東京大学関連のスタートアップやプロジェクトを費用からメンタリングまでサポートし、SXSWに派遣することでグローバルな挑戦を支援するプロジェクト「Todai To Texas」。2018年のトレードショーで出展を果たしたブースを直撃した。
4年間で30以上のチームを派遣
「Todai To Texas」からは過去4年間で30以上のチームがSXSWのトレードショーに派遣されており、2017年には、ロボット義足を開発する「BionicM」が「Interactive Innovation Awards」でもアワードを受賞するなど、着実に存在感を示している。
©Katrina Barber/Getty Images
2018年は7つのプロダクトを出展
5年目となる2018年SXSWの「Todai To Texas」のブースでは、国内選考を通過した7つのチームが出展を果たした。
飛ばないドローン「Ninja Drone」
「Ninja Drone」は、ワイヤーを伝って空中を移動できるコンセプトの“飛ばないドローン”だ。通常のドローンの飛行規制区域でも使用でき、内蔵のカメラを活用して定点観測を行うことが可能だ。
用途としては農業・畜産・駐車場などでの使用を想定しており、ビニールハウスや養豚場で作物や家畜の成長を観測したり、駐車場などで動く監視カメラとしたりと、使い道はさまざま。
「Ninja Drone」の開発元であるFuture Standardは、元々画像解析技術を使った製品を開発しており、記録した映像を解析して人の顔認識や、刈り入れ時の果物を検出するといった機能も検討しているという。SXSWでは実際に農園などに導入したいという声があがったとのことだ。
自然なデザインで片耳難聴を救う「asEars」
補聴器はひと目で補聴器とわかるデザインのものが多い。メガネ型の片耳難聴者用補聴器「asEars」は、片方の耳のマイクから集音した音を、もう片方の耳に骨伝導で伝えるというアイデアだ。自然な姿で片耳難聴を補い、ストレスなく生活することを可能にする。
学生プロジェクトの「asEars」のリーダーである高木健氏(工学部3年)は、自身が片耳難聴を持っており、既存の補聴器は付け心地が良くなく、目立ってしまうというリアルな実体験から解決策を考え出した。
また、既存の補聴器は音が伝わるまでに遅延が発生するものも多いという。「asEars」はほぼ遅延なしの段階に達しており、日常会話もスムーズに行うことができ、見た目から使用体験まで、「自然」を意識したコンセプトとなっている。
なお、SXSWがきっかけで類似のプロダクトを開発するスタートアップと意気投合し、コラボが生まれる可能性も出てきているとのこと。思ってもみなかったパートナー候補が見つかるのは、SXSWだからこそといえそうだ。
TTTのピッチイベントに登壇した「Plen Cube」
「Todai To Texas」はトレードショーだけでなく、オーガナイザーの下川俊成氏によるピッチイベントもSXSW公式セッションとして開催。ここでは出展チームに加え、「Plen Cube」の開発元であるPLEN Robotics(TTT2015参加チーム)のCOOである富田敦彦氏も登壇してスピーチを行った。
「Plen Cube」は手のひらサイズのハコ型ロボットで、360度回転ヘッド、ロボットカメラ、音声認識、ジェスチャー認識機能などを備えたAI搭載のロボット。フェイストラッキングによる静止画や動画の撮影から、IoT家電のコントロールまで使い方はさまざま。
「Todai To Texas」のブースに出展していたわけではないものの、SXSWの開催地であるオースティンにあるラーメン店「Daruma Ramen」などで、実用的な使用シーンを想定したデモを実施した。
「Todai To Texas」がSXSWにかける想いとは?
さまざまなアイデアを毎年SXSWに送り出す「Todai To Texas」。どんなコンセプトでプロジェクトが進行しているのか、Todai To Texasを主催する菅原岳人氏(東京大学産学協創推進本部 インキュベーションマネージャー)にメールインタビューを実施した。
ーーSXSW 2018におけるTodai To Texasブース全体のコンセプトは?
菅原:TTTは東大関連のスタートアップ、ラボの研究成果、学生プロジェクトなど、まだ無名のプロダクトを「未来への提案」としてSXSWで世界へ披露することを目的としています。個々のプロダクトのテーマは千差万別ですが、“Playground”というコンセプトのもと、各アイデアに共通する遊び心を感じてもらえるようなブースをデザインしました。TTTは学生運営スタッフがブースの企画から設計まで担っているのが大きな特徴です(アートディレクション:廣畑功志氏(東京大学)、デザイン:遠山美月氏(多摩美術大学))。
ーー過去4年間で30以上のアイデアをSXSWへ送り出したTTTにとって、SXSWとはどんな場所か?
菅原:グローバル展開したいスタートアップから大学のラボや学生のプロジェクトまで幅広く受け入れてくれて、それぞれが次のステージへつながるコラボレーションが生まれる場所。
この規模のカンファレンス&フェスティバルとしては、まれな懐の深さを持つことが、SXSWならではと捉えています。参加者全員が未来へポジティブな反応を示してくれ、荒削りなプロダクトであっても平等に評価してくれることから、学生も含めたプロジェクトをオーガナイズする大学の立場としては、世界デビューにうってつけの場であると考えて、TTTを続けています。
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世界に挑戦したいという東大関連のスタートアップを支援する「Todai To Texas」。どのチームも問題意識に対する解決策が明確に提示されており、SXSW出展に向けて研ぎ澄まされたコンセプトが来場者の注目を集めた。世界最大のクリエイティブの祭典SXSWで、イノベーションを生み出す「Todai」の挑戦は、これからも続いていく。
Todai To Texas
東京大学
産学協創推進本部