いよいよ2018年3月17日にデビュー
いよいよ2018年3月17日にデビューする小田急電鉄の新型ロマンスカーGSE(70000形)。2017年12月5日に、初めて報道陣の前でお披露目を行ったが、そのとき公開されたのは、諸般の事情から先頭の1号車とそれに続く2号車の2両だけだった。今回(2月23日)に行われたプレス向け試乗会では、ようやく7両編成すべてが公開され、また僅かな距離ではあったけれど、その乗り心地を体感することができた。
注目したいのは中間の4号車
まず、前回公開されなかった車内で注目したいのは中間の4号車である。この車両は、ほかの4両の中間車(2、3、5、6号車)に比べると座席が20席ほど少ない。それは、大型の電動車いすにも対応できる「ゆったりトイレ」、男性用トイレ、授乳や体調不良の乗客が休める多目的室、車内販売の準備室、自動販売機のスペースを確保するためである。客室も車いすに対応する場所を確保するため、1人掛けのシートが2席用意されている。
試乗会に先立ち、成城学園前駅と喜多見駅の間から分岐する喜多見電車基地の中でGSEの車内見学が行われた。その後、GSEに乗ったまま電車基地を出発。本線に合流して成城学園前駅に向かい、5分停車の後、進行方向を変え、箱根方面へ向かって走り始めた。
臨時列車なので、複々線の真ん中にある急行線ではなく、一番南側に線路が敷かれた各駅停車用の緩行線を走る。先頭の展望車から前方を眺めると、喜多見駅や狛江駅のホームをゆっくりと通過して行くのが見て取れた。ロマンスカーの営業運転では急行線を走るため、今回でしか体験できないレアな展望であろう。
GSEの展望車はスリリング!最後尾の展望室はゆったり
それにしても、展望車は楽しい。これまでの車両でも充分満足なのに、GSEでは一層魅力的になった。その訳は、従来の車両である「白いロマンスカー」ことVSE(50000形)に比べて、前面窓の高さが30cm拡大されて視界が広がったこと。さらに最前部の席がVSEよりも35cm前に出たため、車窓に吸い込まれるような感じがすることであろう。中々にスリリングであり、展望に見とれていつまでも座っていたかった。しかし、持ち時間はあっという間に過ぎ、後ろ髪を引かれる思いで交代したのである。
帰路は、最後尾の展望室で後方展望を体験したが、これはこれで魅力的だ。前面展望のようなスリリングさはなく、逆にゆったりした気分で流れゆく景色を楽しめる。開放室ではなくガラス窓がある点で異なるけれど、往年の特別急行列車「つばめ」や「はと」に乗ったVIPの気分であろうか。
2号車の席に戻って、普通のシートからの車窓を楽しむ。こちらの窓も展望席と同じく高さが30cm拡大されたので、景色がよく見える。また、窓ガラスが大きくなったためか車内が明るく感じられる。さらに、揺れが少なく静かだ。最近の特急車両では定番となりつつあるフルアクティブサスペンション(動揺防止制御装置)を7両すべてに装備しているので、その効果であろう。
新百合ヶ丘駅に停車したあとは、高架に上って小田原方面へ向かう本線を跨いで多摩線に乗り入れる。2016年3月までは、通勤用としてロマンスカーが定期的に乗り入れていたけれど、廃止になってしまったので、この路線をロマンスカーに乗って通過するのは今や貴重な体験である。
はるひ野駅を過ぎると、右手から京王相模原線が寄り添ってくる。やがて並走するようになり、トンネルを2つくぐると小田急永山、そして多摩ニュータウンの中心である多摩センター駅に到着する。GSEは、一旦停車するもののドアは開けないで発車。多摩都市モノレールの高架橋をくぐり、京王線と分かれると左にカーブして終点唐木田駅に到着した。しばらくすると、ゆっくりとホームの先にある広大な車両基地に進み停車。飛行機のようにタラップを使って地上に降り、撮影会を行った。7両揃っての編成写真撮影は初めてのことである。帰路は、新百合ヶ丘、成城学園前経由で普段、特急は通過となる梅ヶ丘駅で下車し、試乗会は終了した。
人気でかなりの席が埋まっている?
GSEは、試運転や一般公募の試乗会を何回か行った後、3月17日の新宿9時00分発箱根湯本行き「スーパーはこね5号」から営業運転を開始する。GSEがどの列車に充当されるかは日によって異なるけれど、4月末までの土休日の新宿発「スーパーはこね5号」はGSEでの運行となっている。但し、人気でかなりの席が埋まっているという。
GSE運行開始を盛り上げるため、新宿駅構内(改札口の外)ではRomancecar GSE caféを4月1日までの期間限定でオープンし、旅気分を味わえる車内販売メニューを購入できる。GSEデビューの掲示物も目につき期待は高まる。複々線の完成で便利になる小田急の新たなシンボルとして走りだすのが待ち遠しい。
取材協力=小田急電鉄
(文:野田 隆)