty Images

「2008年の経済危機に対する資金供給は、風力発電と太陽光発電の拡大させるのに役立った。今日のCOVID-19対策資金は、個人の移動手段と電気自動車を再生可能な電力に結びつけることができるだろう」とジャクソンは述べている。

また、ロックダウンは人々の移動手段についての考え方を変える可能性があるとも付け加えている。

「人々は内燃機関のない交通手段について考えている。歩いたり、自転車に乗ったり、クリーンな電気自動車を運転したりすることで、家にとどまっていなくても毎日青空が見えるようになるかもしれない」

[原文:Lockdowns cut daily carbon emissions in April to 17% below last year's average — but that only gets us back to 2006 levels]

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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快適な椅子、安定したネット接続と電力供給…テック幹部のホームオフィス構築依頼が急増

コロナウイルスの影響で、自宅で仕事をする男性。2020年3月16日。
Annette Riedl/picture alliance via Getty Images

・将来的には在宅ワークが働き方の中心になると見られるため、テック企業の幹部たちはアップグレードされたホームオフィスを求めている。
・シリコンバレーのある設計事務所では、ハイテク企業のクライアントからの要望が殺到しているという。
・人間工学に基づいた椅子、信頼性の高い電力のための発電機、安定したインターネット接続などが、より効率的なホームオフィスを求める幹部たちの要望のトップに挙げられている。
シリコンバレーのテック企業のオフィスでは、人々が仕事に復帰し始めるころには、コロナウイルス感染症を考慮した変革が起きているだろう。

ある設計事務所によると、雇用主は従業員同士の接触を減らすために一方通行の通路を設ける必要があるかもしれないという。また、シリコンバレーのオフィスによくあるスナックルームは新時代のオフィスでは姿を消しているかもしれない。

企業が長期的にリモートワークを推奨するようになれば、ホームオフィスはより広く受け入れられるようになるだろう。グループワークをする日にだけオフィスに入り、個々のタスクは自宅で完了させることもできる。その結果、労働者はホームオフィスについて再考するようになってきている。

グレッグ・モットーラ(Greg Mottola)氏はSquare、ピクサー(Pixar)、アドビ(Adobe)、ブルーボトル・コーヒーなどのオフィスデザインを手がける建築会社、ボーリン・サイウィンスキー・ジャクソン(Bohlin Cywinski Jackson)の所長だ。パンデミック以前から、同社の業務の約20%は高級住宅の設計に費やされており、その多くはセカンドハウスだった。

モットーラ氏はBusiness Insiderの取材に対し、サンフランシスコ地域のテック幹部からの要望が殺到したことを受けて、同社はホームオフィスの設計にさらに力を入れていると述べた。

「もう自宅は夜に帰って数時間寝るだけの場所ではない」とモットーラ氏はホームオフィスについて語っている。

「オフィスに行かず、一日中そこにいる日もあるかもしれない。この傾向は、今後も続くだろう」

テック業界はすでにリモートワークが導入されており、単なるオフィスへの出勤よりも生産性が重視されていたが、加えて3月中旬、同地域に自宅待機命令が出たことでベイエリアのオフィスで働く数千人の労働者が在宅勤務を命じられた。その時、従業員や幹部の多くはオフィスを放棄し、ベイエリアにある小さなアパートのダイニング・テーブルやソファなどに、間に合わせのワークスペースを作った。

モットーラ氏は、具体的な顧客の名前を挙げなかったが、依頼をしてきたのは「あなたが思い浮かべるような企業の幹部」だという。彼らのホームオフィスの改造について、驚くような要求はないという。インターネット接続、人間工学に基づいたデスクとチェア、照明などだ。

彼のクライアントは、ホームオフィスの家具に美しさではなく、より実用的であることを望んでいるという。

「美しい、モダンなデザインというだけで椅子を選ぶことはない」とモットーラ氏は述べた。

「作業するための椅子、つまり人間工学に基づいた椅子を選ばなければいけない。なぜなら、数日か数週間か、あるい数カ月も、そこに座って作業することになるかもしれないからだ」

モニターの設置場所などを検討するクライアントもいるが、多くのクライアントは、ビジネスを行う第一の方法はスマートフォンだという。

「我々が取引をしているテック系のクライアントには、ノートPCすら使っていない人もいる。すべては彼らの電話の中にある」とモットーラ氏は述べた。あるいは、iPadと外付キーボードだ。

シリコンバレーの多くのオフィスはオープンフロアで、人や機材が密集している。さらに、フラットな構造もその特徴で、CEOであっても個室が割り当てられておらず、社員と同じフロアにいることがある。

モットーラ氏に仕事を依頼しているテック系クライアントの多くはこのような環境から来ており、ホームオフィスをデザインする時には、それを念頭に置いていると言う。

「彼らはオフィスであちこち動き回っている。そして、同じことを家でも行っているようだ。そのような極端な移動を」とモットーラ氏は述べた。

今後、新しい家の買い手は、快適で、よりよく計画されたホームオフィスを作るためのスペースを求めるだろう。

雇用主は「従業員の働き方により柔軟性を高めるために、リモートワークをさらに広めようと考えている」とモットーラ氏は言う。

「その時、ホームオフィスは、人々が住宅に求めるものにも大きな影響を及ぼすだろう」

そして、それには賃貸物件も含まれる。

一方、ベイエリアの顧客は、どのようにして持続可能な形でホームオフィスにエネルギーを供給するかということも考えている。モットーラ氏によると、カリフォルニア州北部の比較的辺鄙な地域では、地震や山火事などの緊急事態に備えて、発電機のニーズがあるという。自宅で仕事をするときは、自然災害があろうとなかろうと、生産性を維持しなければならない。

「リモートで作業する場合には、信頼性の高いサービスを確保する必要がある」とモットーラ氏は述べている。

[原文:Silicon Valley execs are requesting revamped home offices with generators and ergonomic chairs as more companies adopt work-from-home policies]

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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cat_oa-businessinsider_issue_39ab8c76c5fc oa-businessinsider_0_4751318d7666_【神田伯山事務所社長・古舘理沙】当代随一の人気者オンライン寄席で変わる芸の見せ方 4751318d7666 4751318d7666 【神田伯山事務所社長・古舘理沙】当代随一の人気者オンライン寄席で変わる芸の見せ方 oa-businessinsider

【神田伯山事務所社長・古舘理沙】当代随一の人気者オンライン寄席で変わる芸の見せ方

オンラインのラジオ収録では、ディレクターの指示をSkypeで聞きながら、笑い声を挟む「笑い屋」の重藤暁のタイミングをZoomで確認。同時に声を音質のいいICレコーダーで収録する。
提供:TBSラジオ

コロナショックによる「在宅シフト」で、あらゆる職種に働き方から何から見直しがかかっている。経営・マネージメント層に、新たに気づいた課題を聞くシリーズの第4回目は、エンターテイメント業界から。

100年ぶりとも言われる講談ブームを引き起こし、その毒舌キャラがテレビ・ラジオでもたちまち人気となった神田松之丞あらため六代目神田伯山。彼を前座時代から「今、最もチケットの取れない男」と言われるまでにマネージメントしてきたのは、伯山の妻でもある古舘理沙さんだ。

これまで伯山以外にもさまざまな寄席演芸の興行を仕掛けてきた、彼女自身もまた、“凄腕の興行師”と言われる。

エンターテイメント業界は、コロナ禍で最もあおりを受けている業界の一つ。超・人気者の伯山といえども、その影響は大きい。古舘さんに、伯山のリモートワークの近況と今後、業界の展望について聞いた。



正直、対応としては遅いと思います。私自身、ずっとヒヤヒヤしていました。

ただ、出させていただいているタレント側から「リモートにしてください」とは、どうしても言いにくい。テレビ・ラジオに関しては、局側から「リモートで」と判断してくださったので、そこは本当にありがたかったです。

大手の芸能事務所さんが「リモートでなければ、出せない」と先陣を切って局側に言ってくださったことも、非常に助かりました。そこからリモート出演が業界全体に浸透し、私たちのような小さな事務所の者もスムーズにオンラインに移行できました。

感染拡大と重なった襲名興行

「六代目伯山」の誕生をこの目で見たい、という熱いファンたち。2月11日、新宿末広亭には多くの人が早朝から列をつくった。
撮影:吉川慧

寄席に関しては、コロナの感染拡大と伯山の襲名興行が重なり、これも本当にヒヤヒヤのし通しでした。自分たちの感染もですが、お客様に感染者が出たら申し訳がたちません。

寄席での襲名興行は2月11日から3月20日までを予定しており、寄席は全部で4軒。コロナ禍が深まる前に3軒は終わっていました。最後の国立演芸場さえ無事に終われば、何とかいけると思って過ごしていました。

具体的には、新宿末広亭の興行までは問題なかったのですが、2月21日以降、浅草演芸ホールに移ったあたりから世間の空気が変わり始めました。ライブハウスの件が取り沙汰され、「集まるのはどうなのか」という雰囲気になった。

寄席には高齢のお客様も多くいらっしゃいます。やりづらいけれど、お客様も来てくださっているし……と、ジレンマにさいなまれました。

綱渡りの中で、3月11日に国立演芸場が、国の機関のため、寄席の中では最初に閉めることになりました。興行は途中で中止となりましたが、むしろ、ホッとしました。

続いて他の寄席も閉まったわけですが、すでにお客様が数人といった状況がしばらく続くなどしていたようです。開ければ開けるほど赤字になってしまう。人件費もあるので、いっそ閉めようという判断だったと聞いています。

「お客様はどのぐらい戻るのか」という不安

家からリモートワークでラジオ収録をする神田伯山。
提供:古館さん

現在、伯山は講談のライブの仕事はないけれども、幸い、テレビやラジオの出演があります。収入がゼロではありません。

とはいえ、本業である講談ができない。いつ再開できるかもかわからない。これは非常につらいことで、こんなに長い間、講談ができない状況は、おそらく業界にとっても経験のないことです。

戦時中ですら、統制はあれども寄席は開いていました。東日本大震災の時も、計画停電でできない日はありましたが、計画停電にはいずれ終わるという見通しがありました。

今は、まったく先が読めません。たとえコロナがおさまっても、これだけ経済を止めてしまったら、お客様はどれくらい戻るのか。エンターテイメントに消費しようという人がどれくらい、いるのか。

また、興行は全国を移動して行います。当然ですが、東京から地方に行くこと自体、今は批判の対象です。ほかの手段を試さざるを得ない時期にきています。

偶然開始が重なったYouTube番組

一方で、偶然にもまったくコロナ禍とは関係なく、でもコロナ禍と重なるように「神田伯山ティービィー」というYouTube番組 を、2月から私のプロデュースで始めていました。テレビ局などとは関係なく、私たちの事務所が主催しています。伯山の名前を冠していますが、伯山をというより、「何としても講談の面白さを知ってもらいたい」ために始めました。

知ってもらいたいというのは、決して業界に対するおべんちゃらではなく、私が本気でこの世界にハマっているからです。それにはっきり言って、伯山を有名にして、伯山だけがお金を持ったり、独り勝ちしたりしても全く意味がない。

ちょっと覗いていただくと、すぐにおわかりいただけると思うのですが、寄席演芸の世界は本当にいろいろな方がいて成り立っています。業界全体が盛り上がらないと先細りするだけです。危機感を持っています。

この「神田伯山ティービィー」が予想以上にハネてくれて、薄氷を踏む思いですが、少し希望を持てています。チャンネル登録者数は3カ月で12万人超。ユニーク視聴者数は約115万人。ちょっとした深夜番組に近いインパクトはあるはず。

これまでのファン以外に届く威力
エンタメもパーソナライズ化が進んで、マスのインフラで集めるものではなくなっているとは言われています。でも、ここまでYouTubeがインフラとして優秀だとは予想していませんでした。

集客人数もですが、最も驚いたのは、老若男女しかも伯山に興味なかった人にすら届くという、その威力です。

何十年来という親しい付き合いの友達がいるのですが、これまで私の夫であるにも関わらず、全く伯山にも講談にも興味を持ってくれませんでした(苦笑)。これまで何回か公演に来てはくれました。でも、友達だから来たという感じでした。

その友人が「『神田伯山ティービィー』は面白い。毎日、見てる」と言ってくれたんですね。「ここに届いたんだ!?」と驚きました。近所の顔なじみのお店の方も「YouTube、 見てるよ」と声をかけてくださったり。

「神田伯山ティービィー」で、5月30日までオンライン釈場(講談の寄席)を配信中。
提供:古館さん

YouTubeを始める前は、「ゆくゆくはNHKで番組を持ちたい」と考えていました。もちろん、今でもそれは考えていますし、講談の番組もNHKにちゃんとあります。でも、放送は早朝だったりする。ゴールデンタイムに番組をやりたくても、テレビの枠なんて簡単に取れません。

だったら、YouTube を活用しようという目論見でした。ある程度の広告収入も見込めます。

初めは、伯山はYouTubeに関して否定的でした。「売れなくなった芸人がやるものでしょ?」とか言いまして。完全な偏見なんですが(笑)。

でも、今は反響を見て、本人も前向きなようです。外では人見知りですが、家ではおしゃべり。「しゃべってないな」と思ったら、エゴサーチしているというようなタイプの人なのですが、今は毎日のように「登録者数が○人になった」とチェックしています。

投げ銭システムでの無観客ライブ
5月23日から、新たに投げ銭システムを導入した無観客ライブの期間限定配信も始めました。伯山以外の講談師の方にも登場していただき、投げ銭で得た利益は、すべて日本講談協会に寄付します。

コロナ前は、有料化はまったく考えていませんでした。有料化すれば、お客様が離れる可能性もあります。でもコロナのために、考えていた企画も相当数できなくなってしまいました。ライブハウスにお客様を集めて、有料で未公開映像とトークライブをしようという計画もあったのですが、中止せざるをえなくなった。

他にも、講談の先生は本当に個性的で面白い方々なので、伯山がインタビュアーとなって話をうかがって流そうと考えていました。でも、高齢の方も多い。今、会いに行ったり、わざわざこちらに来ていただくこともはばかられます。

満席、ライブ目指した発想の転換を

リモートのテレビ収録の様子。カメラはテレビ局からバイク便で届けられる。画角の確認をすれば、あとはスイッチを押すだけで良い状態に設定されている。
提供:古舘さん

講談の読み物は膨大にあるので、コンテンツが出尽くすということはありません。とはいえ、興味を引くためには、新しい試みも必要。

今後どれくらい、コロナの影響が続くかわからない中で、持続可能な資金を得るためにはどうすればいいか。お客様にとって、何がお金を払うモチベーションになるのか。考えた末に投げ銭に行き着きました。

無観客というのは演者にとっては、つらい部分があります。演者はお客様の反応を見ながら、話しを練り上げていき、自分のテンションも上げていくものだからです。

でも、今まで「ライブが一番いい」「お客様が満席になることが一番重要」と思っていたこと、それらが全てひっくり返った。「お客様がいっぱいいるなんてダメ」「3密のライブなんて論外」という価値観です。

そうなれば、こちらが適応をする必要があります。演芸と配信の時差をあえて作り(生配信でなくライブ収録を配信)、お客様のコメントを演者が配信と同時進行で見られる方法をとったのは、それがモチベーションにつながれば良いな、と。大規模な会場でやるよりも人やお金が集まったら、それもモチベーションになる。

音楽のように、寄席演芸もアルバム収録とライブとの二本立てでいく。お客様がいてもいなくてもできる。そんな風に変わっていかなくてはいけないのかもしれません。

できた時間で本を読む

緊急事態宣言の間、夜の街から人が消えた。賑わいが戻るのはいつの頃になるのだろうか。
撮影:竹井俊晴

在宅で時間ができたことで、伯山は本をよく読んでいますね。NHKの「ファミリーヒストリー」への出演で、伯山の4代前の先祖が南米では著名な柔術家だったことがわかりました。それを機に今、格闘技の歴史の本などを買い込んで、体系的に勉強しています。もともと、本人もプロレスやボクシングなど格闘技好きなのですが、ものすごく詳しくなっています。

私自身は、コロナ前からリモートワークをしていたので、仕事のあり方は特に変わっていません。そもそも電話も好きではなく、メールですむことはメールですませたいという性格。仕事相手と夜ご飯や飲みに行って、商談を決めるというタイプでもまったくない。それで困ったりもしていません。

逆に、請求書の判子を止めましょう、夜中まで飲みに行くのは止めましょうという流れになって、そこは快適だなと思います。

会社としては事務スタッフが1人、現場に同行する伯山のマネージャーが1人。そして私という体制ですが、コロナをきっかけに、事務スタッフにもノートパソコンを持たせてフルリモート体制になりました。

夫婦喧嘩になったら改善案を提案

NHKの番組「ファミリーヒストリー」に出演し、先祖が南米では著名な柔術家と判明。外出自粛を機に、格闘技関連の本を買い込んで熟読した。
提供:古舘さん

コロナで家族が密になりすぎて、コロナ離婚が話題になっていますが、夫婦のコミュニケーションも、特段、変化はありませんね。夫婦喧嘩はコロナと関係なく年中していますから(笑)。

でも喧嘩になったら、その都度、お互いに改善案を出すことで解決しています。それが行き詰って、また喧嘩をしても、「じゃあ、こういう風に変えよう」と提案する。

なぜ、喧嘩になったのか。原因を考えて、それを解消するためにどうすればいいのか。自分の何かを変えたほうがいいのか。家の中の環境だったり、物理的に何かを変えたりした方がいいのか。それぞれが考える。

伯山も私もとにかく仕事が好きなので、夫婦のことでいざこざがあっても、仕事を破綻させたくない。気持ち良く仕事をしていくためなら譲れるということだと思います。



(文・三木いずみ、デザイン・星野美緒)

古舘理沙(ふるたち・りさ):冬夏株式会社・代表取締役社長。神田伯山のマネージメントとYouTubeなどメディアをプロデュース。大手人材・求人広告会社の営業、海外ファッション誌日本版の編集を経て、落語にはまり、興行師の道へ。伯山以外にも多くの寄席演芸の興行を手がける「いたちや」を創業。2020年より伯山のプロデュースに専念すべく、「いたちや」は閉めている。興行師になった2年目までは貧乏で、「納豆と卵と野菜ジュースと実家から送ってもらったご飯しか食べられなかった」という日々を過ごした経験も。

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UQモバイル「月額2980円の新料金」が“楽天つぶし“である理由

UQ mobileは新料金プラン「スマホプランR」を発表した。
撮影:小林優多郎

UQコミュニケーションズは5月25日、同社のMVNO(格安SIM)事業「UQ mobile」の新料金プラン「スマホプランR」を発表した。

スマホプランRは月額2980円(税抜、以下同)で、データ容量が月間10GB。10GB以上利用した場合も、最大1Mbpsでの通信が可能。提供開始日は6月1日、5月27日から予約受付を開始する。

例えば、同社が従来から提供する「スマホプランS」の場合、月額1980円で、データ容量は月間3GB。超過時の通信速度が最大300Kbpsと考えると、スマートフォンをより利用するユーザーにとってはおトクなプランだと言える。

ワイモバイル、楽天モバイルを見据えた料金設計

UQ mobileが主力とする料金プランは2種類となった。
出典:UQコミュニケーションズ

スマホプランRは競合他社と比較してもその価格設定が絶妙なプランだ。例えば、同じく格安SIMを展開するソフトバンクのワイモバイルは、月額2680円で月間3GBの「スマホベーシックプランS」、月額3680円で月間9GBの「スマホベーシックプランM」を提供している。10GB以上を使いたいとなると、さらにその上の月額4680円で月間14GBの「スマホベーシックプランR」のみとなる。

ただし、UQ mobileと比べるとワイモバイルのプランはいずれもやや割高に感じるが、それはワイモバイルの料金には「1回につき10分間通話無料」という“10分かけ放題”の料金が含まれているからだ(UQ mobileの場合、月額700円のオプションとして国内10分かけ放題が利用できる)。

作成:小林優多郎

さらに、4月8日からサービスが始まった楽天モバイルと比べてみても、“対抗意識”が見えてくる。楽天の「Rakuten UN-LIMIT」は、スマホプランRと同じく月額2980円で、楽天回線エリアは無制限なものの、都内の地下鉄や郊外など楽天回線エリア外(KDDIローミング)は月間5GB(超過後は最大1Mbps)となっている。

生活範囲が楽天回線エリアであれば当然Rakuten UN-LIMITの方がおトク感があるが、前述のエリア外の場合は同価格で2倍のデータ量が使えるUQ mobileを選ぶ、というユーザーもいるだろう。

10月のauとの統合前から競争を意識か

KDDIは10月にUQ mobileの事業を継承する。
出典:KDDI

UQコミュニケーションズは5月14日、UQ mobile事業を10月1日にKDDIへ統合すると発表している。同日に行われたKDDIの決算会見では、統合の狙いについて販売チャネルの統合や再編など「グループ経営の集約による競争力の強化」(KDDI決算資料より)が挙げられている。

これは当然、すでに1社でマルチブランド展開を行っているソフトバンクとワイモバイルを意識したものだと言える。

実際、auの新料金プランは、月額2980円(2年契約時)からの段階定額制プラン「新auピタットプランN」を提供しているものの、ユーザーに対して前面に押し出しているのはデータ上限なしの月間完全定額制プランであり、その狭間にいる「ある程度料金は安くしたいが、日常的にスマホを使いたい」というニーズは満たせていない。

事業統合までまだ時間はあるが、UQ mobileの今後の動きは、よりauのプランや立ち位置を踏まえたものになっていくのだろう。

(文・小林優多郎)

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